Category Archives: スピーカー関係 - Page 62

トリオ LS-77

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マニア好みの企画性の光る、興味深いシステムである。コアキシャルの2ウェイスピーカーに可変ダンピングのパッシブラジエーターつまりドロンコーンという構成で、ホワイトコーンも目に鮮やかに、きわめて効果的な新鮮で若々しい音がする。これこそ、たくまずして若者向きといえるシステムだろう。

マランツ Marantz 4GII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マランツのスピーカー群の中での最小のシステムがこの4Gだが、私がもっとも好きなマランツ・スピーカーがこれだ。20cm口径ウーファーと、4.5cm口径のトゥイーターはコーン型という、なんの変哲もないシステムだが、小さいスケールながら楽器の質感をとてもよく出してくれる数少ない小型システムだと思う。

コーラル CX-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 安価なシステムとしては、きわめて入念につくられていて、アイデアもよく、高く評価したいもの。20cm口径のウーファーと6.5cm口径のコーントゥイーターの2ウェイというオーソドックスな構成だが、トゥイーターの角度は、可変式となっている。明るく抜けのいい音は、響きが美しく魅力的である。

サンスイ LM-022

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 011の上級機がこの022で、基本的には、ウーファーが4cm直径が大きくなったのと、それにともないエンクロージュアが大きくなっただけで、このシリーズの特長であるリニアー・モーション・トゥイーターには変りがない。011より低域は豊かに出るのも当然で、トゥイーターとのつながりもよい。

サンスイ LM-011

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 LMシリーズは三機種あり、この011はその中での最小のもの。LMは、リニアー・モーションをとってつけられたもので、独特の構造のリニアリティの高いトゥイーターが特長である。小径のウーファーは16・5CMで、トゥイーターとのつながりは理想的。のびのびとした明るい音を再生する傑作である。

JBL 4333A

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 L300より若干価格の高い、プロ用モニタースピーカーで、A型になって従来の4333よりエンクロージュアが、さらに強化され、デザイン的にも僅かながら変更を受けた。JBLの代表的な高級システムであり、比較的コンパクトでもあるので、スタジオだけでなく一般家庭でも使いやすい製品である。その再生音は、広いレンジにわかり過不足なく、プログラムソースを鳴らしきる。

JBL L300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 JBLの民生用スピーカーの高級モデルで、中、高域にホーンドライバーを使った、本来のJBLのよさを発揮した優れたシステムである。プロ用モニターでいえば4333に匹敵する製品であるが、使用ユニットは違う。きわめてワイドレンジ、ハイ・エフィシェンシー、大きな許容入力と、物理特性も第一級のシステムで、エンクロージュアもつくりも、プロ用を上廻る優美さと緻密さが魅力だ。

スペンドール BCII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 サンプルを初めて聴いたときから、その音のバランスの良さと響きの美しさが印象的だったが、いろいろな機会に聴くにつれて、ますます好きになってきて、いまや、自分用に買い込もうかと思いはじめた。鋭角的な音や、圧倒的なスケール感などを期待するのはこのスピーカーの性格から無理だが、反面、穏やかによく溶けあい広がってゆく豊かな響きは、クラシック中心の愛好家には、ぜひ一度は耳にする価値のある名作だ。

ヤマハ NS-1000M

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 鮮明──というより尖鋭といいたい解像力の良さ。ことに打楽器のディテールがシャープに、張りつめたような迫力で鳴る。反面、弦楽器や女声がいくらか金属的に聴こえるところが、長期間鳴らし込んだらどう変化するか興味深かった。最近になって、ある愛好家が相当の期間鳴らし込んだものを聴く機会があった。本質的な尖鋭さ、硬さ、という性格までは変わらないが、それを弱点という必要のない程度まで、よくこなれて鳴っていた。

テクニクス SB-7000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オペラやシンフォニーのレコードの場合に、音場の奥行きとひろがりを眼前に繊細に展開して聴かせる。国産でこういうエフェクトを良く出すスピーカーは意外なほど少ない。音のバランスも良好だが、床や壁面からそれを十数センチ以上離して設置しないと、音がぼけたり低音肥大症的に成ったりするので、使用上ややコツが必要。音の品位にいっそうの磨きがかかれば、第一級のスピーカーに成長するだろう。

B&W DM4/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 II型に改良されてからのDM4の良さはおどろくばかりだ。小型のキャビネットの割に音が豊かで、とても鮮度の高い、しかし上品さを失わない節度を保って鳴るところは、まさしくイギリスの製品の良さだ。価格の面から、UL6が比較の対象になるが、セレッションはくつろぎのための、というような感じだ。つまりDM4IIの方が、音楽の形をいっそう確かに聴き手に伝える。

ビクター SX-3III

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ひとつのプロトタイプを(原形)を、時間をかけて少しずつ改良してゆけば、いつか必ずロングセラーの名作に成長するはずだが、そういう製品は残念ながら国産にはきわめて少ない。その数少ない中でも、かけ値なしに優秀と折紙のつけられるひとつが、SX-3IIIだ。初期のSX-3のあの耳当りのやわらかな音も貴重だったが、ジャンルを問わず万能的に音楽をこなすという点で、たしかにIII型になっていっそう成長している。

アルテック 620A Monitor

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アルテックはアメリカの代表的なスピーカーメーカーであるが、その作品中、ながい伝統に輝く傑作が、38cm口径のコアキシャル同軸型ユニットである。604、605シリーズと呼ばれ、世界中の録音スタジオのモニターとして大きな信頼に支えられてきた。これは、そのユニットを最新のテクノロジーでリファインした604−8Gというユニットをバスレフのフロアー型エンクロージュアに収めたプレイバック・スタンダードである。

タンノイ Arden

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイが、新しい経営体制に入って発表したシリーズの最上級モデルが、このアーデンである。38cmウーファーの同軸型コアキシャル・ユニットは、タンノイの歴史的、伝統的傑作ユニットをリファインしたもので、スピーカーのサラブレッドと呼ぶにふさわしい。往年のタンノイのようなクラシックな雰囲気は消えたが、これはこれで高く評価できる。癖はずっと少なく、おだやかでありながらタンノイの風格がある。

QUAD ESL

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 エレクトロ・スタティック型で、このシステムほど、実用的に、高く、長く評価され続けているものもあるまい。3ウェイ構成のコンデンサー・ユニットを、きわめてユニークで美しい仕上げのエンクロージュアにおさめ、見るからに音の繊細さが彷彿とするような魅力あるものだ。このシステムで聴く弦の美しさは無類であり、スタティックな控え目な嗜好を持つ趣味人には、これをもってベストとするといっても過言ではあるまい。

スペンドール BCII

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スペンドールは、イギリスのスピーカー専門メーカーだが、このBCIIは、シリーズ中の中堅に位置するものだ。しかし、音の美しさでは、ベストといってよく、スペンドール社自身の意識外の自然発生的な傑作ともいえる。無論、同社のスピーカー技術は世界最高水準といえるが、それよりも、この美しい音を聴くと、その感覚の素晴らしさが強く感じられずにはおくまい。みずみずしい音である。3ウェイのバランスは完璧である。

ヤマハ NS-1000M

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 新しいテクノロジーと、人の耳による聞き込みがヤマハの製品を支えるバランスド・サポートである。このシステムにも、それがはっきり出ていると思う。ベリリュームという新素材を使った積極的姿勢、それを実現するための高度な加工方法まで開発したのは高く評価されるべきだし、この製品にはっきり、音として現われている新鮮さでもある。Mはモニター仕様で、決して家庭的雰囲気ではないが、飾り気のない実質的製品。

テクニクス SB-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクス7としてよく知られるこのシステムは、外観内容共に、全くユニークなオリジナリティを持ち、しかも、実質的に優れたスピーカーシステムとして実用性も高い。なんといっても、階段式のユニット配置と、それをデザインとして見せた思い切りのよさ、作りの念入りな、少々サーズ精神と感じられなくもないメカメカしいアピアランスはアトラクティヴだ。低域がやや豊かにすぎる傾向だが、素直で豊潤な再生音が快い。

B&W DM4/II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イギリスのB&W社の存在は地味だが、それは、その外観にも音にも滲み出している。つまり、渋味のある、じっくりと聴き込むほどに滋味の味わえるといった音である。DM70やDM6などの大型システムから、この4のようなコンパクトなものまで、一貫したポリシーをもっているが、他社製品との価格比較の上からすると、断然、生彩を放つのが、このシステムだ。クラシック・ファンにはとくに推めたい家庭用のさりげない優秀品。

ビクター SX-3III

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産スピーカーの中で、最も早く、オリジナリティに目覚めた製作者の手で作られたといってよいユニークなシステムがSX3だと思う。ソフトドーム・トゥイーターの採用は、欧米に習ったものとはいえ、それを完全に自家薬籠中のものとして消化し、念入りなエンクロージュア、フィニッシュの独自性などは、タイプIIIとしてリファインされた今日も、立派に存在の必然性をもっている。国産ブックシェルフの傑作として上げたい。

ダイヤトーン DS-25B

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中型ブックシェルフ・スピーカーとして完成の域に達したシステムであろうと思う。明るく解像力の高い再生音は、プログラム・ソースを生き生きと鳴らし、快い。中級システムとして一般家庭では十二分な能力をもった優秀な機械である。あえて機械であると表現した所が、多少の私の不満を現わしたところである。

セレッション UL6

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 スピーカーの音をどうしたら、人の感覚に美しく響かせることが出来るかをよく心得たセレッションらしい傑作だ。スピーカー作りのキャリアのベテランが、家庭で音楽を聴くという目的を十二分に知りつくして作り上げたコンパクトながら、堂々とした音の再生も可能なシステム。品位の高い音の風格が感じられる。

ヤマハ NS-L225

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この新製品は、型番にLをもつことから、さきに発売されたNS−L325のジュニアタイプと思われるが、システムの性格からは、むしろ普及機の価格帯で注目を集めたNS451の上級機として開発されたと考えるほうが妥当であろう。
 エンクロージュアは、合成樹脂を成形したパイプを使ったバスレフ型で、内容積は46・5ℓ、表面は落ちついたシャイニーオーク仕上げである。低音は25cm口径で、コーン紙にはNS451系の軽量ストレートコーンを使い、磁気回路にはアルニコ磁石と低歪化のために銅キャップ付のポールを組み合わせ11、000ガウスの磁束密度を得ている。高音は口径5cmのコーン型のセンターキャップに23mm口径のドーム型を複合させた構造をもち、コーン型とドーム型の利点を両立しているため、とくにラジアル型と呼ぶユニットである。このユニットは、ボイスコイルに、耐入力の向上と広帯域化の目的で銅クラッドアルミリボン線を、磁気回路にはアルニコ磁石を使い、14、000ガウスの磁束密度を得ている。
 このシステムは、2ウェイ方式にありがちな中域の薄さがなく、ゆにっとのつながりは十分にスムーズである。低域はやや暖色系でよく弾み、量感も豊かであり、中域以上はNS451とくらべると、むしろおだやかで粒立ちが細かく滑らかである。最近のように華やかな音をもつ製品が多いなかでは、このナチュラルさが特長である。

ソニー SS-G5

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 昨年末、10万円をこす価格ランクにフロアー型スピーカーシステムとして発売されたソニーのSS−G7は、物量を投じたユニット、エンクロージュアを採用した、本格派のスピーカーシステムとして注目されているが、今回、Gシリーズの第二弾として、SS−G5とSS−G3が加わり、シリーズ製品らしいラインナップとなった。
 SS−G5は、シリーズ製品だけに、SS−G7と同様な構想のシステムだが、もっとも大きく異なる点は、エンクロージュアがブックシェルフ型となっていることで、オプションの物凄く重いスタンド(WS−G5)を使えば、フロアー型としても使えるようになっていることだ。
 低音は30cm口径の高剛性リブコルゲーション付のカーボンコーン採用で、磁気回路はアルニコ磁石とT型ポールに加えて特殊鋼材を用い、第3次高調波歪みの発生を抑えている。中音はドーム型とコーン型の利点を兼ね備えた8cm口径のバランスドライブ型ユニットで、磁気回路には電流歪を軽減するT型ポールを使ってある。
 また、高音は厚さ20ミクロンのチタン箔を一体成型した口径25mmのドーム型ユニットである。各ユニットは音像定位の明確化のため、等価的に各ユニットの音源一を一致させたブラムライン方式に配置され、バッフルボード表面には格子状に凹凸溝を彫ったアコースティカル・グルーブ・ボードが採用され、指向特性の改善が図られている。

ダイヤトーン DIATONE F1

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンの新スピーカーシステムは、意表をつくような独得のデザインと仕上げをしたエンクロージュアを採用した、まったくの新ラインの新製品である。
 エンクロージュアは、バスレフ型だが、ウーファーとトゥイーターの中間にバスレフのダクトを突出させてユニット間の干渉による混変調歪を軽減させる方式が採用されている。この方式を具体化する表現方法として、積極的にデザインのなかにこの方式の特長を生かす方法がとられ、見方によれば唐突とも受け取れるが、目的はさきに採用された独得の磁気回路構造を採用してユニットの歪を軽減した考え方と同じであり、トランスデューサーとしての物理特性を改善する目的と考えられる。
 エンクロージュアは、内部補強桟を不均一に配置した分散共振型で特定帯域でのいわゆる箱鳴きを抑えている。独得なダクト部分は中音ホーンとも受け取られやすいエクスポーネンシャル状のテーパー付である。
 システムとして高能率化が大きなポイントとなっていると発表されているが、実際に聴感上の能率が高く、キビキビして応答性が速い音を聴かせる。低域は伸びやかでよく弾み、充分の量感があり、中域から高域は、硬質さがなく透明感があり、ナチュラルである。しなやかで活き活きと屈託なく音を出してくれるあたりは、従来にない新しい時代の音であり、ダイヤトーンの試みは十分な成功を収めているようだ。