ソニーのオープンリールデッキTC6360、オープンリールテープSLHの広告
(スイングジャーナル 1969年11月号掲載)
Daily Archives: 1969年10月20日
ソニー TC-6360, SLH
マイクロ MR-411
ビクター ARM-1000
サンスイ SP-30, SP-50, SP-100, SP-200, SP-1001, SP-2002, SR-2020, SR-3030
ビクター MCA-104, MCT-104
ビクター AST-150TS
サンスイ AU-777D
パイオニア TX-70
テクニクス SU-2010 (Technics 50A)
フォスター G-11, G-33, G-44, FE-103SR, FE-133SR, FE-163SR
パイオニア CS-500, CS-700
ヤマハ NS STEREO
ビクター TD-694, CCR-624
ラックス SQ707
菅野沖彦
スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
SQ707というラックスの新製品アンプは、アンプの老舗ラックスが生みだした傑作である。ロー・コストの普及アンプであるが、決して安物ではない、これは、このアンプを使ってみればただちに理解できるであろう。第一、見た目にも、いかにも品位の高い音が出そうな美しい姿をしている。徹底した合理的な設計と、量産計画から割り出されたために、この価格がつけられたものと思う。数多くの商品を見馴れた眼には一目で、この製品の優秀性がピンとくるであろう。安物とは安物しか作れないメーカーが作るものらしく、高級機を作る技術と体験をもったメーカーがつくるロー・コスト商品には自ずから、その品位が滲み出るものであることを敢えてくれる
SQ707の機能は、プリ・メイン・アンプとして必要なすべてを備えていて、一般の使用上、まったく不便を感じない。入力側からみていくと、フォノ、チューナー、テープデッキ、補助入力の4端子が用意されていて、フォノの入力感度は2mV、その他は120mVとなっている。出力側は、録音用のライン出力と、3ヘッド・タイプのテープレコーダーのモニター再生端子、そして2系統のスピーカー出力端子とヘッドフォン・ジャックがそろっている。コントロール機構には両チャンネル独立の高、低トーン・コントロールに、高低の湾曲点を変更するスイッチ、18dbのミューティング(アッテネーター)スイッチ、ABスピーカー切換スイッチなどがラックス特有のパネル・レイアウトですっきりと並んでいる。パネルはホワイト・ゴールドの瀟洒な色彩をヘアー・ライン・フィニッシュにした美しい輝やきをもつ。ケースはABS樹脂使用のユニークなもので、合理性はもちろんのこと、下手な鉄板加工より完成感が強く枠である。操作面によく練られているし、スイッチやボリューム類は専門メーカーのラックスらしく実にタッチがよく、スムーズであった。そして、その再生音は、こうした外観上の特長と共通した、あるいはそれらを上廻る質の高いもので、まるで澄みきった深い水を見るように、濁りや汚れのない、そして丸やかなものだ 実にふっくらと、独特のプレゼンスといいたいほど軽やかに空間が再現されるのである。この特長は、コンテンポラリー・レコードのように、ステレオフォニックな空間性のある録音により効果的で、ブルー・ノートやインパルスのようなマルチ・モノーラル的な録音では、やや丸味がついて物足りないという印象になるかもしれない。連続出力17Wという表示に物足りなさを感じられる人もいるかもしれないが、能率のよいスピーカーを使えば、家庭用としてパワー不足は感じられず、SJ試聴室のアルテックA7が、ガンガン鳴る。我家では、サンスイのSP1001やクライスラーのCE1ac、またオンキョーのFR12というような数種のスピーカーをつないで、鳴らしてみたが不足は感じなかった。もちろん大きな部屋で、大音響を期待すると無理も生じるが、10畳ぐらいの部屋までなら十分いける。まして4・5畳〜6畳での使用にはまったく心配はいらないだろう。名士の手すさぴといったらメーカーに怒られるかもしれないが、このアンプには音にも、外観にも、そうした余裕が滲み出ていて無理な気張りをまったく感じさせないのである。34、000円という価格も、ユーザーにとって、それほど気張りを要しないだろうし、本誌の選定新製品として名実共に推奨にあたいする製品である。
このアンプから出る素直な音は、この製品を初めて使われる多くのオーディオ入門者に、初めから趣味のよい、音の規準を与えてくれると思う。これはいい変えれば、市販製品にあり勝ちな、ちょっと聞きには強い印象を与える、辛しや味の素が度ぎつくきいていないということである。ロー・コストの普及アンプの代表的地位を占める製品になるだろう。
グレース F-8C
ヤマハ YM-50B
ビクター GB-1B
サンスイ AU-777D
パイオニア CS-500, CS-700
シュアー M44-5
グレース F-8C
岩崎千明
スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
F8Lというベスト・セラーのカートリッジに「MUSICA」と名付けたF8Mが加わったのは昨年春であった。F8シリーズは国産MM型カートリッジの代表のようにいわれ、その性能、品質、さらに再生品位までもが高い信頼度をそなえている製品である。
非常に繊細に音のひとつひとつを適確に拾い上げる能力、どんな演奏のレコードでも正確に音溝をトレースする能力、このようなもっとも大切にして必要な条件を、危な気なくそなえているという点て、グレースのF8Lは国内製品中でもベストに上げられるひとつであった。
そして、その音の繊細さに、より以上の迫力、アタックの力強さを加えて誕生したのがF8Mであった。
むろんF8Mは発売後、F8Lと並んで好評を持って迎えられ、特にジャズ・ファンからはF8L以上に支持されていると聞く。
F8L、F8Mの話を長々と前置をしたのには理由がないわけではない。
今回、F8Cが発売された。F8シリーズの最高級品としてのF8Cについて、次のようなことがよくいわれているのである。
つまり「F8CはF8LとF8Mとの中間的な製品である」「F8LとF8Mの良い所を採り入れて作られたのがF8Cである……」
これは結論からいくと誤りである。F8CはF8シリーズの標準品種F8Lを基として出発したF8Mとは兄貴分に当る製品である。メーカーの言によると「F8シリーズの最高級を目指して、精密技術を駆使して完成した製品」である。
結果としてF8Mのアタックを加えられたF8Cは、音色の上で、F8LとF8Mの中間的なファクターを示すこととなった。メーカーサイドでは、しかしこれはあくまで聴感上の結果であるという。
F8Lをもととしてその性能向上化の結果、それ以前のF8Mと似たとしても、技術的にはかなり違ったものからスタートして得たのである.
一般にカートリッジの高性能化の方法として、針先カンチレバーの質量を減らし、その支持をやわらかにすることにより、振動系を動きやすくするのを目的とする。これはシュアーのカートリッジが追従能力、トラッカビリティの向上を狙って優れた性能を得るに到ったことからも納得ができよう。
レコード音溝に刻みこまれた20、000ヘルツにも達する高速振動に追従するには、そのカンチレバー自体の自由共振はその限界を越えることが好ましい。しかし現実にはそれが、いかに難かしいことか現在の市販製品は20、000ヘルツ以上のものがない。もっとも高いひとつであるF8Lにしても18、000ヘルツである。一般には音声帯域内にあるこのカンチレバーの高域共振はダンパーによって押えられているわけである。このように押えられて周波数特性はフラットにされている。
微少化されて20、000ヘルツ以上の音声帯域以上高い範囲に自由共振点が達したためJ支持部によるダンプの必要力くなくなって、針先の自由度が大きく向上したわけである。つまり針先コンプライアンスが向上して追従性がF8Cにおいて、25×10の−6乗
cm/dynと、より優れているのはこのためである。アタックの優れているのはこの結果、過渡特性が向上したからである。
しかし、この僅かな向上のためにかなりのコストアップがつきまとうことになり、コスト・パーフォーマンスの点でF8Lにくらべて損をすることとなるのだが、この点こそ次のように強調したい。
一般にコスト・パーフォーマンスを考えない最高級カートリッジとして国産を選ぶことは今日ではめったにないのが通例である。国産メーカーの奮起を促すことをいつも叫んできた我々にしては、このF8Cの出現をもっと価値のある成果として見直してもよいのではないだろうか。F8Cこそ外国製高級カートリッジに挑戦した国産カートリッジ第一弾なのであるから。
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