フォステクスのフルレンジユニットFF125の広告
(別冊FM fan 33号掲載)
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フォステクス FF125
ラスク I-5025, I-4030
オーディオテクニカ AT1000, AT34EII, AT31E/G, AT33E, AT1000T
TDK MA, MA-R
ソニー SS-RX7
フィデリティ・リサーチ FR-66fx, XF-1
サンスイ SP-V100
テクニクス SU-V7
トリオ KP-800
ヤマハ NS-1000M, ビクター Zero-5 Fine
黒田恭一
サウンドボーイ 10月号(1981年9月発行)
特集・「世界一周スピーカー・サウンドの旅」より
スピーカーで音の世界めぐりをしてきて、最後に日本のスピーカーを2機種きいた。そこでまず感じたのは、ともかくこれは大人の音だということであった。充分に熟した音であり、かたよりがないということである。立派だと思った。どの国出身のレコードでも、つつがなく対応した。ヤマハのNS1000MとビクターのZER05FINEでは、価格の差があるので、そのクォリティについては一概にはいえないとしても、おのれの個性をおさえて、それぞれの方法でさまざまな音楽に歩みよろうとしている姿勢が感じられた。大人の音を感じたのは、おそらく、そのためである。
とりわけ、ヤマハのNS1000Mは、立派であった。それぞれに性格のちがう音楽のうちの力を、しっかりと示した。ただ、たとえば、マーティ・バリンの歌の、粋でしゃれた感じをこのましく示したかというと、かならずしもそうはいえなかった。さまざまな面で、はきり、くっきり示しはしたが、独特のひびきのあじをきわだたせたとはいいがたかった。したがって、このマーティ・バリンだけを例にとれば、JBLのL112とか、あるいはボーズの301MUSIC MONITORの方がこのましかったということになる。ビクターのZER05FINEについても、同じようなことがいえる。
こうやって考えてくると、ヤマハのNS1000Mにしろ、ビクターのZER05FINEにしろ、日本出身のレコードでそのもちあじを特に発揮したわけではないから、外国のスピーカーたちとちがって、お国訛りがないということになる。お国訛りというのは、いってみれば一種の癖であるから、ない方がこのましいと、基本的にはいえる。ただ、場合によっては、そういうスピーカーの癖が、レコードの癖と一致して、えもいわれぬ魅力となることもなくはない。シーメンスのBADENのきかせたニナ・ハーゲンやクラフトワークのレコードの音がそうであり、エリプソンの1303Xがきかせたヴェロニク・サンソンのレコードの音がそうである。
癖があるのがいいのかどうか、とても一概にはいいきれない。同じ価格帯で比較したら、日本のスピーカーの多くは、平均点で、外国産のスピーカーを大きくひきはなすにちがいない。さしずめ、日本のスピーカーは3割バッターといたところである。そこへいくと、外国のスピーカーの多くは、ねらったところにきたらホームランにする長距離打者といるであろう。
ただ、この場合、ききてであるかぼくが日本人であるために、日本のスピーカーのお国訛りが感じとれないとういこともあるかもしれないので、はっきりしたことはいいにくいところがあるが、日本のスピーカーは、ドイツのシーメンスのBADENをドイツ的というような意味で日本的とはいいにくいように思うが、どうであろうか。
くりかえして書くが、、ヤマハとビクターのスピーカーは、大滝詠一やブレッド&バターのレコードもこのましくきかせたが、それと同じようにハーブ・アルバートやマーティ・バリンのレコードもこのましくきかせた。その意味で安心してつかえるスピーカーではあるが、きらりとひかる個性にいくぶん欠けるといえなくもないようである。
サンスイ AU-D707F EXTRA
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より
AU−D707F EXTRAは、従来の707Fに較べ、シャーシの機構設計面で上級機同様の銅メッキシャーシを全面的に新採用しており、その内容的な変化は、大幅な変更と考えてよい。
シャーシの銅メッキ処理は、以前から一部の高周波関係の機器では採用されていたが、オーディオアンプにこれを導入したのは、おそらくサンスイが最初で、AU−D907リミテッドが第一弾製品だ。
オーディオでの銅メッキの効果は、鉄板の電磁誘導フラックスの抑制、アース間電位差の低減、シャーシ自体の振動の抑制などの相乗効果で、聴感上で歪感が減少しSN比が向上して、いわゆる今までノイズに埋れていた音が聴きとれるようになること、ステレオ再生で最も重要な音場感的情報が多くなり、パースペクティブな奥行き感やクリアーな音像定位が得られるようになるようだ。ただし、データとして現われる計測値は、未だ確実に得られてなく解析方法も手探りの状態にあるが、聴感上の効果は容易に誰でも判別可能なほど変化量がある。
現在、アンプ関係のエレクトロニクスの技術発展はめざましく、各社各様のアブローチでその成果を挙げているが、このエレクトロニクス系を組み込むシャーシの機構設計面では、従来からのいわゆるケースという意味でしか考えられてなく、優れたエレクトロニクス系が非常に悪い環境条件に置かれているために、その本来の性能が結果としての優れた音質に結びつかない例が多いのは、省エネルギー時代に大変に残念なことである。この銅メッキ処理もさしてアクティブな対策ではないが、低迷状態にある機構設計に甘んじている設計態度を標準とすれば、現状の壁を破るひとつの手段として正当に評価されるべきものと思われる。
他の変更は、共通のデザイン的な見直し、高域300kHzまで偏差を抑えた超ワイドレンジRIAAイコライザー、パワーアップがあるが、MC型対応はヘッドアンプ使用だ。
AU−D707F EXTRAは、従来からの素直で安定感のある音を一段とリファインし緻密でリッチな音としたタイプだ。厚みのある低域ベースの音は、穏やかで質も高い。聴き込むほどに本質的な長所が判ってくるタイプで信頼度は大変に高い。
サンスイ AU-D907F EXTRA
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より
サンスイのスーパーフィードフォワード方式を採用したFシリーズのプリメインアンプに改良が加えられ、型番末尾にEXTRAが付いたフレッシュアップモデルに発展し、新発売されることになった。
トップモデルのAU−D907F EXTRAは、銅メッキシャーシの全面的採用に代表される基本コンストラクションは従来と変わりはないが、電源部の細部の配置がリファインされ、相互干渉を抑えるとともにシールド板の増設、パワートランジスターの電磁輻射の低減などの対策のように機構設計の改良とアンプ系の新発想に基づく見直しにより、その内容は一段と充実し、製品の位置づけとしてはかつてのAU−D907リミテッドを凌ぐモデルに発展していると思われる。なお、規格上ではパワーアップと歪率の低減がある。
その他、本機のみの従来にない特長として、MCヘッドアンプが廃止され、LOW/HIGH切替型の4層シールド構造の昇圧トランスの新採用と、MOS・FETエラーコレクションアンプを採用し、スーパーフィードフォワード効果を一段と向上させているのが特長である。
AU−D907Fとの比較では、音の粒子が一段と細やかになり、聴感上のスクラッチノイズに代表されるSN此が向上、分解能が優れているのが聴かれる。帯域バランスは、従来のいかにもワイドレンジ型という印象から、ナチュラルに伸びたキャラクターの少ないタイプに変わり、音場感の前後方向のパースペクティブな再生能力は従来のサンスイアンプの領域を超えたものだ。各種のプログラムソースに対するフレキシビリティは高く、ピークのシャープな伸び、活き活きとした表現力は、他の2モデルとは一線を画した本棟のみの魅力だ。
MCトランスは、LOWインピーダンスMC使用では、このタイプ独特の低電圧・大電流型のメリットを活かせるため、SN比が優れ、緻密で彫りの深いサウンドが得られる魅力がある。聴感上の帯域バランスはわずかに狭く感じられる点もあるが、トータルとしては昇圧トランスの採用はメリットが大きいと思われた。HIGHインピーダンス型MC使用では、カートリッジの電力発電効率が低下するためトランスのメリットが少なくなり、聴感上では帯域バランスがナロー型となり少し不足気味である。
ビクター P-L10, M-L10
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より
ビクター独自のスーパーAクラス増幅とピュアNFB方式を採用したプリメインアンプは、同社が従来より提唱する音場感再生で優れた再生能力を示し既に定評が高いが、今回、7070シリーズ以来久し振りに、ビクターアンプのトップランクの位置を占めるセパレート型アンプとして、コントロールアンプP−L10とパワーアンプM−L10のペアが発売された。
P−L10は、外観上はプリメインアンプに採用しているシーリングポケットによるパネルフェイスのシンプル化を受け継いだデザインで、フラットで整理されたパネルと、独自の伝統を有する木工技術の成果を活かした人工ローズ材の鏡面平滑塗装21工程の入念な仕上げによるウッドキャビネットが標準装備である。
回路設計上の特長は、RIAAイコライザ一回路に人力電圧を電流に変換増幅し、この電流をRIAA素子に流してオームの法則により単純にイコライズする方式を新採用している。この方式の特長は、電流によるイコライゼーションのため、CR型の動特性、伝送特性と、高域ダイナミックレンジの大きいNF型の利点を併せもち、電圧・電流変換率を変えるのみでトータルゲインがコントロールでき、MM型と高インピーダンスMC型間での性能、音質が変わらないことである。
ボリュウムコントロール回路は、音量の大小により音質が変化することが多い可変抵抗器型が一般的だが、ここでは実用レベルでのSN比が大きくとれ、信号回路に可変抵抗が入らぬ可変利得アンプによるボリュウムコントロールの採用が目立つ点だ。また、イコライザー・ボリュウムアンプ回路には回路の高速応答性を高め、歪、Dレンジを改善するフィードスルー回路がある。
フォノ2は、低インピーダンスMC型専用入力で、信号は負荷抵抗切替付ヘッドアンプを経由してイコライザーに導かれる。
トーン回路はボリュウムアンプの後段に置かれ、ダイレクト使用時にはモード、サブソニック回路ともども切離され、ボリュウムアンプ出力がプリアウトに出る。
使用部品は、音質重視設計で、窒素封入リレー、金属皮膜抵抗、銀箔クラッドスイッチ接点、プレーン箔電解コンデンサー、低雑音ツェナーダイオードなどが採用され、プリントパターンも音質重視レイアウトだ。その他、標示ランプ系は、ノイズ発生が多く音質劣化の原因となりやすいLEDを全廃し、白熱ランプの定電流点灯をしているのも本機の注目すべきポイントである。
M−L10は、スーパーA採用のパワーアンプ7050の成果をベースに発展したタイプだ。出力段トランジスターが一定電圧で動作し、電流のみ変化させ、スピーカー実装時と抵抗負荷時と同じ性能を得る目的でパワー段までカスコード回路を採用した全段カスコード回路採用が特長である。このタイプは出力段トランジスターが数ボルトの低電圧で動作をするため発熱量が少なく、スピーカー実装時の瞬間発熱量は従来方式の1/10以下となり、サーマルディストーションの改善とアイドリング電流が安定し、裸特性が向上するとのことだが、アンプトータルとしての発熱量は、電源側トランジスターが発熱をするため変わりはない。
その他の特長には、P−L10と同じく新開発人工ローズ材の鏡面平滑仕上げウッドキャビネットの採用、便用部品面でのプレーン箔電解コンデンサー、低雑音ツェナーダイオード、高速型ダイオード、トロイダル型電源トランスと、電源ON時のインラッシュ防止回路の対電源電圧安定性の改善などの高信頼性、音質重視の設計のほかスーパーA方式の採用があげられる。
P−L10とM−L10の組合せは、落着いた色調の艶やかなウッドキャビネット、フラットなパネルフェイスを採用しているために、オーディオアンプにありがちなメカニカルな印象が少なく、家具などのマッチングにも違和感が少ないタイプだ。
この種のセパレート型アンプは、パワーアンプの電源をコントロールアンプのスイッチドACアウトレットでコントロールするのが一般的な使用法であるが、音質を重視する場合には、個別に壁のACコンセントから給電するか、止むをえない場合でも電源容量が充分あるACタップから単独に給電したい。コントロールアンプは電源ON時に暖かみのある色調の白熱ランプによる表示灯が点灯するが、パワーアンプは電源ON時には大型の2個のパワーメータースケールが赤に表示され、しはらくしてアンプが定常状態になるとスケール照明が白に変わる、ちょっと楽しいセレモニーが盛り込まれている。
一般的なハイインピーダンスMM型カートリッジ使用では、ナチュラルに伸びた帯域バランスと音の粒子が細かく、滑らかに磨き込まれた艶やかな音。本格派の分解能が優れたアンプのもつ、わざとらしくない反応の良さが従来の同社製アンプとは異なった次元の製品であることを物語る。いつもは鋭角的な4343Bがスムーズでフレキシブルに鳴る。ナチュラルな音場感の拡がり、音像定位のクリアーさは立派で、情報量が充分に多い。低インピーダンスMC型使用では、SN比が非常に優れ、ノイズの質が非常に高いのが特長である。総合的な完成度が充分に高く、大人の風格が備わった見事な製品である。
ダイヤトーン DS-503
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より
コーン型ウーファーの振動板材料に早くからハニカム構造振動板を採用したダイヤトーンの技術は、これを発展させアラミドハニカム振動板とダイアフラムとボイスコイルボビンを一体成型をする新技術によるボロンのドーム型ユニットを組み合わせた大型4ウェイブックシェルフ型システムDS505を昨年登場させ、デジタルオーディオ時代に対応するスピーカーシステムのありかたを提示し、反響を呼んだ。今回は、この設計方針に基づく第2弾製品として、3ウェイ構成のブックシェルフ型システムDS503が発売された。
システムとしての特長は、従来からブックシェルフ型の高級機種には完全密閉型エンクロージュアを採用する伝統があり、これがダイヤトーンの特長であったわけだが、本機では初めてバスレフ型が採用されている点が目立つ。エンクロージュアは、包留柄接ぎ方式を採用し、ポート部分にはアルミパイプダクトを採用しているのが特長。
ユニット構成は、新スキン材採用の32cmウーファーをベースに、ダイヤトーン・ユニファイド・ダイアフラムと名付けられた一体成型型直接駆動振動板採用で、新設計の65mmボロンドーム型スコーカーと同構造の23mmボロンドーム型トゥイーターの組合せである。ダイヤトーンDUDユニットの他の特長としては、ハードドーム型で一般的な手法である振動板の内側に制動材などによるダンピング処理がなく、そのうえ振動板前面のイコライザーもない設計があげられる。この利点は、アンプ関係の裸特性を向上してNFB量を少なくする設計と共通点がある。前面に障害物がなく、フリーダンプの振動板によるダイナミックで活き活きとした再生能力は、DUDユニットの隠された特長であり、魅力である。
ネットワークはスピーカーシステムの成否を握る重要なポイントだが、本機では圧着方式配線と2分割型新固定方法の採用で、単純な従来の固定方法とは一線を画した成果を得ている。
DS503は、床から30cm程度の台に乗せて最良のバランスとなる。低域は豊かで紙独特のノイズがなくクリアーである。中域のエネルギー感はたっぶりとあり、インパクトの強烈な再生能力は凄い。音の表情は505よりフレキシブルで親しみやすいが、併用装置による変化はかなり大きい。
ラックス 8025
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
無酸素銅線のコイルとトロイダルコアを採用し、独特なプラグイン方式の構造をもったステレオ昇庄トランスである。入力は切替なしに3〜40Ωをカバーするタイプで昇圧比は1対10・5、トランスとしては比較的類型の少ない、入出力が逆相の反転トランスである。
帯域バランスは低域を抑えた細身のシャープなタイプで、高域は素直に伸びている。音に適度にコントラストをつけ引締まった明快なサウンドであり、分離はトランスとしては優れる。
MC20は軽快でクッキリとコントラストをつけた音だが、少しスケールが小さく、305はよりナチュラルな帯域感をもち、適度に繊細でありながら音の芯がクッキリとし、楽器固有の音をそれらしく聴かせるが、やや小さくまとまる。
インプレスラボラトリー Model 999
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
3〜50Ωのユニバーサル型昇圧トランスだが切替スイッチはなく、接点を最少限に抑えた性能志向型。
帯域バランスは、柔らかな低域をベースとしてナチュラルに伸びた、トランスとしては広帯域型だ。中高域に適度に輝くキャラクターがあって音を爽やかにスッキリと聴かせるが、逆に、中域は少し抑え気味に感じられ、全体に音を少し小さくまとめ、音場感もスピーカーの奥に拡がるタイプ。
MC20は、爽やかで適度に反応が速くシャープな音だ。音色はニュートラルで軽く、滑らかさが特徴。
305になるとMC20と異なり全体に音の輪郭をクッキリとつけるタイプとなり、305にしては線が太くメリハリ型で弦楽器は硬質さがあり、ボーカルの無声音を少し強調する。
長谷川工房 V-81G
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
非常に高価格な1・5Ωと40Ω切替型のトランスで、受注生産のいわば特注品のスペシャリティ製品だ。
帯域バランスはナチュラルに伸び、トランスとしてはワイドレンジ型である。音の粒子は非常に細かく独特の抑えた艶があり、クォリティはトップクラスだ。
音色は軽く、明るく、少し控えめの素直な表情と音場感をスピーカーの奥に拡げ、全体に音を整理して細く美しく聴かせる点はHTM60Eと共通だが、クォリティは比較にならない。
MC20を軽快でスッキリと聴かせるし、305も爽やかで、いかにも現代型MCらしくワイドレンジで音場感の拡がりをきわだたせて見せる。とくにXSD15を艶やかに軽く聴かせるのは、本来と異なった音だが一種の不思議な魅力だ。
長谷川工房 HTM-60E
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
1・5Ωと40Ω切替型の昇圧トランスである。
聴感上のバランスは低域を抑えた細身のスッキリと滑らかなタイプだ。音の粒子は細かく、独特の艶やかさがあり、リアルに音楽を聴かせるタイプではなく、美しくキレイに聴かせる典型的な製品だ。音場感はスピーカーの奥に距離をおいて拡がり、音像は比較的に小さくまとまるが、輪郭はソフトでスッと定位する感じで、聴きやすい独特の雰囲気がある。MC20は全体に薄化粧の印象となり、線が細く、MC30的なニュアンスとなる。
305は、分離のよい滑らかでスムーズな音だが、
昇圧比が小さいようで、少しゲイン不足気味になる。両者の音の姜は少なく全体に美しい素直な音になり、スケールを小さくまとめる。
フィデリックス LN-2
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
006P電池を4個使う左右独立型電源採用のヘッドアンプで、シンプルな回路構成で高性能化するため、入力と出力が逆相の反転アンプを使用している。
聴感上の帯域バランスは低域を抑え、高域に向ってフラットなレスポンスをもち、音色は寒色系で線が細く、クッキリと輪郭をつけるシャープな音が特徴。
MC20はソリッドで締まった音となり音像を小さくシャープに定位させ、奥行きもスッキリと見通せるが、独特の中低域の豊かさは抑えられ、音が整理されて出るタイプだ。
305では、一段と爽やかで分離が良くなる。カートリッジの分解能をダイレクトに聴かせる性能をもつが、少し表情は硬い。なお、電源投入時のポップ雑音は強大で、使用上注意が必要。
ヤマハ HA-2
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
ヘッドシェル内部に初段アンプを組込み、金属接点スイッチ、信号ケーブルなどに起因する歪を解消しょうという構想のアンプで、本体内部にRIAAイコライザーも備えたヘッドアンプイコライザーである。
基本的にはフラットに伸びたレスポンスと、反応が速くダイレクトでシャープに粒立つ音で、一般のアンプと較べ、一段と鮮明で制約のない伸びやかさが特徴。
MC20は芯の明解な低域とクッキリと緻密さのある中域、抜けの良い高域が特徴でコントラストの利いた音になり、305は全体に穏やかで、落着いた音だ。
両者の音の傾向は相当に変わるが、原因の多くは組合わせたトーンアームの性質に関係がありそうだ。305はHA2用シェル付でアームはAC3000MC使用。
ヤマハ HA-3
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
自社開発低雑音ICを使ったヤマハ初のヘッドアンプ。入力切替は2段で、一般のMC型はLOWを使うが、入力インピーダンス100ΩのHIGHはmVオーダーの高出力用だ。入出力は逆相の反転アンプである。
聴感上の帯域バランスはワイドレンジ型で、ハイエンドとローエンドを抑えたナチュラルなレスポンスだ。音色は明るく、音の粒立ちはシャープで硬質な美しさをもつが、良く磨かれているために表面的な光沢として浮かび上がらないのがよい。低域は柔らかく穏やかで、反応はさして速くないが、安定感のあるベーシックトーンをつくる。
MC20は適度に抑制の利いたシャープさがあり、305はmV級出力用のHIGHの方がナチュラルで反応の速い音になる。
ビクター MC-T100
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
独自のIC製造技術を応用したマイクロコイルを針先に近くおいたダイレクトカップル方式MC型MC1、MC2E用に開発された高インピーダンス専用のトランス。カートリッジインピーダンスは20〜40Ω。
帯域バランスは、低域は少し抑え気味だが中域から高域はナチュラルに伸び、中高域にキラッと輝くキャラクターがある。
305は帯域バランスがなかなか良く、音源は少し遠いが音場感は拡がり、音像もナチュラルである。スケール感はやや小さい。
テクニカAT34EIIにすると、帯域バランスはスッキリとまとまり、安定感のある低域、密度のある中域がピタリとマッチ。位相差によるプレゼンスを自然に聴かせる音場感、定位のシャープさも相当に優れる。
ウエスギ U·BROS-5/TypeH
井上卓也
ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より
基本構造はタイプLと同様だが、高インピーダンスの40Ω専用トランス。バイパス機構はピンプラグを入出力ともに差し替えるシンプルな機構を採用。
基本的な音の傾向はタイプLと似て、音を端正に聴かせるクォリティの高さと音楽の実体感を両立させたタイプだが、このタイプHの方が反応が速く、フレキシビリティがあり、滑らかでリラックスした雰囲気がある。
305は、素直に伸びたfレンジ、程よく明るい音色とナチュラルな分解能があり、最先端をゆくトランスデューサーにありがちな素気なさがないのが良い。
XSD15は、鋭角的なシャープさが少し抑えられ、豊かな低域ベースの余裕タップリの熟成のきいた立派な音を聴かせる。
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