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セクエラ Metronome7 MK II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 とても懐かしい感じのする音だ。からっと乾いた軽い音で、今日的な水準からするとややナローであり、高域も低域もそれほどのびていない。部屋がデッドになったような鳴り方がする。弦の響きはややマットな傾向で、艶やうるおい、色彩の精緻さに欠ける。キース・ジャレットのあの知的で、クールな世界に耽溺するような部分や、ウェットで感傷的な要素をすげなくやりすごし、情緒に溺れず距離をつけて表現するのは一つの個性かもしれない。少なくとも、ディティールの精緻さや透明感を第一に望む人向きではないようで、おおらかな素朴な響きが欲しい人向きだ。
 ユニット配置の特殊さからくる音の広がりを生かすため、セッティングには要注意。

アカペラ Fidelio

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 聴取位置に対して、かなり高い位置にユニットを取り付け、上下方向の角度が可変という基本構造と、ダブルボイスコイルウーファーとホーン型トゥイーターを組み合わせた非常にユニークな面の多いスピーカーである。
 全体に抑制の効いた安定度のある音と独特な明解さのある質感に優れた中域で聴かせる個性的な音だ。音の細部は、クッキリと硬い線で描かれ、細部にこだわらず真面目な、質感の優れた音が聴かれる。
 左側に寄った聴取位置では、独自の脚部の反射音が影響し、少し位置を変えてもバランスが変ってしまう。ほどよくライブネスのある広い空間で聴いたときに進化を発揮する音だと考えられる。

ミッション 781

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 コストの枠の中で、知的に音をまとめてみせる、英国製品ならではの見識を感じさせる。音楽の情緒的な振幅の大きさにも追従できる表現力があり、音像を輪郭だけなぞっておしまいにしてしまわない密度をもつ。
 特にピアノの実体感は立派だ。
 弦は新品ということもあって、うっすらと硬質なニュアンスが乗るが、エージングで解消できるレベルだ。シンバルワークのディティールを精緻に描きだしてくる方ではないが、エッジが丸くつぶれることはない。ウッドベースはやや暗く粘る印象があるものの、ポリプロピレンのウーファーとしてはよくコントロールされている方だと思う。音場はやわらかくおだやかに奥に広がるタイプだ。

ビクター SX-500II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音場の透明感が、さすがにこのクラスになると一段向上する。国産機らしくまんべんなく物量と手を入れられた優等生的な音だ。ビクターの伝統か、国産の中では音色が明るく色彩感に富み、かといって、油っぽさが少ない品のよさもある。音像定位にも正確さが出てきて、センターで聴く限り、ジャック・デジョネットの精妙なシンバルワークにおいて、サイズも音色も異なるいくつかのシンバルを叩きわけている様子がよくわかる。各楽器の位置関係の描写力が、国産で9万円というここへきてやっと出てきたということか。マルサリスのスタジオ録音では、冒頭の声の掛け合いがリアルで、遮蔽板の存在がみえそうなほど、音場の再現性が高まっている。

パイオニア A-838

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
「レクイエム」では、バリトンが浪々と唱う。腰高な音のバランスのSX700を抑え込んで、このアンプがぐいと鳴らしている感じ。Pトリオで弦楽器が上ずらない。同時に楽器の音が近い。響きよりも、音そのものを押し出す。「コリオラン」の録音空間は狭め。T&Pではヴォーカルとギターのコントラストが普通にバランス。

逃げ込む場所

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より

「悪いけど、夜中にしてくれないか。そう、二時でどうだ?」
「なぜ?」
「昼夜完全に逆転しているんだよ」
 彼はまるで僕の来訪を拒絶するようにそう言った。
「そうじゃないんだ、俺だって会いたいさ。つもる話もあるしね。だけど、来週から地球の裏側に行って過酷な現場の仕事をしなきゃいけないのさ。その準備を今からしているんだ。時差ボケの調整をこっちにいるときにやっちまわないといけないんだ」
 彼は、とある大手の建築会社の土木設計課に所属している建築エンジニアだった。
 去年結婚してすぐに女の子が生まれた。
「ほら、家にいるとさ、悪気はないわけだけど、子供の泣き声がうるさい。判るだろう?」
 というわけで、僕は彼の仕事場から車で五分ほどの場所にあったワンルームマンションに、夜中の二時に出かけることになったのだ。
 そこは彼の隠れ家だった。
 ワンルームの狭い部屋だったが、深夜に及ぶ仕事のせいで、片道二時間もかかる郊外に長期ローンでマイホームを買いこんだ彼にとってはどうしても必要な場所だった。
AM1:45。
 都会のコンクリートジャングルを走りぬける。
 朝の人の洪水が嘘のように、しんと静まりかえったオフィス街はまるで廃墟のように暗く、凍りついたような沈黙が氷河のようにあたりを圧していた。
 まだ冬の尾を引く深夜の空気にひきかえ、彼の部屋は朝の地下鉄みたいに生温かくよどんでいた。なにしろドアを開け中に入ったとたん煙草のけむりが目にしみ、わけの判らない匂いがしてくらくらした。
 よく見ると、ドラフターの脇には食べかけのカップラーメンが箸をつっこんだまま忘れられたように放置してある。
「今、窓あけるよ」察した彼はすぐにそう言った。
「すごいな、まるで受験時代を思い出すよ」
「仕方ないんだ」
 肩をすくめそう言うと、彼はくしゃくしゃになったワイシャツのポケットからねじれた煙草を取り出し火をつけた。
「時々女房が掃除に来てくれるけどね」
 そう言って笑う。
 やがてコーヒーの香りが空気を入れ換えた部屋の中にゆっくりと広がっていく。
 彼は真っ白い磁器のコーヒーカップとソーサーを一組、テーブルの上に並べポットから熱いコーヒーを注いだ。
「情けないけど俺はミルクにしとく」
 そう言って、彼はコンパクトな冷蔵庫からミルクのパックを取り出すとストローをつかって子供みたいにそれを飲んだ。
 ドラフターの向こうに小さなスピーカーがおいてあった。
「ボーズじゃない?」
「ああ」
「嫌いだったんじゃないの、たしか?」
「これはちょっと違うんだよ、ま、いいから聴いてくれよ」
 それはヨーロピアンデザインの、真新しいイル・ソーレだった。
 軽いものからいこうかな、と言って、スパイロジャイラのライツ・オブ・サマーというアルバムをかけた。
 たしか、相当にワイドレンジを意識した音作りがされた、すっきりした響きのCDのはずだ。
「ボーズはナローで、脂ぎった音がするから嫌いだ」と言ってた彼。
 トップシンバルの軽い響きで始まるその曲。僕は音が出た瞬間びっくりした。
 たしかにさらっとした軽い響きでハイエンドがすっきり伸びてとても綺麗なのだ。
 それに、凄い低音。
 CDプレーヤーとFMチューナーを内蔵したアンプ部のデザインも奇妙にあか抜けしている。
「ボーズもずいぶん洗練されただろ?」と彼。
「たしかに」音も見た目も、とても洗練されていた。
 綺麗によく広がる透明感があった。
 ボーズじゃない。僕はそう思った。
 しかし、よく聴くと、音には国産にはない粘り気がきちんと残っていて、アメリカを感じさせるものもたしかにある。かつての黒っぽい雰囲気からホワイトカラーのヤッピーになった。スーツを着込んだボーズの音なんだ。これは。
「クラシックだって、ちゃんときけるんだ」
 そう言って彼が次にかけたのは、なんオワゾリール盤のバッハ管弦楽組曲だった。
 彼はシャドーベースの裏に手をいれ何ごとかをおこなった。
「?」と僕。
「少しだけハイを落としてみたんだ。トーンコントロールがついてるんだね」
 なるほど、ヒリヒリしがちな弦の響きがいっぱいくわされたみたいに、ちゃんと鳴っているではないか。
「ディテールがしっかりしているし、響きが脂っこくなくて、ちょうどいいんだ。俺の好きなECM系のジャズだってきりっと引き締めて、すっきり鳴らしてくれる」
 たしかに、キース・ジャレットのトリオによるスタンダードナンバーはその透明できりっとした音楽の構築がしっかりと出ていた。彼は僕の驚いた顔をみて、楽しそうに言った。大人が無邪気な子供にもどる瞬間だ。
 ここはビジネススーツに身を送るんだ戦士、俗称「おとうさん」が現実から逃避し、ひそかに自己回復および療養を果たすための場であった。

このボーズ・イルソーレシステムの核となるのは、スリムなデザインが新鮮な、ミュージックコントローラーLS4810であり、CDプレーヤーおよびFM/AMチューナーとプリアンプ機能を持つ。これは2系統の出力を持ち、2セットのスピーカー部を駆動できる。
パワーアンプを内蔵したパワード・アクースティマストスピーカーシステム、PAM5、サテライト・スピーカー(5.7cmフルレンチ2本使用)とアクースティマス・ベースボックス(16cmウーファー2本使用)からなる。
ベースボックスにはパワーアンプが内蔵され、独立したボリュウムとトーンコントロールを持っている。
別売のリモコンは一般的な赤外線方式とは異なり、FMバンド帯域の信号を使用しており、障害物に対して強いという特徴をもっている。

パイオニア A-838

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ダイヤトーン DS-77Zとの相性
ウォームトーン系の適度に安定感のある音と、音の細部をほどよくカバーしてプログラムソースの欠点を露呈しない聴きやすさが特徴の音である。実体感は少し薄いが「レクイエム」の響きの豊かさ、T&Pのライヴハウス的な楽しさなどはスピーカーの本質とは異なるが、それなりに納得できるオーディオ的に面白い音だと思う。

セレッション SL6Si

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

英国系の小型2ウェイシステムを代表する、適当に反応が速くプレゼンスの良い音と、メカニカルでわかりやすいデザインが巧みにマッチした製品である。Siに発展して中域の薄さが解消され、低軟、高硬の性質は残っているが、小型システムの、音離れが良くプレゼンスの良い特徴も併せて、総合的な完成度はかなり高い。

デンオン DCD-3500RG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 適度に緻密で安定感のある中域を中心に、ナチュラルな帯域バランスと標準的な音場感の再現能力、明快な音像定位が聴かれるリファレンスモデル的な内容の音は、昨年発表された時点とは格段の差のグレードアップである。聴取位置は中央の標準的位置である。ロッシーニは柔らかい雰囲気型の音で、音像は奥に定位する。安定度は充分にあるが密度感が不足気味で、ウォームアップ不足だ。Pトリオは、安定感のある帯域バランスと芯のしっかりした音で、 一種の重厚さめいた印象が特徴。ブルックナーは厚みのある安定した、いわば立派な音だが、斉奏では混濁気味。平衡出力ではホールトーンはたっぷりとあるが表現が甘く、コントラスト不足の音で、かなり音量を変え、セッティングを少し変えた程度では変化がなく、再生系との相性の問題がありそうだ。ジャズは、低域が腰高で安定せず、全体にモコモコとした一種の濁りのある音とプレゼンスでまとまらない音だ。

サンスイ AU-α707L Extra

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ダイヤトーン DS-77Zとの相性
ナチュラルで、響きがほどよく溶け合ったプレゼンスの良い音だ。音場感は遠近感たっぷりにパースペクティヴに広がり、音像は小さく柔らかくまとまる。プログラムソースの録音されたホールなどの空間の再生は見事であり、とかく硬調でエネルギー感が誇張気味となりやすい77Zの個性を巧みにカバーした楽しく聴ける音だ。

マイクロ CD-M2 + DC-M2

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 穏やかで、一種独特の重さ、暗さがある渋い音を持つ個性型の音である。CDとしては再生する情報量は多く、演奏会場の空気の動きや椅子などのキシミ、楽器のノイズなどを聴かせる。試聴位置は、中央の標準位置。ロッシーニは、基本的にはウォームトーン系のまとまりだが、角がとれたクッキリとした音はアナログディスク的なイメージがある。各パートの声は少し伸びが抑えられ、音像はフワッと大きく定位する。Pトリオは、低域が重く粘りがあり反応は遅いが、中低域以上はほどよく立上りの良い素直な音であるため、低域のコントロールをすれば個性的な良い音になるだろう。ブルックナーは、音楽的な意味でのブルックナーらしさがあるが、オーディオ的には見通しが悪く、晴々としない音である。平衡接続ではプレゼンスが良くなるが、Dレンジが抑えられ、表情も鈍くなる。ジャズは、狭帯域型バランスと閉鎖空間的プレゼンスが特徴だが、安定度、力感が欲しい。

ビクター SX-700

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

 小型2ウェイ方式に、低音専用のサブウーファーシステムを独立したキャビティで組み合わせ、トールボーイ型システムとしてまとめた手堅い手法の製品である。柔らかく量感があり、ほどよく反応が速いサブウーファーを加えた低域の豊かさは、この製品の特徴であり、この部分をどうこなすかがアンプの実力の問われるところ。

パナソニック SU-MA10

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ビクター SX-700との相性
細身で、さらさらとして、薄味の印象は共通6Siから700になったことで低音部の支えが出てきたのは当然だが、どうしても高音域に耳が寄る。空間が透ける分、音の実体感が不足して、演奏がつまらなく聴こえてきた。T&Pはステージにうんと白い照明を当てたよう。ボーカルが若返り胸の鳴りが薄い。

メリディアン 206

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 英国、ブースロイド・スチュワート社よりすでに発表されている200シリーズコンポーネントは、201プリアンプを核として204FMチューナータイマー、205モノーラルパワーアンプ、209リモートコントロールユニットから構成され、そのデザインや機能のユニークさで話題を集めていた。
 今回同シリーズ中の、プリアンプ機能をあわせ持つCDプレーヤー/207MKIIの派生モデルとして、このプリアンプ機能を排し、よりコンプリートな単体CDプレーヤーシステムとして、音質や機能の細部をリファインしたCDプレーヤー/206が登場した。
 従来通り、エレクトロニクス部とCDトランスポート部を独立した筐体に納めているが、使い勝手の向上を期して、ジョイントバーで結合された一体化構造をとる。
 従来通り、D/Aコンバーターは16ビット4倍オーバーサンプリングを採っているが、ディスクユニット部は最新のフィリップス製CDM4を採用している。
 メカニズムおよびサーボ部は、3ポイントサスペンション(ゴム系緩衝材のソルボーテン)によってフローティングされ、振動による悪影響を排除している。
 出力は3系統あり、固定アナログ、同軸デジタル、および光デジタル出力を備え、より組合せの自由度を増している。
 見慣れたとはいえ、やはりこのデザインの美しさは、単に個性的と言うレベルをつきぬけ、メカニカルの機能美と趣味線の高さを高いレベルで融合させている。
 過度にコスメティックな要素でゴテゴテと飾りたてるのではなく、洗練と簡素化を究めたより純粋な意味でのインダストリアルデザインのあるべき姿の良い見本となっていると思う。
 これは、北欧のB&Oと並び、究めて貴重な存在であり、わが国にも、そろそろこういったコンセプトの瀟洒なシステムが登場してもよいような気がする。
 音質についても同様なことがいえる。そこには、あざといメリハリ強調型の紋切り的音作りは皆無で、落ち着いた穏やかな表現がまず印象に残る。
 従来の弾力性のあるやや暖色系の暖かさは引き継いでいるが、よりニュートラルで中立的といえる大人っぽさを仕上げの要素に含んでいるように聴けた。
 中庸を得た破綻のなさが、どんな装置に組み入れても、全体のバランスを掻き乱すことなく、安心して使用できる汎用性を高めたといえよう。
 プリアンプ機能を省略したために回路がシンプルになり、電気的に洗練された結果だろうが、明らかに響きの透明感や音場の再現性の向上が聴き取れた。

NEC A-10X

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ダイヤトーン DS-77Zとの相性
スピーカーとの相性で、プログラムソースへの適応性はややシャープになるが、一種のオーディオの組合せの面白さが味わえる例である「レクイエム」はそれなりにまとまるが、大編成の「コリオラン」は、全体に混濁気味でプレゼンス不足だ。77Zの重いが明るい音色と、アンプの少し暗い音色が結果を決めるようだ。

デンオン PMA-890DG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

ダイヤトーン DS-77Zとの相性
柔らかくしなやかで、雰囲気のある音ではあるが、77Z本来の力強く、押し出しの良い音とは異なった、薄味できれいな音空間のまとまりである。音場感は奥に引っ込んで広がり、Pトリオの、ライヴネスたっぷりによく響き、美しい音の消え方が印象的である。適度のクォリティがあり、使いこなせばかなり楽しめそうな印象。

ビクター SX-700

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

小型2ウェイ方式に、低音専用のサブウーファーシステムを独立したキャビティ採用で組み合せ、トールボーイとしてまとめた手堅い手法の製品である。柔らかく量感があり、ほどよく反応が速いサブウーファーを加えた低域の豊かさは、この製品の特徴であり、この部分をどうこなすかがアンプの実力の問われるところ。

セレッション SL6Si

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

英国系の小型2ウェイシステムを代表する、適度に反応が速くプレゼンスの良い音と、メカニカルでわかりやすいデザインが巧みにマッチした製品である。Siに発展して中域の薄さが解消され、低軟、高硬の性質は残っているが、小型システムの、音離れが良くプレゼンスの良い特徴も併せて、総合的な完成度はかなり高い。

ソニー TA-F555ESG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

セレッション SL6Siとの相性
少し厚ぼったい低音域と細身の高域端で、これは6Siの音そのままだなと思わせた「レクイエム」。Pトリオでは838ほどではないが楽器がONで、響きは抑えめ。「コリオラン」でも低音部の重々しい鳴り方が、いかにも6Siの低音そのままだ。T&Pはヴォーカルが少し暗めで、ギターのボディ音が大きく、リズムがもったりしている。

アキュフェーズ P-500L

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 このアンプの音は、国産のアンプでは珍しい味わいをもつ。とろっとした〝おいしさ〟とでも表現したいほどだ。かといって、アンプとして支配的な音色が強いのではなくて、ソースの各楽音の特質はよく鳴らし分ける。「ドゥムキー」のコーエンのヴァイオリンは艶っぽくて、プレスラーのピアノは丸く暖かい音色に加えて、輝きもある。切れ込みも鋭いが、決して荒れることはなく、質感は滑らかだ。ベートーヴェンの「エロイカ」のトゥッティは力強くマッシヴで、細部と全体のバランスはよく整っていて立派。ffの弦楽器、特にヴァイオリンの音域がドライにならないので、ウィーン・フィルらしい優雅さが常に保たれる。木管の瑞々しさ、金管の繊細な輝きの美しさも大変よく再現してくれた。重低音がしっかりしているので、重厚なバランスが音楽に安定感を与える。ヘレン・メリルの声は低域の厚みがきいて、最近の彼女らしい幅のある表現に聴こえる。ベースも充実。

ソニー TA-NR1

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 キメが細かく滑らかな高音域と、中庸をいく音の雰囲気は明るすぎず、当然暗さとは縁遠く、よくコントロールのきいたバランスである。どこといって欠点や、ないものねだりをしたくなるようなところのないパーフェクトなアンプだと思う。いかにも日本の製品らしいクォリティとパフォーマンスの両立した音だ。ドヴォルザークの「ドゥムキー」での繊細で透明な弦楽器の質感とソノリティには、このアンプの質の高さがよくうかがえるし、全体のマッシブなffでの明晰さに、物量を投じたアンプらしい力量が現われている。「エロイカ」のトゥッティでの安定感も立派だ。100W/8ΩのA級アンプだが、スピーカーの能率が87dB以上あれば、かなりのエンスージアスティックな大音量再生も可能だし、なにより音の密度感や力感は数百W級のアンプのそれに匹敵するものがあるのが頼もしい。ヘレン・メリルは優しく、少々肌ざわりが滑らかすぎて美化されすぎ。

ダイヤトーン DS-77Z

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

口径30cmを超すウーファーベースの伝統的3ウェイブックシェルフ型の典型的存在であり、現在生き残っている数少ない機種だ。3ウェイらしく中域のエネルギーが充分にあり、情報量が多いため、使いこなしを誤れば圧倒感のあるアグレッシヴな音になりやすく、このあたりを使いこなせないようではオーディオは語れない。

YBA YBA1 POWER AMPLIFIER

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

 イシドア・コーエンのヴァイオリンが、なんとも洒落たニュアンスでデリケートな魅力を聴かせる。線は細目で、倍音がよくのった繊細な美音である。ピアノは透明で、プレスラーのタッチはやさしい雰囲気を加える。チェロもよく歌い弾み、中低音のエネルギーがよくコントロールされている。ベートーヴェンの「エロイカ」は、瑞々しい潤いのある質感で、ウィーン・フィルの特質がよく生きた音だと思う。相当感覚的に洗練された音で、ただ物理的に優れた音というようなものではないようだ。決してドライに響かず、常に柔軟さと輝き、艶を失わない音である。サン=サーンスの「オラトリオ」も魅力的で華麗で透明なソノリティながら、陰影のニュアンスにも富む再現だ。ヘレン・メリルはやさしさが加わりセンサブル。ジャズの力と熱っぽさを前面に押し出してくる音ではなく、瞬時に消える音の一つ一つが印象に残るような美音に感じられるのが興味深い。

マークレビンソン No. 27L

菅野沖彦

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新パワーアンプ18機種の徹底試聴」より

「ドゥムキー」のヴァイオリンは硬質透明で華麗な音色。もう少ししなやかで柔軟な質感が欲しいと感じた。ピアノは輝きのある自然な質感で、プレスラーのタッチがよく生きていた。合奏の表現はよく抑揚が生きて弾みもよい。ベートーヴェンの「エロイカ」も明るく透明な音色で、やや硬質なウィーン・フィル。細部の明瞭度は実に鮮やかに浮彫りになり、分解能が高いことが音に現われている。陰や濁りは全くないので、若干ニュアンスの微妙さやムードに欠ける音だ。隅々にまで照明が当りすぎるという感じの音なのである。サン=サーンスの「オラトリオ」も同じ傾向で、こうしたヨーロッパ特有の雰囲気を持ったソノリティ(教会での録音)には見透しがよすぎて、やや違和感がある。ヘレン・メリルの声は充実していて生き生きとした生命感が感じられ、ロン・カーターの躍動感のあるベースの力と弾みも見事。ジャズの方が、明らかにこのアンプに同質の音だと感じた。

ソニー CDP-R3

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 音の粒子が細かく、滑らかに磨き込まれた低域から中域と、聴感上で高域がゆるやかに下降したかのように聴きとれる、柔らかく、穏やかな帯域バランスをもつが、基本クォリティが高く、際立ちはしないが、聴き込むとナチュラルに切れ込む音の分離は相当なものだ。ロッシーニは、中高域に輝きのある硬質さが、時折顔を出すが、空間の拡がり感もあり、やはり価格に見合うだけのクォリティの高さは感じられる。Pトリオは、全体に低軟・高硬の2ウェイスピーカー的なまとまりとなり、一種のアンバランスの魅力があるまとまりといえるだろう。ブルックナーは、演奏会場の暗騒音もよく聴きとれ、一応の水準を保つ音だ。平衡出力は、全帯域にゆとりがあり、しなやかさが加わって、弦楽器系の硬質な音が解消され、見かけ上でのDレンジも大きく聴かれるが、高域は抑え気味。ジャズは、ライヴハウス的イメージの音で、音源が少し遠くなるが、適度なノリで、かなり楽しめる。