Category Archives: 国内ブランド - Page 138

サンスイ SP-LE8T

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 国産スピーカーの音決めにも一時は多くの影響を及ぼした寿命の長い製品だが、その間、ユニットの特性も少しずつ変わってきたし、エンクロージュアの材質や工作や最終的なコントロールの方向も相当に変化している。今回試聴したのは最近の製品らしいが、結論を先に書けば名器も少々おとろえたという印象である。最近の優れた製品と同列に聴いたから聴き劣りするというのではなく、明らかにこのシステム自体の性能が落ちてきている。初期から中期にかけての製品にはもっと引き緊ったシャープさがあった。硬質の音の中にも適度に余韻もあったし音に張りも瑞々しさもあった。今回のはその辺の特徴が少々薄くなっていて、妙にいじけて年をとったような鳴り方をする。レインジもせまく思われる。背面を壁につけたりトーンコントロールで低音や高音を補ってみたりいろいろやってみたが、ことに中低音域に国産スピーカーと共通の、音をことさらふくらませ濁らせるようなだぶつきが聴きとれるところから想像すると、LE8Tのユニット自体も変わっているがそれよりもキャビネットがずいぶん悪くなったように思われる。DECADE(前号)のようなクリアーな若々しさの出せるユニットのはずだ。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆★

アカイ ST-401

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ST301と同じようにフロアータイプ的な置き方を意図したらしく(むろん401ぐらいの大きさになるとブックシェルフ的に台の上に載せる方が無理があるが)、床の上に直接かまたは10cm程の台の上に載せた状態が最も結果がよかった。低音がふくらみ気味。ことに男声の低域(バス・バリトンの低い音域あたり)でこもる傾向があるので背面を壁からやや離す方が好ましい。混声合唱やオーケストラでも音量をしぼり加減の時には声部のバランスもなかなか悪くないし、ソロ・ヴァイオリンなども適度の艶をともなって柔らかいながら魅力的な音を響かせる。本質的にハードな音やハイパワーに弱いタイプで、どんな音でも柔らかくくるみこんでしまうし総体にやや暗い感じの重い音色になる。オーケストラの強奏になると、ことに中~高音域の延びが頭打ちになる感じで音がつぶれて飽和してしまう。301のところでも書いたように、正面切って音楽を鑑賞するというような作り方ではないらしく、あまり音量を上げずムード的に楽しむには、こういうあまり反応の鋭くないゆったりした響きの音も悪くないと思う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆★

ヤマハ NS-670

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 素性のいいスピーカーは試聴に入るまでのレベルセットに時間がかからない。とくに国産スピーカーの場合、2ウェイではうまいこと作るメーカーでも3ウェイになるとなかなか手こずるものだが、ヤマハNS650もうまくこなしたし、今度の670のまとめ方も大きな難点もなく水準以上の線にまとめている。スコーカーのレベルはメーカー指定のノーマル、トゥイーター・レベルはノーマルと-3dBの中間あたりで、ぴたりと決まった。ヤマハの製品に共通の抑制を利かせた行儀のよい鳴り方で余計なおしゃべりをしないから、音と音とのけじめのすっきりした端正な音を聴かせる。おえわのやや暗い鳴り方に対して中~高音域に適度の張りと爽やかさが感じられる。ただ、スキャンダイナのA25などと比較すると、A25がパッと眼前のひらけたような広がりを表現するのに670は少し姿勢の固いきゅうくつな鳴り方で、もっと弾みや艶が表現できてもよいのでないかと思える。たとえばクラリネットの丸みや艶のあるふくらみが、少々艶消しの感じで聴こえる。発売当初の製品に比べると低音の量感がわずかに増えたように思うが、低・中・高のバランスがもう少し滑らかになるとなお良く鳴るスピーカーだ。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

サンスイ SP-XII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 SP-XI(前号参照)が中音から低音にかけてウエイトを置いた厚手の音であるのに対し、XIIは逆に低音をおさえて中~高音のよく張った硬質の音を聴かせる。国産スピーカーの中では箱鳴り的な共鳴がよく抑えられている方で、中低音が奇妙にふくらんで音をよごすという国産に共通の欠点をXIIはあまり持っていない。といってクリアーといえるほど抜けのよい音は言いきれず、音が箱からふわりとこちらへ浮いてくるという感じが出にくい。言いかえれば演奏されている場の雰囲気をあまりうまく鳴らせないで、どこか音に硬い表情がある。それは低音域の抑えすぎというか弾みの足りなさでもあるようだし、相対的に中~高域が張りすぎて(だからといってレベルコントロールでおさえようとするとウーファーの音が優勢になりすぎるのでノーマルの位置より絞れないので)、よけいに硬さを感じさせるようだ。トゥイーターの鳴り方にいまひとつ爽やかさを欠くのも残念だ。聴きこんでゆくにつれて中音・高音のユニット自体にそれぞれかなり太く硬いトゲがあるように聴こえ、ことにヴォーカルや弦が滑らかさを欠くので、総体に大掴みな音、という印象が残る。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆★

ラックス LX77

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 たとえばヴァイブの鋭い切れこみやシンバル、スネア・ドラムの切れ味もシャープだし、ソロ・ヴァイオリンの高弦も、やや金属的で艶ももうひとつ不足ながら張りつめた冷たい肌ざわりを魅力ある音色で聴かせる。反面、そのヴァイオリンの胴に響く豊かな共鳴音をはじめとして中音域以下の土台(中音というもののウーファーの受け持ち音域だが)が弱く、音色の上でも中~高域に良いところがあるだけにウーファー(キャビネットも含めて)の質の弱さが目立ってしまう。そのためでもあると思うが、このスピーカーも、一応鳴らしはじめるまでのレベルセットに手こずった方の製品で、5点切換のレベルコントロールにここで決まったという最適位置がなく、いろいろやって結局仕方なくノーマルに戻したような次第だ。ともかくウーファーの鳴り方は問題外が、ふつうに鳴らすと中低域以下が引っこんでしまうし、トーンで補強すると妙に締りなくドロンとした音が、手前に出るよりも背面に廻って逆相で鳴るような感じで、どうやっても音楽の確実な支えになってくれない。良いところも持っているのだからぜひ改善して欲しいものだ。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆★

パイオニア CS-810

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 かなり図太い音のスピーカー、というのが第一印象として強い。最近のパイオニアのスピーカーは総体に音像をシャープに鳴らすというよりむしろやわらかくまるめて聴かせる傾向と言え、cS810もその例に洩れない。ことに中域から低域にかけてウエイトを置いて高域をまるめこんだというバランスのとりかたは、国産では最近のフォステクス製品などと一脈通じるつくりかたといえる。中低域に厚みをもたせ、高域を適度にカットする方向は、以前のARやKLHなどが手本になっているとも思われるが(最近のARは少し方向が違ってきたが)、どういうわけか国産の技術あるいは国産の材質、もしくは日本のエンジニアの耳でそれを作ると、困ったことに中低域がふくらみすぎて、しかも妙に箱の中の共鳴音のような感じのこもった音が総体に音を濁してしまう例が多い。したがって音の格調を損ないやすく、押しつけがましい、厚手の感触になる。こういう重い音を好きな人があるのかどうかは理解の外のことなのだが、これは音の重量感とか厚みと言う印象よりも、反応の鈍さ、音質の濁りなどのマイナス面の方を強く感じさせてしまう。高、中、低各音域の質感も少しずつ違う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆★

トリオ LS-400

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 前号でとりあげたLS300と、長所も弱点も共通の性格を持っている。まず低音域の量感が豊かだ。こういう量感は、最近のイギリスのスピーカーの一部に聴きとれるひとつの傾向で、一般に多くのスピーカーとは逆に置き方のくふうで低音を抑えないと、かえって低音の締りが悪く全域の音をふくらませることがあるので注意がいる。LS300のときも中音、高音のレベルセットがわりあい難しかったが、400のレベルコントロールもやや微妙な点があって、とくに中音域のレベルセットが難しい。言いかえれば、ウーファーの柔らかい鳴り方に対して中音域の特性又は音色に不連続の性質があるのか、中音を抑えると音がひっこんでしまうし上げすぎると出しゃばった圧迫感が出てくるのでこの辺がクリティカルだ。試聴では中音をわずかに抑え高音を逆に上げ気味に調整し、あとはトーンコントロールで補整するのがよかった。なおこの製品に限り量産に入ったものを追加試聴したが、生産途上で改良の手が加えられているらしく、中音域がかなり改善されていた。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

フォステクス GX-3000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 あらゆる音を大づかみに、線を太く鳴らすスピーカーである。ことに中域から低域にかけてのエネルギーが強く感じられ、そういう特徴は国産の多くの高域に上ずりがちな傾向のなかではむしろ好ましいともいえるのだが、たとえばアン・バートンのような声を年増太りのように聴かせる。総じてヴォーカルは年をとる傾向になり、フィッシャー=ディスカウなどずいぶん老けて聴こえる。この傾向はことにピアノの場合、タッチを太く、音像を大きく太らせて、やや格調をそこなう。中低域のふくらんでいるのに対して高音域がどこまでも延びていくというタイプでなくむしろ聴感上は高域を丸めて落としてしまっているようにさえ感じるので、ややもすると反応の鈍さが耳につくが、そういう傾向にしては、弦合奏だのオーケストラなど、このスピーカーなりの音色で鳴るにしてもいちおうハーモニーのバランスをくずさない点、国産のなかでは低・中・高の各音域のつながりや質感がわりあいうまく統一されている方だと思う。骨太で肉づきがよいという音の中に、もう少しシャープさや爽やかさが加わるといっそう良い感じに仕上がると思う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆

アカイ ST-301

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 大柄のトールボーイ(背たかのっぽ)型だから低音もかなり豊かに弾むのではないかと思ったが、意外にそれほどではない。総体にやかましい音をよく取り除いてやわらかく耳あたりよくまとめた作り方だが、音の芯がやわらかすぎるというか、少しふかふかしすぎる鳴り方だから、どちらかといえばバックグラウンド的な聴き方を意図していると思われる。したがって、ブックシェルフ一般の使いこなしのように台の上に乗せるよりも、中~高域のバランスなどうるさいことを言わずに床の上に直接置くぐらいの方が、低音もよく出てくるのでバランスの良い音が聴ける。女性ヴォーカルやヴァイオリンのソロなどでは、中~高域も、(ややひっこんだ感じながら)けっこうやわらかく適度の艶も感じさせるし、オーケストラも小音量では一応きれいなハーモニーも聴かせるのだが、パワーに弱く、フォルテでは音が濁るし、低音も箱鳴りが相当に派手なためにいささか締りを欠く。いわゆるハイファイ・スピーカーとして評価したら欠点の方が多そうだが、ムード的に小音量で聴き流すという作り方のようにおもえるのでそういうつもりで評価した。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆★

クライスラー PERFECT-1MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 このメーカーの音はモデルチェンジをするたびに振子の両極を行ったりきたりしているようなところがある。一時期ベストセラーで人気のあったCE1a、CE5aは柔らかく独特の繊細感があって、当時としては音楽のハーモニーを実に美しく鳴らした(中でもCE5aが最も優れていると今でも思う)。それがII型になると、中音域に妙な固有音をともなった硬い音に変わってしまった。次に出たパーフェクトI、IIは再び繊細で、やや弱さがあったもののふわっとひろがる耳あたりの良い音質を持っていた(CE1a、5aに次いでこの時期も良かったと思う)。そして再びMkII。CE1aが II型になったときのように、また中~高域に妙な硬さが出てきた。音量を絞った状態での静かなソロ・ヴォーカルや編成の小さな曲はいちおうソフトな耳あたりの良い音に聴こえるが、音量が上がるにつれて音のバランスが中~高域に片よって硬質の圧迫感が現われ、さらにハイパワーではウーファーの耐入力がともなわないらしく飽和したような濁りが出る。パワーには弱くとも旧型の方がウーファーとトゥイーターの違和感がずっと少なかったと思う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆★

ダイヤトーン DS-22BR

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 ダイヤトーン製品に共通の中音域のよく張った特徴を持っているにしても、その中では音のバランスに関するかぎり最もくせの少ない製品と聴きとれた。たとえば前号げてふれたDS26Bあたりの中域の張り出した音質は私には少々やりきれないほどやかましく感じられる場合があったが、22BRではそういうこともなく、すべてのプログラムを通じてあまり過不足を感じさせないうまいバランスを保っていた。ただしこれもダイヤトーン製品に共通の、高音域をある点からスパッと切る作り方は22BRでも同じらしく、少なくとも聴感上はハイがスッと延びているようには聴こえず、ステレオの音場の漂うような繊細感が感じられない。音の表情のしなやかさを出すというタイプでなく、生真面目に音をきちんと鳴らすという感じである。ことに弦の独奏や合奏では、音の芯の硬さがいまひと息とれてほしいように思う。パワーにはわりあい強いタイプで、ジャズの実況録音(”Live at Junk”)をかなりの音量で鳴らした場合も音がくずれたり濁ったりせずによく延びて、快適な音を聴かせてくれた。国産のローコスト型としては水準以上の立派な出来だと思う。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆

テクニクス SB-201

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 音の基本的な性格は前号(28号)でもとりあげたSB301、501とほとんど共通である。ひとつのポリシーを貫くという意味ではこれぐらい基本的な性質を統一できるという製造管理の技術を評価すべきかもしれないが、残念なカラこの共通の性格は前号にも書いたようにあまり好ましく思えない。そういう点をくりかえすのは心苦しいのでむしろ細かな話になるが、音域ごとに言えば、低音のおそらくあまり低くないf0(共振点)あたりに一ヵ所やや抑えの利かないブーミングが聴きとれ、中低音域では箱鳴り的な共鳴、中~高域では金属的な硬さがことに音量を上げると、やかましい圧迫感になり、またどのレコードでもヒス性のノイズを他のスピーカーよりも強調するところから中~高域のどこかに固有共振のあることが聴きとれる。以上の言い方は、価格を考えるとやや欠点を拡大しすぎたかもしれない。音量を絞りかげんにして、トゥイーター・レベルをマイナス2まで絞り、置き場所をくふうすると一見クリアーな鳴り方をするものの、本来の硬い無機的な鳴り方が音楽のしなやかな表情までをこわばらせてしまうように思える。

周波数レンジ:☆☆
質感:☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆
プレゼンス:☆
魅力:☆

総合評価:☆★

コーラル FLAT-8SD

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 明るい白木とまっ黒のネットのコントラストがすばらしく印象的で、国産品の中でも垢抜けたデザインが抜群といえる。そういう感じが音質にも現われてくれれば言うことはないのだが、長所の方から先に言えば、ステレオの音像定位が素晴らしく良い。たとえば、ソロ・ヴォーカルが中央にぴたりと定位し、音像が決して大きくならず、バックの伴奏の広がりとよく分離する。こういう定位の良さは、シングル・スピーカー独特の長所で、2ウェイ、3ウェイの製品にはなかなか少ない。しかしその長所をあげるには音質の上でのマイナス点がやや多すぎる。本来FLAT8のようなタイプのフルレインジ型のユニットを、こんな小さなキャビネット(といってもブックシェルフ型ではごく標準的だが)に収めれば低音がまるで出ないのが当然で、従って全体に音の表情が硬く厚みや豊かさのない、金属的で薄手の音になりやすい。背面に High Adjust というジョイントがあって高音を抑えてあるが、むしろそれは取り除いてアンプのトーンでハイを抑える方がまだ良かった。低音を増強したり、置き場所をいろいろ変えてみたりしたが、ほとんど床の上に直接置くぐらいでどうやらバランスがとれた。

周波数レンジ:☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆

ビクター JS-6

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 こせこせしない陽性の鳴り方。弦合奏のオーヴァートーンなどことににぎやかに聴こえ、総体に高音域の派手さが目立つ。トゥイーターのレベルを絞ってみると、ウーファーとの音のつながりがかえって悪くなるので、レベルセットは〝ノーマル〟(3時の位置)またはそれ以上に上げておいて、アンプのトーンコントロールでハイをおさえた方が結果がよかった。こういう小型・ローコストには低音の豊かさなど望むのが無理だから、背面を固い壁にぴったりつけたり、さらに、トーンコントロールのバスを補強するなど、低音の量感を補う使いこなしが必要だ。ローコストにしてはキャビネットの共振がよく抑えてあり、トーンコントロールで補整しても音がこもったりせずに低音増強が気持よく利くのは良い点だ。ウーファーとトゥイーターそれぞれの音色に違和感の少ないところも良い。価格を考えに入れなければあまり上質のクォリティとは言いにくいし、明けひろげの饒舌さが永く聴き込める音質とは言いにくいが、一万六千五百円の国産品の中では、という前提をつければ、なかなか良くできたスピーカである。

周波数レンジ:☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆
解像力:☆☆
余韻:☆☆
プレゼンス:☆☆
魅力:☆☆

総合評価:☆☆☆

マイクロ MR-622

菅野沖彦

スイングジャーナル 12月号(1973年11月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 プレイヤー・システムというものはレコードをかける事を喜びとするものにとって、もっとも身近な親しみをもって接する機械であり、手で触れる事の多いものである事はいうまでもない。例えていうならば、車のステアリングでありトランスミッションのチェンジ・レバーであり、インストゥルメント・パネル(ダッシュボード)である。事好きにとって、ステアリングやインストゥルメント・パネルの感覚は無視できない重要なポイントであり、これらのデザインに夢を求め、そのメカニズムの確度に喜びを感じる人が少なくない。したがって、プレイヤー・システムというものは、レコードを演奏するという心情にぴったりしたデザインと感触をもったものであることが望ましいし、この意味では、まだ、現在の全てのプレイヤー・システムが夢を満たしてくれるものとはいい難いのである。私など、もう数十年もレコードをかけ続け、プレイヤーに親しんできているのだが、こういう意味から大きな満足を与えてくれたものは、どういうわけだか、SP時代の78回転のターンテーブルと数10グラムもあるようなピックアップのついたもの以外にはないのである。LP時代になってからは、どうも心情的にぴったりきたものにお目にかかったことがない。私が小、中学生の頃使っていた父の電蓄のプレイヤーは、きわめて仕上げのいい板に針箱やパイロット・ランプが美しくはめ込まれ、ターンテーブルには、いかにも曖かい高級感に溢れたラシャが張ってあり、その堂々としたピックアップのトーンアームは重厚性をもち美しく仕上げられた魅力溢れるものだった。もっとも、今の塩化ビニールのLPではラシャのようにゴミをすいつけるものは全く不適当だし、感度のよい軽量アームということになれば、見た目にも冷い軽々しいものにならざるを得ないのだろう。技術の進歩はどうして、こうも、機械から暖かさを奪ってしまう事になるのであろうか? 淋しい限りである。また車の話しになるが、昔の自動車の内装の暖かさと重厚さは今の車に求む得べくもないし、国鉄の車輛でも同じような傾向だ。昔の客車の趣きは、今のペラペラ・ムードの特急車輛とは比較にならないほどの味わいを持っていた。こういう車輛はヨーロッパにいけば現在でも見ることが出来るが、日本ではもう夢だ。
 話しがそれてしまったが、プレイヤー・システムというものが、その基本的な動作性能に加えて、そうした味わいを持つべきことは、今さら私が強調するまでもないと思う。しかし、正直なところ、日本の高級優秀プレイヤー・システムのどれが、そうした夢を叶えてくれるだろうか? 日本製に限らない。外国製でも、そういうものがどんどん少くなってきている。アルミとグレーとホワイトに代表される現代感覚とやらにはもう食傷気味だ。冷いオフィス調のタッチを家庭にまでもち込むのはごめんこうむりたい。
 ところで、マイクロの製品は、従来から、マイクロのセンスの悪さが幸いして、そうしたモダニズムに走る危険から逃れていた貴重なる存在である。MR411、MR611など堅実な機構と性能をもった手堅い製品がプレイヤーとして実用的価値が高く、好ましいものであったが、そのデザインは凡庸であった。しかし、中庸をいく、嫌味のなさは浅薄なモダニズムよりはるかにましだと思っていたし、MR411、611シリーズは私の好きなプレイヤーだった。MR711というDDモーターを使った製品はまったく未消化のもので、お世辞にもほめられたものではなかった。デザイン的にも田舎者が急に洒落れこんだギコチなさ丸出しであった。せっかくアイデアを使いながら、繁雑で完成度の低いシステムに止まっていたのである。しかし、このMR622はちがう。優れた性能を温厚なデザインで包み込んだ、さりげない高級品として高く買いたい。DDモーターの性能も健秀でDCサーボも安定している。ワウ・フラ、S/N共、広帯域大出力装置に充分使える優れたものだし、トーンアームの感度も大変よく、しかも実用的で広い自重範囲のカートリッジをカバーする。ただしカートリッジはいただきかねる。トレースはいいが音像がへばりつき、音楽の生命が躍動しない。当然よりよいカートリッジを併せ持って発しむ事になるだろう。仕上げもまずまず。推薦品だ。

マイクロ

マイクロの広告
(スイングジャーナル 1973年11月号掲載)

Micro

ビクター JA-S5

岩崎千明

スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ステレオ・コンポーネントに対するビクターの熱の入れ方は昨年頃より猛烈というべきほどの気迫と闘志をもってなされ、すでに市場に空前の人気と好評をもって迎えられたブックシェルフ型SX3を始め、数多くのプレイヤーがある。さらに「標準機なみ」と識者間でささやかれた高級アンプS9と、この一年間に矢つぎ早やに驚くほどの成果をあげて「さすが音のビクター」という声もこのところ当り前にさえなってきた。
 そしてS9のあとをうけて、兄貴分S7なみの高性能と認められたS5が市場に出てはや、3カ月を経た。
 S5は5万円台のいうなればもっとも需要層の厚い分野の商品だ。
 逆にいえば、この5万円台はよく売れるということになり、このクラスの市販商品は目白押しに数も多くあらゆるアンプのメーカーの狙う層なのだ。
 ライバル商品のもっとも群がるこのクラスにビクターのアンプ・セクションはふたたび全力投球で、S5を送ったのである。
「出力の大きさ自体はともかく、あらゆる性能に関してS9と同等。やや以前に出たこの上のS7をも、しのぐ」というのがビクターの開発部O氏のことばだ。
 このことばの裏にはS5の性能に対する自信とともにS7を捨ててもS5を売りつくして商品としても成功させなければという決意がはっきりと受け取られるのである。
 このことばが決してハッタリやコマーシャル・メッセージでないことはアンプを持っただけでも納得できよう。5万円台としてはもっとも重い重量はそのまま電源の強力なことを意味しトランジスタ・アンプにおいての電源の重要度はそれは技術を徹底的に極めたもののみが確め得るところであった。事実S5は近頃がらばかり大きくなるアンプの中にあって割に小さい方であるにもかかわらず、重くそのケースを開けるとあふれんばかりに部品がぎっしりつまっている。
 しかもそれは手際の悪いためではなくこの上なく合理化され、十分に検討し尽されている上に、なおやっと収まったというほどに中味が濃い。
 例えば、ビクターのアンプの特長でもある例のSEAコントロールと呼ばれる5または7ポジションのトーン・コントロールもS5では5ポジションながら丸型つまみでスペースは小さくともれっきとした本格派のものがついている。プリアンプはガッチリしたシールド・ケースによってプリント基板ごとすっぽりと遮へいされているが、驚ろいたことに入力切換スイッチがこのケースの内側のプリント基板に取付けられていて、長い延長シャフトによって前面パネルに出ているのだ。こうすることにより入力切換スイッチにいたる配線は、あらゆる入力端子からもわずか数センチですむことになりアンプ高性能のために重要な高域特性が格段と優れることになるわけだ。こうした高価な処置は、長いリード配線をやらなくてすむための工程の節約によってまかなったと開発者はいうが、これこそビクターの経験ある大規模な生産体制でなくては出来得ないだろう。
 しかし、この処置は結果としてその利益につながるが決して生産性を向上させるための処置ではない。いままでなおざりにせざるを得なかったプリアンプにおける高域位相特性の改善を目的としたものである点にS5の良さのよってきたるところを知るのである。
 イコライザー回路は厳選に厳選を重ねたつぶよりの素子を組合せ実にフラットな特性を得ている。さらに最大許容入力はピーク時で驚くなかれ700mV。このクラスのアンプのなかではまさに秀一。ガッと飛び出して来るジャズ・サウンドには、広大なダイナミック・レンジが必要だがこのアンプは・その要求を心にくいまでに満足させてくれる。そして4チャンネルはビクターのお家芸。このアンプには将来4チャンネルにシステム・アップした時マスター・ボリュームとして使えるよう超連動の4連ボリュームが装備されている。
 S5は間違いなく今後もベストセラーを続けるであろう。それは日本のオーディオ界の良識と高品質とを代表する製品として。

アキュフェーズ C-200 + P-300

菅野沖彦

スイングジャーナル 11月号(1973年10月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 アンプのハイ・パワー化の時代といわれる中で、質量共にバランスした本格的な100ワット以上(片チャンネル)のアンプとなると外国製品に頼らざるを得なかった。今月の選定新製品としで選んだケンソニックの新しい製品、プリ・アンプ C200、パワー・アンプ P300は、国産ハイ・パワー・アンプの夜明けを告げるに充分なクォリティとパワーをもった第一級のセパレート・アンプである。C200はコントロール・アンプとしての機能を豊かに備えているし、その音質の透明な美しさは特筆すべきなのだが、こっちのほうは後で再びふれるとして、まず、そのパワー・アンプP300のほうから述べることにしよう。このパワー・アンプは片チャンネル150ワット(8?)の連続実効出力をもつもので、現時点では国産のモースト・パワフルなアンプである。ピュア・コン直結という最新回路を採用しているが、特に注目すべきは出力段にトリプル・プッシュプル方式を使っていること、全段は2電源方式プッシュプル駆動となっていることである。広いダイナミック・レンジや優れた位相特性を得ることができ、しかも安定した動作の得られるという理由をメーカーはあげている。ハイ・パワー・アンプのエネルギー供給源ともいえる肝心の電源部もさすがに余裕のある設計で、大きなパワー・トランスと4000μF×2の大容量コンデンサーが使われ、瞬間的なピークやハイ・パワー連続動作にも充分な安定を計っている。
 大型メーターをアクセントとしたパネル・フェイスをみても、いかにも、このアンプの実力を象徴しているようで、多くの国産アンプ中で、この雰囲気は一次元高いところにあるように感じる。決してオリジナリティやひらめきのあるセンサブルなデザインとはいえないが、デザインの姿勢、使われているマテリアルや仕上げの高級性が、誠実に高級品のイメージを横溢させていて好ましい。
 パワー・メーターは0dB、−10dB、−20dBの感度切換をもち、適度なダンピングで動く指針は、VUとピーク・メーターの中間ぐらいの動きを見せ、実用上アンプのピーク動作を読みとるには好適なもの。いたずらに華美なメーター・デザインの流行からすると、この地味な照明色や、フレームのデザインはいかにも高級品にふさわしい飽きのこない落着きをもっていて好ましい。
 附属回路として、50%、25%のパワーに制限出来る切換式のパワー・リミッター、17Hz以下、24KHz以上を18dB/octでカットすることによって聴感に大きな影響を与えることなく可聴帯以外ノイズを防ぐバンドパス・フィルター、4組のスピーカー接続可能の切換式のスピーカー・セレクターなどを備え、このクラスのアンプの使用者の便を充分考えてつくられている。
 実際に使ってみたこのアンプの実力は予想以上のものであった。アルテックのA7やJBLの4320などの大型システムを力感と繊細で緻密な解像力、そして柔かく透明感をもった魅力的な音で鳴らしたし、また、小型のブックシェルフにも低能率を補ってハイ・パワーの実力を発揮、朗々と鳴らしてくれた。音の品位の高さは近来のアンプにないもので、特にハイ・パワー・アンプにあり勝ちなキメの荒さ、高音域のヒステリックなとげとげしさといったものはよく制御され、美しいソノリティをもっている。
 C200はデザイン的にはP300にやや劣り、少々寄せ集めのデザインの散漫さが気になるし、すっきりとしたまとまりに欠ける。しかし、やはり、使ってあるマテリアルや仕上げからくる高級感は滲み出ている。全段直結で、しかも完全プッシュプル動作をもつイコライザー回路はユニークな高級回路として注目されるだろう。コントロール・アンプにふさわしい豊富な機能、そしてP300との組合わせにおける質の高い再生音は、世界の一級品に勝るとも劣らない。これだけのパワフルなアンプでありながら、残留ノイズの少なさ、綜合的なS/Nの大きさは抜群で、まさに静寂の中から大音響が立上がる音離れの気持よさを味わうことが出来る。このアンプのロー・レベルでの音のキメの細かさや透明感の魅力は、このノイズの少なさが、少なからず役立っていそうだ。国際商品としての視野でみてこのアンプ(特にパワー・アンプ)の値打ちは高い。あとはどれだけの酷使に耐えるタフネスと安定性をもっているかを時間をかけて確めるだけである。

サンスイ SP-707J, SP-505J

岩崎千明

スイングジャーナル別冊「モダン・ジャズ読本 ’74」(1973年10月発行)
「SP707J/SP505J SYSTEM-UP教室」より

 ジェイムス・B・ランシングが1947年米国でハイファイ・スピーカーの専門メーカーとして独立し、いわゆるJBLジェイムス・B・ランシング・サウンド会社としてスタートした時、その主力製品としてデビューしたのが38センチ・フルレンジスピーカーの最高傑作といわれるD130です。
 さらに、D130を基に低音専用(ウーファー)としたのが130Aで、これと組合せるべく作った高音専用ユニットがLE175DLHです。
 つまり、D130こそJBLのスピーカーの基本となった、いうなればオリジナル中のオリジナル製品なのです。
 こうして20有余年経った今日でも、なおこのD130のけたはずれの優れた性能は多くのスピーカーの中でひときわ光に輝いて、ますます高い評価を得ています。今日のように電子技術が音楽演奏にまで参加することが定着してきて、その範囲が純音楽からジャズ、ポピュラーの広い領域にまたがるほどになりました。マイクや電子信号の組合せで創られる波形が音に変換されるとき、必ず、といってよいほどこのJBLのスピーカー、とくにD130が指定されます。つまり、他の楽器に互して演奏する時のスピーカーとしてこのD130を中心としたJBLスピーカーに優るものはないのです。
 それというのは、JBLのあらゆるスピーカーが、音楽を創り出す楽器のサウンドを、よく知り抜いて作られているからにほかなりません。JBLのクラフトマンシップは、長い年月の音響技術の積み重ねから生み出され、「音」を追究するために決して妥協を許さないのです。それは、非能率といわれるかもしれませんし、ぜいたく過ぎるのも確かです。しかし、本当に優れた「音」で音楽を再現するために、さらに優れた品質を得るためには、良いと確信したことを頑固に守り続ける現れでしよう。
 5.4kgのマグネット回路、アルミリボンによる10.2cm径のボイスコイルなど、その端的なあらわれがD130だといえます。
 あらゆるスピーカーユニットがそうですが、このD130もその優秀な真価を発揮するには十分に検討された箱、エンクロージャーが必要です。とくに重低音を、それも歯切れよく鳴らそうというとホーン・ロードのものが最高です。(72年まではJBLに、こうした38cmスピーカーのためのバックロード・ホーン型の箱が、非常に高価でしたが用意されていました。)
 そこで、JBL日本総代理店である山水がJBLに代ってバックロード・ホーンの箱を作り、D130を組込んでSP707Jが出来上ったのです。
 つまり、SP707JはD130の優れた力強い低音を、より以上の迫力で歯切れよく再生するための理想のシステムと断言できるのです。
 あらゆる音楽の、豊かな低域の厚さに加えて、中域音のこの上なく充実した再生ぶりが魅力です。
 刺激のない高音域はおとなしく、打楽器などの生々しい迫力を求めるときはアンプで高音を補うのがコツです。
 SP505JはJBLのスピーカー・ユニットとして、日本では有名なLE8T 20センチフルレンジ型の兄貴分であり先輩として存在するD123 30センチフルレンジを用いたシステムです。
 D123は30センチ型ですが、38センチ級に劣らぬ豊かな低音と、20センチ級にも優る高音の輝きがなによりも魅力です。つまり、D130よりもひとまわり小さいが、それにも負けないゆったりした低音、さらにD130以上に伸びた高域の優れたバランスで、単一スピーカーとして完成度の一段と高い製品なのです。
 D123のこうした優れた広帯域再生ぶりを十分生かして、家庭用高級スピーカー・システムとしてバスレフレックス型の箱に収め、完成したのがSP505Jです。
 ブックシェルフ型よりも大きいが、比較的小さなフロア型のこの箱はD123の最も優れた低音を十分に鳴らすように厳密に設計されて作られており、この大きさを信じられないぐらいにスケールの大きな低域を再生します。
 このSP505Jも、SP707Jも箱は北欧製樺桜材合板による手作りで、手を抜かない精密工作など、あらゆる意味で完全なエンクロージャーといえます。
 JBLスピーカー・ユニットの中で、フルレンジ用として最も優秀な性能と限りない音楽性とを併せ備えた名作がこのLE8T 20センチ・フルレンジ型です。
 この名作スピーカーを、理想的なブックシェルフ型の箱に収めたものがSP-LE8Tです。かって、米国においてJBLのオリジナルとして、ランサー33(現在廃止)という製品がありましたが、そのサランネットを組格子に変えた豪華型こそSP-LE8Tです。
 シングルスピーカーのためステレオの定位は他に類のないほど明確です。高級家庭用として、また小型モニター用として、これ以上手軽で優れたシステムはありません。

個性あるSP707J・505Jへのグレードアップ
より完璧なHi-Fiの世界を創るチャート例

075の追加
 D130と075の組合せはJBLの030システムとして指定されており、オリジナル2ウェイが出来上ります。ただオリジナルではN2400ネットワークにより、2500Hzをクロスオーバーとしますが、実際に試聴してみると、N7000による7000Hzクロスの方がバランスもよく、楽器の生々しいサウンドが得られます。シンバルの響きは、鮮明さを増すとともに、高域の指向性が抜群で、定位と音像の大きさも明確になります。さらに、高域の改善はそのまま中域から低域までも音の深みを加える好結果を生みます。

LE175DLHの追加
 D130と並びJBLの最高傑作であるこのLE175DLHの優秀性を組合せた2ウェイは、D130の中音から低音までをすっかり生き返らせて、現代的なパーカッシブ・サウンドをみなぎらせます。鮮烈、華麗にして、しかも品位の高い迫力をもって、あらゆる楽器のサウンドを再現します。
 オーケストラの楽器もガラスをちりばめたように、楽器のひとつひとつをくっきりと浮び出させるのです。空気のかすかなふるえから床の鳴りひびきまで、音楽の現場をそのまま再現する理想のシステムといえます。

LE85+HL91
 LE175DLHにくらべ、さらに音の緻密さが増し、音の粒のひとつひとつがよりくっきりと明確さを加えて浮んでくるようです。LE175DLHにくらべて価格の上で20%も上るのですがそれでも差は、音の上でも歴然です。
 もし、ゆとりさえあれば、ぜひこのLE85を狙うことを推めたいのです。LE175DLHでももはや理想に達するので、LE85となるとぜいたくの部類です。しかし、それでもなおこの高級な組合せのよさはオーディオの限りない可能性を知らされ、さらにそれを拡げたくなります。魅力の塊りです。

HL91
 D130単体のSP707Jはこのままではなく、最終的にぜひ以上のような高音ユニット3種のうちのどれかひとつを加えた2ウェイとして使うことを推めたいのです。2ウェイにグレードアップしてSP707Jの魅力の真価がわかる、といってよいでしよう。
 D130だけにくらべ、そのサウンドは一段と向上いたします。いや、一段とではなく、格段と、です。
 2ウェイになることによってSP707Jはまぎれもなく「世界最高のシステム」として完成するのです。

LE20を加える場合
 D123のみにくらべ俄然繊細感が加わり、クリアーな再生ぶりは2ウェイへの向上をはっきりと知らせてくれます。ソフトな品の良い迫力は、クラシックのチェンバロのタッチから弦のハーモニーまで、ニュアンス豊かに再現
します
 しかも、JBLサウンドの結集で、使う者の好みの音を自由に出して、ジャズの力強いソロも際立つ新鮮さで、みごとに再生します。全体によくバランスがとれ、改善された超高域の指向性特は音像の自然感をより生々しく伝えるのに大きくプラスしているのを知らされます。

075を加える場合
 LE20にくらべてはるかに高能率の075はネットワークのレベル調整を十分にしぼっておきませんと、高音だけ遊離して響き過ぎてしまいます。D123の深々とした低音にバランスするには高音は控え目に鳴らすべきです。
 ピアノとかシンバルなどの楽器のサウンドを真近かに聴くような再生は得意でも、弦のニュアンスに富んだ気品の高い響きは少々鳴りすぎるようです。

LE175DLHを加える
 LE175DLHも075も同じホーン型だが、指向性のより優れたLE175DLHの方がはるかに好ましい結果が得られ中音域の全てがくっきりと引き締って冴えた迫力を加えます。楽器のハーモニーの豊かさも一段と加わり、中音の厚さを増し、しかもさわやかに響きます。
 075のときよりもシンバルのプレゼンスはぐんと良くなって、余韻の響きまで、生々しさをプラスします。
 クロスオーバーが1500Hzだから、中音まで変るのは当り前だが、中音の立ち上りの良さとともにぐんと密度が充実して見違えるほどです。

D123をLE14Aに
 高音用を加えて2ウェイにしたあとさらに高級化を狙って、D123フルレンジを低音専用に換えるというのが、このシステムです。LE14Aはひとまわり大きく、低音の豊かな迫力は一段と増し、小型ながら数倍のパワーフルなシステムをて完成します。

プロ用の厳しい性能を居間に響かせる
新しい音響芸術の再生をめざすマニアへ

プロフェッショナル・シリーズについて
 いよいよJBLのプロ用シリーズが一般に山水から発売されます。プロ用は本来の業務用としてギャランティされる性能が厳しく定められており、コンシューマー用製品と相当製品を選んで使えば、超高級品として、とくに優れたシステムになります。
 例えばD130と2135、130Aと2220A、075と2405、LE175DLHと2410ユニット+2305ホーンで、それぞれ互換性があります。
 しかし、一般用としてではなくプロ用シリーズのみにあるユニットもありそれを用いることは、まさにプロ用製品の特長と優秀性を最大に発揮することになります。

高音用ラジアル・ホーン2345と2350
 ラジアル・ホーンは音響レンズや拡散器を使うことなしに、指向性の優れた高音輻射が得られるように設計され、ずばぬけた高能率を狙ったJBL最新の高音用です。
 ホーンとプレッシュア・ユニットとを組合せて高音用ユニットとして用います。プレッシュア・ユニットにはLE175相当の2410、LE85相当の2420があり、さらに加えて一般用として有名な中音ユニット375に相当するプロ用として2440が存在します。
 2410または2420をユニットとしラジアル・ホーン2345を組合せた高音用は、従来のいかなるものよりも強力な迫力が得られ、とくに大きい音響エネルギーを狙う場合、例えばジャズやロックなどを力いっぱい再現しようという時に、その優れた能力は驚異的ですらあります。
 ラジアル・ホーン2350は、2390と同様に500Hz以上の音域に使用すべきホーンで、音響レンズつきの2390に匹敵する優れた指向特性と、より以上の高能率を誇ります。
 本来、中音用ですが、2327、2328アダプターを付加すれば、高音用ホーンとして使えます。
 この場合は、LE85相当の2420と組合せてカットオフ500Hz以上に使えるのです。拡がりの良い、優れた中音域を充実したパワーフルな響きで再現でき、従来のJBLサウンドにも優る再生を2ウェイで実現できるのです。
 2350または2390+2327(2328)アダプター+2420ユニットというこの組合せの高音用はJBLプロ用システムの中に、小ホール用として実際に存在しています。
 この場合の低音用はSP707Jと全く同じ構造のバックロード・ホーンに130Aウーファー相当の2220Aが使用されネットワークはN500相当の3152です。

2205ウーファーに換える場合
 プロ用シリーズ特有のパワーフルな低音用ユニットが、この2205で、一般用にLE15Aの低音から中音域を改良したこのウーファーは150W入力と強力型です。
 プロ用ユニットを中高音用として用いた場合の低音専用ユニットとして2205は注目すべきです。SP707JのユニットD130を2205に換えたいという欲望はオーディオマニアなら誰しも持つのも無理ありません。
 2205によって低音はより深々とした豊かさを増し、中域の素直さは格別です。とくに気品のある再生は、現代JBLサウンドの結晶たる面目を十分に果しましよう

2220と2215ウーファー
 SP707JのD130はフルレンジですが、プロ用シリーズの38センチウーファーとして2220があり、130A相当です。100Wの入力に耐える強力型で、130Aに換えるのなら、ぜひこの2220を見逃すわけにはいきません。またLE15Aのプロ用として2215があります。
 以上2205と2220ウーファーは、末尾のAは8Ω、Bは16Ω、Cは32Ωのインピーやンスを表します。2215Aは8Ω、Bは16Ωです。
 プロ用の高音ユニットは全て16Ωなのでもし正確を期すのでしたら、ウーファーも16Ωを指定し、プロ用の16Ω用ネットワークを使うべきです。

マイクロ MR-422

マイクロのアナログプレーヤーMR422の広告
(スイングジャーナル 1973年10月号掲載)

Micro

オンキョー Integra A-722

岩崎千明

スイングジャーナル 10月号(1973年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 発表時点より、少し時間を経た新製品、オンキョーA722が、今月のSJ選定品として選ばれた。
 少々遅れての登場には理由がないわけではない。
 つまり、今月のSJ試聴室には2台のA722がある。1台は、当初のもので、もう1台はその後運び込まれた新製品だ。この2台の中身は、実はほんの少しだが違いがある。
 結論をいうならば、この2台は外観も、規格も、仕様の一切は変らないのだが、その音に少しの差がある。それも、低音から中低音にかけての音のふくらみという点で、ほんの少々だが新しい方が豊かなのだ。
 それはSJ試聴室のマッキントッシュMC2300の響きにも似た豊かさといえよう。このわずかながらの音の向上が、今月の選定品として登場するきっかけにもなったわけだ。
 というのは、A722は新製品として誕生した時に、選定品たり得るべきかどうかで検討を加えられたが、ピアノの左手の響きなどに不満を残すとして、紙一重の差で選考にもれ保留されたのであった。
 その後、この音質上の問題点があるステレオ雑誌において痛烈な形で指摘されるところとなった。
 オンキョーのアンプは、従来それと同価格の他社製品にくらべ、きめのこまかい設計技術とそれによって得られる質の高い再生に、コスト・パーフォーマンスが優れているというのが定評であった。それは市版アンプの中でも一段と好ましいサウンドを前提としていわれてきたのであるが、そのサウンドというのは、トランジスター・アンプらしからぬナチエラルな響きに対する評価をいう。
 初期のA722においては、オンキョーアンプの特長で
もあるクリアーな響きが、紙一重に強くでたためか、硬質といわざるを得ない冷やかさにつながる響きとなってしまっていたようだ。その点が特に低い音量レベルで再生したときに、より以上強くでてしまうのは確かだ。出力60ワット、60ワットという高出力アンプであるA722をメーカーの想定する平均使用レベルよりもおさえた再生状態では、上記のことがいえる。
 A722を当初より手元において使っていた私自身、A722のロー・カットをオンのうえ、トーンコントロールは低音を400Hzクロスオーバーで4dBステップの上昇の位置で使っていたことを申し添えておこう。
 ところで、こうした再生サウンドのあり方は、メーカー・サイドでもいち早く気付くところとなり、ここではっきりとした形の改良が加えられた。
 今月、加わったA722はこうしたメーカーの手による新型なのである。
 当初から、大出力アンプA722に対して、8万円を割る価格に高いコスト・パーフォーマンスを認めていた私も、A722の中低域の引締った響きに、豊かさをより欲しいと感じていたが、その期待を実現してくれた。
 トーンコントロールの低域上昇によっても、中低域の豊かさはとうてい解決できるものではない。トーンコントロールで有効なのは、低音においてであり、決して中低域ではないからだ。
 もっとも、響きが豊かになったからといって決して中低域が上昇しているわけではない、アンプ回路設計のひとつの定石である負帰還回路のテクニックに音色上の考慮を加えたということである。性能、仕様とも技術的な表示内容が変らないのはそのためだ。
 なにか長々と改良点にこだわり、多くを費してしまったようだが、それは下記の点を除いてA722がいかなる捉え方をしても、きわめて優れたアンプになりえたからだ。
 もうひとつの不満点というのは、そのデザインにある。8万円近いA722が5万円台のA755と、一見したところ大差ない印象しかユーザーに与えないという点だ。確かにコストパーフォーマンスという点で、並いる高級アンプの市販品群の中にあって、ひときわ高いオンキョーのアンプには違いないが、そうした良さを備えているだけにより以上高級アンプとしてのプラス・アルファのフィーリングが欲しいと思うのは私だけではあるまい。
 だがこれを求めるには、やはり価格的な上昇を余儀なくされる結果に終るかも知れない。
 商品としての限界とマニアの希望とは、いつも両立しないのだが、この点アンプ作りのうまいオンキョーの「高級アンプA722」の悩みでもあろう。
 この悩みを内含しつつも、A722はリー・ワイリーの20年ぶりの新アルバム「バックホーム・アゲイン」をひときわ生々しく、ゆったりと、きめこまやかにSJ試聴室に展開してくれたのであった。

ヤマハ NS-690

菅野沖彦

スイングジャーナル 10月号(1973年9月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 ヤマハがコンポーネントに本腰を入れてから開発したスピーカーは、どれもがヤマハらしい、ソフト・ウェアーとハード・ウェアーのバランスのよさを感じさせるものが多い。このバランスがもっとも強く要求されるスピーカーの世界で、同社が優れた製品を生みだしているのは同社のそうした体質の反映と受け取ることができるだろう。
 かつて好評を得たNS650を頂点とする三機種のシリーズ、つまり、NS630、NS620に続いて、そのアッパー・クラスのシリ−ズとして開発されたのが、NS670、NS690という新しい製品である。前のシリーズとはユニットから全く新しい設計によるものであって、今回の2機種は、いずれも、高域、中域にソフト・ドームのユニットをもつ3ウェイ・システムである。エンクロージュアーは完全密閉のブックシェルフ型であって当然、アコースティック、エア・サスペンジョン・タイプのハイ・コンプライアンス・ウーファーをベースとしている。
 今月号の選定新製品として取上げることになったNS690は、もうすでに市販されていると思うから、読者の中には持っておられる方もあるかも知れないが、ごく控え目にいっても、国産スピーカー・システムの最高水準をいくものであり、世界的水準で見ても、充分このタイプとクラスの外国製スピーカーに比肩し得るものだと思うのである。
 世界的にブックシェルフが全盛で、しかもソフト・ドームが脚光を浴びているという傾向はご承知の通りであるが、このNS690も、よくいえば、そうしたスピーカー技術の脈流に乗ったもので最新のテクノロジーの産物であるといえる。しかし、悪くいえば、オリジナリティにおいては特に見るべきものはない。ヤマハはかつて、きわめてオリジナリティに溢れた平板スピーカーなるものを出してオーディオ界に賑やかな話題を提供したメーカーであり、独自の音響変換理論をアッピールし、しかも、これをNS、つまりナチュラル・サウンドとうたって、同社の音の主張を強く打出したメーカーであることは記憶に新しい。その考え方には私も共感したのだが、残念ながら、その思想は充分な成果として製品に現われたとはいえなかった。しかし、欧米の筋の通った一流メーカーというものは、自分の主張を頑固なまでに一貫し、これに固執して自社のオリジナリティーというものを長い時間をかけて育て上げていくと、いう姿勢があるのだが、この点で、ヤマハがあっさりと世界的な技術傾向に妥協したことは、精神面において私の不満とするところではある。だからといって平板を続けるべきだというのではないが……。もっとも、これはヤマハに限らず、全ての日本のメーカーの姿勢であって、輸入文化と輸入技術の王国、日本の体質が、そのまま反映していることであって、同じ、日本人の一人としては残念なことなのであるがしかたがあるまい。無理矢理なオリジナリティに固執して、横車を押すことの愚かさをもつには日本人は利巧すぎるのである。したがって、このN690も、これを公平に判断するには日本の製品という概念をすてて、よりコスモポリタンとしての見方をもってしなければならないだろう。そしてまた、世界的な見地に立って見るということは、専門技術的に細部を見ることと同時に、より重要なことは、結果としての音を純粋に感覚的に評価することになるのである。
 このスピーカーの基本的な音としての帯域バランス、歪の少ない透明度、指向性の優れていることによるプレゼンスの豊かさと音像の立体的感触のよさなどは、まさに、世界の一流品としてのそれであると同時に、その緻密なデリカシーと、一種柔軟な質感は、日本的よささえ感じられるという点で、音にオリジナリティが感じられる。これは大変なことであって、多くの日本製スピ−カーが到達することのできない音の質感と、それとマッチした音楽の優しさという面での細やかな心のひだの再現を実現させた努力は高く評価できるものだ。反面、音楽のもつ力感、鋼鉄や石のような強靭さとエネルギッシュで油っこいパッショネイトな情感という面で物足りなさの出ることも否めないのである。私の推量に過ぎないが、これは中、高域にソフト・ドームを使ったシステムの全てがもつ傾向であるようで、これが今流行のヨーロッパ・トーンとやらであるのかもしれないが……?

オーレックス

オーレックスの広告
(スイングジャーナル 1973年10月号掲載)

AUREX

マイクロ

マイクロの広告
(スイングジャーナル 1973年9月号掲載)

Micro

マイクロ

マイクロの広告
(スイングジャーナル 1973年7月号掲載)

Micro