Category Archives: 国内ブランド - Page 106

ラックス SQ38FD/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 F=ディスカウのびろうどのようなバリトンが、いかにも血の通った暖かい声帯の湿りけを感じさせる。イタリア弦楽四重奏団のヴァイオリンやチェロが、軽やかに、そして木の胴の柔らかな共鳴音を豊かに響かせる。ハインリヒ・シュッツ合唱団のバッハの、声の溶け合いの美しさ。ラックスがこのプリメインでほとんど唯一といえる管球アンプを残している理由がはっきりしてくる。むろん、最新のTRアンプの、あの隅々まで見渡すような音のひろがりや解像力は望むべくもない。低音域では音像を甘くぼかしてしまう。旋律の動きと重なりを、一つひとつ明らかにするのではなくマッスとして、そしてどこか古めかしい、あるいは懐かしいといいたいような音で聴かせる。ただし、ポップスやジャズになると、どうひいきめにみても、平面的でつまらない音で鳴らしてしまう。クラシックを、ほどほどの音量で楽しもうというとき、いまだに貴重な存在といえそうだ。

ローテル RA-1412

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 ローテル・ブランドのアンプも、もう何年も前から本誌でたびたびテストしているが、これまではいつも水準すれすれの出来であっても、とりたてて傑出しているということはなかった。そういう印象が頭にあったせいか、このアンプから出てきた音を、一曲一曲聴き進むにつれてただびっくりして聴いてしまった。これは出来のいいアンプだ。
 まず第一に音のバランスのコントロールが絶妙だ。難しいベートーヴェン「18−4」のクヮルテット第三楽章の、トリオのハイポジションで馬脚をあらわすアンプが多いのに、ローテルはほどよく潤いを持ってしかも弦のみずみずしさを十分に保ってしっとりと響かせる。シンフォニーのトゥッティでもバランスや分解能に破綻をみせないし、菅野録音のベーゼンドルファーの打鍵音が、ほかの高級機も顔負けの美しい響きと艶を持って鳴る。ダイレクトカッティングのパーカッションも、力も密度もありよく弾む。

ヤマハ CA-2000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 1000IIIと公称出力で2割しか差がないから、理くつの上からはそんなに違いがない筈だが、たとえばダイレクトカッティングのパーカッションで最大出力まで上げてみると、1000IIIの出力計が瞬間のピークでも百二〜三十ワットで頭打ちになってしまうのに、2000の方は優に200W以上まで振り切る。聴感上からも音の伸びは格段に良い。音量を絞ったときでも、1000IIIにくらべるとひとつひとつの音がよく弾み、表情にしなやかさ、繊細さあるいは優しさがあって、総体に1000IIIよりも音楽をはるかに楽しく聴かせる。1000IIIよりも音に軽やかさがあって品位が高い。Aクラスに切替えたときの差は1000IIIよりもはっきりと出る。音の艶、ことに個人的には女声の色気がもう少し欲しい気がするものの、良い音を聴いた、という満足感に満たされるということは、たいへんなものだ。1000IIIの兄弟には違いないが、こちらの方がだいぶ出来がいいと思う。

トリオ KA-9300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 前の三菱DA−U850と同じく、15万円の線を越すとさすがに音のクォリティがぐんと上がる。ただし鳴ってくる音の傾向は対照的といえるほど違う。たとえば「悲愴」のフォルティシモの部分で、左右のスピーカーのあいだに最も音のよく広がるタイプのアンプであった。楽器のパートごとに空間的な距離や広がりや奥行が感じとれる。そして音の消えてゆくときの余韻が美しい。DA−U850のあとにこれを聴くと、そうか、850の鳴り方はいわば音そのものという感じで、この響きの部分が不足していたんだな、と思えてくる。9300の方は、弦の高域のしなやかな表情や、女声の艶々しさを、かなりいい感じで聴ける。ただ、弦楽器の木質の響きにもう少し自然な感じが欲しい、というように、中音域の質感にもう少し自然さと密度が加われば一層いいと思える。それにしても、音楽を聴く楽しさを味わうことのできる良いアンプのひとつだと思った。

ダイヤトーン DA-U850

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 充実感のある音だ。しかも音の質が非常に高い。変な言い方だが、金のかかったぜいたくな音、つまりローコストのアンプでは絶対に鳴らしえない立派な音のすることが、聴いていてはっきりとわかる。たっぷりと密度のある豊かで安定な音が一貫している。低音域から高音域まで、音に力と重量感を感じさせる。つまり軽々しさがない。その意味では、プリメイン型としては望みうる最高の水準の音だと思う。しかしそこで多少の好みを言わせてもらえれば、音の密度あるいは力が、すべての音をやや線を太くする傾向が、そして、音と音とのあいだに空間的なさわやかなひろがりの感じられにくい点が、私には少し重荷に感じられる。楽器の音が鳴ってホールの隅々までひろがって消えてゆく、その空間のひろがりと消えてゆく余韻の部分が、私の聴き方では少し不足しすぎるように思える。ふわっと漂う感じの音、細やかに繊細にしなやかにゆらめく音、が出にくいタイプだ。

サンスイ AU-10000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 外観はひと世代まえのシリーズの系統だが、内容は607や707の新シリーズのグレイドアップモデルだそうで、そのことは音の上にもはっきりとあらわれている。607が中高域に独特の艶と張りをもたせて表情をくっきりさせ、707はそこに密度が加わって安定感のある音を聴かせる。607ではやや目立った中高域が、ここでは逆に中低域の厚みにすっぽりくるみこまれた感じで、音に浮わついたところの全くない、坐りのよい音で聴き手をくつろがせる。プログラムソースの中でも、アン・バートンのしっとりした色気や、八城/ベーゼンドルファーの打鍵の音の芯のしっかりした、しかもえもいわれない艶を、かなりのところまで聴かせてくれた。ただ、クラシック系で、ことにスペンドール系のソフトなスピーカーを鳴らしてみると、中低域の厚みがやや鈍重すれすれという感じに近くなる。トーン及びフィルターのONでの音質の曇り方が相当に目立つのはうれしくない。

ラックス L-309V

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 ラックスというメーカーが体質的に持っている上品さ、押しつけがましさのない控えめな印象が素直に音になっている。これみよがしな、あるいは大上段に振りかぶるようなところが少しもなく、上品に磨かれた、聴き手に安らぎを与えるような渋く美しい音。粗野なところがなく、低域から高域までの全帯域を、同じひとつの質感で鳴らすので、いつまで聴いていてもどこかおかしいというような感じを抱かないで安心して楽しめる。以前の製品でともすると不足しがちだった中低域の力や音の密度も、309Vでは過不足なく具えている。こういう上品な音は、クラシックにはむろん悪いわけがなく、弦やヴォーカルを滑らかに気持よくハモらせるがピアノの打鍵やポップスのパーカッションのハイパワーでも、腰くだけにならず十分に聴きごたえのある質の高い音で聴ける。素晴らしいとまではいえないかもしれないが、飽きのこない上等の音質といえるだろう。

オーレックス SB-820

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 古い東芝時代、その後オーレックス・ブランドに改めて以来、アンプ作りはけっこう永いメーカーだが以前の製品では概して音のバランス面で注文の多かったのに対して、今回の製品では音域のバランスの点ではあまり問題はなく、聴感上のレインジの広い、力のある音を聴かせる。少なくとも大掴みな印象からは、破綻のない製品だと思う。
 ただ、これが14万円近い価格であることを前提にして、価格的に競合する他社製品を並べて聴くと、残念乍ら音の基本的なクォリティ(品位)あるいは緻密さという面で、もうひと息の磨きが足りないのか、質感に滑らかさあるいはしっとりした美しさを感じさせにくいし、いくらかきめの粗い、音と音とのあいだに何か隙間があるような、そこを潤滑油で満たしたいような、何とももどかしい感じになってくる。コンストラクションやデザインも意欲的で良心的なのだから、いまひとつ練り上がれば良いアンプになると思う。

マランツ Model 1150MKII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 ボリュウムを思い切り上げてみても、表示パワーから想像するよりも力のある音が鳴る。カチッと引締って、やや輝きが強いがファンダメンタルの音域での密度の力のたっぷりした音は一種爽快でもある。彫りの深い感じの音、あるいは目鼻立ちをことさらくっきりと際立たせるような音、といえる。ただ、それは音の基本的な性質がやや華やかであり、しかもコントラストが強い、いわば明暗の比をややきつい方向で鳴らす傾向を持っているためと思われ、ポップスのパーカッションなどは非常に輪郭の鮮明な、いかにも鮮度の高いという感じの音で鳴らす反面、クラシックのオーケストラや合唱曲で、音に一種の抑制を必要とする部分でも、そこをからっとてらいなく鳴らしすぎるようなところがある。大型スピーカーを組合せるよりも、ブックシェルフタイプの中型以下の音のややソフトなスピーカーの場合に、ほどよく音を引締めて新鮮に鳴らすという傾向のアンプだ。

ヤマハ CA-1000III

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 音の明るいこと、上品な清潔感を感じさせること、がヤマハの各機種の特徴だが、さすがに1000番のクラスになると、CA−R1で感じたような音のいささか軽すぎる不満が解消されて、密度の濃く、力もある聴きごたえのある音に仕上がってくる。ポップスのパーカッションで、一瞬のピークだが公称出力の100Wをしばしば振り切るぐらいまで音量を上げてみたが、いささかの危なげのないどっしりした音で鳴った。トーン回路やフィルターをON・OFFしても音質の変化はきわめて僅か。MCヘッドアンプの出来栄えも一応立派だ。Aクラスオペレーションの音は、瞬間切替ではほとんど差が聴きとれなかったが、長時間聴きこむときに多少の差になるのだろう。ともかく良くできたアンプといいたいのだが、2000とくらべると、どこか音に伸びきらないところがあって、音楽の微妙な表情を、やや一本調子にしてしまうような感じがあり、十分満足とはいいにくい。

オンキョー Integra A-722nII

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 たとえば弦楽器の高音域から高次倍音にかけての広い音域で、いくぶん線が細くウェットだが、しなやかで艶のある音質が特徴といえる。女性ヴォーカルなど、一種なまめかしいと言いたいような艶のある声を聴かせるし、たくさんの楽器がつみ重なって強奏しているときでも、音と音のあいだに適度の空間と距離感を感じることができて、いかにも強奏している場のひろがりと奥行きがよく出る。こういう鳴り方はこのアンプ独特の魅力だと思う。反面、音楽のメロディーの音域、つまり中低音域あたりで、音の土台あるいは力として感じとれるべき音の密度が、最近の新しい製品の中に混じるとやや不足して聴こえる。ことにポップス系のパーカッションやピアノや、ウッドベースのピツィカートやエレキベースなどで、緻密な力強さや迫力が出にくい。得がたい良さを生かしてぜひともマークIIIとしていっそう磨きをかけて欲しい製品だ。

パイオニア SA-8800II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 仮にも6万円以下で、このアンプよりも鮮度の高い音クリアーな音を、とたずねられればデンオンの501を推すだろう。いくらか線が弱くても柔らかい押しつけがましさのない音をときかれればオンキョーのA5と答える。音の輪郭の目鼻立ちのはっきりしたのが欲しい、となればトリオ7100Dが浮かぶ。
 しかし、そうしてあえて口に出すような特徴よりも、すべてのプログラムソースを、そしてどんなタイプのスピーカーやカートリッジを接いでも、一応のバランスの整った,硬すぎず柔らかすぎず、線の細くなくしかも強引でない、ウェットすぎもせずドライすぎもしない、つまり平均点で過不足のない音が欲しいというような、たとえばこれからコンポーネント用のアンプが欲しいというような人に対しては、第一に推薦できる。要するに最も中庸を得た、ある意味では絶妙なバランスポイントにまとめられた、というのがこのアンプの性格だ。

トリオ KA-7700D

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 基本的には7100Dの音とよく似ている。というよりも、この7700Dの持ち味を、半分の価格でも鳴らそうといろいろ味の素を利かせたのが7100Dの音だったのか、ということが、こちらを聴くうちに理解できた。さすがにこのクラスになると、小細工あるいは手加減で聴感上の音を整えるということはせずに、正攻法で水準以上の音を鳴らすことが可能になるために、プログラムソースを替えスピーカーを替えて聴いていっても、ソースやスピーカーによる適不適のようなものは少なく、音の輪郭のくっきりした鮮度の高い音が一貫して聴きとれる。とても生き生きと音楽の表情を生かすところがこのアンプの特徴だが、弦のユニゾンや合唱曲などで、響きをもう少し柔らかに聴かせて欲しいという気もする。ボリュウムを上げたときも絞ったときでも、ノイズの非常に少ないこと、そしてトーンをオン・オフしても音質の劣化の少ない点はさすがに高価格帯のアンプだ。

ソニー TA-5650

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 TA3650でも感じたことだが、ソニーのアンプは新しいシリーズになってから路線を変更しはじめたように思う。どういうプログラムソースでも音にいじけたところがなく、朗々とたっぷりした響きで豊かに鳴る。ナマの楽器の持っている一種の明るい自在な響きを、このアンプはよく掴まえて聴かせる。音楽のファンダメンタルの領域でいかにも音が充実しているので、音がやせたり細くなったりしない。ただ3650のところでも書いたように、弦の高域など繊細であるべき音をいくらか太目に表現する傾向があるが、音に新鮮さとしなやかな表情があるために、音の太いことが聴き手にあまり不満を感じさせない。JBL系のスピーカーで合唱曲など聴くと、押しつけがましさがないとはいえないが、総体に長所の方が多く、よくできたアンプといってよさそうだ。この価格帯ではパワーが少なめだが、聴感上の音量を相当上げてもパワー不足という感じはしなかった。

ダイヤトーン DA-U750

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 力のある音。ことに中音域のかなり広い音域を張り出させて、低音域にかけて適度の力を持たせた音、というように聴きとれる。また、これはDA−U750に限ったことではなく、スピーカーを含めてダイヤトーンの音は、高音のオーヴァートーンの領域で、スッと伸ばすという感じと逆に、いわゆるハイエンドをおさえこむ方向にまとめてあるので、高域でのたとえば弦合奏のユニゾンで音が空間を漂いながら消えてゆく、というような感じが出にくい。ただ、U850になると音全体に力と密度が充実してくるが、750ではそこまでの力はないので、850より柔らかい音に聴こえる。ことに低音の領域では音をややゆるめる傾向があるので、低音楽器がときとしてダブつき気味になることがある。総体にやや中間色的な、光沢のあまりない音質なので、スピーカーとこちらのあいだに、何か厚手の幕が遮っているような多少のもどかしさを感じさせる。

Lo-D HA-5300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 ピアノの強打音でも管弦楽のトゥッティでも合唱曲でも、決してやかましい音を出さないし、汚れのないきれいな印象の音を鳴らす。それはとても耳当りがいいのだが、しかしどこか耳たぶをくすぐられているような、どういう音も裏声で聴かせるような、一種不思議な独特の音色だ。それが、原音を何か色めがねを通して眺めるような、あるいは原音をプラスチックでそっくりコーティングしてしまったような、要するにもとの音の肌ざわりに直接触れえないようなもどかしさあるいはいら立ちを、おぼえさせる。以前HS400について似たような表現をしたことを思い出した。するとこれがLo−Dの音なのか。どんなプログラムソースでもどんなタイプのスピーカーでも、同じ色あいで鳴らすという点では、おそろしく自己主張の強い音質ともいえるが、決して粗野なところがないきれいな音だから、これでなくてはというファンもあるだろう。

オーレックス SZ-1000

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 SZ1000は、エレクトレット・コンデンサーカートリッジ専用のイコライザーアンプで、アンプの電源電圧を従来の製品より高くとり、2段直結差動アンプを組合わせて、ダイナミックレンジを増大させている。信号系のコンデンサーは、スチロール型などのフィルムコンデンサーを使用し、聴感上の音質を重視した設計である。標準出力は0・5Vと、かなり高い。

オーレックス C-400

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーレックスのエレクトレット・コンデンサーカートリッジには、CD4方式に対応できる、広帯域型のモデルとして、C404Xがあるが、今回の製品は、C404Xをベースに2チャンネル専用として開発された、C400である。
 振動系の重要な部分である、カンチレバーには、新素材のボロンが使われている。ボロンは、軽量であり剛性が高い特長をもち、カンチレバー材料としては注目されていたが、この種の新素材に共通な加工の困難さがあるため実用化できなかったが、この、C400には、ボロンを0・3mm直径の棒状に加工したものを採用している。また針先は、微小なチップで振動系の実効質量は非常に小さい。なお、C400は、アルミニュウムとマグネシュウム合金の一体成型のヘッドシェルが付属している。

デンオン DP-1800

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンオンには、すでに、プレーヤーベースの上板に天然大理石を採用した、DP3750があるが、このDP1800も基本的には、同じ構想でまとめられたプレーヤーシステムである。
 DP1700の上級modelである、このシステムは、まず、質量が大きく耐ハウリング性を向上するためと、デザインの両面からプレーヤーベースに天然大理石とパーチクルボードを接合して使用している点が目立った特長である。
 フォノモーターは、基本型は、DP1000で、ストロボスコープ窓部分にカバーが付けられた点と、レーザー光によって振動解析の結果、スピーカーからの音圧などによるレコード盤の振動を抑え、音質の劣化を防ぐ、新開発ブチルゴム系のターンテーブルシートを使っている。
 トーンアームは、S字型のスタティックバランス型で、1回転で2・5g針圧が変化する回転型のカウンターウェイト、ダイアル式のアンチスケート機構をもつが、アームボディとパイプ間に、ダイナミックダンピング機構が設けられ、パイプ自体をダンピングするほかに、プレーヤーベースからの振動を抑えて、カートリッジの性能を素直に引き出す設計である。
 このシステムは、音をスッキリと整理して聴かせるタイプである。聴感上の帯域バランスは、とくに伸びきった印象こそないが、ナチュラルであり、素直にカートリッジの音色を引き出す点は好ましい。このクラスのシステムとしては、基本的なクォリティも高く、オーソドックスな製品である。

マランツ Model 6100

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、同社のもっともローコストなプレーヤーシステムである。モーターは、シンクロナス型で、ベルトドライブによりターンテーブルを駆動する。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、SME型のアンチスケート機構付であり、オートリターン・オートカットのセミ・オート型の機能を備えている。なお、インシュレーターは上級機と共通のタイプである。

マランツ Model 6200

井上卓也

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 この製品は、トータルマチック型と呼ばれるフルオート型プレーヤーシステムである。レコードサイズと回転数を選択した後に操作レバーをPLAYの位置にするとアームはメカニズムにより自動的にリードインするタイプで、REPEAT機構も備えている。オートの動作は、比較的にスムーズであり、メカニズムは安定している。
 モーターは、FG型のACサーボ型で、ターンテーブルは、ベルトにより駆動されるが、このタイプの特長で、スタートが早く、トルクも充分にある。トーンアームは、S字型スタティックバランスタイプで、ダイアル式のアンチスケートデバイスが付属している。
 このシステムは、MODEL 6300よりもクリアーな音で、低域の音の芯が強く反応も少し早い。聴感上の帯域は、さして広いタイプではなく、細部を引出して聴かせることもないが、音の輪郭を外側から掴み、クッキリとした音を聴かせる。

サンスイ AU-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 AU607とこの707とで、サンスイのアンプは永い間の不調から完全に立直ったばかりでなく、同クラスの優秀製品を明らかに追い越す見事な出来栄えをみせた。707と607の音は基本的には同じ延長線上にある。ひと言でいえば音のクリアーなこと。しかも、一聴してクリアーなアンプの中に、えてして硬質で弦やヴォーカルなどを硬く鳴らすのがあるが、サンスイの新シリーズではそういう欠点がなく、たとえばピアノの打鍵音やパーカッションの力強さを、芯をしっかり失わずにしかも艶めいて実に美しく鳴らしながら、弦や女声でのしっとりした感じも十分に聴きごたえがある。607では中〜高域の音の艶がいくらか過剰すれすれに鳴ることもあったが、707では中低域から重低音域にかけての基音の支えがしっかりしているために、どんな曲でもバランス上の破綻もなく見事に鳴らす。新デザインも音と同じくとてもシックな出来栄えだと思う。

オプトニカ SM-3510

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 とても派手やかに、にぎにぎしく鳴る音だ。それはパーカッションなど場合に、一種鮮烈な音で聴き手を驚かせる。そうしたいわばブライトな音の魅力というものがありうるが、しかしそれをひとつの武器としながら、弦や声のように潤いや緻密さや全域に亘る音色の統一やバランスを要求される音を鳴らすには、この音はややけばけばしすぎて違和感をおぼえる。輝きのある音をひとつの特徴あるいは個性として売るアンプがあっていい。またそういうアンプが、たとえばスピーカーやカートリッジの音の表情のやや乏しい場合に、うまい味つけをすることもある。が、いま鳴っている音は、それを特徴あるいは武器とするには、もうひとつリファインされていない。全体の構成や作り方には、メーカーの意欲と熱意が強く感じられるのだから、作り方の方向づけにピントが合いさえすればこれはかなりのアンプになる素質を持っていると思う。

デンオン PMA-501

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 クリアーでよく引締った音。それがスペンドールのようなソフトな音スピーカーをほどよく引立たせるが、JBL系のスピーカーでも、トリオの7100Dほど骨っぽくはならない。中〜低音域でもう少し音に量感が出るとなおよいと思うが、音の表情を生き生きと、一種新鮮なみずみずしさで鳴らす魅力は、6万円以下のランクとしてはなかなか得がたい良さだ。7100Dの場合、聴き込むにつれて味の素を効かせすぎるような感じが目立ってきて、デンオンの方が正攻法で作られながら、音の鮮度も魅力もそなえていることがわかる。ただし、鳴っている最中にトーンのON−OFFなどファンクションスイッチ類をいじると、スピーカーからやや大きめの雑音が出る傾向があって(そういうアンプはほかにもあったが、デンオンは雑音がなかば周期的に増減するという妙な性質があって)なにか不安定要素があるのではないかとちょっと気になった。

デンオン PMA-701

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 中域から低域にかけて独特の力を感じる。反面、高域のことに楽器のオーヴァートーン(高次倍音)の領域にかけての音の繊細さと冴えがものたりない。したがって総体に重量感を感じさせるが、どこか力まかせで押しまくるような印象がある。大づかみにいえば、こういう音は、同じデンオンのセパレートアンプ1000Bシリーズの鳴らす音に、バランスという点で一脈通じるように思え、その意味ではデンオンの音質決定のグループの中に、こういう音を好きな人がいるのに違いない。ただ、中低域以下に力を持たせて高域を丸く作った、いわゆるソフトで力強いバランスであればそれなりの個性といえるかもしれないが、総体にどことなく品位と透明度の低い音がすると思うし、ことに合唱曲や管弦楽のトゥッティで、パートごとの旋律のこまかな動きを、分厚い中間色で塗りつぶすような傾向があって、これは501とはずいぶん傾向の違う音だと思った。