ソニーのコントロールアンプTA-E88、パワーアンプTA-N88、TA-N9、エレクトリッククロスオーバーTA-D88の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)
Category Archives: アンプ関係 - Page 37
パイオニア A-8800X, F-8800X
GAS Thaedra II, Ampzilla IIa, Thalia, Grandson, ピラミッド T1H
マッキントッシュ C32
菅野沖彦
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
マッキントッシュ社は、一九四六年に創立以来、アンプリファイアーの王者としてこの世界に君臨してきたメーカーである。それも、当時としては大変にユニークな低歪率のトランスの特許を獲得し、それを前面に打ち出した製品を開発してきただけではなく、アンプリファイアーというものを、オーディオの好きな人たちに、その物としての芸術的な香りさえも感じさせるほどの素晴らしいデザインと高い仕上げで見せてくれたメーカーとして、マランツと並んでオーディオ史上に燦然たる不滅の輝きをもつ名門なのである。
その名門マッキントッシュの最新の最高級コントロールアンプが、このC32である。マッキントッシュといえば歴史の長いメーカーだが、いまだにパワーアンプには頑強に出力トランスを搭載しているということから、ついつい古いメーカーのイメージ、あるいは古い技術というように最近では思われている。しかし、これは大変な誤解である。マッキントッシュの技術開発は、常に前向きの姿勢で行なわれ、常にその時点での最新のテクノロジーを追求しているのである。ただ、いまアメリカにおいては新しいメーカーが雨後のタケノコのように生まれつつあり、そして新しい製品を発表しているわけであるが、そうしたメーカー間の兢争ということでみれば、確かにマッキントッシュは古いといって押しのけるには都合がいい。しかし、だからといってそれを鵜呑みにすることは、私は非常に浅はかなマッキントッシュに対する理解だと思うのである。
私の理解する限り、マッキントッシュのテクノロジーは、最新メーカーの若いエンジニアのテクノロジーに比べて、いささかも古いとは思わない。むしろ、マッキントッシュは、商品として世に送り出すときに、技術の新しさだけを売物にして、あるいは製品に神話を結びつけて売る、などということをしないメーカーなのである。お客様に対して、音楽を聴く上において豊かな満足感の得られる、そして完成度の高い美しい製品を提供するという姿勢をもっているのだと思うのである。そういう意味で、私はどうも最近のマッキントッシュに対する理解は、少し付和雷同型の人たちによって過小評価されつつあるような気がするのである。
このC32にしても、使用されているパーツ、素子、ディバイスなどは、選り抜かれた新しいものが使われているのである。回路にしても従来からの伝統は踏襲しているが、歪率ひとつとっても確実に従来のモデルから一ケタ減らしているのだ。したがって、決してテクノロジーのニューウェーブに立ちおくれているものではないと思うのである。
そして、このC32のもっている魅力は、マッキントッシュ伝統の美しい、しかもユニークなグラスイルミネーションのりパネルデザイン、音の重厚な風格 そしてさらに洗練された透明感が加わった音にあるのである。
最近のマッキントッシュは、このコントロールアンプC32のあとに、従来のC26の後継機種ともいえるコントロールアンプC27を発表したが、最新のテクノロジーを駆使したアンプシリーズをまとめようとしているようである。このC32は、そのニューシリーズのコントロールアンプにふさわしく、従来のマッキントッシュのアンプにあった重厚な音に、非常に透明度の高い、スムーズな美しい輝きが加わった製品である。そういう意味で、音の点からいっても、独特なイルミネーションパネルの重厚なデザインや仕上げからみても、私は現在のコントロールアンプの最高峰として、このC32は、当然〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるものであろうと思うのである。
実際に音を聴いてみても、自分の家に持ち込んでもうずいぶん長い間使っているが、実際に使ってみても、製品を手にしてみても、現在の数多くのコントロールアンプリファイアーの中で、このC32はやはり最高のコントロールアンプというに値する製品ではないかと私は思うのである。
トリオ KA-9900
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ハイスピード化をポリシーとするトリオ最高級のプリメインアンプである。ライズタイム0・8μS、スルーレート±230V/μSの驚異的性能とストレートDCスイッチ、多段切替のラウドネス、MCヘッドアンプなどフル機能を備える。中域がソリッドで充実しパワフルでスケールの大きなダイナミックな音である。
トリオ KA-8300
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ハイスピード、ストレートDCなどのトリオ最新の技術を活かし、MCヘッドアンプを装備したハイスピードシリーズアンプの新製品である。初段超低雑音FET使用のDC構成イコライザ㈵、利得0dBの位相反転をしないトーンコントロール、それに高利得型DCパワーアンプの3ブロック構成を採用し、AUX、TAPE入力からスピーカー出力端子までを完全にDC化できるストレートDCスイッチを傭えるのが特長である。この目的のために0dB利得のトーンコントロールが意味をもつことになる。なお電源はダイナミッククロストーク追放の左右独立型。
デンオン PMA-850/II
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
全段に独自の対称型プッシュプル回路を採用した特長のあるPMA850が、MCヘッドアンプとEBTパラレル接続のDCパワーアンプ部に22W+22WのA級動作と100W+100WのB級動作の切替機能を加えてMKIIに発展した。
機能面では、PMA700以来のイコライザー出力を直接パワーアンプに送り込むダイレクトカップルスイッチの他に、機械的中点で完全にディフィートとなるトーンコントロール、主回路に任意に挿入可能なフィルター回路、REC・OUT切替などを備える。
PMA850IIは、音色が明るく響きの美しい柔かさと、充分なスケール感が両立した安定した音である。音場感的な拡がり定位もナチュラルで、かなり遠近感をスッキリと見せるタイプだ。
デンオン PMA-630
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
イコライザー段と高利得パワーアンプの2段構成とし、質的、量的な両立を単純化により達成した高出力型の新製品だ。各段は全段対称型プッシュプル構成でPMA850II系の安定したスケール感豊かな、このクラスのアンプとしてはクォリティの高さが目立つ立派な音をもつ。
ヤマハ CA-S1, CA-R11
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
CA−S1は、価格的には、かつてのCA1000の位置を受け継いだヤマハの新しいプリメインアンプである。4石構成のMCヘッドアンプを除く、イコライザー、トーン、パワーの各アンプはFET差動入力のDC構成で全て0・005%以下の低歪率を誇り、実装時に各コントロールを操作しても特性の変わらない動的にも静的にも追求された回路構成をもつ。
機能面では、セパレート型アンプのC4で開発されたターンオーバー連続可変型トーンコントロール、同じく、B4のR0コントロールを初めてプリメインアンプに導入したのが目立った特長である。
シリーズ製品として連続可変ターンオーバーを省き、出力を70W+70WとしたCA−R11が同時に発売された。
CA−S1は、基本的にはやや硬質な音をもつが、音の粒子が充分に磨き込まれ、エネルギー感があるために、プログラムソースに幅広く対応し、余裕のある落ち着いた穏やかな音を聴かせる。
ソニー TA-F80
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
信号系をL字型の流れとするために、入力端子をフロントパネル右側に、スピーカー端子をフロントパネル側から見て左側のリアパネルに配置したユニークなレイアウトを採用したソニーのプリメインアンプのトップモデルである。
構成は、LECを並列接続した超LECトランジスター使用の差動増幅とICを組み合わせ40?と3?切替スイッチ付のMCヘッドアンプ、サブソニックフィルター付イコライザーアンプ、バイパス可能なCR型トーンコントロール、パワーアンプの放熱用に新開発ヒートパイプを使いパワートランジスターのレイアウトを信号の流れと一直線上に置くことを可能としたDC構成の120W+120Wの出力をもつパワーアンプである。電源部は、ソニーのパルスロック方式だ。
構造面の特長は、コントロールアンプとパワーアンプを完全に分離したセパレート設計で、パワーアンプの大電流によるコントロールアンプ部への干渉は極めて少ない。機能面では、カートリッジの負荷をCはスイッチ切替とし、Rは連続可変とした点や、左右独立型で0・01W〜130Wを20ステップで表示するLED使用のパワーインジケーター、独立2系統のTAPE・COPYスイッチなどがある。
マランツ Pm-8
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
最高級プリメインアンプは、セパレート型のコントロールアンプとパワーアンプを一体化して開発するというマランツの伝統的な手法を現時点で実施した新しいプリメインアンプである。基本構成は、同時発売のコントロールアンプSc7をパネル側に、パワーアンプSm7をその後に配置したといえるレイアウトを採用しているため、奥行きが437mmと長いという外形寸法にもそれがあらわれている。パネル面のレイアウト、機能は、コントロールアンプSc7と同等で、特長的なサブパネルをもつ。パワーは150W+150Wの高出力をもち、電源部は2次巻線で左右チャンネルを分離する左右独立型で15、000μF×4の電解コンデンサー使用だ。
Pm8の音は、聴感上でのfレンジでは、Sc7とSm7の組合せよりワイドレンジ感は減るが、反面において、中域のエネルギー感が充実した、よりハイデンシティ型のプリメインアンプならではの充分にコントロールされたものだ。高出力タイプの魅力で小音量時にも余裕たっぶりの音が聴けるのが特長。
ラックス M-6000
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
ハイパワーアンプのジャンルでは、現在においても開発のコンセプトが、いわゆる業務用に重点が置かれるのは、実際の使われ方から考えても当然のことに思われる。とくに、300Wクラスともなれば、業務用途に開発されたモデルが圧倒的に多く、そのほとんどが、いわゆる19サイズのラックマウント仕様のフロントパネルとコンストラクションを備えている。
ラックスのM6000は、一九七五年に商品化され、すでに3年経過しているが、現時点においてもその開発意図はいささかも古くなく、むしろ、コンセプトを限って企画された発想は最新製品にはない趣味性豊かな魅力として感じられるようだ。そのコンセプトを限って企画されたと感じられる点は、何をおいてもそのデザインに色濃く現われている。フロントパネル面は、別系統のピークレベルメーターを内蔵する2個の大型パワーメーター、dB目盛の左右独立型入力レベル調整、矩形をした大型パワースイッチのいずれを見ても、パネルフェイスをフラットに見せようとする思想で統一され、フロントパネルに続くウッドケースも、額縁状に一端くびれて後部の上部が開閉可能なウッドボンネットにつながる独特のデザインは、ラックスの創成期以前の早川商店が、ガラス輸入商であり、次に額縁商に転じた歴史を象徴するものという、もっともラックスらしく、ラックスでなくては成しとげられない雰囲気をかもしだすものである。これは、19サイズのラックマウントパネルをもち、純粋に機能面から要求されるデザインをもつ多数のハイパワーアンプと、このM6000が全く異なったコンシュマーユースのために開発されたハイパワーアンプであることを明確に示す事実以外の何物でもない。
M6000の300W十300Wのハイパワーは、コンシュマーユースとしては過ぎたものとの意見もあるであろう。たしかに、平均的な使用と要求度からすれば、正しいと思うが、かつて今は亡き岩崎千明氏が再生音量が極めて大きいことを質問された答として、ディスクに刻まれているローレベルの音をクリアーに聴きたいために、結果として音量が大きくなる、との名言にも現われているように、量的なものと解釈されやすいパワーは、平均的な音量の場合にもいつ訪れるかもしれない強烈なピークを再生するためのリザーベーションパワーの有無として、またスピーカーからのアンプに及ぼすリアクションを制御するためにもパワーの余裕は高度な再生を要求するときには不可欠の条件となり、聴感上ではパワーもまたクォリティにほかならない。
現実にピークマージンが強烈に高い2トラック38cm速度や76cm速度のテープ再生では、ディスクと同じ平均音量で再生をしても、ピークでは簡単にプロテクターが動作することは、250W+250Wのパワーアンプと、93dB程度の現在の平均的出力音圧レベルをもつスピーカーシステムの組合せでも常時経験することである。これは、最近のカッティングレベルが高くなった最新のディスクでも、パワー不足の状態では本釆ディスクのもつ性能の向上が実感として聴きとれないことにもなるわけだ。ちなみに、カッティングレベルが3dB上昇すれば、ピーク値ではアンプのパワーは2倍必要となり、6dB上昇すれば4倍を必要とすることは単純な計算でも容易にわかることなのである。つまり、M6000の300W+300Wのパワーは、高度なディスク再生を要求すれば必須の条件であり、しかもローレベル時の低歪率化を重要視した設計方針からみても、ラックスがハイパワーアンプを純粋なコンシュマーユースとして開発しなければならなかった背景がうかがい知れるというものである。
回路構成は、片チャンネル12石構成のダブル・トリプルプッシュブルの出力段、A級動作のプリドライブ段とB級動作の出力段との間に2石構成のエミッターフォロアーを設け、スピーカー負荷によるインピーダンス変動がプリドライブ段に及ぶのを防止する設計、2個の独立パワートランスを使い出力段を別系統にし、ブリドライブ段の定電圧化などオーソドックスな設計方針が見られる。
ラックス L-5
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
薄型のパネルに特長があるDC構成の新製品である。3段直結イコライザー、2段直結フラットアンプ、2段直結ラックス型トーン回路、ドライバーにEBT使用のDCパワーアンプの充実した構成である。機能もフル装備の本格派で、特長は、かつてのJBLの製品と同様にアンプ底部に入出力端子をもつことである。
サンスイ AU-D607
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
AU−D907で初めて採用されたサンスイ独自の開発によるダイヤモンド差動回路と2ポール位相補正回路を使う、低TIM設計の第2弾製品である。
回路構成面では、MCヘッドアンプ、10石構成のDCイコライザー段、8石構成のDCフラットアンプ段、ダイヤモンド差動回路とノンマグネチックトランジスターを出力段に使うDCパワーアンプの構成である。電源部は、2個の左右独立型パワートランスと12、000μF×4の強力な電解コンデンサーのペアだ。
AU607が独特のステレオフォニックな音場感の拡がりを聴かせる音であったことに比較して、このAU−D607は、クォリティ面で1ランク以上向上した緻密で、しかも反応の早い見事な音を聴かせる。とくに、中域から中高域の解像力は非常にシャープであり聴き手に一種の緊張感を感じさせるリアルさだ。
オンキョー Integra A-805
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
イコライザーアンプとハイゲインパワーアンプの2段構成の新プリメインアンプである。パワーアンプは、高GmデュアルJ−FETを初段に採用し、パワー段にA級動作に匹敵する低歪のリニアスイッチング方式を採用したスーパーサーボ型で、バイアス回路は低レベル信号に大きな影響を及ぼすパワーアンプのバイアス電流値を安定化するオートトラッキング方式を採用している。
機能面では、トーンアンプ不要のダイレクトトーン方式採用、カラフルなインジケーターランプなどが特長的である。
A805は、豊かで暖色系の低域をベースとして、やや細身の中域、粒子の細かい滑らかな高域がバランスしている。音場感はナチュラルに拡がり、雰囲気をよく再生するタイプである。
パイオニア A-8800X
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
数多くの機種を揃えた00シリーズとは別系統の新プリメインアンプで、ベストセラーを誇ったSA8800、8800IIの型番を踏襲したパイオニアの意欲作である。MM/MC切替使用のできる高利得イコライザー段、DC構成のフラット段、パワー段の3ブロック構成である。電源回路は、イコライザー段、フラット段とパワーアンプにそれぞれ専用の定電圧電源採用のダイレクトパワーサプライ方式が特長で、電源インピーダンスを下げ、相互干渉を防ぐメリットがある。パワーは、75W+75Wで新開発RETを使用した高出力、高クォリティ設計だ。
テクニクス SA-C02
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
コンサイスコンポ第2弾製品として開発されたレシーバーで、超小型アンプの魅力を最大限に活かした素晴らしい製品である。6個のボタンでFM/AM各6局合計12局プリセット可能なクォーツシンセサイザー採用のチューナー部、イコライザーとトーンコントロール付20W+20Wパワーアンプ構成のアンプ部がコンパクトにまとめられ、音質面のバランスも見事だ
ラックス MQ70
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
出力管にポピュラーな5極管6CA7をプッシュプル動作で使用したステレオパワーアンプである。出力トランスは、SGタップ、カソード巻線付の2次巻線を単一巻線とした新設計の低損失型で、初段は差動増幅、ラックス高電圧ドライバー管6240G使用の差動増幅ドライバーの3段構成だ。CL36とペアの音は、音の表現力が従来より一段と高まり、適度に活気のある実体感を伴った管球アンプならではの魅力的なサウンドである。
トリオ KT-9900, L-07TII
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
KT9700ではじまったパルスカウント検波方式を採用した、一連の製品のトップランクに位置づけされる新製品である。従来の技術を基盤とし、このモデルではさらに、IF段や検波段を含めてオーバーオールの歪を検出し、歪最少点で同調周波数をロックするDDL機構、高周波特性を大幅に改善するショットキーダイオード使用のバランスドミキサー、一段と改良されSN比を向上したパルスカウント横波などが採用されている。フロントエンドはバッファー付発振器内蔵FM専用9連バリコンとダブルバランスドミキサー使用、IF増幅段の帯域3段切替、サンプリングホールドMPXによりセバレーションを改善したMPX部、60Ωの超低出力インピーダンスをもつオーディオアンプ、90dBfまで直線的に動作する信号強度計、2系統のアンテナ切替スイッチ、2段切替のミューティングなど数多くの特長を備えた大型の高級FM専用チューナーだ。
この他に07シリーズのペアチューナーとして開発された薄型のFM専用機L07TIIも発売されている。局部発振器内蔵7連バリコンとRF部DD・MOS型FET、ミキサー部MOS型FET使用のフロントエンド、IF帯域2段切替、ダブルコンバート方式IFとパルスカウント検波、オペレーショナルアンプ使用のオーディオアンプ、リレー式ミューティング、80dBまでリニアな信号強度計などが特長。
ラックス 5C50
瀬川冬樹
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より
ラボラトリー・リファレンス・シリーズと名づけて、ラックスが全面的にイメージチェンジをはかった一連のシリーズの中心をなすものが、この6C50と、パワーアンプの5M21だろう。
こんにち管球式のアンプになお相当の比重を置いている唯一の国内メーカーだけに、トランジスターアンプに関しては、とちらかといえばや保守的な姿勢をとり続けてきたようにみえた。もちろんトランジスター化は意外に早く、すでに一九六二(昭和37)年に、トランジスタータイプのコントロールアンプPZ11を発表している。これはいまふりかえってみると、こんにちの超小型アンプのはしりとも考えられないことはない。そして翌年にはプリメイン型のSQ11を作っていて、トランジスター化では最も早い時期とされているトリオのTW30にくらべても、そんなに遅れをとっていない。
その後SQ301で、いわゆる高級プリメインの線を一応完成させたが、しかしラックスのトランジスターアンプが本当の意味で高く評価され広く認められるに至ったのは、SQ505,507の2機種以後のことだ。これはのちに505X、507Xのシリーズでさらに改良されて、当時の他の類機を大きくひき離して注目を浴びた。
けれど、それからあとのしばらくのあいだは、外野からみるかぎり、ラックスのアンプはあちこちと迷いはじめたようにみえた。いくつもの新製品が発表され、部分的にはラックスらしいユニークさがみられたにせよ、総合的なまとまりという意味では507Xの完成度の高さに及んでいない。
三年まえ(一九七五年)に、創業五十周年を迎えて発表したハイパワーアンプM6000及びM4000で、ラックスのトランジスター技術は再び注目されはじめた。だが、これとおそらくはペアとして企画されたらしいコントロールアンプC1000は、そのかなり異色のデザインがユーザーを戸惑わせたようだ。ラックスは以前からトーンコントロールをはじめとする音質調整方法には熱心で、コントロールアンプも管球式に関するかぎりCL35シリーズのような佳作を生み出しているが、トランジスターでのコントロールアンプに関しては、多くの人たちを普遍的に説得できるほどの完成の域には、いまひとつ達していなかったと思う。
その意味では5C50は、ラックスが久々に──というよりトランジスタータイプのコントロールアンプとしては初めて、そしてようやく、だがみごとに──放ったヒットだと思う。おそらく、ラックスの内部で何かがひとつふっ切れたような、迷いのない透明で十二分に美しい質感。とても品の高い、素晴らしく滑らかな音質。現代のアンプに要求される入力に対する応答も早く、音の解像力も、すみずみまで見通せるように優秀だ。そういう音質は、とうぜんの結果としていくらか冷食系のクールな印象を与える。また、ぜい肉の抑えられた感じになるから音がいくらか細い印象を与える。しかしそれは必要な肉までそぎ落すギスギス型ではない。
ただ私個人は、この5C50は単体としてではなく、トーンコントロールアンプ5F70と一体にした形を基本に考えている。5F70は、音質を劣化させずにトーンバランスをコントロールできる優秀な製品だ。75Hzから150Hzのあいだに任意のディップを作るアコースティックコントロールも、部屋の音響特性によってはきわめて有効でユニークなコントロールだ。未確認の情報だが、QUADがそらく近々発売するコントロールアンプには、ラックス独創のリニアイコライザーに似たコントロールがついているといわれる。本当だとしたら、誇りに思っていいだろう。
マランツ Sc-7, Sm-7
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
マランツのセパレート型アンプの新製品である。デザイン的には、♯3600、♯3250で2度の全面変更があったが、今回は3度めの変更で、全体に大変華やかな色調をもちながら、コントロールアンプにまで、かつての♯9や♯500に採用された小型のツマミ付サブパネルがフロントパネルの中央下側に付けられた。現代的で、かつノスタルジックな雰囲気をもつ従来にないユニークなデザインとしているのが特長である。
Sc7は過渡的音楽信号を忠実に再現するために低TIM設計を導入し、DC構成の各アンプは全てオープンループ利得を下げ、NF位相補正技術により入力信号と出力信号間の時間差、位相差を抑える設計方針で開発されている。機能面では、左右独立型で中音も含めたトライコントロールがTAPE・COPY時にも切替使用が可能となり、その他にカートリッジの負荷抵抗をMC型4段、MM型5段に切替えるセレクター、イコライザー段出力を直接出力端子に送り出すバイパススイッチ、DC構成のMCヘッドアンプが新しく加えられた。なお、2台のテープデッキ用の独立したレコーディングセレクターは、♯1250の機能を受け継いだデッキファンには魅力的な機能であり、500mWのヘッドフォンアンプを備える。
Sm7は、低TIM設計の150W+150Wの出力をもつDC構成パワーアンプである。パワートランジスタ一には従来のマルチエミッター型のバラスト抵抗の電圧降下による高域特性の低下を改善した新デバイスを4個並列接続とし、2次巻線を左右分割した左右独立電源と伝統的な大容量、高性能電解コンデンサーを使った強力な電源回路、エネルギーセンサー型保護回路、大型対数圧縮型出力メーター、それに電力増幅段に直接つながるダイレクトスピーカー端子、AB2組のスピーカー切替スイッチを傭えている。
Sc7とSm7の組合せは、現代のアンプらしい音の粒子が細かく、滑らかで伸びきった広いfレンジをもち、150W/チャンネルのハイパワーアンプならではの充分に厚みのある力強いサウンドを聴かせる。質的にも量的にも♯3250、♯170DCを確実に1ランク上回った信頼にたるべき価格に相応しいセパレート型アンプに思われる。
ソニー ST-J88
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
FMチューナーでは高い定評があるソニーのトップランク製品として開発されたクリスタルロックデジタル周波数シンセサイザー方式の高級FM専用チューナーである。
局名表示板付の7局プリセットメモリー機能、オートとマニュアルチューニングを備え、メモリーは受信周波数、ステレオとモノのモード、ミューティング、IF帯域幅を同時に記憶する本格的なタイプである。主な特長では、電波の強さを20dBf以上を10dBfステップで60dBfまで表示する5段階のデジタルチューニングインジケーター、シングルチューン、クォドループチューンを採用した6段バリキャップによる電子同調、PLL−IC使用のパイロットキャンセル機能と高性能ローバスフィルター使用のMPX部、リードリレー使用のミューティング、ユニフェーズフィルター使用のNORMALとSAWフィルター使用のNARROW2段切替のIF増幅段、電源部のトロイダルトランス採用があげられる。
アキュフェーズ T-104
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
豪華なローズウッドキャビネットに収まった、デジタル型らしくないデザインをもち、高級機らしい雰囲気を備えたモデルだ。
選局は、プッシュボタン操作の4局のプリセット同調、アキュフェーズ独自に開発した手動のパルスチューニングの2系統でおこない、切替なしで任意に選局できる。メモリーは、内蔵のニッカド電池でバックアップされ、電源スイッチを切っても約一年間はメモリーを保持できる。
2個の大型メーターは、マルチパス兼変調度計と新IHF法によるdBf目盛付信号強度計である。パルスチューニングツマミを回転すると100kHzステップでデジタルディスプレイの指示は変わり、ピップトーンがピッピッとその変化を知らせ、同調点では同調表示ランプが点灯する。機能面では、IF帯域帽2段切替、ディマースイッチ、メーター切替の他5mの範囲で使えるリモート選局スイッチが特長である。
マニュアル選局もピップトーンを備えるためフィーリングは通常の横行ダイアルに匹敵するものがあり、ミューティング動作もほぼノイズレスで快適。局間雑音チェックではノイズ分布がナチュラルで、受信チェック時の音質も今回試聴したチューナーのなかでトップランクである。
オンキョー Integra P-307, Integra M-507
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
最新のオンキョーのセパレート型アンプは、DCアンプが特性面でDCまで伸びた帯域の広さが逆に音質面に及ぼすデメリットを技術面で検当している。その結果、不要な超低域をカットすることにより音楽信号のエンベロープ再生を明確にし、音楽信号の分解能の向上、NF回路を含めた結合コンデンサーの除去の2点を達成できる新回路方式スーパーサーボを開発し全面的に採用しているのが特長である。
P307は、MCヘッドアンプ、イコライザー、トーンコントロールの3ブロック構成で各段共に新方式を採用している。機能面ではトーンコントロール用にラウドネスコントロールとフィルターを組み合わせた全てパッシブ素子構成で信号経路内にコンデンサーのないダイレクトトーン方式を採用し、トーンコントロールとしてはボリュウム位置が12時付近までは通常のトーンコントロール動作、それ以上は位置に応じてブースト量が減少する独特のタイプとしている。
M507パワーアンプは、ABクラス動作で、しかもスイッチング歪が極小な特殊バイアス回路をもつ、リニアスイッチング方式を採用したスーパーサーボ方式で不要な超低域成分をマイナス70dBまで排除した、左右独立直結給電方式ハイスルーレート型で、150W十150Wのパワーをもつ。
この組合せは豊かで弾力的な低域をベースとし、滑らかでキメ細やかな中域から高域がバランスした明るく伸びやかな音をもつのが特長である。
オンキョー Integra T-410DG
井上卓也
ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
デジタルチューナーとしては、T433NIIに続く第2弾の新製品でFM専用チューナーとして開発された。6局のプリセット、オートとマニュアル切替のチューニング、IF帯域幅2段切替、エアチェック用キャリブレーター、周波数表示ディスプレイを切替使用するデジタル時計などが特長である。RF段はMOS型FET2段増幅で6連バラクターダイオードで、ダブル・シングル・ダブル同調の回路構成。



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