Category Archives: 国内ブランド - Page 80

ソニー TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 基本的にはコントロールアンプのE88に似て硬質でコントラストの強い傾向の音を持っている。ただ、E88ほどの強引さというか一本調子に押しまくるようなところは少なく、音のニュアンスあるいは表情は一応出るので、プログラムソースに受け身に順応していくしなやかさは持っていることがわかるが、しかしどちらかといえばやはり骨太の、腰の強い音色のパワーンあプだ。高域のごく上の方に、いくぶん細い特長のある光沢というか軽い強調感を感じるが、LNP2Lにもその傾向があるため、この組合せでは相乗効果がやや裏目に出て光沢過剰になるが、反面繊細感が増しておもしろいともいえる。E88との組合せではそういう個性は感じとりにくかった。

ソニー TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 肌ざわりの柔らかい、むしろトロリとした味わいといいたい印象さえある滑らかな音を聴かせるというのが第一印象だが、しかし決して弱腰の柔らかい甘さではなく、どちらかといえば音像をきりっと引き締めてゆく傾向の、芯のしっかりした、明快であいまいなところのない解像力の良い音といえる音にトゲトゲしさやきつさがなく、やれッ主で生き生きした表情を持っているが、しかし一見当りの柔らかな音の中に、ときとして意外に腰の強い骨ばった感じさえ抱かせる硬質な音をくるみこんでいるらしく、たとえばアメリンクやバルバラの声でいくぶん頬骨の張った感じに聴こえることがあった。Aクラスに切換えるとわずかに線が細くなるが、基本的な傾向は変らない。

サンスイ BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

クラシックからポップスまで、あるいは構成の複雑で大きな曲でも逆に小編成や独奏、独唱ものでも、音色の印象が一貫していて、オーソドックスに練り上げられたパワーアンプであることが聴きとれる。総体にはいくぶん華やかなコントラストの強い傾向の音色を持っているが、音のニュアンスを豊かに鳴らし分けるだけの素直さがあるし、プログラムソースやコントロールアンプの差を相当はっきりと出すことからも、ディテールの描写の優れた解像力の高さがわかる。意外に腰の坐りの良い音で、パワー感も十分。コントロールアンプはCA2000とくらべると、こちらの方が出来ばえとしては格段に上だろう。価格とのバランスを考えると、かなり水準の高い製品だと思う。

ヤマハ C-2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テストソースやスピーカーその他に、かなりきわどい音を選んであるにもかかわらず、あらゆる音に対して上品なバランスを失わずにこれほど危なげのない音で安心して聴かせたアンプは、新型の出揃った今回のテストでもそんなに多くはない。そこがいかにもヤマハのアンプらしいし、反面、私のような八方破れの人間には多少の物足りなさの残るところでもある。C2自体が音のケバ立ちや粗い感じを細心におさえた作り方なのは、マランツ510Mと組み合わせてもその音をおとなしくまとめてしまうことからわかるが、ヤマハの良さはB3との組合せの方がよく出る。内蔵ヘッドアンプはDL103Sには一応のクォリティを示すが、MC20では少し味が薄くなりすぎた。

マランツ Model 170DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パネル面の明るいやや白っぽい金色が、まるで音そのものを象徴しているかのようで、さらっと乾いた質感の、影のつくことを避けて一様に照らした人工光線に浮かび上ったような印象の音像を展開する。そういう意味ではよくコントロールされた、やかましさの少しもない、むしろやや静的ともいえるきれいな尾とかする。そのせいだろうか、音の起伏をいくぶん揃えて整理するような感じがあって、野卑なところのない、どことなく人口の清浄空気の中で大切に育てられた音、要するにたいへん注意ぶかく慎重に作られた音といってよい。ただ個人的な好みを加えて言えば、もう少し音の流れの自在さや伸びやかさのある方が嬉しい。

パイオニア M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パイオニアのアンプが、セパレートタイプにかぎらず音のバランスのとり方の巧みなことはすでに多くの機会に言われているが、そこにも一貫したパイオニアトーンとでもいえる個性があって、それは大づかみにいえば、中音域から低音域にかけてやや厚みを持たせ、中高音域ではよく抑えてやかましさをなくし、最高音域にちょっと味をつけてほどよい切れこみの良さを感じさせる、という印象がある。M25も大まかにはその線で仕上げられているが、M4のようにウェットな音でなく、暖かみはあってもややぜい肉をおさえた硬質なところも聴きとれて、いくらか強引さや乾いた印象のあるものの、力としなやかさをバランスさせたなかなかの音質だと思った。

ビクター EQ-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 一聴して基本的なクォリティの高い、よく磨き込まれた緻密さが聴きとれる。音の傾向自体はやや明るく軽く、たとえばオーケストラの斉奏でもディテールのひとつひとつがきらきらと細く光るようなところがあったり、弦楽器では倍音の方に耳の注意力をひきつけたり、アメリンクやキングス・シンガーズやテルマ・ヒューストンなどの声が総体に若づくりになる傾向を聴かせるが、音の支えがしっかりしているのでこうした聴こえ方は不快ではない。ただ音の透明感のすくれている割には、立体感や奥行きがもうひと息増すとなおよいという感じがあった。MCヘッドアンプは低域がやや薄くなる傾向があるがクォリティはかなり高く、中高域以上はかなり美しい音を聴かせた。

パイオニア M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おそらくペアとして企画されたコントロールアンプC77の、やや重い感じで反応の鈍い傾向の音をちらかがうまく補うという印象で、ややコントラストを強く、音の表情を生かすようにどちらかといえば身ぶりの大きな音を鳴らす。M25やエクスクルーシヴ・シリーズのM4の正攻法の作り方ではなく、どちらかといえばヤングマーケットをことさら意識したのではないかと思えるような、甘さ辛さをはっきりさせたいわゆるわかりやすい味に仕上げてあるので、音の品位という点からみるとかなりものたりない。中音域から低域にかけての厚みを持たせて腰の坐りを良く、大づかみな意味で音のバランスをととのえるうまさはパイオニアならではの手際の良さだと思った。

オンキョー Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 どちらかといえばウェットなタイプの音、あるいは女性的な美しさを持った音、ともいえそうだが、清らかでなよやかな表情のやわらかさは、ごく良質なアンプでなくては聴けない上等の音質だ。「オテロ」冒頭のトゥッティでは、音像の奥行きや深みや発声のニュアンスも十分で、ステージの雰囲気さえ感じとれ、弦楽四重奏やアメリンクの声、伴奏のピアノの表情なども、音がよく響きよく溶けあってほどよく弾み、いかにも音楽している楽しさが感じとれる。LNP2Lの情報量を全部は出しきれないところはあるし、やや甘口で弱腰のところはあるが、この音の良さはもっと注目されていい。外観の武骨さが、かなりイメージを悪くしているのではないかと思える。

ビクター P-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 EQ7070と見た目はよく似ているが、出てくる音はだいぶ違う。7070が明るく軽く透明な音のするのに対して、3030の音は逆に総体におっとりして、7070のような入力ソースに対する反応の早さをあまり感じさせない。音像の前にやや暖色系の薄幕をひいた感じで、総体に音の冴えが物足りなく、もっと透明感が欲しい。細部を見渡したい、という気持にさせる。そのせいもあるのか音像の並び方も平面的で、奥行きや立体感がもっと欲しい。内蔵のMCヘッドアンプも7070とはだいぶ違うらしくDL103Sの場合にはまあまあだが、MC20に対しては音を素気なくする傾向。7070とは価格の差がずいぶんあるのだから仕方ないかもしれないが。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティでも埋もれがちのディテールをむしろくっきりときわ立たせ、弦楽四重奏では倍音の方にやや注意力を向ける傾向があるというように、一聴する途中〜高音域にエネルギーが片寄るかに思えるが、低音域にはかなりの重量感があるので、一見骨細だが骨格はしっかりしている。ただ低音はクラシックの持続音ではおさえぎみだが、ポップスの打音ではかなり量感を出すという二面性が聴きとれる。目鼻立ちのクッキリしたタイプの音だが、音楽を楽しませるカンどころのとらえ方は本質を衝いていると思う。本調子が出るまでに時間のかかるタイプだ。ただ内蔵MCヘッドアンプは情報量がやや減ってクォリティがともなわない。

テクニクス SU-A2 (Technics A2)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ひんやりした肌ざわりはかなりウェットな印象で、ぜい肉を極力おさえたかのように、かなり細身の音。しかし質感はかなり緻密に練り上げられたらしく、細くウェットな見かけの割には、骨格のしっかりして芯の強い音を持っている。バランス的には中高域にややエネルギーの集まるタイプで、相対的に低音域はかなり抑えぎみに聴こえる。音の透明感はなかなかのものだが、肌ざわりの冷たいせいか、とちらかといえばやや素気ない印象。しかし曲によってはオャ? と思うほど強引なところもある。途中でトラブルを生じてMCヘッドアンプのテストが十分できなかったのは残念。A1と違ってプリプロ機らしいが、A1の音から想像してこの方向でのいっそうの完成を期待したい。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前の70Aとは中味が全く別ものといっていい。かつてのいかにもセパレートアンプの流行に便乗した感じのある安手の音が記憶に残っているせいもあるが、II型になって印象は一変して、たいそう密度の高い、充実感のある聴きごたえのする素晴らしい音質だと感じた。従来のテクニクスのアンプが、一体に音の表情の乏しい傾向があったのに、70AIIは音の起伏が豊かで彫りが深く、パースペクティヴな音場の奥行き感もとても良い。ディテールの解像力と音の鮮度も十分だ。内蔵のMCヘッドアンプは、MC20に対してはオルトフォンらしさはやや減るもののやや線の細いきれいな響きは美しく、DL103Sではトランスにくらべて幾分若やぐが音が生き生きしてとてもいい。

スタックス SRA-12S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく滑らかで、いかにも明瞭度の高い感じの音を聴かせる。たた、その明るさがやや一様で、音の陰影の不足した感じはするが、弱音での汚れも少なくくっきりときれいに音を並べる。しかしその並べ方は、音像を一面に力で押し出したようでやや奥行きに欠けるところがあって、パースペクティヴな立体感が出にくい。たとえばアメリンクの独唱で、歌とピアノが同一平面に聴こえ、パッセージによっては声の方がピアノにめり込んだように聴こえることもあるというように、音のデリケートな分離あるいはニュアンスがもう少し欲しく思われる。マランツ510Mのハイエンドでの危ない部分をよく抑える点はとても良いが、反面脂気も取り去ってしまう傾向もあった。

ソニー TA-E88

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の骨格はたいへんしっかりしている。少なくともそういう表現をまっ先に思いつかせるほど、かなり硬質の音といえそうだ。バランス的にみて中低音域から重低音域にかけての支え、あるいは豊かさが不足ぎみに思われ、そのことがいっそう音を硬く感じさせるのかもしれないが、それにしてもたとえばベートーヴェンの弦楽四重奏でも、弦の音がどこかPAでも通したように人工的に聴こえ、かなりきつく、一本調子で色気がない。アメリンクの声にもやさしさが足りない。それらにかぎらずどうも音の姿をことさら裸にしてむき出して聴かせる傾向があって嬉しくさせない。MCヘッドアンプの音は、高域がよく伸びて解像力は上るが音の支えが弱く、ニュアンスが減る。

ソニー TA-E86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。

サンスイ CA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭からしばらくのトゥッティでも、またそれとは対照的なベートーヴェンの弦楽四重奏でも、またエリー・アメリンクの声でも、総体に中〜高域にやふ強調感のある華やいだ音のするところがこのコントロールアンプの特徴といえる。ハイコントラスト型、ともいえるし、逆に少々明るすぎるとも音質ともいえる。したがって音の輪郭は鮮明だがくまどりがきつすぎるように感じることがある。音像のひろがりはよく出る反面、並び方がいくらか平面状になって奥行きの表現がいまひと息だ。また、フィルターやトーンコントロールのスイッチをONにすると、コントラストはやや弱まる反面、音の反応がいくらか鈍くなる傾向が、他の類機にくらべるとやや大きく感じられる。

ラックス MB3045

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 球と石という単純な分類には賛成しないが、トランジスターアンプでかなりの水準を実現させたラックスがあえて残しているだけの理由は、音を聴いてみて十分に納得できる。旧型の管球アンプの概して不得手な音の切れこみの悪さがこのアンプにはあまり感じられず、LNP2Lのように解像力の良いコントロールアンプと組み合わせることでいっそう引き締った現代的な面をみせながら、しかしマーク・レビンソンのときとして鋭くなりがちの高域を適度に甘くやわらげて、ついいつまでもボリュウムを絞りがたい気分にくつろがせてしまう。弦やヴォーカルには素晴らしく味わいの深い良い音を聴かせるが、打音に対していささか締りの不足する感じがやはり管球アンプの性格か。

ラックス 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの鳴り方から、音の密度のきわめて高く、混濁感のない品位の高さが聴きとれる。概して不満の多いホルンの響きも自然なバランスでとてもいい。弦楽四重奏、ヴォーカル、ピアノ、すべてに格調の高い安定感があって、やや細身ながら品の良いバランスの良さが一貫していて、たいへん良く練り上げられたアンプであることを思わせる。キングズ・シンガーズの六声のよくハモること、そして声の向うに広がって消えてゆく余韻の響きのデリケートな美しさなどは、リファレンスの510M以上だ。ただやはりこれはいかにもラックスの、あるいは日本の音で、いわゆる脂っこさ、あるいはハメを外す寸前までの自在な躍動感という面はここにはない。

ラックス M-12

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すっきりと上品な透明感のある、よく磨かれた音質のパワーアンプだ。音の品位を大切にしている反面、ローエンドの延びあるいは量感のやや抑えられた感じの、どちらかといえば細身の音質で、たとえば「オテロ」の冒頭のオルガンの持続音が十全に聴きとれたとはいいにくい。しかし中低音域以上高域にかけては、音の芯もしっかりして密度もあり、弦合奏やクラシックのヴォーカル(テストソースではエリー・アメリンク)の美しさはなかなかけっこうなものだった。シェフィールドのパーカッシヴな音も意外にしっかりと鳴る。ただ、菅野録音のベーゼンドルファーの脂っこい丸味のある艶を要求するのは少し無理のようで、そこはいかにも日本の音、という感じだった。

Lo-D HMA-9500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すでに各方面で評価の高い製品だが、こうして内外の最新機種の中に混ぜて試聴しても、全力投球のあとが聴きとれて、優秀なパワーアンプのひとつだということがよくわかる。音の傾向は本質的にはハードでかなり力強いところがあるが、緻密で腰の坐りがよく、低音の支えもしっかりしているので、音にうわついたところが少しもなく、ハイパワーでも全く危なげのない充実した音を聴かせる。音の力強さがいかにも男性的で、底力のある重量感に満足をおぼえるが、反面、ここにもう少しやさしさが加わるとさらに素晴らしい音に仕上ると思う。入力にあくまでも素直に順応するというより、どこか一ヵ所力づくの強引さがあるところがもうひと息、なのだ。

Lo-D HMA-7300

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 HMA9500のきわめて男性的な音と比較しての話でなく、この7300自体が本質的にどこか女性的な、硬さを嫌ったかなりウェットな音を持っていると聴きとれる。やかましい音、あるいは張り出す音を嫌ってのことだろう。たとえばダイヤトーンではきわめて張り出していた中〜高音域が、難しい弦の音でテストしてみてもHMA7300ではよく抑えられ、耳たぶをくすぐられるかのような細身の音色で聴こえる。その意味ばかりでなくこういう音はやはり女性的といえるだろう。もうひとつ、音の基本的な質がかなりウェットで、音の密度も薄手のため、プログラムソースによってはもう少し中味の埋まった音が欲しいというように思われることも少なくなかった。

Lo-D HMA-7500

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」冒頭のオルガンの低い持続音がやや聴きとりにくく、低音の量感が不足ぎみであることを感じる。国産アンプには案外多いが、続いてのトゥッティの部分でも、総体に音が細身で重量感や厚みや奥行きが出にくい。音の硬さやおしつけがましさがよく抑えられているのでやかましくない点はよいが、弦楽四重奏でさえいくぶんオフマイクぎみに音像が遠ざかる感じで、もう少し実態感や充実感が欲しく思えてくる。骨ばってこない点が好ましいともいえるが、どこか軟体動物的で頼りないところもあって、フォルテ・ピアノのはげしく入れ変るような曲では音がふわふわとあおられて抑揚の強調される感じもあって、もう少しふんばりが欲しい。

パイオニア Exclusive M4

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 国産に珍しいロングセラー機だが、こうして何度聴き直してみても、やや線が弱い面のあるもののやはりこのアンプならではの音のしなやかさでやさしく、いくぶんウェットだが繊細で上品な音の良さは、他に類機の得がたいという意味で、これから先も十分に存在理由のある製品といえる。ことにAクラス独得の、おそらくマイクロワット・オーダーのミニパワーの弱音でも、弦の音などニュアンスが美しくしっとり聴かせるところがいい。ハイエンドにやや独得のキラッと光る強調感があって、そこがM4であることを特徴づける個性になっている。重低音の支えがいくぶん弱くそれでいて音が重いところがあるがそれは聴感上マイナス要因にはならない。

ダイヤトーン DA-A15DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弱点をどんどんおさえていって、欠点も少ないがおもしろみに欠けた音になってしまう、いわば減点法で仕上げる例の少ないとはいえない国産機の中では、かなり積極的に音を作り上げたという感じの強い、なかなかユニークなパワーアンプだ。ダイヤトーンのスピーカーもそうだが、どちらかといえばクラシックの弦やヴォーカルよりは、ポップスの打音の切れこみのよさや、張りのある力強い音の再現を狙っているらしく、やや金属質ともいえるハードによく張った音といえる。非常にクリアーな印象で、たとえばシェフィールドでテルマ・ヒューストンのヴォーカルがバックからよく浮き出すというように、コントラストを高めて輪郭の鮮明な音に仕上げてある点が特徴。