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セクエラ Metronome7 MK II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 とても懐かしい感じのする音だ。からっと乾いた軽い音で、今日的な水準からするとややナローであり、高域も低域もそれほどのびていない。部屋がデッドになったような鳴り方がする。弦の響きはややマットな傾向で、艶やうるおい、色彩の精緻さに欠ける。キース・ジャレットのあの知的で、クールな世界に耽溺するような部分や、ウェットで感傷的な要素をすげなくやりすごし、情緒に溺れず距離をつけて表現するのは一つの個性かもしれない。少なくとも、ディティールの精緻さや透明感を第一に望む人向きではないようで、おおらかな素朴な響きが欲しい人向きだ。
 ユニット配置の特殊さからくる音の広がりを生かすため、セッティングには要注意。

アカペラ Fidelio

井上卓也

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 聴取位置に対して、かなり高い位置にユニットを取り付け、上下方向の角度が可変という基本構造と、ダブルボイスコイルウーファーとホーン型トゥイーターを組み合わせた非常にユニークな面の多いスピーカーである。
 全体に抑制の効いた安定度のある音と独特な明解さのある質感に優れた中域で聴かせる個性的な音だ。音の細部は、クッキリと硬い線で描かれ、細部にこだわらず真面目な、質感の優れた音が聴かれる。
 左側に寄った聴取位置では、独自の脚部の反射音が影響し、少し位置を変えてもバランスが変ってしまう。ほどよくライブネスのある広い空間で聴いたときに進化を発揮する音だと考えられる。

ミッション 781

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 コストの枠の中で、知的に音をまとめてみせる、英国製品ならではの見識を感じさせる。音楽の情緒的な振幅の大きさにも追従できる表現力があり、音像を輪郭だけなぞっておしまいにしてしまわない密度をもつ。
 特にピアノの実体感は立派だ。
 弦は新品ということもあって、うっすらと硬質なニュアンスが乗るが、エージングで解消できるレベルだ。シンバルワークのディティールを精緻に描きだしてくる方ではないが、エッジが丸くつぶれることはない。ウッドベースはやや暗く粘る印象があるものの、ポリプロピレンのウーファーとしてはよくコントロールされている方だと思う。音場はやわらかくおだやかに奥に広がるタイプだ。

ビクター SX-500II

早瀬文雄

ステレオサウンド 95号(1990年6月発行)
特集・「最新スピーカーシステム50機種 魅力の世界を聴く 小型グループのヒアリングテストリポート」より

 音場の透明感が、さすがにこのクラスになると一段向上する。国産機らしくまんべんなく物量と手を入れられた優等生的な音だ。ビクターの伝統か、国産の中では音色が明るく色彩感に富み、かといって、油っぽさが少ない品のよさもある。音像定位にも正確さが出てきて、センターで聴く限り、ジャック・デジョネットの精妙なシンバルワークにおいて、サイズも音色も異なるいくつかのシンバルを叩きわけている様子がよくわかる。各楽器の位置関係の描写力が、国産で9万円というここへきてやっと出てきたということか。マルサリスのスタジオ録音では、冒頭の声の掛け合いがリアルで、遮蔽板の存在がみえそうなほど、音場の再現性が高まっている。

逃げ込む場所

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より

「悪いけど、夜中にしてくれないか。そう、二時でどうだ?」
「なぜ?」
「昼夜完全に逆転しているんだよ」
 彼はまるで僕の来訪を拒絶するようにそう言った。
「そうじゃないんだ、俺だって会いたいさ。つもる話もあるしね。だけど、来週から地球の裏側に行って過酷な現場の仕事をしなきゃいけないのさ。その準備を今からしているんだ。時差ボケの調整をこっちにいるときにやっちまわないといけないんだ」
 彼は、とある大手の建築会社の土木設計課に所属している建築エンジニアだった。
 去年結婚してすぐに女の子が生まれた。
「ほら、家にいるとさ、悪気はないわけだけど、子供の泣き声がうるさい。判るだろう?」
 というわけで、僕は彼の仕事場から車で五分ほどの場所にあったワンルームマンションに、夜中の二時に出かけることになったのだ。
 そこは彼の隠れ家だった。
 ワンルームの狭い部屋だったが、深夜に及ぶ仕事のせいで、片道二時間もかかる郊外に長期ローンでマイホームを買いこんだ彼にとってはどうしても必要な場所だった。
AM1:45。
 都会のコンクリートジャングルを走りぬける。
 朝の人の洪水が嘘のように、しんと静まりかえったオフィス街はまるで廃墟のように暗く、凍りついたような沈黙が氷河のようにあたりを圧していた。
 まだ冬の尾を引く深夜の空気にひきかえ、彼の部屋は朝の地下鉄みたいに生温かくよどんでいた。なにしろドアを開け中に入ったとたん煙草のけむりが目にしみ、わけの判らない匂いがしてくらくらした。
 よく見ると、ドラフターの脇には食べかけのカップラーメンが箸をつっこんだまま忘れられたように放置してある。
「今、窓あけるよ」察した彼はすぐにそう言った。
「すごいな、まるで受験時代を思い出すよ」
「仕方ないんだ」
 肩をすくめそう言うと、彼はくしゃくしゃになったワイシャツのポケットからねじれた煙草を取り出し火をつけた。
「時々女房が掃除に来てくれるけどね」
 そう言って笑う。
 やがてコーヒーの香りが空気を入れ換えた部屋の中にゆっくりと広がっていく。
 彼は真っ白い磁器のコーヒーカップとソーサーを一組、テーブルの上に並べポットから熱いコーヒーを注いだ。
「情けないけど俺はミルクにしとく」
 そう言って、彼はコンパクトな冷蔵庫からミルクのパックを取り出すとストローをつかって子供みたいにそれを飲んだ。
 ドラフターの向こうに小さなスピーカーがおいてあった。
「ボーズじゃない?」
「ああ」
「嫌いだったんじゃないの、たしか?」
「これはちょっと違うんだよ、ま、いいから聴いてくれよ」
 それはヨーロピアンデザインの、真新しいイル・ソーレだった。
 軽いものからいこうかな、と言って、スパイロジャイラのライツ・オブ・サマーというアルバムをかけた。
 たしか、相当にワイドレンジを意識した音作りがされた、すっきりした響きのCDのはずだ。
「ボーズはナローで、脂ぎった音がするから嫌いだ」と言ってた彼。
 トップシンバルの軽い響きで始まるその曲。僕は音が出た瞬間びっくりした。
 たしかにさらっとした軽い響きでハイエンドがすっきり伸びてとても綺麗なのだ。
 それに、凄い低音。
 CDプレーヤーとFMチューナーを内蔵したアンプ部のデザインも奇妙にあか抜けしている。
「ボーズもずいぶん洗練されただろ?」と彼。
「たしかに」音も見た目も、とても洗練されていた。
 綺麗によく広がる透明感があった。
 ボーズじゃない。僕はそう思った。
 しかし、よく聴くと、音には国産にはない粘り気がきちんと残っていて、アメリカを感じさせるものもたしかにある。かつての黒っぽい雰囲気からホワイトカラーのヤッピーになった。スーツを着込んだボーズの音なんだ。これは。
「クラシックだって、ちゃんときけるんだ」
 そう言って彼が次にかけたのは、なんオワゾリール盤のバッハ管弦楽組曲だった。
 彼はシャドーベースの裏に手をいれ何ごとかをおこなった。
「?」と僕。
「少しだけハイを落としてみたんだ。トーンコントロールがついてるんだね」
 なるほど、ヒリヒリしがちな弦の響きがいっぱいくわされたみたいに、ちゃんと鳴っているではないか。
「ディテールがしっかりしているし、響きが脂っこくなくて、ちょうどいいんだ。俺の好きなECM系のジャズだってきりっと引き締めて、すっきり鳴らしてくれる」
 たしかに、キース・ジャレットのトリオによるスタンダードナンバーはその透明できりっとした音楽の構築がしっかりと出ていた。彼は僕の驚いた顔をみて、楽しそうに言った。大人が無邪気な子供にもどる瞬間だ。
 ここはビジネススーツに身を送るんだ戦士、俗称「おとうさん」が現実から逃避し、ひそかに自己回復および療養を果たすための場であった。

このボーズ・イルソーレシステムの核となるのは、スリムなデザインが新鮮な、ミュージックコントローラーLS4810であり、CDプレーヤーおよびFM/AMチューナーとプリアンプ機能を持つ。これは2系統の出力を持ち、2セットのスピーカー部を駆動できる。
パワーアンプを内蔵したパワード・アクースティマストスピーカーシステム、PAM5、サテライト・スピーカー(5.7cmフルレンチ2本使用)とアクースティマス・ベースボックス(16cmウーファー2本使用)からなる。
ベースボックスにはパワーアンプが内蔵され、独立したボリュウムとトーンコントロールを持っている。
別売のリモコンは一般的な赤外線方式とは異なり、FMバンド帯域の信号を使用しており、障害物に対して強いという特徴をもっている。

メリディアン 206

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 英国、ブースロイド・スチュワート社よりすでに発表されている200シリーズコンポーネントは、201プリアンプを核として204FMチューナータイマー、205モノーラルパワーアンプ、209リモートコントロールユニットから構成され、そのデザインや機能のユニークさで話題を集めていた。
 今回同シリーズ中の、プリアンプ機能をあわせ持つCDプレーヤー/207MKIIの派生モデルとして、このプリアンプ機能を排し、よりコンプリートな単体CDプレーヤーシステムとして、音質や機能の細部をリファインしたCDプレーヤー/206が登場した。
 従来通り、エレクトロニクス部とCDトランスポート部を独立した筐体に納めているが、使い勝手の向上を期して、ジョイントバーで結合された一体化構造をとる。
 従来通り、D/Aコンバーターは16ビット4倍オーバーサンプリングを採っているが、ディスクユニット部は最新のフィリップス製CDM4を採用している。
 メカニズムおよびサーボ部は、3ポイントサスペンション(ゴム系緩衝材のソルボーテン)によってフローティングされ、振動による悪影響を排除している。
 出力は3系統あり、固定アナログ、同軸デジタル、および光デジタル出力を備え、より組合せの自由度を増している。
 見慣れたとはいえ、やはりこのデザインの美しさは、単に個性的と言うレベルをつきぬけ、メカニカルの機能美と趣味線の高さを高いレベルで融合させている。
 過度にコスメティックな要素でゴテゴテと飾りたてるのではなく、洗練と簡素化を究めたより純粋な意味でのインダストリアルデザインのあるべき姿の良い見本となっていると思う。
 これは、北欧のB&Oと並び、究めて貴重な存在であり、わが国にも、そろそろこういったコンセプトの瀟洒なシステムが登場してもよいような気がする。
 音質についても同様なことがいえる。そこには、あざといメリハリ強調型の紋切り的音作りは皆無で、落ち着いた穏やかな表現がまず印象に残る。
 従来の弾力性のあるやや暖色系の暖かさは引き継いでいるが、よりニュートラルで中立的といえる大人っぽさを仕上げの要素に含んでいるように聴けた。
 中庸を得た破綻のなさが、どんな装置に組み入れても、全体のバランスを掻き乱すことなく、安心して使用できる汎用性を高めたといえよう。
 プリアンプ機能を省略したために回路がシンプルになり、電気的に洗練された結果だろうが、明らかに響きの透明感や音場の再現性の向上が聴き取れた。

ビクター SX-700

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

小型2ウェイ方式に、低音専用のサブウーファーシステムを独立したキャビティ採用で組み合せ、トールボーイとしてまとめた手堅い手法の製品である。柔らかく量感があり、ほどよく反応が速いサブウーファーを加えた低域の豊かさは、この製品の特徴であり、この部分をどうこなすかがアンプの実力の問われるところ。

セレッション SL6Si

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

英国系の小型2ウェイシステムを代表する、適度に反応が速くプレゼンスの良い音と、メカニカルでわかりやすいデザインが巧みにマッチした製品である。Siに発展して中域の薄さが解消され、低軟、高硬の性質は残っているが、小型システムの、音離れが良くプレゼンスの良い特徴も併せて、総合的な完成度はかなり高い。

ダイヤトーン DS-77Z

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「プリメインアンプ×スピーカーの相性テスト」より

口径30cmを超すウーファーベースの伝統的3ウェイブックシェルフ型の典型的存在であり、現在生き残っている数少ない機種だ。3ウェイらしく中域のエネルギーが充分にあり、情報量が多いため、使いこなしを誤れば圧倒感のあるアグレッシヴな音になりやすく、このあたりを使いこなせないようではオーディオは語れない。

マイ・フェアリーオーディオ

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「Music Consolette 偶然の結晶を求めて」より

 白金台にある古い住宅街のはずれに、白い高層マンションがある。その十二階に彼女の部屋はあった。
 さきほどまで耳を圧していた都会の暗騒音は夜の闇に吸い取られたみたいにすっかり消え、濃紺の夜空に影絵のようにひろがる雑木林のシルエットがときおりふきぬける風にかすかにざわめく音しか聞こえなかった。
 エレベーターを十二階で降り、絨毯をしきつめた廊下を歩く。彼女の部屋は廊下のつきあたりにあった。
 2LDKのすっきりした部屋の中は、あからさまに女の子の部屋であることをしめす象徴的なものは何もなく、うまく冷たさと暖かさを均衡させた空間だった。
 板張のフロアーには寒色系の色をつかった精緻な幾何学模様が織りこまれたファブリックのソファが、弧を描くようにしてゆったりと置いてあり、北と西側の壁全体が窓になっている。大都会の夜が目の前に広がり、闇に浮かびあがるようにして見える東京タワーには昼間の姿とは違った美しさがあることに気付く。
 反対側の真っ白な壁には、シックなリトグラフが掛かっていた。
 彼女は翻訳の仕事をしながら、雑誌にエッセイや詩を書いているフリーランス・ライターだ。外交官を父にもついわゆる帰国子女だった彼女は、語学力をいかし大学大学中から翻訳の仕事をしていた。
 僕が知ってるのはその頃からの彼女だ。1941年、早春のウーズ河に身を投じ自殺した英国の女流作家、ヴァージニア・ウルフの著作The Waves『波』という作品が一番すきだという彼女。
象徴散文詩といわれる繊細であやうい詩的な世界を好む彼女は、まだ二十三歳になったばかり。ほっそりとした、やや背の高い女の子だ。以前から今様の即物的な価値観からは距離を置いたところにひっそりと潜行した、いわばミニマルマイノリティーな存在だった。
 リトグラフがかかった壁に接するもう一方の壁には、B&Oのウォール・ハンキングタイプのスピーカーが、まるでなにかの抽象絵画か彫刻のようにとりつけられていた。
 サイドボードの上には同じB&OのレシーバーとCDプレーヤーがあった。
 漆黒とクロームの面で構成された直線的で清潔なフォルムには一見、無機的で人工的な感じがあるけれど、なぜか柔らかな部屋の空気にも自然に溶け込んでいた。
 僕は部屋に入った時からその存在に気付いていたが、いったいどんな経緯でB&Oのシステムがこの部屋に収まることになったのか、あえて訊ねなかった。以前は、もっと大袈裟で神経質な音を出す装置があったはずなのだ。
 彼女もそれについて、いちいち説明や弁明をすることはなかった。
 テーブルの上には細長く精巧な感じのするリモコンが置いてある。彼女は華奢な腕をのばし、繊細な指つかいでそっとそのボタンに触れた。
 ほどよい音量で音楽が鳴りはじめる。
「ティム・ストーリーのグラス・グリーンというアルバムなの。飲み物は何がいい?」
 僕は水割りをもらうことにした。
「彼が先週ヨーロッパで買ってきたロイヤル・サリュートがあるんだけど、それでいいかしら?」
 僕は黙って頷いた。
 金属成分が多いクリスタルグラスの冷たい透明感が琥珀色な液体をきりっと引き締めるようにして包み込む。
 恐る恐る一口、舐めるようにして舌の上でころがしてみた。トロっとした絶妙の味わい。そして濃縮された税金の味がうっすらと喉に残った。
 彼の存在は僕もよく知っている。
 来月、カメラマンである彼の三冊目の写真集が発刊される予定だが、僕の手元にはすでに彼自身から送られた、その写真集があった。
「『写真なんていうのはね、見る人の皮膚や神経に現実的な存在感の印象をダイレクトに刻み込んでくれる。だから、無意識にものを眺めているときの視覚より鋭利に対象にくいこむんだ』たしか、そんな風に言ってたっけ」
 彼女を手に持ったグラスの氷をときおり細い指でつつきながら、そのことについてじっと考えていた。
「多分、ファインダーを通して眼に映ったものだけは彼の網膜で記号化され、きちんと記録されるのね……二進法の記憶」彼女はたしかそんな風に言った。
 僕は水割りをすすりながら、しばらく黙ってその事の意味を考えてみた。
 その時、彼の写真集の表紙になっていた北欧のとある風景が目に浮かび、スピーカーがかなでるティム・ストーリーのピアノの響きがそこに霞のようにひろがった。
 透明感を大切にした音造りには、儚い記憶のぬくもりを呼びさますような優しさや柔らかさが溶け込んでいて、それを音楽そのものがもつ孤独感、硬質な哀しみ、といった対立的な要素と、うまくつりあいをとっている。そんな微妙な陰影をぼかさないで、きちんと再生していた。
 無感動に飽和した質と量の偏った均衡より、彼女のB&Oが聴かせた知と情がやわらかく均衡した響きには、不思議な説得力があった。これは彼女が選んだ装置だ。
 その時、僕はそう確信した。
     *
今回のシステムは、厚さがわずか8cmのスピーカー、ベオラブ5000を中心に、レシーバーとして、B&O最新のベオマスター4500、CDプレーヤーはベオグラムCD4500を使用。どちらも操作はアクリルパネルに軽く触れるだけでよいが、リモコンでの操作も可能だ。ベオマスター4500は、FM/AMあわせてして20局までプリセット可能で、アンプ部のパワーは片チャンネル55W。このスピーカー出力を直接パワーアンプ内蔵(120W×2)のアクティブ型スピーカーであるベオラブ5000に接続する。一見パワーアンプがだぶるようだが、長い接続ケーブルの引き回しでも有利な点があり問題はない。なお、アナログプレーヤーのベオグラム4500とカセットデッキのベオコード4500も別にある。

ソニー CDP-X777ES

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「いまこれだけは聴きたい ’90エキサイティングコンポーネント 最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 聴感上での帯域バランスを重視し、あまり広帯域のfレンジとせず巧みに総合的な音をまとめた印象が強い手堅いモデルだ。ロッシーニは、音の細部にこだわらず、素直なバランスの音を聴かせる。表情は真面目型で少し抑える傾向があるが、ややウォームアップ不足気味の音と思われる。Pトリオは、柔らかく線の細いピアノと硬質なヴァイオリン、線が太く硬さのあるチェロのバランスとなるが、金属的に響かないのが好ましい点だ。しかし、響きが薄く、厚みがいま一歩不足気味である。ブルックナーは、線が太く硬い鉛筆で描いたような一種の粗さがあり、演奏会場のかなり後ろの席で聴いたような音の遠さがある。平衡出力にすると、バランスは広帯域型に変り、全体に薄いが独特のクリアーさ、シャープさがある音になり、高域はむしろ透明感がかげりがちだ。ジャズは薄味の軽快指向型のまとまりで、表情が表面的になりやすく、低域の質感をどうまとめるかがポイントだ。

クレル MD-1 + SBP-64X

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 アンプメーカーとしてその名を馳せた米国クレル社から、デジタル機器専門メーカーとして独立して創立されたクレル・デジタル社より、既発表のCDターンテーブル/クレル・デジタルMD1と、シグナルプロセッサー/SBP64Xがついに正式発売となった。
 昨今アメリカ国内では、ハイエンドメーカーのデジタル機器への参入が活発化しているが、これは、先に発表されて話題を独占している感のあるワディアに続く存在として期待されていた。
 ワディアが単体のD/Aコンバーターのみであったのに対して、こちらはシステムとして完成した、いわゆるセパレート型CDプレーヤーシステムの形態をとっている点にマニアの関心が集中しているのだろう。
 元来、アナログディスクの信者として自他ともに認めるクレルの創始者、ダニエル・ダゴスティーノ氏の作品であるだけに、まずCDターンテーブル/MD1は、ディスク再生時に、アナログ再生に等しい儀式を要求する。
 分厚いアクリル製ダストカバーをゆっくりと持ち上げ、おもむろにCDをセットしたあと、クランパーの代りともなるディスクスタビライザーを乗せる。
 ダストカバーを閉める時、途中で手を離しても、重いカバーはゆっくりと自動的に下降するようになっており、一切のショックはない。
 ディスクトランスポート部はフィリップスのCDM3を使用しており、これをスチューダーのA730と同じものだが、その固定方法などを含め、きわめて対照的なアプローチがみられ、ここではアナログプレイヤー的剛性を追求しているようである。
 本体四隅の丸いカバーはサスペンションタワーと呼ばれ、中には多重構造のインシュレーターが隠されている。
 内部の詳細は明らかにされていないが、周辺機器に対する高周波ラジエーションの問題なども充分考慮されているとのことだ。
 一方SBP64X/ソフトウェアベース・デジタルプロセッサーは、デジタルフィルターに56ビットアキュムレーターを備えるモトローラ製DSP56001をチャンネルあたり2個の計4個使用しており、これまでにない演算精度を獲得しているという。
 SBP64Xではワディア/2000同様、DSPを用い毎秒6000万回余りの速さで独自のソフトウェアアルゴリズムを実行するのに必要な演算を行う。DSP56001の24ビット幅データパスと56ビットアキュムレーターが、デジタルデータの入力に厳密な18ビット64倍オーバーサンプリングで信号を補完し、バーブラウン製PCM64、18ビットD/AコンバーターでD/A変換を行う。さらに、完全ディスクリート構成の電流・電圧変換器からデグリッチ回路を経て、ディスクリートバランス型出力段に至る構成である。
 DSPにより、一般のデジタルフィルターとして用いられるFIR(Finite Impulse Response=有限インパルス応答)フィルターでは克服できなかった過渡特性的な欠点をクリアしている。
 電源部は3個のトロイダルトランスを独立させ、デジタル回路、DAC回路、アナログ回路に独立して電源供給を行なう。
 電源部から本体へのパワーケーブルも2本あり、1本がアナログ部とDAC部へ、もう1本がデジタル回路へと分かれており、デジタルノイズの混入を防いでいる。
 聴き慣れたディスクを国産最新のセパレートCDプレーヤーと比較しつつ聴いた。その上で、これは物凄い情報処理能力をもった画期的な製品であることが、じわりと実感できる。音の密度、音場の空間再現性において、まるで同じソースを聴いていると思えないほどの圧倒的なクォリティ差を一聴して感じさせ、まさによく出来たアナログディスクを極上の状態で聴くに近似した心地良さを提供してくれるものだった。
 複雑にからみあう楽音を精緻に分解して聴かせながら、響きの有機的なつながりが緻密で、弦楽器群のオーバートーンの重なりやローレベルでの透明感、情報量がすばらしく、余韻の消え方は圧巻だった。
 パルシヴなソースでも、叩きつけるようなエネルギー感がありながら、響きに高い品位が維持されるあたり、ただものではないという印象を強くした。

アヴァロン Ascent MKII

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 米国、カリフォルニア州ボゥルダーに本拠を置くアバロン社製スピーカーシステム/アセントMKIIが輸入されることになった。
 写真のように、やや個性的ともいえるプロポーションを持つが、この形こそコンピューターシミュレーションと聴感から追い込んで作られた必然の形態だったという。
 バッフル面からの一次反射と、回折によるユニット周辺の残留音響エネルギーが付帯音として作用し、システムトータルとしての響きの透明度を濁す原因ともなるトランジェント低下をきたすことに留意して、トランジェントの向上という点に偏執狂的なこだわりをもってアプローチした、という印象が強い。
 ユニットは、22cm口径のウーファーをベースに、5cm口径のチタンドームスコーカーと2・5cm口径の同じくチタンドームトゥイーターという3ウェイ構成をとっている。いずれも、ドイツ製のユニットということだ。バッフル面は、なんと板厚15cmという恐ろしくぶ厚いもので、基本的にエンクロージュアの共振によるエネルギーロスを最少に止めるという、ハードな作りがなされている。
 そのエンクロージュアの作りは、熟練した職人芸を要求されるような高度で複雑な携帯をとり、実際、細部の作りは見事な仕上りを見せる。
 エンクロージュア本体の後ろに設置される。サブエンクロージュアともいえそうな黒いボックス(片チャンネルにつき一本)はネットワークを収める専用の独立した箱で、下部に取りつけられたネットワークはエポキシ系樹脂で封印固定されている。これは、ユニットから浴びることになる磁気的悪影響や振動、温圧による揺さぶりからネットワーク素子を守るためだ。
 一方、使用素子は厳密に選別され、1%以内という誤差許容度を確保しているという。またネットワーク本体に、プリント基板を使用していないとのことだ。
 パワーアンプとの接続はバイワイヤリング接続のみならず、トライワイヤリング接続も可能で、バイアンプ駆動にも対応している。
 先端指向のアプローチがなされた結果は、音そのものに見事に反映しており、トランジェント特性の良さゆえの、本物の柔らかさがあり、透明で濁りのない響きは、特にアコースティックな楽器の持つ響きのリアルさや、澄み切った再現性において第一級の冴えをみせる。
 ギターを弾く音、管楽器のエネルギー、怒涛のような音の盛り上がり、そういったものが、見た目の瀟洒な作りからは想像できないレベルで再現された。これは家庭用の羊の顔をかぶったモンスターといえそうだ。

マイクロメガ CDf1 Premium

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 フランス・マイクロメガ社製CDプレーヤー/CDF1プレミアムが本邦でも発売されることになった。
 同社はヨーロッパ圏で唯一のCDプレーヤー専業メーカーであり、CDF1プレミアムはその代表的な位置を占める製品である。
 写真からもわかるようにトップローディングタイプであるため、分厚く丁寧な作りのアクリル製ダストカバー(という表現がしたくなるような)をまず開けるところから〝儀式〟は始まる。
 ディスクを乗せ、さらに専用スタビライザーを装着し、ゆっくりとカバーを閉めるという一連の動作が必要なのだ。
 コンパクトですっきりとしたデザインから、軽くて可愛らしい音を想像していたのだが、実際に音が鳴り始めるや、そうしたあらぬ先入観は直ちに吹き飛んだ。
 さすがフランス製というだけあって、響きには、絵画的な色彩感や艶がのり、つぼを押えた音の隈取りの明快さにまず驚かされた。弾力のある暖かい響きには、味わいの豊かな個性的な面もあり、聴きごたえ十分だ。さらに適度な重量感もあり、ほどよく広がる音場にはどこか大人っぽい雰囲気があった。
 決して個性だけで聴かせる製品ではなく、現代的な情報処理能力も十分にもっていて、すっきりしたデザインに精度感が音の面からも感じることができた。したがって、現代的な録音の透明感や繊細感も十分に表現可能だ。
 注目のドライブメカは、すでに高い信頼性を獲得しているフィリップス製アルミダイキャストベースのCDM1IIにCDM4ピックアップを搭載している。
 フローティングには、同社のオリジナル機構が採用され、徹底した防振対策がとられているという。
 ディスクスタビライザーは、内部損失の大きいケブラー繊維とカーボンファイバー、そして直径がおよそ30mm、重さ約120gの真鍮製ウェイトから構成されている。
 D/Aコンバーターには、フィリップス製クラウンマーク付ヴァージョンS1仕様を採用し、アナログ回路はディスクリート構成クラスAオペレーションアンプとし、左右独立の大型トロイダルトランスを定電圧回路に採用している。
 またアナログアンプ部は、電源プラグをコンセントに差し込むと常に通電され、フロントパネルの電源スイッチのオン/オフによらず、ヒートアップが準備された状態で聴くことができるようになっており、短時間のウォームアップで所期の性能が得られるよさばかりでなく、動作の安定性も高めているという。

チェロ Amati MKII

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 マーク・レヴィンソン氏の主宰する米国チェロ社より、スピーカーシステム/アマティが改良され、タイプIIとなり再登場した。
 写真のごとく、スピーカー本体は、かつてのAR社LSTをベースにしているとはいえ、ユニットや内部配線、ネットワークにはまったく独自の設計が施され、また、エンクロージュア自体の材質も異なるようだ。
 氏はホーンタイプスピーカーが必然的にもつホーンの固有音をナーヴァスまでに嫌ってる様子で、あくまでも柔らかく、かつしなやかな響きを追求しているようだ。それが、このアマティIIからも実によくうかがえる。
 30cmのウーファーをベースに、ソフトドーム型スコーカー4個、特殊なペーパーを成形した2cmという比較的小口径のドーム型トゥイーター4個を搭載している。
 このシステムは専用スタンドの使用で片チャンネルあたり2本のスピーカーをスタックして使用することがオリジナルだが、ユーザの希望により片チャンネル1本ずつの使用も可能だということである。
 メーカー純正の黒ミカゲ石をベースにした超重量級のスタンドは、標準的なリスニングルームではやや背が高く、また強固な床を要求するため、輸入元では、特注の木製スタンドを使用状況に合せ供給する用意があるとのことだ。
 なお、試聴はオリジナルの状態のみで行っている。
 アマティIIはオーソドックスな構成をとり、伝統的なスピーカー造りのセオリーを踏襲してゆったりとした落ち着いた響きを基調にしている。
 ダイナミックな音楽にも想像以上に追従する現代的な側面も備えているが、やはり最先端指向の製品の持つ情報処理能力、克明なディテールの再現性という点では一歩を譲るようだ。というより、初めから狙っている線が明らかに違うものだということが、先端指向のスピーカーとの比較でより明らかになる。
 おおらかで、刺激的な音が出にくく、弦楽器のトロッとした自然なホールトーンは、長時間音楽を穏やかな気持ちで聴く気分にさせてくれる。ゆったりとしたソファーに身を沈め、グラス片手に音楽に接する、そんな聴き方がよりふさわしい製品という印象である。
 ジャズ系のソースでも、サックスの咆哮や打楽器のパルシヴな音の立上りはマイルドで、全体的な響きの溶け合う雰囲気的な表現が主体になろう。ただ、オーディオパレットの併用では、かなりダイレクトでスッキリした表現に追い込むことも可能であった。
 条件が許されるなら、オールチェロシステムのメインスピーカーとして楽しむべき製品といえよう。

メリオワ ControlCenter, Poweramp.

早瀬文雄

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 カナダのモントリオールに本拠をかまえるミュージアテックス・オーディオ社より、〝マイトナー〟シリーズの姉妹機に相当する〝メリオア〟シリーズが登場した。
 コンパクトで美しい仕上げのウッドケースに納められ、シンプルなブラックフェイスのデザイン、その垢抜けして飄々としたところが好みの分かれるところでもあったマイトナーだが、部屋の空気に自然に溶け込む存在感の軽妙さは、またカナダ版クォードともいえそうな雰囲気があった。
 今回発表されたメリオワ/コントロールセンターは、リモートコントロールユニットですべての機能が操作でき、しかも8系統ある入力をユーザのニーズに応じてメモリー可能な機能を有している点が目新しい。しかも、各入力端子ごとに、ボリュウム、バランスのレベルを個別に設定しメモリーできるという画期的なものだ。
 フォノイコライザーはなく、アナログディスクの再生にさいしては、なんらかのイコライザーアンプが必要であるが、近日中には同シリーズのフォノアンプが発売される模様だ。
 全体の仕上げはマイトナー・シリーズに一歩譲るとはいえ、このシンプルなデザインの良さには変りはない。
 試聴は、同時発売のパワーアンプとの組合せで行なったが、一聴して、相当にすっきりとした響きであり、生真面目さを感じさせるやや寒色的な響きで、音楽に真面目に向かい合うといった気分にさせてくれる響きだ。
 こうしたコンセプトの製品にはリラックスした、テンションのやや緩めの響きが多い中にあって、スケールこそやや小ぶりだがこれは辛口で本格派の音といえる。
 そういった点でも、これはかなりクォードを意識した作りではないかという気がしてくる。
 小編成の室内楽曲などでそのよさが発揮され、指揮者の意図や緑音の意図などをぼかさないのである。たとえば、新しい解釈による最近の古楽器オーケストラがもつ響きの端整さや潔癖さ、清潔感といったものに、しっかりとした音の骨格やオーケストラの構成要素をはっきりと描き出すのだ。プリアンプ、パワーアンプとも回路の詳細は不明だが、オーソドックスに真面目に作られた機械という印象が強い。
 ただ、おしむらくは、リモコンユニットのデザインと作りだ。システム全体の作りにそぐわない玩具っぽさがあって残念だ。
 リモコンで操作することが前提である以上、クォードやB&Oのように、その機能、あるいは手に持った時の質感、重さ、操作性に、えもいわれぬ馴染みのよさをもっている製品が既にあり、ぜひともみならってもらいたいものだと感じた。

ソニー CDP-R1a + DAS-R1a

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 温和で、しなやかな充分に磨き込まれた音を持った、雰囲気のよい音を聴かせるプレーヤーである。
 ロッシーニは、しなやかではあるが、スッキリとした音を指向した音を聴かせる。各楽器はひととおり分離するが、各パートの声は少し伸び切らない印象となる。音場感情報量、柔らかく定位する小さな音像など、平均を超すレベルだ。ピアノトリオは、ホールの響きをたっぷりと聴かせるサロン風なまとまりである。中高域には硬質な面があり、音の輪郭を聴かせる効果はあるが、ヴァイオリン、チェロの高域成分は少し硬い。ブルックナーは、一応のレベルの音だが全体にちぐはぐな面があり、再生系との相性の悪さが出た音だ。平衡出力では、コントラストが下がり、フレキシビリティは出るが、三万二してまとまらない。ジャズは集中力が不足し、力がいま一歩の印象でまとまらない。もう少し低域のリズム感が支えれば、一応の水準になる印象が強い。

マイクロ CD-M2DC + DC-M2

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 穏やかで、一種独特の重さ、暗さがある渋い音を持つ個性的な音である。CDとしては再生する情報量は多く、演奏会場の空気の動きや椅子などのキシミ、楽器のノイズなどを聴かせる。試聴位置は中央の標準位置。ロッシーニは、基本的にはウォームトーン系のまとまりだが、角がとれたクッキリとした音はアナログディスク的なイメージがある。各パートの声は少し伸びが抑えられ、音像はフワッと大きく定位する。ピアノトリオは、低域が重く粘りがあり反応は遅いが、中低域以上はほどよく立上りの良い素直な音であるため、低域のコントロールをすれば個性的な良い音になるだろう。ブルックナーは、音楽的な意味でのブルックナーらしさがあるが、オーディオ的には見通しが悪く、晴々としない音である。平衡接続ではプレゼンスは良くなるが、ダイナミックレンジは抑えられ、表情も鈍くなる。ジャズは、狭帯域型バランスと閉鎖空間的プレゼンスが特徴だが、安定度、力感が欲しい。

ソニー CDP-R3

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 音の粒子が細かく、滑らかに磨き込まれた低域から中域と、聴感上で高域がゆるやかに下降したかのように聴きとれる、柔らかく穏やかな帯域バランスをもつが、基本クォリティが高く、際立ちはしないが、聴き込むとナチュラルに切れ込む音の分離は相当なものだ。ロッシーニは、中高域に輝きのある硬質さが時折顔を出すが、空間の拡がり感もあり、やはり価格に見合うだけのクォリティの高さが感じられる。ピアノトリオは、全体に低軟・高硬の2ウェイスピーカー的なまとまりとなり、一種のアンバランスの魅力があるまとまりといえるだろう。ブルックナーは、演奏会場の暗騒音もよく聴きとれ、一応の水準を保つ音だ。平衡出力は、全体域にゆとりがあり、しなやかさが加わって弦楽器系の硬質な音が解消され、見かけ上でのダイナミックレンジも大きく聴かれるが、高域は抑え気味。ジャズは、ライヴハウス的イメージの音で、音源が少し遠くなるが、適度なノリで、かなり楽しめる。

メリディアン 206

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 全体に各種プログラムソースを、ややクラシカルな個性的な自分の音として消化して聴かせる独特のキャラクターに注目したい製品。ロッシーニは、全体にナローレンジで硬質な音にまとまり、情報量は少ないが、古いアナログディスク的な一面のある音とでも表現したい印象がある。ピアノトリオは、206の硬質な個性がよく出た明快なピアノとチェロがオーディオ的にわかりやすいコントラストを聴かせる。音場感は少し狭いタイプだ。ブルックナーは、音の輪郭をクッキリと聴かせる、かなり個性的なまとまりとなるが、一種の思い切りの良さが感じられるポイントを押えた音楽の聴かせ方は、再生音楽としてオーディオ的にこれならではの魅力を感じる向きもありそうだ。ジャズは、明快なクッキリとした音を描くまとまりである。聴き込めばブラスは薄く、ベースが小さく硬調となるが、余分な音を整理し、分離よく聴かせどころを巧みに残したような独特の個性は興味深い。

アキュフェーズ DP-11

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 柔らかく、軽く、爽やか指向の音をもつデルであるが、音情感はフワッと柔らかい雰囲気にまとまる傾向があり、見通しの良さは平均的程度である。ロッシーニは爽やかで軽い音にまとまるが、中高域に独特の輝く個性があり、声の伸びやかさを抑え気味として聴かせ、空間の拡がりも不足気味。ピアノトリオは音色が暗く、暖色系となり、中域の表情が硬く、息つぎの音が少し誇張気味に感じられ、プレゼンスもあまり出ない。
 ブルックナーは予想よりも大掴みで、大味なまとまりとなり、低域に誇張感がある。全体に力がなく、低域の輪郭の明瞭な特徴が活かせない。平衡出力は、空間の再現能力が高く、ホールの広さが感じられるようになる。低域の軟調描写傾向は残り、大太鼓はボケ気味で、弦楽器が全体に硬くなるが、全体のバランスは保たれている。プログラムソース全般に同一傾向があり、再生システムとの、いわゆる相性のようでもある。

フィリップス LHH500

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 柔らかく角のとれた、しやかで雰囲気のよい音をもつモデルである。プログラムソースとの対応の幅は広く、あまりハイファイ調とせず聴きやすいが、音楽的に内容のある音をもつ点は、大変に好ましい。ロッシーニは、ほどよくプレゼンスのあるナチュラルな音だ。ほどよく明るい音色と、中域から中高域にかけての素直な音は魅力的でさえある。低域の質感が甘い面もあるが、まとまりの良さはフィリップスらしい特徴である。ピアノトリオは、サロン風なまとまりとなり、予想より音の厚み、音場感情報が不足気味で、中高域に強調感があり、息つぎの音の自然さがなく、気になる。ブルックナーは、全体にコントラスト不足で音が遠いが、平衡出力にすると音情感はたっぷりとあり、音の芯も明快で一段と高級機の音になる。ダイナミックレンジ的伸びと鮮度感が不足気味で、fレンジは少し狭くなり、中域の量感がむしろ減る傾向となる。ジャズは実在感がいま一歩で分離もいま一歩。

ビクター XL-Z1000 + XP-DA1000

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 音場感情報が豊かで、音楽が演奏されている空間の拡がりを、ゆったりとした余裕のあるプレゼンスで聴かせる特徴がある。ロッシーニでは、予想より硬質な面と、音の分離にいまひとつの感があるが、木管楽器特有の高質さとふくらみや、コントラバスのピチカートなどはかなり実体感があり、見通しもよい。ピアノトリオは、中高域に少し硬質さがある薄味傾向のまとまり。楽器のメカニズムの出す固有のノイズをかなり聴かせるが、ピアノのリアリティは抑えられる。ヴァイオリン、チェロは少し硬質で、やや響き不足の音だ。ブルックナーは、奥行きの深い空間を感じさせる音場感の豊かさがあり、響きはたっぷりとあるが全体に力不足で、トゥッティで音の混濁感がある。平衡出力では、スッキリと見通しの良さが聴かれ、反応の軽さが出るが、再生系の持つ一種の重さ、暗さがある低域が全体のバランスを崩しているようで、これは聴取位置が左側に偏っていることも関係がある。

デンオン DCD-3500RG

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より
 適度に緻密で安定感のある中域を中心に、ナチュラルな帯域バランスと標準的な音情感の再現能力、明快な音像定位が聴かれるリファレンスモデル的な内容の音は、昨年発表された時点とは格段の差のグレードアップである。聴取位置は中央の標準位置である。ロッシーニは柔らかい雰囲気型の音で、音像は奥に定位する。安定度は充分にあるが密度感が不足気味で、ウォームアップ不足だ。ピアノトリオは、安定感のある帯域バランスと芯のしっかりした音で、一種の重厚さめいた印象が特徴。ブルックナーは厚みのある安定した、いわば立派な音だが、トゥッティでは混濁気味。平衡出力では、ホールトーンはたっぷりとあるが表情が甘く、コントラスト不足の音で、かなり音量を変え、セッティングを少し変えた程度では変化がなく、再生系との相性の問題がありそうだ。ジャズは、低域が腰高で安定せず、全体にモコモコとした一種の濁りのある音とプレゼンスでまとまらない音だ。

EMT 981

井上卓也

ステレオサウンド 94号(1990年3月発行)
特集・「最新CDプレーヤー14機種の徹底試聴」より

 整然とした硬質な音を、適度な力感を持って聴かせる個性型のプレーヤーだ。ロッシーニでは、弦、木管などのハーモニクスが個性的な輝きを持ち、コリッとした硬めのテノールは本機の特徴を物語る。音場感は特に広くはなく、ある限定された空間にピシッと拡がり、輪郭がクッキリとした音像定位はクリアーで見事である。ピアノトリオは間接音成分が抑えられ、スタジオ録音的まとまりとなるが、硬質で実体感のある音は楽器が身近に見える一種の生々しさがあり楽しい。ブルックナーは、トゥッティで少しメタリックな強調感があるが、音源が予想より遠くスケール不足の音だ。No.26Lの不平衡入力から平衡入力に替えると、音場感、各パートの楽器の音がかなり自然になり、このクラス水準の音になるが、編成の大きなオーケストラのエネルギー感は不足気味だ。それにしても、ブルックナーが見通しよく整然と聴こえたら、それが優れたオーディオ機器なのだろうか。