オルトフォンのカートリッジM15、MF15、トーンアームRMA212、RMA229、フェーンのトゥイーターIonofane 601の広告(輸入元:オーディオニックス)
(スイングジャーナル 1971年10月号掲載)
Category Archives: カートリッジ - Page 27
オルトフォン M15, MF15, RMA212, RMA229, フェーン Ionofane 601
オーディオテクニカ AT-VM35(U)
テクニクス EPC-205C
菅野沖彦
スイングジャーナル 10月号(1971年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より
すべてのオーディオ機器は、今や、趣味嗜好の対象として考えられている。中でも、カートリッジは、ユニバーサル・トーン・アームが普及して、シェルの交換が当然のことになり、あれこれと取換えて再生するという使われ方が定着しているのを見ても、嗜好品としての色彩が濃い事がわかるだろう。本来的にはカートリッジの振動系というのは、アームを支点として動作するものなのだから、アームと一体となって設計されるべきだし、使われるべきものなのである。それが、このような使われ方が一般化したことの理由は、一つに、いろいろな音のするカートリッジがあることによる。それらは、それぞれに正しい設計、周倒な製造がなされながら、個性的な音質をもっていることによるといえるだろう。現在市場にあるカートリッジの変換方法、つまり、レコード溝の振動を拾いあげて電気エネルギーに変える方法にも実に多種多様のものがある。MM型、MC型、IM型、MI型などのマグネチック系の多くのヴァリエインョンに加えて、光電型や静電型、圧電型などがそれである。そして、これらの変換方式のちがいが音質に差をもたらすと考えられたり、あるいは、変換方式のちがいそのものは音質には影響がなく、それぞれの変換方式のちがいによって生じる振動系のちがいが音質をかえると考えられたりしている。私はカートリッジの専門家ではないから断定的なことはいえないが、その両方だという気が体験的にもする。そして、さらに、その両方だけのファクターではなく他にも無数のファクターが集積されて、音質を決定していると思うし、使用材料の物性面まで考えたら、ちがうカートリッジがちがう音を出すことは当然だと思うし、その音のちがいを楽しんで悪い理由は見つからない。とはいうものの、エネルギー変換器としてのカートリッジの理論の追求や、その現実化の理想については明解な目標と手段とがあるわけで、ただ闇雲に、こんな音が出来ましたというのではお話しにならない。現在のカートリッジの改善のポイントは、振動系を軽量化しながら剛性を保つこと、振動系が理論通りに動作する構造を追求することにより機械的歪を減らすこと、電気的、磁気的な変換歪を最少にすることなどに置かれ、各メーカーが、その構造上、材質上、製造上の改善に一生懸命努力をしているのである。
ここにご紹介する松下電器のテクニクス205Cという新しい製品は、最も新しい技術で振動系を改良した注目すべき新製品である。その特長のいくつかをあげてみると、まず、振動系の主要部分であるカンチレバーが飛躍的に軽量化され、しかも高い強度が維持されていることだ。材質にチタンを使って、これを直径0・35ミリ、20ミクロン厚のパイプ状カンチレバーに圧延加工し、これに0・4ミリグラムという実効質量の軽いソリッド・ダイアモンド・チップを取りつけ、振動系のナチュラルが、きわめて広い周波帯域を平担にカバーし、精巧無比な加工技術で支点とダンパーを構成し、小さな機械インピーダンスでトレース能力を確保、きわめて忠実な波形ピックアップをおこなう。そして、これに直結されるマグネット振動子には高エネルギーの白金コバルト磁石を使い、この優れた振動系の特質をさらに高めている。ワイヤー・サポートにより支点は明確にされ、リニアリティとトランジェントに高い特性を得ている。製品は、全機種に実測の特性表がつけられるというから、カートリッジのようにデリケートな構造をもつ製品に心配されるムラの不安がない。このように、205Cのフューチャーは、テクニクスの高い設計技術と、材質そのものの開発、優れた加工技術が結集したもので、マニアなら一度は使ってみたい気持になるだろう。在来のテクニクス200Cの繊細きわまりないデリカシーと高い品位の再生音に加えて、強靭さと豊かさが加わった音質は最高級カートリッジといってよいすばらしいもので、一段とスケールが大きくなった。歪が少いことは一聴してわかるし、パルスに対するトランジェントのよさは実にクリアーな響きを聴かせてくれた。特性を追求するとこうなるのかもしれないが、私としては、もう一つ熱っぽいガッツのある体温のある音がほしい。それは歪によるものだと技術者はいうかもしれない。しかし私はそうは思わない。それは、たくまずして滲み出る体質のようなものである。この205Cで再生した本田竹彦のトリオの世界はあまりにも美しく透明過ぎた。やや硬質に過ぎた。冷かった。しかし、これはきわめて欲張った話しであって、現時点で最高のカートリッジとして205Cを賛えたい。
スタントン 681
ナガオカ NM-66
グレース F-8C, F-8F, F-8L
ナガオカ NM-66
テクニクス SB-500, SB-600, SB-700, SU-3100, SU-3400, SU-3600, ST-3100, ST-3400, ST-3600, SL-30, SL-1000W, EPC-205C, EPC-260C
オルトフォン M15, MF15, AS212
シュアー M44-5
岩崎千明
スイングジャーナル 8月号(1971年7月発行)
「SJ選定 ベスト・バイ・ステレオ」より
キミはいま、自分の再生装置に対して不安を感じていないか。
キミの再生装置の音が果して本当によいかどうか自信があるか。
キミの再生装置を友達に聴かしてやるだけのファイトがあるか。
レコードの傷みが全然気にならないでいるか。
そういうときに、まずレコードプレイヤーのカートリッジをチェックしてみて、絶対に信頼できるなら、まずキミはしあわせだ。
優れたカートリッジほど、使い方はむつかしい。軽針圧を保ったまま、完全にトレースさせるには、アームが優秀であって、その調整が完全でなければならない。
むろん、そのためにはレコード自体の保守が十分に行き届いている必要があるし、その音溝が最良の状態に保たれていなければならないし、それをトレースする針先は、きわめて厳格にチェックして、正しい状態に保たれていなければならない。
正しい状態、これがなかなかのくせものだ。キミがまだかけだしのマニアならどういうのが正しいのかということすら十分に知らないだろうし、もし、かなりマニアなら、ほんの僅かのカンチレバーの片寄りでも気になるだろうし、動作中片寄りを起こすことのない、軽針圧カートリッジはごくわずかだ。
こう書いていくと、たったカートリッジの針先ひとつにしたって、大へんな神経の使いようと、細心の注意の要求のため、音楽を楽しむどころではなくなってしまう。
さて、そこでだ。
キミを、こういう一切のわずらわしさから解放してくれるカートリッジがあるのだ。シュアーM44/5、これだ。M44/5はもう発表以来10年近い歴史を持っている。
この原型でもあるM3型がステレオ・レコード発売以来、もっとも優れたカートリッジとしての座を永く保っていたが、M44出現以来、その座はこのM44にとって変った。「美しい安定した音色」という偉大なるおまけがついて。
今日、国産カートリッジもその高性能ぶりは舶来カートリッジに迫り、あるいは追い越そうとさえしている。
カートリッジの優秀性を測るべきポイントとして、私はその中音域から高域にかけてのトラッキング・アビリティーつまり音溝に対する追跡能力というか「追随特性」と、もうひとつ最高域のセパレーションの2点について注目するが、この点でも国産カートリッジの高級品は非常に優れており、海外製の高級品に決して負けてはいない。ただひとつの点をのぞいて。
そのただひとつの点、これを端的に持っているのが、このM44を端に発するシュアー製品である。というのは、なによりも音が安定していて、美しいのである。
音が美しいというのは、ある意味ではそこで楽器的な要素が介在することとなって再生という事象にある面で水をさすことにもなり得る。
しかし、限度ある再生音楽において音が美しいという点は他のいずれの長所にもまして大きなるポイントなり得るのである。
M44/5が、今でもなお多くのファンの支持を得ている、というのも、このカートリッジか、決して今日的な高性能カートリッジでもなければ軽針圧カートリッジであるという理由でもない。ただ非常に安定に動作し、音が豊かで美しいという点のみにある。この点では、おそらく、これからもこのカートリッジに優る製品は決して多くはないであろうし、M44/5がまだまだ多くの新らしいファンを獲得していくことが予想できるのである。
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