Category Archives: スピーカー関係 - Page 40

ビクター IK-380

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 大型バスレフ・エンクロージュアに強力型の38cmウーファーを組込んだシステムで、スーパーウーファー方式と一般的なマルチウェイ方式のウーファーの両方に使用する目的で開発された製品である。
 ビクターから指示されたスーパーウーファーの使用法は、チャンネルデバイダーCF7070の90Hzのクロスオーバー周波数でメインシステムと分割し、さらにグラフィックイコライザーSE7070の25Hz、45Hz、50HzをMAX,他をすべてMINとしてパワーアンプを通して、IK380をドライブするというものだ。この例に従って使用したIK380は、音色が比較的軽く、明るい低音が得られ、同社のS300クラスに好適のスーパーウーファーシステムと思われる。

オンキョー SL-1

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のスピーカーシステムの話題に欠かせないのがスーパーウーファーシステムである。既存のスピーカーシステムの最低域を増強するこの方式は非常に効果的で、うまくバランスがとれたときには格段にスケール感が優れた音を聴くことができる。
 しかし、専用ネットワーク、パワーアンプ、スーパーウーファーなどのコンポーネントの選択から始めると、現在でも製品も少なく、誰にでも容易におこなえるものとは思われない。このSL1は、本来のスーパーウーファーシステムの名称のように、コンプリートなシステムとして開発された点にオリジナリティがある。
 構成は、エンクロージュア内部が二分割され、内側にドライブ用20cmユニットがあり、一般のウーファーユニットに相当する位置にジュラルミン板とゴムシートを使った平盤上のパッシブラジエーターが配置される独特の方式である。このドライバーと38dm口径のパッシブラジエーターは相互の共振を利用して、30〜50Hzがほぼフラットであり、上側も下側もシャープにレスポンスが落ちるバンドパス特性を得ている。
 エンクロージュア下部には、低域特性が優れ、効率が高く発熱量が少ないPWM方式の60Wパワーアンプと、カットオフ周波数60Hz、70Hz、PASSが選べるフィルターが組込まれている。
 使用例は、メインシステムのパワーアンプのスピーカー端子から信号を得る方法で、3D方式と各チャンネルごとにSL1を1台ずつ使う2種類が選択でき、プリアンプやチャンネルデバイダーから信号を受ける方法とあわせて3種類があり、大変にヴァーサタイルな設計で、中級以上のブックシェルフ型と組み合わせると3D方式で素晴らしい効果が得られた。

音楽における低音の重要性を探る 低音再生のあゆみと話題のサブ・ウーファー方式について

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「超低音再生のための3D方式実験リポート」より

 オーディオの世界で、もっとも重要で、しかも困難なことは、いかにして音楽再生上のベーシックトーンである低音の再生能力を向上するかということである。
 実際にスピーカーシステムで音楽を再生してみると、たとえば3ウェイ構成のスピーカーシステムであれば、トゥイーター、スコーカー、ウーファーと受け持つ周波数帯域が下がるほど、エネルギー的に増大することが容易にわかる。どのように強力なトゥイーターを使っても、部屋の天井や床が振動するほどのエネルギーは得られないが、ウーファーでは、たとえ10cm程度の小口径ユニットでさえも、エンクロージュアを振動させるだけのエネルギーは得られる。
 低音は、音の波長からみても100Hzで3・4m程度と長く、エネルギーがあるだけに、大量の空気を振動させなければならない。そのためには、より大口径のウーファーが要求されることになる。
 ディスクが誕生して以来のオーディオの歴史は、主にこの低音再生能力の向上を、常にメインテーマとして繰りひろげられてきたといってもよい。最近、サブ・ウーファーシステムが台頭し、従来の3D方式をも含めた新しい方式として注目されてきている。現実に、その効果は目ざましいものがある。そこで、ここでは、オーディオにおける低音再生の歴史をふりかえるとともに、話題のサブ・ウーファーシステムの特徴や効果などについて述べてみたいと思う。
 ディスクによる再生音楽の世界では、当初のアコースティック蓄音器が、開口面積とその長さにより制約を受けるホーンそのものに依存していたために、いわば中音域のみで音楽再生をしていたことになる。低音域の再生に格段の進歩をもたらしたきっかけは、当時の新技術であるエレクトロニクスの導入と画期的な発明であるダイナミック・コーン型スピーカー(現在のコーン型スピーカーユニット)の実用化の2点によるところが大きい。
 もちろん、当時の業務用機器の代表であった映画用の再生系には、すでにレシーバー(現在のドライバーユニット)と大型ホーンを組み合わせた巨大なホーン型スピーカーシステムが使われていたが、それとても、100Hz以下の低音域の再生は、ホーン型の特長として、ホーンのフレアーカットオフ周波数では急激にレスポンスが下降するため、望みうすであったわけである。
 コーン型スピーカーユニットは、ホーン型と比較してわりあい小型のプレーンバッフルや後面開放型のエンクロージュアで充分な低音再生が可能であるため、その特長を活かして、コンシュマー用の電気蓄音器が実用化され、これを契機としてハイフィデリティ再生という言葉が使用されるようになった。つまり、当時はプログラムソース側のディスクもSP盤であり、ディスク制作用のカッターも、また再生側のカートリッジとトーンアームが一体となったピックアップやピックアップヘッドの性能からも、高域再生は期待できなかったために、聴感上でのバランスから、いかに低音再生が可能であるかが、ハイフィデリティ再生のポイントになっていたことになる。
 ちなみに、昭和十年頃のオーディオ雑誌を見ると、低音再生に関する問題が数多く見受けられるし、アンプでは、管球式で、増幅段とパワー段の段間の結合用コンデンサーを取除く、ロフチン・ホワイト方式と呼ばれた直結結合型のアンプの試作記事などがある。
 この当時も現在と同様に、オーディオのアマチュアの技術レベルよりも、メーカーの技術レベルのほうが特例を除いて格段に高く、米GE社でのバスリフレックス型エンクロージュアの開発や、多分米RCA社の製品であったと思うが、エンクロージュアの底板部分に、パイプオルガン状に長さと直径の異なったパイプを多数設置して充分な低音を再生しようとした製品があった。これらは、それぞれユニークなオリジナルアイデアに基づいた、低音再生へのアプローチの結果に他ならない。
 昭和二十年代前半の頃になると、まだ国内メーカーの製品は、プレーヤー、アンプ、スピーカーを一つの箱の中に収めた、いわゆる電蓄の形態を採用していたが、各社のトップクラスの製品やデモ用のモデルは、充分な低音を再生するために、現在のスピーカーシステムでいえば、JBL4343程度以上のものが多く、なかには小型の洋服ダンスほどもある超大型のモデルがあり、椅子の上に乗らないとディスクがかけられないといったものもあり、一種の超大型電蓄時代といった感があったこともある。
 しかし、ディスク再生で革命的にといってもよいほどの出来事は昭和三十三年に33 1/3回転のLP盤が米コロンビアで開発されたことと、ほぼ時を同じくして米RCAから、45回転17cm直径のEP盤が開発されたことである。このことによりディスクにカッティングできる周波数帯域が、50~15000Hz程度に飛躍的に拡大されたのである。
 また、ディスクの材料がSP盤のシェラックから、ビニール系合成樹脂に変わったために、スクラッチノイズのピッチが上がり、量的にも激減したこともあって、当時はその優れた低域特性よりも高域特性に注目しがちであった。いかに高域の再生能力が優れているかが、ハイフィデリティ再生のポイントになっていたわけだが、すでに、当時から一部の時代の先端をいくオーディオファンは、新しいこれらのディスクの低音再生能力に着目し、音楽のベーシックトーンである低音再生の向上に取組みはじめていたのである。
 昭和二十年代後半から三十年代前半になると、新しく登場したLP/EP盤の優れた性能を発揮できるコンポーネント製品が海外製品には存在し、かなり輸入されてはいたが、非現実的に高価格であった。国内メーカー製品にもシステムとして開発されたものは2~3存在したが、主に業務用的な性質の製品で、一般的なコンシュマー用とは考えられなかった。また一方において、海外では新しい技術を盛込んだ優れたアンプであるパワーアンプのウィリアムソン方式、ultraリニア方式に代表される優れた性能をもった各種の新方式が発表された。これらの新情報が入手できたこともあり、この当時は、国内のメーカー製システムの平均的技術レベルに比較して、アンプをはじめとするプレーヤーシステムやスピーカーシステムを自らのために製作し音楽を楽しむオーディオアマチュアの技術レベルのほうが圧倒的に優れていた、いわば過渡的な珍しい時代である。
 当時のスピーカーユニットを収めるエンクロージュアは、20cmクラスの場合でも、現在のスピーカーシステムでいえば、かつてのJBL4341程度が標準的な外形寸法であり、エンクロージュア形式はバスレフ型、もしくは密閉型である。一部の前衛的な人々は、大型のストレートやコーナーを利用した各種の低音ホーンや、部屋の壁面や押入れを利用した壁バッフルを使って、低音再生へのアプローチが試みられていた。これらの方式による圧倒的な低音再生の威力は物凄く、大型のバスレフ型エンクロージュアの低音とは隔絶した素晴らしいものであった。
 一方海外においては、ステレオLPが開発される昭和三十二年にいたるモノーラルLP末期が大型フロアー全盛期であり、現在ではその中の限られた一部の製品のシリーズが残っているだけである。
 代表的な例としては、部屋のコーナーを利用し、コーナー効果によりエンクロージュア容積を小さくし、しかも大型フロントホーンに匹敵する高能率化を実現することに成功した、パウル・クリプッシュの発明したクリプッシュK型ホーンがある。このK型ホーンは、ホーンの形状が横方向から見るとアルファベットのK字状を形成していることから名付けられたもので、折曲げ変形のコーナーを利用したフロントロード型ホーンである。
 このクリプッシュホーンは構造的に複雑ではあるが、各種小型化するために採用された折曲げ型のホーン型エンクロージュアのなかで、低音再生能力が優れているために、クリプッシュ社の製品に採用され現在に至っている。他に、米エレクトロボイス社もクリプッシュのパテントを獲得して、かつてのパトリシアンシリーズの700にいたる一連の大型システムや、少し小型のジョージアンにも採用された。パトリシアンは、ウーファーに大口径の46cmユニットが使われ、クリプッシュ型ホーンとしてはもっとも大型のシステムであった。しかし、パトリシアンシリーズの最後のモデルとなった800は、クリプッシュのパテントが切れたこともあって、エンクロージュア形式が変更され、ウーファーユニットに76cm口径の超大型ユニットを起用した、フロントにショートホーンをもつ密閉型となっていることから考えても、このクリプッシュ型ホーンの威力を計り知ることができるといえよう。
 その他、このクリプッシュ型ホーンを使った製品としては、現在も残っている英ヴァイタヴォックスの191コーナーホーンシステムがあるが、このシステムは、ウーファーに38cmユニットを採用し、部屋の壁面と接する部分の構造が少し異なっている。
 ホーンを折曲げ、いたずらに全長が長くなりやすいフロントロード型ホーンの短所を補って、全長を短縮したタイプがW型ホーンである。このタイプは゛本来シアターサプライなどの業務用途に使われたものだが、部屋のコーナーの両側の壁面と床との3面の、いわゆるミラー効果を利用し、小型化したものが、コンシュマー用のホーン型エンクロージュアである。この例としては、かつてのJBLの傑作とうたわれたハーツフィールドがある。
 またW型ホーンを、低域レスポンスの改善というよりは、低域の能率を向上する目的で使用した例としては、現在のエレクトロボイス社のフロアー型システム・セントリーIVがある。このシステムは、ウーファーに30cm口径のユニットを2個使用し、38cm型ユニットに相当するコーンの有効面積を確保しながら、見かけ上の振動板の形状を矩形に等しくしてホーン形状を単純化し、かつ小型化している点に特長がある。
 フロントロード型ホーンが、ウーファーユニット前面に放射される音を使うことと対照的に、ユニット背面にも放射される音を低音だけホーン効果を利用しようとするタイプが、バックロード型ホーンエンクロージュアである。
 このタイプでは、古くから米RCAのオルソンが発明した、複雑な構造を採用しホーンの全長を充分に低音再生ができるだけ長くとったオルソン型ホーンが知られているが、実際の製品として発売されたものは知らない。これを単純化したタイプがCW型ホーンで、英ロージアの製品が知られている。オルソン型、CW型は、ともに20cm口径の中口径全域型ユニットと組み合わされることが多く、38型ユニット使用の例としては、CW型で2個並列使用をした米ジェンセンの製品があったようだが、オリジナル製品は輸入されてなく、国内で設計図を基にして詩作されたものを見たことがあるのみだ。
 バックロード型ホーンで、部屋のコーナーを利用するタイプには、英タンノイのオートグラフ、GRFシステムが──エンクロージュアは国産化されているが──現在も残っている製品である。ホーンの構造はかなり複雑で、カット図面からはやや実体を知るのは難しいであろう。このタイプで折曲げホーン構造を単純化した例が、かつての米JBLのC34コーナー型エンクロージュアであり、コーナー型でなく一般のレクタンギュラー型にモディファイしたものが、以前の同じJBLのC40ハークネスである。このシステムは、部屋のコーナーも床面も利用できない構造のため、エレクトロボイスのセントリーIVと同様、低音の能率改善と中音以上を受け持つホーン型ユニットとの音色的なマッチングが、低域レスポンスの改善以上の目的と思われる。
 ステレオLPの時代となると、それまでのモノーラルとは違い、2つのスピーカーシステムが必要となるために、現実にコンシュマーのリスニングルーム内にセッティングする場合、住宅事情が格段によい米国あたりでも場所的な制約が大きくなり、ことにモノーラル時代に大型フロアーシステムを使っているファンほど、ステレオ化が遅れたのは当然のことである。いかに小型のスピーカーシステムで、大型フロアーシステムに匹敵する充分な低域レスポンスを獲得できるかが、最大のポイントとしてクローズアップされてこないはずはない。
 このような、今日的な表現によると、ニーズを背景にして登場してきたステレオ時代に応わしいスピーカーシステムが、エドガー・ビルチャーが考えたエアーサスペンション方式のスピーカーシステムである。これは、小型のエアタイトな完全密閉型エンクロージュアに、コーンの振幅が大きくなっても歪みの発生が少ない、いわゆるロングトラベル型ボイスコイルをもつ、新構想のウーファーを使用したものである。
 簡単に考えれば、比較的にウーファーとしては小さい口径のユニットを使うが、コーンの振幅を大きくして、大口径ユニットに匹敵するだけの空気を動かして充分な低音を得ようとするもので、そのために必然的にボイスコイル巻幅は、磁界から外れないだけの寸法が必要になる。ということは、ボイスコイルの一部だけしか磁束が流れないため、ユニットとしての能率は10~16dBと大幅に低下するというデメリットをもつことになる。
 能率が低下した分だけスピーカーをドライブするパワーアンプのパワーが要求されるため、高出力パワーアンプがこの方式には必須条件だが、幸いなことに、アンプ側でも管球タイプがソリッドステート化され、比較的容易に高出力アンプが得られるようになった背景もあって、この方式が急速にスピーカーシステムの主流の座についてしまったのは当然のことでもあるともいえよう。
 ちなみに、スピーカーの能率が3dB下れば、同じ音量の音を出すために、アンプのパワーは2倍必要となり、6dBで4倍、10dBで10倍ということになる。まさしく、アンプのソリッドステート化がなければ、この方式は実用化不可能であったはずであろう。しかし、能率を犠牲にしたとはいえ、従来では想像もつかぬ超小型エンクロージュアで、それまでの大型フロアーシステムに匹敵するというよりは、むしろ勝るとも劣らぬくらい充分に伸びた低域レスポンスと量感を得ることができるようになった点については、このエアーサスペンション方式は時代の要求に答えて生まれた、実に画期的な新スピーカーであったことは事実である。
 余談ではあるが、小口径ユニットを改造し、ボイスコイル巻幅を拡げ、密閉型エンクロージュアに収めて低域レスポンスを改良しようとする方法は、AR以前に、当時、東京工大に居られた西巻氏が提唱され、国内のアマチュアの間でかなり広く実用化されていたことを記憶されておられる方もあるだろう。これを一段と発展させ、エンクロージュアをエアタイトな完全密閉型とし、許容入力の大きい中口径ユニットを採用して、充分大型システムに匹敵するパワフルな低域再生を可能とした点に、AR方式の長所があると思う。
 現在のスピーカーシステムは、完全密閉型全盛時代に得た経験と技術を基盤とし、より音色が明るく、表現力の豊かな新世代のバスレフ型が登場し、完全密閉型に替わって主流の座を占めている。つまり、低域レスポンスの面では一歩後退したことになるが、音楽を再生するスピーカーシステムとしては、平均してより表現力が豊かな完成度の高さを身につけているといってもよいだろう。
 一方においては、かつて完全密閉型システム全盛以前に一次急激に台頭し、急激に衰えた英グッドマンのマキシムの再来ともいうべき超小型スピーカーシステムが、ヨーロッパ製品の成果を契機として国内各メーカーから続々と発売されているが、これらのシステムのエンクロージュア形式は、ほとんど完全密閉型である。この種の超小型システムになると使用ウーファーも10cm口径程度が標準であり、これで聴感上でかなり低音感を得ようとすると、エンクロージュア形式は完全密閉型にせざるを得ないわけで、このタイプの特長が大きく活かされている。
 このようにいかに小型化したスピーカーシステムといえども、低音再生はもっとも重要なベーシックトーンであり、音楽再生上、最優先に考えなければならないポイントである。
 最近、スピーカーシステムのジャンルで話題を提供しているものに、サブ・ウーファーと呼ばれる方式がある。このタイプは、サブという言葉から、何か言葉どおりに補助的なウーファーを使う方式のように受け取られやすいが、コンプリートなスピーカーシステムの最低音のみを増張して、周波数特性的にも音色的にも、低音の質的向上を計ろうとする考えによるものである。
 基本的には、かつて一部の高級ファンに愛用された3D方式を発展したものと考えてもよいだろう。この3D方式は、その発端をステレオ初期にさかのぼる。ステレオになって一対のスピーカーシステムを使用するとなると、それまでのモノーラル再生で、大型スピーカーシステムを使っていた場合ほど場所的・経費的な制約が大きくなる点を解決する目的で、方向感がブロードな低音だけを一本のウーファーで受け持たせてステレオ再生をしようとするものである。当時の製品では、エレクトロボイスのステレオシステムが知られている。当然、このシステムはウーファーがなく、中域以上のユニットのみで構成されているために小型であり、ステレオ化を促進する一つのアプローチであったことは事実である。
 現在のサブ・ウーファーシステムは、超小型で質的に内容の高いスピーカーシステムの実用化に続く、第2弾のステップとしての低音再生の向上、コンデンサースピーカーシステムに代表される平面振動板を使う製品の低域の改善などの目的から、左右チャンネルの最低域に各一個のサブ・ウーファーを組み合わせるオーソドックスな方式から、3D方式までを含める範囲で登場したものである。
 この場合、メインとなるコンプリートなスピーカーシステムの低域側に、ディスク再生情で有害ともなる超低域と、マルチウェイスピーカーシステムのクロスオーバー周波数に相当する部分のハイカットフィルターを組み合わせた、バンドパス特性の最低域を加えようとするものが標準と考えられる。もちろん、ハイカットフィルターの部分は、マルチウェイ方式のクロスオーバー周波数と同様に、ハイカットとローカットのフィルターを組み合わせるタイプや、音響的にサブソニック領域の超低音をカットするもの、特にこの部分にフィルターを使用しないもの等もバリエーションとして存在することになる。このメインスピーカーシステムと実質的にクロスオーバーするハイカットフィルターは、平均的に100Hz以下に選ばれているのが、このサブ・ウーファーシステムの特長で、かつての標準的な3D方式が、低くても150Hz程度以上のクロスオーバー周波数で使用されていたことに比較して、異なっている点といえよう。
 サブ・ウーファーシステムは、3D方式で使用する場合でも、左右の、この場合にはメインとなる一対のスピーカーシステムが置かれている幅の内側に置いてあれば、音場感、定位感的には問題は全くない。部屋の構造、条件にもよるが、たとえば左右メインスピーカーの外側にセットするとすれば、聴感というよりは皮膚感的に、一種の圧迫感を生じやすく、これによってサブ・ウーファーの位置が感知されることが多い。もちろん、左右各一個のサブ・ウーファーを使用するタイプでは、オーソドックスに、サブ・ウーファーの上にメインシステムを置けば、超小型システム数段スケールの大きいスピーカーシステムに変貌するのは当然のことである。
 現在のサブ・ウーファーシステムは、時期的にその出発点にあるため、この方式用として開発されたコンポーネントの絶対数に限りがあり、また、価格的にも海外製品では高価格なものが多く、一般的においそれと手の出せない状況にある。しかし、国内メーカー各社が、急激にミニサイズのスピーカーシステムを製品化したことを考えれば、年末までにはかなりのサブ・ウーファーシステム用のコンポーネントが製品化されると予想できる。
 この場合、ウーファーユニットにしても、サブ・ウーファー用として開発された製品に、当然のことながらメリットは多くあり、超大口径の特別なウーファーを除いて、標準タイプのウーファーでは、あまり多くの効果は期待できそうにない。フィルター関係も同様で、マルチアンプ方式のエレクトロニック・クロスオーバーでは、使用する周波数そのものに制約がある。サブ・ウーファーシステムとして少し追い込んでいくと、特にハイカット周波数の細かい選択が不可能で、他用途の流用は不可能であることを知らされる。この場合、この方式での経験、ノウハウが充分にあり、これをベースとして優れた設計により開発された専用フィルターは、抜群の威力を発揮し、サブ・ウーファーシステムのトータルな音楽再生上でのメリットを充分に引き出してくれる。この格差は、予想よりもはるかに大きく、それだけに専用コンポーネントの開発が望まれることになる。
 サブ・ウーファーシステムは、サブ・ウーファーからの音響エネルギーを使い、低音の再生能力を改善する方式であるが、これ以外にも、低域を改善する方法には、電気的な低音トーンコントロールやグラフィックイコライザーなどで、低域を増強する方法がある。電気的な方法は、ちょっと考えると、もっとも容易に低域増強がおこなえると思われがちだが、最終的には、パワーアンプで低域を増強した信号をスピーカーシステムで再生しなければならないために、使用するスピーカーシステムの低域再生能力がもっとも大きなポイントになる。一般的に、エンクロージュア形式がバスレフ型、もしくは密閉型を採用し、充分なエンクロージュア容積をもった、限られた大型フロアーシステムであれば、電気的な低域増強が期待できる。しかし、たとえ大型フロアーシステムであっても、ホーン型エンクロージュア採用の場合は、ホーンの性質から、カットオフ周波数ではそのレスポンスが急激に下降するため、電気的に低域を増強しても希望する低音は得られないことになる。簡単にいえば、ホーン型エンクロージュアは、カットオフ周波数以下の低音が出ない点に特長があると考えてよい。
 ブックシェルフ型になると、特に完全密閉型の場合には、低域特性がゆるやかに下降する特長をもつため、電気的に低域増強をしやすいタイプである。平均的な音量で再生する場合であっても、低域を電気的に増強するということは、増強した分だけ低域のパワーを増大してスピーカーをドライブすることになるわけであるから、かなりパワーアンプとスピーカーシステムに負担を強いることになる。たとえば50Hzを3dB増強したとすれば、スピーカーは電力でドライブするため、50Hzのパワーは2倍となり、6dB増強で4倍、10dB増強で10倍となり、無視できないパワーになってしまう。まして、平均的な低音コントロールの場合には、50Hz以下でも周波数が下れば増強する割合いは大きくなるため、音量が平均的であったとしても、音楽のピークを見込めば、たちまちにして増強した低域ではパワーアンプがクリップしてしまうことになる。簡単に、中域での平均パワーが0・1W、50Hzで低域を10dB増強、音楽のピーク値を16dBとラフに設定したとすれば、ピーク時には、50Hzのパワーは40Wとなり、ピーク値を20dBとすれば、同様に100Wになることになる。また、そのパワーでもアンプは歪まないとしても、ウーファーユニットの許容入力、歪率などから良い低音再生はまったく望まれなくなるわけだ。この点、音経典に低音を増強するサブ・ウーファーシステムのメリットは大変に大きいといわざるを得ない。
 電気的に低域を増強する新しい方式として、dbxからブームボックスと名付けられた、低域のみ入力の1オクターブ下の音を作り出す製品が輸入されて、一部で注目されている。このタイプは、簡単に考えれば、録音・再生のプロセスで失われやすい低音の基音成分を、1オクターブ上の高調波から合成するものとすると、一種の発想の異なった低域増強の方式であることがわかる。このあはいにおいても、使用するスピーカーシステム、パワーアンプはある程度の水準を越した低域再生能力を持つことが必要条件であることは、トーンコンロートルなどの電気的な低域増強とまったく同様である。
 このように、現在においても、スピーカーシステムを中心とし、パワーアンプなどのエレクトロニクスを含めて、低音再生能力の向上、それも実用的な範囲での外形寸法的、価格的制約のなかで各種の試みが続けられている。一方のディスクを中心としたプログラムソース側でも、機器自体の改良をはじめ、新技術を導入した物理的特性の向上への努力が絶え間なく続けられ、ダイレクトカッティング方式、76cm/secのマスターテープの使用や、45回転、半速カッティングなど従来の方式のなかでの改良、さらに、デジタル的なパルス・コード・モジュレーション方式を採用したPCMレコーダー、PCMディスクが誕生しようとしている。
 これらのプログラムソース側の進歩により、さらに一段と低音再生の可能性をプログラムソース自体が持つことになり、現在はこれを再生するコンポーネントシステムの低音再生能力がさらに重要視されるべき時代に入っているといえよう。
 現在の国内の生活環境からは、リスニングルームの容積が充分に確保しがたく、それだけに低音再生上での制約を受けやすいが、逆に考えれば、不利な条件をもつだけに、ベーシックトーンである低音再生に必要以上の注意と努力をしなければならないことになる。
 前述したように、音楽再生上のベーシックトーンである低音の再生能力を、いかにして向上するかが、オーディオの世界での最も重要克困難なテーマである。その問題を克服するために、レコードの出現以来、各社各様の研究がなされてきたわけである。先に述べたいろいろな低音再生のための各種の大型エンクロージュアや大口径ウーファーの開発、ステレオ時代に入って、ブックシェルフ型に採用されたエアサスペンション方式などがその代表的な例である。
 現代においては、最近になって登場してきた新しい考え方によるサブ・ウーファーシステムを、低音再生能力向上の意味から見逃すことはできない。先ほど述べたように、電気的に低音を増強するにはかなりの制約があるわけだが、その点、音響的に低音を増強するサブ・ウーファー(スーパー・ウーファー)システムのメリットは大変に大きいからである。
 今回は、最近話題を集めているサブ・ウーファーシステムの、低音再生能力の向上という点から、その効果を探るために、もっとも簡単に実施できる3D方式に焦点を当てた小実験を行なってみた。
 実験内容は
 ①ブックシェルフ型+スーパーウーファー
 ②中型フロアー型+スーパーウーファー
 ③ミニスピーカー+スーパーウーファー
 の3例について行なった。この3例は、一般ユーザーがスーパーウーファーを使用して低音再生を行なう場合、最も多く採用されるものと考えた空手ある。以下のページは、それぞれの例についての実験リポートである。
 なお、現時点ではまだ3Dシステム用の製品が少なく、限定された条件下での実験リポートであることをお断りしておきたい。今年中にも各社から、スーパーウーファーをはじめ、ネットワークなどの製品の発表があることが予想され、今後の展開が大いに期待されるところである。

JBL L50

JBLのスピーカーシステムL50の広告(輸入元:山水電気)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

L50

オーレックス HR-X1

オーレックスのヘッドフォンHR-X1の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

HR-X1

アルテック A7-X, スレッショルド NS10 Custom, 400A Custom, CAS1 Custom, m1 Custom

アルテックのスピーカーシステムA7XスレッショルドのコントロールアンプNS10 Custom、パワーアンプ400A CustomCAS1 Custom、ヘッドアンプm1 Customの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

ALTEC-A7

ルボックス A740, BX350, B750

ルボックスのパワーアンプA740、スピーカーシステムBX350、プリメインアンプB750の広告(輸入元:シュリロトレーディング)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

A740

UREI Model 813

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より

 UREIのModel813というスピーカー・システムは非常に変わったスピーカー・システムだ。UREIというのはユナイテッド・レコーディング・エレクトロニック・インダストリーの略で会社はアメリカのロスアンゼルスにある、プロ機器専門の小さなメーカーだ。現在までスタジオ用のエレクトロニクス・エクイプメントをつくっていて、かなり有名なメーカーだが、そこでつくったModel813が最近日本に輸入された。実際には全部このメーカーがつくったわけではなく、いわばスピーカーに関してはアッセンフリー・メーカー、そして、システム・デザインをこのメーカーがやったというふうに解釈していいと思う。
 つまり、使われているユニットは自社製ではなく、アルテックの604−8Gが使われている。ただ、そのまま使ってるという形ではなく、604−8Gのセクトラル・ホーンを取払い、見かけは非常にちゃちだが、プラスチック成形によるUREI製のストレート・ホーンにつけ替えたというものである。加えることに、もう一つ38cmのウーファーを併用しているのである。
 こういう構成はアメリカで最近はやってきた構成だが、非常にユニークな構成だと思う。そしてまた、このUREIのスピーカー・システムのもう一つの大きな特徴は、タイム・アラインド・クロスオーバー・ネットワークという、位相時間補正をエレクトロニカルにやった新しいデザインのネットワークを使っているということだ。このネットワークそのものはこの会社の設計ではなくて、TMという所のライセンスで使ってるもの。
 こういうふうにUREIというスタジオ・プロフェショナルのキャリアのある会社が、現在いいと思われるテクノロジーをユニットやネットワークに取り入れて、さらに全体的に総合的なモニター・スピーカーとしての音の質とバランスをいいものにするために、もう一つ38cmウーファーを使うという発想に、非常にユニークな点があると言えるだろう。
 また、タイム・アラインド・ネットワークの効果だと思われるが、モニター・スピーカーとして重要なフェイズ感が非常によく整っている。そのためにステレオの定位とか奥行き、あるいは立体空間の再現性、こういったものが非常によくなっている。したがって、モニター・スピーカーとして録音の調整をするのが非常に楽であるし、家庭用の再生用のスピーカーとレては、そのプログラム・ソースのもっているこまかい特徴を非常にはっきりと明確によく出してくれるよさにつながるという点で、最近の新しくあらわれたスピーカー・システムの中で、特に強く印象づけられたすばらしいシステムである。
 ところで、このUREIというスピーカーは未だ新しいスピーカーで、私もたいへん強い印象をもって気にいってるスピーカーだが、実際に輸入元からサンプル用として出回った程度だから、まだ、いろんなアンプで鳴らしたという体験がない。したがって、たまたまその時に私が鳴らしたものが、かなりいい音がしていたことは事実なので、その組合せを推薦するほか責任がもてない。だから、それ以上の組合せがあり得るかもしれないし、ここで当てずっぽうにほかのアンプで鳴らして、とんでもない音になっても無責任なことになるので、実際私が鳴らした組み合わせを推薦しておくことにする。
 プリアンプはマッキントッシュのC32、パワーアンプがアキュフェーズのM60だ。ターンテーブルはその時のものでなくていいと思うが、私としてはこのぐらいのシステムを鳴らすならばかなりの高性能のものがいいと思うし、デザイン的にもこのスピーカーが相当ラボラトリー・イメージなので、必らずしもきれいなデザインのプレイヤー・システムを使う必要もなかろう。テクニクスのSP10とフィデリティ・リサーチのFR64Sというトーンアームと、カートリッジとしてはいつも私の標準機として使用するエラックのSTS455E、それにMC型としてオルトフォンの新しいMC20、この辺をラインアップとしてそろえれば、UREIが生きてくるシステムになり得ると思う。

アルテック A7-X

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より

 アルテックのA7Xというスピーカー・システムは、アメリカのアルテック・ランシングというたいへんに歴史のあるオーディオ・メーカーの代表的なスピーカー・システム、〝ザ・ボイス・オブ・ザ・シアター〟と呼ばれるシリーズの最新型である。アルテック・ランシングというのは、よくご存じだと思うけれども、ウェスタン・エレクトリックのスピーカー・ディビジョンが分かれててきた会社で、現在アルテックと双壁といわれているジェームズ・B・ランシングという会社のランシングという人が中心になってスピーカーをつくり出した会社だ。その後ランシングは独立してJBLという会社をつくったという歴史をもっている。
 アルテックの劇場用スピーカーに対する技術の積み重ねは世界一で、そこから発展して当然、レコーディングのモニター用としてのスピーカーのあり方、そして、レコーディングのいろいろな周辺機器、ミキシンク・コンソールとか、アンプリファイアーなどを全部手がけているが、中でもA7というシリーズはその代表的な製品で、非常に独特な設計のショート・ホーンをもったウーファーと、その上にホーン・ドライバーを組み合わせて2ウェイの構成をとっていることが、この製品の特徴だ。
 劇場用スピーカーにもかかわらず、日本においては多くの音楽ファンがアルテックのA7の音のよさを評価して、あえて趣味の対象として使っているのは承知の通り。こういうスピーカーを現時点のテクノロジーでもう一回洗い直そうということを、アルテック社はやったわけで、A7Xは何十年来のA7シリーズを現代のスピーカー・エンジニアリンクによって、基本的な設計をそのままにしてこれを洗練させたものである。
 アメリカにおいては、これが家庭に入って趣味の対象として使われているというケースは、非常にまれだが、このことは、日本人の耳の洗練さと、それから、ものの本質を見極めるマニアの高い眼力と情熱を物語っているのかもしれない。
 スピーカーの代表として、世界で五本の指の中に入るスピーカーといえば、A7は落とすことができないだろう。その最新版がA7Xである。
 このスピーカーは、50Wクラスのプリメインアンプで鳴らしても相当な成果が得られると思う。たとえば、国産のアンプの50Wから100Wぐらいのプリメインアンプの優秀なものなら、このスピーカーの可能性を十分引き出すことができるだろう。ただ、ここで全体的にバランスのいい、高級なシステムだと思えるようなものを組み上げるということからすれば、私はマッキントッシュのアンプをA7Xに組み合わせてみたい。
 プリアンプにはC32、パワーアンプにはMC2205、この2つの最新型のマッキントッシュのアンプの組合せにより、A7Xのもっている質のよさと風格がさらに生きてくると思われる。
 ターンテーブルはデンオンのDP7000、トーンアームは新しいオーディオクラフトのAC3000MCを組み合わせてみたいと思う。カートリッジはオルトフォンのSPU−Aをつけよう。ただ、SPU−Aは最近の振幅の大きなレコードに、ときとして問題が出るかもしれないので、ハイコンプライアンスのエラックのSTS555Eをもう一つ加えよう。
 プレイヤー・ベースはこうなったら、各人の好みによって既成のものから選ぶか、あるいは、自分でデザインしてつくらせるか、このラインアップにふさわしい重量級のデザインのすばらしいものをつくり上げてみるということで、いかがだろう。

マッキントッシュ XR6

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より

 マッキントッシュのスピーカーとして、一番新しい製品で、構成は4ウェイ4スピーカーからなっている。トゥイーターとスーパー・トゥイーターがドーム型、ミッド・パスが20cmコーン型、30cmウーファーが使われている。
 マッキントッシュのスピーカーは日本ではポピュラーな存在ではないが、最初のシリーズからすでに5〜6年のキャリアを持つものである。基本的な開発の思想は旧シリーズと同じでトータル・ラジエ−ション、指向性をできるだけ均一に各周波数帯域にわたり等しいエネルギーをラジエートするという考えで作られている。さらに本機は、各ユニットからの放射される音の到達時間をコントロールすべくネットワークに工夫がある。つまりタイム・アラインメント・ネットワークの採用だ。
 今までのマッキントッシュのスピーカーは、どうも中域が薄く、素晴しい、品位のある音だが、中音域の再現が不満だったが今日の試聴ではそういうことは全くなくて、非常に高品位のガッチリと締った素晴しい音が得られた。デザイン的には、昔のデザインから見ると確かにさりげなくなってしまって、私も個人的にあんまり好きな形ではないが、しかし音を聴いてみて、音くずれのない、非常に定位のいい、普通のスピーカーでは分からないような定位がハツキリ出てくることを認識した。位相特性が素晴しいので、自分の録音したレコードを聴いてみると、録音時に使用するモニター・スピーカー以上にマイク・アレンジの細かいところが出てくるのには驚かされた。これは、モニターとしても大変優れていると思う。マッキントッシュの言うように、非常に忠実な変換器として、音響パワーが各周波数帯域にわたって均一であるということが、この素晴しいフェイズ感による定位の良さ、パースペクティブが得られる原因なのだろう。
 これは、今の日本での評価が(XR6については、これからだろうと思われるが)今までの評価をくつがえしてもしかるべきだと感じる。今まで何回か聴いてはいたが、これほどのいい音を聴いたことは今回初めてだ。その意味でこのXR6という製品が特別優れているのか、あるいは今までのものはじっくり聴いたわけでないので、デザインからくる印象があまり良くなかったという点と、値段が非常に高いということで、一般にはあまり推められないなという印象によってマイナスの評価が強かったのであろう。今日このスピーカーを聴いてみて、こういう印象が全く改まり、やはりさすがにマッキントッシュらしい最高品位のスピーカーだなという感じが強くした。とにかく音がソリッドで強固で、そして物理的に素晴しい特性を持っている。レコードの細かいマイク・アレンジの全てまで分かるということは、これはスピーカーとしていかに優秀であるかの証明だと思う。このスピーカーの値段は約30数万円というところだろうと予想できるが、十分その値段に値するものではないかと思う。
 ただアンプリファイアーのデザインなどから見ると、デザインと仕上げに関してもうひとつ、マッキントッシュに期待するものが大きいだけに少々失望させられざるを得ない。この辺が魅力的なアピアランスに仕上っていたら最高の製品といえるのだが……。
 組合せはいろいろと考えられるが、やはりせっかくのマッキントッシュのスピーカーだから、アンプリファイアーはマッキントッシュを使いたいということで、最近の新しいプリアンプのC27という製品ということにしよう。C32を最高とするシリーズの中でマッキントッシュとしては、廉価版ということだが、各種機能をシンプル化し、基本性能は明らかにマッキントッシュのプリアンプとしての面目を保った素晴しい性能の製品だ。
 このスピーカーは最大許容入力200Wということだが、私の経験からしてもスピーカーの最大許容入力以下のアンプを使ってもそのスピーカーの能力は100%出てこない。200Wの許容入力のスピーカーなら最低200Wのアンプ、300Wくらいのアンプで鳴らしたいということからマッキントッシュのMC2300が望しいが、値段が相当高いので、ここては、アキュフェーズのM60を2台使うことにしよう。
 プレイヤーは、デンオンのDP7700を使うことにして、カートリッジはこれくらいのクラスになると実際に鳴らしてみて決めるべきだと思う。エラックSTS455Eで鳴らしてみたが、ここで聴く限りでは、大変素晴しいと思う。STS455Eとか555EとかフィリップスGP412II㈵とかオルトフォンのM20FL Super、MC20といったクラスのカートリッジを付けて自身の好みに合わせて選ぶべきで、これひとつがベストだという域の組合せではないと思う。

パイオニア CS-955

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・ブックシェルフ型スピーカー特選8機種」より

 パイオニアのCS955というスピーカーは完成に、紆余曲折をもって開発されたスピーカーだ。このスピーカーの開発の過程をつぶさに見てきて、わかるが、常識的に言うと、スピーカー・システムとしてトータルの完成は難しいと思われるようなユニット構成なのである。スコーカーにかなり大口径のドーム型を使っていて、トゥイーターにはリボン型という、珍しい特殊な構成がそれだ。スピーカーというのは変換器としての性能と別に、必らず構造上、あるいは材質上からくる音のキャラクターをもつ事は避けられない。そういう意味からすると、コーン・ウーファー、ドーム・スコーカー、リボン・トゥイーターという組合せは、キャラクターを統一させることが非常に難しいものだといわざるを得ない。
 ただ、個々のユニットは実に最高性能をもっていて、PT−R7というリボン・トゥイーターはパイオニアの単体として売られて非常に高い評価を得ているすばらしいものだし、ドーム型のスコーカーは単体売りはされていないが、その昔、これの原型になる大変手の込んだ手づくりのスコーカーの発展したものだ。パイオニアはこの原型のスコーカーを使って3ウェイのシステムを出したことがあるが、その時にスコーカーがすばらしすぎて、ウーファーとのつながりが悪くて、まとまりが難しかった。これはある部分がよすぎるのもたいへんなことだなということをわれわれに感じさせたほど、大変すばらしいスコーカーだったのである。それをかなり仕様変更してリファインしているわけだが、基本的には同じ設計の大型ドーム・スコーカーをここでも使っている。
 CS955の成功の秘訣は、2つのユニットのすばらしさはもうわかってる事だけれども、結局ウーファーだと思う。ウーファーとエンクロージャーがうまくいったためにこの3つのユニットが非常にスムーズにつながったのではないかと考えられる。
 というような、かなりこまかいプロセスを経た結果、CS955は、大型ブックシェルフ・スピーカーとして最高の品位をもったスピーカー・システムと言っても過言ではないものに仕上った。音について部分的なことを言っても意味がないが、先ほどいったように、スコーカーとトゥイーターは単体の変換器として最高の性能をもっているので、部分的に悪かろうはずがない。そして、全体がここまでの違和感のないトータル・バランスでまとまったということは、システムとしての完成度がいかに高いかということの証明になるだろう。
 非常に繊細でなめらかで、しかも豊かな音。力感という点においては大型ホーン・システムには一歩譲るところもあるが、実に品位の高いシステムだ。どちらかというと、低能率変換器タイプの音で、音がワッと屈託なく出てくるというのでなく、ある節度をもって出てくるという傾向の音である。
 このスピーカー・システムはブックシェルフだから、ほんとうはあまり大げさではないアンプで鳴らしたい気持ちもある。つまり、プリメインアンプの高級なもので鳴らせたらベストだと思うが、このスピーカーをフルに生かすとなると、矢張りイメージアップしてくるのがセパレートアンプということになってしまう。そこでコントロールアンプとしてはアキュフェーズのC200S、パワーアンプとして同じアキュフェーズのP300S、この2つをドライヴィング・アンプとして使えば、このスピーカーとして100%の性能を発揮させることがてきると思われる。
 プレイヤー・システムは数ある中から特にこれにとってピッタリくるシステムを選ぶことは非常に難しいが、現在出ているプレイヤー・システムの中から、これならばこのクラスの製品と格負けもしないし、性能的にも相当すばらしいものというような意味で、ビクターのQL−A7。これはコストとしては最高級という値段ではないが、堅実で緻密な仕上げの価値の高い製品。特に今までビクターのプレイヤーで私が個人的に一番気にいらなかったベースのデザインが、これはとてもよくなった。ローズウッドの美しいつやのあるビニール加工が施こされたベースで、これならプレイヤーとしてレコードをかける楽しみを感じさせてくれるという感じになった。使い勝手もいいし、ハウリング・マージンも大きくとれているし、機能的な面でも実用的な価値の高いプレイヤー。
 カートリッジはエラツクのSTS455Eと並んで私の好きなカートリッジで、高域に多少味というか、魅力というか、引っくり返せばくせというか、そういう感じが気になる方には気になるかもしれないし、好きな方にはそれが魅力になるフィリップスのGP412IIを選ぼう。

JBL L110

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・コンパクトスピーカー特選8機種」より

 JBLについてはいまさら申し上げることもないと思うがアメリカを代表するスピーカー・メーカーである。
 JBLはスピーカーのシステム化がたいへんにうまいところで、非常に数多くのシステムを出しているが、ユニットを合理的に組み合わせてシステム化しているのが、このメーカーのスピーカーのシステムの特徴だろう。ところが、L110というのはそうした中で今までになかったシステムというか、新設計のシステム。つまり、昔からのJBLのオーソドックスなスピーカーではなくて、新世代のJBLのスピーカーと言うことができる。JBLとしては非常に数少ないドーム・トゥイーターを使ったシステムの一つでウーファーは、ノン・コルゲーションの、これもJBLとしては珍しいタイプの、一つの新しいユニット構成によるブックシェルフ・スピーカーである。
 L110は大きさとしてもブックシェルフ型だから、JBLの中では最高級なスピーカーとは言えない。おそらく中級ということになる。構成はスリー・ウェイのスリー・スピーカーで、上がドーム型で、スコーカーとウーファーがコーン型。これがJBLのお得意のパイプ・ダクト式のバスレフの変形のエンクロージャーに納められている。デザインは全く新しいJBLのデザインで、従来のJBLのデザインから見ると、イメージがかなり変わったようだ。コンシューマ・ユースてありながら、ややプロフェショナルのモニター・スピーカーというふうな様相が濃くなった。だから、私のイメージでは、これはプロフェショナル・ユースのスピーカーというふうに受け取れるのだが……。
 さすがにJBLらしいすばらしいスピーカーに仕上がっていて、音の力というか抜けのある低音ということがよく言われるが、この場合はむしろ張りのある低音がいかにも魅力的。全帯域にわたって音のバランスはたいへんよく整えられていて、JBLのスピーカー共通の非常に積極的な表現である。決してソフトにぼかしてアラを出さないというのでなくて、ある音はそっくリズバスバ出してくるという積極的な表現のスピーカーだ。
 それだけに、このスピーカーを鳴らすには、プログラム・ソースからプレイヤー、アンプリファイアーに至るまでがハイクォリティのものでないと、どっかのバーツのアラをちゃんと出してしまうことになるだろう。JBLが妙な耳ざわりな音で鳴っているのは、必らずどこかに何かの欠陥があると言ってもいい。全体に欠陥がなければ、JBLは決して耳ざわりな荒々しい音を再生するスピーカーではない。
 組み合わせるアンプリファイアーとして、私はこのスピーカーをかなり高級なアンプで鳴らしたいと思う。セパレートアンプを組み合わせてみたいと思うので、ヤマハのC2、B2でいきたいと思う。それはこのスピーカーのもっているデザイン的なイメージからいっても、ブラックで統一したいと思うのと、音も相当緻密な精緻な感じで整えたいということによる。ヤマハのC2、B2のコンビネーションでL110を鳴らすことが、イメージ的にも音の面でも最もピッタリくるのではないかと思うのだ。      プレイヤーも外観上あまり明るい傾向のものではイメージに合わないのて、そういう意味から、アンプと同じヤマハのYP−D9がいいのではないか。あるいは、もう一つの候補として、サンスイのSR929を推薦したい。

BOSE 301

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・ブックシェルフ型スピーカー特選9機種」より

 ボーズ301というスピーカーは、アメリカのマサチューセッツ・ボストン郊外にあるボーズ・コーポレーションのつくっている普及型スピーカーてある。ボーズ・コーポレーションというのはMIT、つまり、マサチューセッツ・インスティテュートの教授であるドクター・ボーズの創立したメーカーで、独特な録音再生の理論からつくり出されたユニークなスピーカーを専門に作っている。その理論の要点は、「音というものは絶対にマルチ・フェイズの間接音成分が重要である」ということである901システムでは、名前が示すように9個のユニットがついているが、そのうち前を向いて直接聴く人間に音を放射するスピーカーは1個だけだ。あとのユニットは全部後向きについて部屋の中で間接音をつくり出すというシステムである。この301は、ボーズ社がその理論を完璧に再現するということではなくて、多少そうした要素を取り入れて普及的なスピーカーをつくったというものだ。
 これは普通の直接放射型のスピーカーで、前面にユニットがつけられた2ウェイのスピーカーで、ユニークなポイントは、トゥイーターの前にリフラククーがつき、それが外から角度を変えることができるということだ。これによって室内での高域のラジエ−ションをコントロールすることができるというのが、このスピーカーの特徴でもある。比較的コンパクトなサイズの2ウェイ・スピーカーであり、値段的にも気楽に使える外国製の小型ブックシェルフ・スピーカー、あるいはコンパクト・スピーカーの部類に入ると思う。
 音は非常に魅力のあるきれいでさわやかなシステムで、この辺の音のよさはつくったメーカーの意識外のところでわれわれに何かサムシングを感じさせると言わざるを得ない。とにかく、トゥイーターの質がとてもよく、何の変哲もないコーン型のトゥイーターであるが、極めて歪感の少ない、繊細なさわやかないい高音を再生してくれる。いろいろなプログラム・ソースに対して、よくバランスした再生音と、質の高い美しさを感じさせる、これは一種の美音と表現してもいいかもしれない。特に、弦楽器の高音、あるいは、シンバルの高音など非常に繊細にしなやかに鳴ってくれる。低音も小型ながら非常に豊かで、押しつけがましくない魅力のあるものだ。
 このスピーカーを鳴らすアンプリファイヤーとしては、やはり中級クラスのプリメインアンプということになるだろう。その辺のアンプは国産にたくきんいい製品がひしめいている。その中から、デンオンの新しいDC化した中級アンプPMA830などはかなりいい表情で音楽を再現するアンプだと思う。プレイヤーは、こういうさりげなく使うスピーカーを鳴らすということから、フルオート・プレイヤーをおすすめしたいと思う。その中でも何枚かのレコードをマルチ・プレイ操作可能のオート・スタート、オート・ストップ、リピート・プレイ、マルチ・プレイ操作可能なテクニクスSL1950。これは値段的にも5万円を切っているプレイヤーで、トータル価格もそう高くならないと思う。このあたりのシステムで気軽に、生活の中に常に音楽が鳴っているという使い方で構成したら、この301が生きてくるのてはないかと思う。

オンキョー M-55

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・コンパクトスピーカー特選4機種」より

 オンキョーのM55というスピーカーはブックシェルフ型の完全密閉型2ウェイ・スピーカーで、エンクロージュアのサイズからすると、これは俗称コンパクト・スピーカーといわれるところに位置するものだ。現在のスピーカーの一つのストリームの中で、コンパクト・スピーカーとミニ・スピーカーというのはかなりの流行のきぎしを見せている、あるいは、実際流行しているのかどうかは知らないが、このM55はそうしたストリームの中で開発されたコンパクト・スピーカーだと私は思う。このぐらいのサイズのスピーカーは昔からいくらでもあるわけだが、ことさらいまこのスピーカーにわれわれが注目するというのは、そうしたコンパクトなサイズの流行の背景を意識してオンキョーが開発したというところだろう。この手のスピーカーで評判のいいスピーカーは他社から幾つか出ているわけだから、そういうスピーカーの中でのコンペデイターとして非常に新しく開発されたスピーカーだけあって、なかなかいいところをもったスピーカーである。
 スピーカーそのものをもうちょっと詳しく説明すると、20センチ口径のウーファーにソフト・ドーム・トゥイーターを組み合わせたものだ。現代のスピーカーは、きわめて明快なハイ・フィデリティ的な再生をするが、音がとにかくシャープであってあくまても克明に再現をする一方、音楽のもっている雰囲気とか、やわらかさとかあたたかさというものをついつい犠牲にしてくるようなスピーカーが多い。その中にあってこのスピーカーはたいへんにウォームな音をもっている。
 これはひっくり返せば、実は、このスピーカーのもの足りなさにもつながるだろう。小さいスピーカーはともすれば、小さいけれども大型に負けないぞというような気張りが、普通はあるが、そうした気張りのあるスピーカーに限って、高域に相当くせがあったり、低域がやたらに強調されたりするものだが、このスピーカーの音の出方は非常に素直におおらかにフワッと出てくる。つまり、そういうう音の気張りのないところが、このスピーカーの何よりもいいところであろう。
 それでいて、実はこのスピーカーはたいへんな耐入力特性をもっていて、実際にピークで150ワット・200ワットは平気で音くずれなく再生する。そういう意味では、非常にタフなスピーカーであることは事実だ。タフネスという点ではミニ・ジャンボだが、しかし音そのものが、あくまでも大型スピーカーに対抗しようというふうなつっぱりがないところが、このスピーカーのよさではないかと思う。
 組合せだが、こういう小さいスピーカーは、小さいから小さいワット数のアンプでと考えると、危険性がある。かといって、いくら何でも、2万円台の、しかも小型スピーカーに何10万円の大型アンプというのも、アンバランスだ。そういう点からなんとかこのスピーカーを鳴らすのに適当なアンプリファイヤーということになれば、プリメインアンプの中級品ということになってくるだろう。サンスイのAU607、707、あるいは、オンキョーのインテグラA705DC、これらのアンプで鳴らせば、このスピーカーがかなりの実力を発揮してくれるのではないかと思う。
 プレイヤーはあまり大げさなものを使う必要はないだろう。ビクターの一番新しいQL−A7なら申し分ない。
 カートリッジの方は、少し締めて鳴らしてもいいと思うので、エラツクのようなカートリッジよりも、むしろオルトフォンのF15とかFF15の方が、このスピーカーのちょっとした甘さをカバーして、明快な感じに音をバランスさせてくれるであろう。

ミニサイズ・スピーカーのベストバイ

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 どこまでが「ミニ」あるいは「超小型」で、どこからが「小型」なのかという明確な定義はできないが、購入する側からいえば、おおよそ次の三つの目的に分類できるのではないか。
 第一は、設置スペースに制約があったり、またはインテリアを重視した部屋作りのために、できるだけスピーカーの存在を目立たせたくない、等の目的から小さなサイズを要求する場合。この場合には、サイズが第一で、音質面は二義的になることもありうる。
 第二は、大型の装置を別に持っていて、サブ的に楽しみたいスピーカーを探している場合。したがって、場合によっては必ずしも小型である必要がないかもしれないが、しかし音質の点で良いものがあれば、できれば小さいに超したことはない、というようなとき。
 第三は、たとえばヴィソニック社の「DAVID50」のような、本当のみにサイズでしかも音質も素晴らしいという製品の場合、これと知らずに音を聴くと誰しもがびっくりする。そうした意外性を強調するには小さければ小さいほどよいし、しかし音質はその小ささからは想像もできないほど優れていて欲しい。そういうおもしろさを含めて購入する、いわばオーディオマニア的な発想から……。
     *
 こんな分類をしてみると、いまの第三の場合ですでに書いたヴィソニックのDAVID50は、まさにこの種の元祖として音質も耐入力も、こういうサイズとは信じ難い立派さで、ベストバイの最初に挙げられる。類機にADSとブラウンがあるが、価格と音質のバランスでダヴィッドが随一だ。
 第二のいわゆるサブまたはセカンドスピーカーとしての製品は最も数が多く、ヤマハNS10M、オンキョーM55、ロジャースLS3/5A、もう少し大きくてよければセレッションUL6、B&W・DM4えII、ジム・ロジャースJR149、JBL♯4301WX、ロジャース「コンパクトモニター」等が出てくる。
 第一のインテリア重視の面からは、たとえばタンバーグの「ファセット」やジョーダン・ワッツの「フラゴン」のようなユニークな意匠の製品に加えて、前項以前に示した各種から適宜取捨選択できる。
 最後にやや蛇足の感があるが、ミニブームに便乗してひどく性能のよくないスピーカーがいくつも市販されはじめたのには、いささかやりきれない。購入の際は要注意。

ヴァイタヴォックス Bitone Major

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

コクのある渋い充実した響きは、いくぶん古めかしいが聴きごたえ十分。

タンノイ Berkeley

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

アーデンほど豊かさはないが、適度に辛口の音の造形力の確かさ。

JBL 4350A

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

4343の音にもう一歩凄みを加えたスケール感とリアリティの再現。

K+H OL10

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

ほとんど完璧に近いバランス。3chパワーアンプ内蔵なら高価ではない。

ロジャース Compact Monitor

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

繊細さと響きの豊かさ、そしてバランスのよさで聴かせる小型の佳作。

ジョーダン・ワッツ Flagon

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

陶器の壺という外観の奇抜さからは意外なほどみごとな音が楽しめる。

キャバス Brigantin

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

中〜高音域に独特の華やかさのある、まさにパリのエスプリに満ちた音。

B&W DM7

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

トゥイーターの造形処理など外観も面白いが、音質も一聴に値する。

ルボックス BX350

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

スケールの大きさは望めないが、思わず聴き惚れるしっとりした響き。

ダイヤトーン DS-5B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

国産超ミニスピーカーの中では音のバランスが最もオーソドックス。