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3〜5万円クラスのスピーカーシステムのベストバイ

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「読者の質問に沿って目的別のベストバイを選ぶ」より

 現在市販されているスピーカーシステムでは、価格的にみれば、もっとも製品数が多く、需要が集中しているのは、2万円台の後半から5万円台にいたる範囲である。とくに、ここでテーマとなっている3万円台から5万円台の価格帯は、現在の標準ブックシェルフ型システムでいえば、小型から中型の製品がほとんどであり、最近とみに注目を集めている超小型システムの海外製品は、この範囲に入るものもある。
 もともとスピーカーシステムは、機械的なトランスデューサーであり、エレクトロニクスを中心としたアンプのように素材・技術の急激な変化や発展がないために、この価格帯になかにも発売された時期がかなり古い製品も多く、見逃しがちである。しかし、基本的な性能・音質が優れていれば、最近のように進歩が著しいアンプでドライブすれば、発売時期での印象がかなり変化することをよく経験する。また、発売時点が古いということは、物価上昇を考えれば、現在の同等価格の新製品よりも物量を投入してつくられていることも見逃せない点である。
 スピーカーシステムで必要なチェックポイントは、ステレオフォニックな音場再現と音像定位の問題が基本であり、次に、音量の大小でバランスが変化しないことがあげられる。これらは、オーディオ的な経験や知識をほとんと必要とせずチェックできるメリットがある。また、FMチューナーの局間のノイズ、ディスクのスクラッチノイズやテープデッキのテープヒスなどのノイズの量と質に的を絞ってチェックすることも、少し慣れれば比較的に容易であり、スピーカーシステムにとっては、再生音で判断されるよりもはるかにシビアな方法である。
 以上を簡単に整理すると、音場感では、前後方向の遠近感が十分にとれるかどうかの点である。たとえば、楽器などが横一列に並ぶのは最悪である。また、音像定位では、ヴォーカルなどの音像が小さくまとまり、音像の輪郭がクッキリとし、音像が移動しないことが大切である。ノイズは量的に少ないのが当然好ましく、質的には耳ざわりなものや音楽や音に影響が少なく、分離のよいものが好ましいということになる。
 推選できる機種はすでに選出してあり、数量的な制約上で残した機種をあげることにするが、これらはやや古い製品や地味で目立たぬモデルがほとんどである。ダイヤトーンDS261、デンオンSC104、オンキョーM6II、パイオニアCS516/616、サンスイSP−L250、ビクターSX55、ヤマハNS−L225/325、セレッション・ディットン15XR、ダイナコA40XL、B&W・DM4/IIなどがこれに該当する製品である。

ダイヤトーン DP-EC3

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

電子制御を中級機の価格帯にもたらした新鮮な魅力をもつ製品。

ダイヤトーン DP-EC1MKII

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

電子制御を導入した新世代のプレーヤーの第二世代として見事な製品。

ダイヤトーン DA-A15DC

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

ユニークなデザインとハイパワーをバックにしたサウンドが魅力的。

ダイヤトーン DP-EC2

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

電子コントロールの便利さとマニュアルのよさが一致した実用機。

ダイヤトーン DA-P15S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の切れこみのよさ。シャープな表現。一聴していかにも解像力の高いという感じの音がする。バランス的にも低音域から中低音域にかけての支えがやや弱く中〜高音域にかけてキラキラした輝きがあるため、かなり硬質で金属的に聴こえる。したがって打楽器の切れ味の鋭さなどには特徴を出す反面、弦やヴォーカルは骨ばった冷たい音になる。もう少し音に暖かさや響きのしなやかさが欲しい。内蔵のヘッドアンプは、MC20では高域が鈍く音が細くなり情報量の減る感じになる。DL103Sでは専用のトランスよりは解像力が上るが中〜高域が張ってくる。ローフィルターやトーンコントロールをONにしたときの音質の変化はやや大きい。

ダイヤトーン DA-A15DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このパワーアンプは、いわゆるDCアンプらしい聴感上のレスポンスがワイドレンジ型とならず中域のエネルギー感が充分にあることが特長である。この中域のエネルギー感があることと、このクラスのパワーアンプとしては充分にパワフルであるため、音像定位はかなりクッキリとし、左右のスピーカー間の少し前にまで出てくる。ステレオフォニックな音場感は、かなりナチュラルである。バランス的にはローエンドが量的に充分あり、音色が少し暗く、その上の低域がやや薄いようだ。中域は厚みがあり、かなり表情もある。これに対して、中高域から高域は、基本的には明るい音色をもつが、音の粒子は少し粗粒子型である。

ダイヤトーン DA-A10DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 シリーズ製品のパワーアンプA15DCと比較すると、このA10DCのほうが、聴感上での周波数レンジが、かなりワイドレンジ型で伸びており、音のクリアーさ、特に、中高域から高域にかけての細やかさ、滑らかさで優れ、トータルのクォリティも高いように感じる。
 バランス的には、低域が、やや豊かで柔らかく、中域は量的に抑えられているが、音色は柔らかく、明るいタイプである。
 音場感は、左右のスピーカーの少し奥に引っ込んで広がり、音像はA15DCよりも大きく、輪郭はソフトになる。スケールは小さいが、素直で、柔らかく滑らかに磨かれた音が、このパワーアンプの個性である。

ダイヤトーン DA-A15DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 弱点をどんどんおさえていって、欠点も少ないがおもしろみに欠けた音になってしまう、いわば減点法で仕上げる例の少ないとはいえない国産機の中では、かなり積極的に音を作り上げたという感じの強い、なかなかユニークなパワーアンプだ。ダイヤトーンのスピーカーもそうだが、どちらかといえばクラシックの弦やヴォーカルよりは、ポップスの打音の切れこみのよさや、張りのある力強い音の再現を狙っているらしく、やや金属質ともいえるハードによく張った音といえる。非常にクリアーな印象で、たとえばシェフィールドでテルマ・ヒューストンのヴォーカルがバックからよく浮き出すというように、コントラストを高めて輪郭の鮮明な音に仕上げてある点が特徴。

ダイヤトーン DA-A10DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 A15DCの弟分ということをかなり意識して仕上げたのか、それともむしろ意図して音の傾向を変えているのか、ともかくA15とはずいぶん音質が違う。兄貴分がかなり硬質の、むしろ金属質のハードでクールな音を聴かせたのに対して、A10DCの方はもう少し力の誇示をおさえて、おだやかな鳴り方をする。ただそれはあくまでもダイヤトーンどおしの比較の話で、他社の音の中に混じるとやはり硬質の傾向で、たとえば弦楽四重奏でもA15DCのときほど各声部を目立たせることはないが、本質的にポップス系志向の傾向はあって、弦や声はどちらかというと骨ばって聴こえる。反面、ポップスの打音の系統は、かなりシャープに浮き上って聴こえる。

ダイヤトーン DA-P15S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、A15DCの場合よりも、全体にソリッドで、引締った音になる。しかし、音が薄く、予想よりもコントラストが付かない。音色は、軽く明るいタイプで、低域は少し柔らかく、中高域に一種の色付けがあり、アクセントをつけている。
 MCカートリッジ用ヘッドアンプは、柔らかく細やかで、音色が明るい。聴感上の周波数レンジは広く、伸びているが、MC20では、スケール感が一段と小さくなり可愛らしい音になる。DL103Sのほうが、ワイドレンジ型で、クッキリと粒立ちがよい鮮度の高い音だ。音像定位もスッキリとし、輪郭がクリアーで表情が若々しくなる。

ダイヤトーン DA-P15S + DA-A15DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 P15、A15のどちらも、音の輪郭の鮮明さや切れこみのよさを際立たせるタイプの、どちらかといえば金属的で硬質のハードな輝きを持っているが、両者を組合せるとそれがかなり相乗効果を招いて、総じて冷徹でコントラストの強い音に仕上ってくる。同じ♯15のつくシリーズ同士の組合せなのだから、これはかなり意図的に作りあげられた個性なのだろう。こういう輪郭も鮮明な音であっても、本質的には骨格の太い、構築のがっしりした支えがあるために、表面的にわめくタイプの音ではなく、たとえばピアノの強打や、あるいはシェフィールドのダイレクトカッティングレコードの、テルマ・ヒューストンのヴォーカルを支えるバックのリズムセクションなど、かなりのパワーでも腰がくだけたりせずに、良く張り出して力を失わない。パワーアンプ単体のところでも書いたが、ダイヤトーンの相性が、基本的にはクラシック系よりもポップス系にピントを合わせてあるらしく、この積極的にハードに徹した作り方はひとつの特徴といえる。

ダイヤトーン DA-P15S + DA-A10DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パワーアンプの方が兄貴分のA15DCにくらべてややおとなしい音に仕上っているためか、同じP15との組合せでも、総合的にはニュアンスのかなり違う音になる。P15+A15DCのときの、ひとつひとつの音が輪郭をかちっと隈取られてバックから飛び出してくるかのようなコントラストの強い、金属質かつ硬質に徹してしまう傾向の方が、ひとつの強烈な個性として徹底していておもしろいといえなくもないが、ただそれでは少々硬すぎると感じる向きには、P15+A10DCの方が、むろん基本的にはダイヤトーンの個性を保ったまま、もう少し穏やかな方向の音として受け入れられるのではないたろうか。しかしパワーアンプ単体のところでも書いたように、本質的にポップス志向といえると思う。つまり、弦や女性ヴォーカルにはかなりハードな感じをあたえるのに対して、このアンプの持っている骨太に前面に押し出してくる力の強さが、ポップス系のことにハードな音楽には一種の特徴となる。

ダイヤトーン Monitor-1 (4S-4002P)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 おそろしく密度の高い、そしておそらくかなり周波数レインジは広くフラットなのであろうと思わせる音が鳴ってくる。フラットとは言っても、欧米のスピーカーの多くを聴いたあとで国産のスピーカーを聴くと概して中高音域が張り出して聴こえることが多く、それが日本人の平均的な音感であるらしいが、4S4002Pもその例に洩れない。この製品にはAS3002Pと違ってレベルコントロールがついている。MIDDLE/HIGH/SUPER HIGH の三個とも、+1,0,-1、-2,-3の5段切換えになっている。指定の0のポジションでは右のように中域以上が少し張り出しすぎてバランスをくずしているように思われたので調整を加えて、結局、MIDDLE と SUPER HIGH を共に-1、そして HIGH を-3と、やや絞りぎみに調整してみたところ、かなり納得のゆくバランスになってきた。好みによって、あるいはプログラムソースによっては、HIGH は-3でなく-2ぐらいにとどめた方がいいかもしれない。
 いずれにせよ、ここまで絞ってもダイヤトーンの製品に共通の中音域全体にタップリと密度を持たせた鳴り方は少しも失われないで、相当に上質の、スケールの大きい、しかし見た目から受ける印象よりはるかに反応の鋭敏な音が聴ける。ただどちらかといえば、クラシックよりもやはりシェフィールドのクロスオーヴァー的な音楽を、思い切りパワーを上げて聴いたときの方が、いかにも凄みのある音で聴き手を驚かせる。クラシックのオーケストラでは、パワーを上げると弦が少々きつい感じになるし、スーパー・ハイの領域でチリチリという感じで、もしかするとトゥイーターのエージングが進めば柔らかくなるのかもしれないが、テストの時点ではまだ硬い音がした。
 2503Pや3002Pよりははるかにグレイドの高い緻密な音だが、音の透明感がもう少しほしい気もする。このスピーカーの鳴らす中~高音域には、やや硬質の滑らかさはあるのだが、その肌ざわりが金属やガラスよりも陶器の肌を思わせる質感でいわば不透明な硬さ、を思わせるためによけいそういう感じがするのかもしれない。
 カートリッジを二~三つけかえてみると、ハイエンドの音のくせをとても敏感に鳴らし分けて高域の強調感のあるカートリッジを嫌う傾向がことに強い。とうぜんアンプの差にも敏感だ。ただ、アンプやプレーヤーをいろいろ変えてみても、弦楽器に関するかぎり、どうも実際の楽器の音と相当に印象が違う。ピアノの場合はスケールの大きさがいかにもフルコンのイメージを再現はするが、ヤマハかスタインウェイかの区別がややあいまいではないかと思った。潜在的に持っている相当に強い個性が、楽器の色あいをスピーカーの持っている音色の方にひきずってゆく傾向がある。

ダイヤトーン Monitor-1 (4S-4002P)

菅野沖彦

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ダイヤトーン4S4002Pはモニター1と称され、一本100万円という高価なものだが、数々の新開発技術を生かして作られた新製品である。構成は、4ウェイ、4スピーカーシステムで、2S2503Pと同じく、パッシヴラジェーター方式が採用されている。ウーファー、スコーカーのコーンには、ハニカム構造のアルミをグラスファイバー計のシートでサンドウィッチ構造としたものが使用され、より理想的なピストンモーションにより低歪化が計られている。当然ながら、相当な大型システムで40センチ・ウーファーをベースに構成された4つのユニットが、見上げるばかりの大型エンクロージュアに収められ、総重量は実に135kgにも達するものだ。音質は、色づけが少ないといえるけれど、音楽の愉悦感には不足する。大音量で、かなりの聴取距離をおいて使うことを目的として設計されているので、一般家庭の至近距離で聴くと、音像定位には、やや問題が生じざるを得ない。中高域ユニットがかなり高い位置にくるので、低音と中高音が分離して聴こえてくるのである。しかし、これは使い方が間違っているので、広い場所で距離をとれば問題ではなかろう。さすがにDレンジとパワーハンドリングには余裕があり、大音量再生にもびくともしない。広い場所でのプレイバック用として効果的。

ダイヤトーン Monitor-3 (AS-3002P)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ブラームスのピアノ協奏曲のオーケストラの前奏で、中域に密度のある、しかしアルテックとは違って音が明らかに張り出すわけではなく、丸みのあるソフトなバランスの良い音が鳴ってくる。ただしそれは中程度以下の音量の場合で、、音量を上げるにつれてまず中高音域が張り出してきていくらか圧迫感が出てくるし、やがてピアノが入ってくると、おもに右手の活躍する中音域のあたりで、コンコンと箱をこぶしで叩く感じの固有音がつきまとうことが少し気になってくる。バックのオーケストラも、ひとつのマッスとしては充実しているが、その中から各声部のデリケイトな音の動きや色彩の変化、さらにソロとの対比などを聴き分けようとすると、もう少しこのもつれて固まった井とをときほぐしたいという気持になってくる。次のラヴェルの「シェラザーデ」を含めて、これらのレコードのオーケストラのパートは、広さと奥行きを十分に感じさせるステレオ録音のはずだが、3002Pではその広さと奥行きを総体に狭める傾向に鳴る。こういうタイプのスピーカーは概して左右に思い切って開いて置くといい。事実ミクシングルームなどでもこのスピーカーは左右に3メートル以上開いて置かれるあることが多いので、本誌試聴室でもほとんど4メートル近くまで左右に離してみるが、私の求めるひろがりと奥行きをこのスピーカーに望むのは少し無理のようだ。ただしかし、ステレオの音像の定位をきわめて正確かつ明確に表現する点はさすがだと思った。左右にどこまでひろげても少しも音の抜けるようなことがないのは見事というほかない。
 ところでピアノの音にまつわる固有音だが、たとえばアルゲリチのショパン(スケルツォ)でも、冒頭の三連音などことに箱の中で共鳴している感じが強く、音がスピーカーのところからこちら側に浮き上ってこない。この試聴の一週間ほどあとで、某スタジオであるピアニストの録音に立ち会った際にもこのAS3002Pが使われていたが、プレイバックの際にそのピアニストが、なぜ私のピアノがこんなにコンコンいう音に録音されてしまうのか、と不満を漏らしていたが、どうもこのスピーカーにその傾向が強いようだ。
 一旦そういう音色に気づいてしまうと弦合奏の再生にもやはりその傾向はあることがわかる。たとえばヴァイオリンの低弦(だからせいぜい200Hz以上)で、胴鳴りの響きが実際の楽器よりももっと固有音に近い感じで箱の中にこもって弦の響きにおおいかぶさってくるので、不自然な感じがする。総体に音の粒立ちが甘く、音像が一列横隊の平面的で、ポップス系でも低音のリズムがやや粘る。
 このスピーカーはパワーアンプを内蔵しているのでそのアンプのまま試聴したから、右の傾向がスピーカーそのものか、それともアンプを代えるといくらか軽減されるのかは確かめていない。

ダイヤトーン Monitor-3 (AS-3002P)

菅野沖彦

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ダイヤトーンAS3002P、俗称モニター3は、同社のモニターシステムとして伝統的な2S305の発展型である。30センチ・ウーファーと5センチ・トゥイーターの2ウェイのオールコーン・タイプである。国産モニタースピーカーの傑作といえる2S305は、鑑賞用として家庭で使っている人も多いだろう。この3002Pは、このシステムをさらにリファインしてドライヴィングアンプを内蔵させたものだ。モノーラルアンプのMA100Pがそれで、出力は100Wである。一言にして、このシステムの音を表現すると、実に標準的な真面目な音といえるだろう。キメの細かい、やや細身の中高域は、繊細優美な質感だ。すっきりとした全体の音の印象が、いかにも日本的な精緻さを感じさせる。バランス、解像力など、難のつけようのない端正さであるが、裏返していえば、強い個性的魅力、それも西欧の音楽に感じる血の通った人間的な生命感、バタ臭い、油ののった艶というものに欠ける。だから、音楽によっては、やや淡泊になり過ぎる嫌いも或る。いかに高性能なモニターシステムといえども、音色を持たないスピーカーは皆無であるという現実からして、このシステムを鑑賞用として使うとなれば当然、この淡泊な色彩感を好むか好まないかというユーザーの嗜好にゆだねる他はあるまい。しかし現状で最も標準的なシステムといってよいだろう。

ダイヤトーン Monitor-7 (2S-2503P)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ブラームスのピアノ協奏曲No.1(ギレリス)から鳴らしはじめる。オーケストラのパートで声部のバランスがどこかおかしいというようなことはないし、ピアノとの対比も過不足ない。ポップス系のソフトでは、パワーにも相当に強いことがわかり、かなりの音量でも音がくずれない。途中からアンプのトーンコントロールを1~2ステップ動かしてみると、実に鋭敏に反応する。むろんアンプの差にも敏感だ。そうした聴き分けをしたいという目的をモニター的というのなら、プロフェッショナル用としては価格も程ほどで、相当に信頼のおける物差しのひとつとして使える。
 レベルコントロールは0を中心に+2、-2と振り分けた3点切換型だが、中央のポジションのままがバランス上最もよかった。専用の(別売)キャスターつきのスタンドに乗せたまま試聴したが、家庭用としては音源の位置が少し高いところにゆきすぎて、ことに低いソファに深く腰をおろした場合には、音が頭の上からくる感じで、ステージのかぶりつき近くで聴くような印象になるから、家庭に持ち込むにはもう少し低い台でいろいろ工夫する必要があるだろう。ゆか上にじかに置くと音が重くなるので、丈夫な台がないとまずい。
 いろいろなレコードを聴き込んでゆくと、もちろんモニター用だから当然かもしれないが、鳴り方がかなり生真面目で、どんなレコードでも音を行儀よく整理してしまう傾向がある。別の言い方をすると、このスピーカーの鳴らす音は、輪郭の線はほぼ正確に描かれてはいるが描線の自在さがもっと欲しい。あるいは、プログラムソースに盛られている音の精妙な色あいを、一様にモノトーンで塗りつぶしてしまうような印象がある。たとえばブラームスP協のベルリン・フィルの音、ラヴェルのコンセルヴァトワルの、バッハV協のザルツブルクの、ぶらムース五重奏のウィーンの弦の、それぞれの音色の違い。別の角度からみればDGGの、EMIの、DECCAの、それぞれの音色のとらえかたの違い。そうした、音源側での色どりの豊富さにかかわらず、2503Pがもともと持っている音色の傾向がやや暗い無彩色なので、すべての音がそういう色あいで表現されるのだろう。
 そうしたところから、このスピーカーへの評価はかなり分かれるにちがいない。たとえば前述のように、レコーディングセッションのモニターとして、マイクアレンジの際に各パートの音量バランスをチェックするといった目的には、価格を頭に置けば十分以上に信頼が置ける。が反面、もしこれを家庭での音楽鑑賞用として考えるとすれば(たぶんこのスピーカーを企画したメーカー側がそうは考えていないだろうことは、外観や作り方の姿勢から充分に察せられるが)、右に書いたような音の色あいの鳴らし分けの点で不満が生じるに違いない。

ダイヤトーン Monitor-7 (2S-2503P)

菅野沖彦

ステレオサウンド 46号(1978年3月発行)
特集・「世界のモニタースピーカー そのサウンドと特質をさぐる」より

 ダイヤトーンの2S2503Pは同社のモニターシステムとしては小型なもので、構成は2ウェイ。25センチ・ウーファーと、5センチ・トゥイーターの二つのユニットが装着されている。公称最大入力は60Wと表示されているが、マスターレコーディングのメインモニターとしては、少々物足りないといわざるを得ない。スタジオにおけるメインモニターの再生レベルは、一般に想像されるそれより、はるかに高いのが普通だし、演奏直後のプレイバックには、ハイレベル再生が必要な場合が多いものだ。率直にいって、このシステムは、サブモニターとして使われる種類のものだろう。
 音色は、ややボクシー、つまり箱鳴きの感じられるもので、腰が弱く頼りなさが残る。音像の輪郭もシャープとはいえないし、中低域の明解さが不十分で、少々濁り気味である。しかし、エコーの流れや、はランスなどは、さすがに一般用スピーカーより明確に判り、モニタースピーカーとしての設計意図が生きている。綜合的にいってこの音は、むしろ鑑賞用としてよいと思われるあらの目立たない音だが、長時間仕事に使うモニターシステムとして、こうした疲れないソフトタッチのお供、モニターとしての一つの思想の中にある。オリジナルマスターを聴いても、レコードのようなこなれた音になるシステムだ。

ダイヤトーン DT-4700, DT-4500, DT-4550

ダイヤトーンのカセットデッキDT4700、DT4500、DT4550の広告
(オーディオアクセサリー 8号掲載)

DT4700

ダイヤトーン DS-30B

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 たとえばシェフィールドのダイレクトカッティングのシリーズを、思い切ってハイパワーでドライブしたときにも、音がくずれたり腰くだけになったりせずに、男性的とでもいいたいような、いくらかハードながら力強い緻密さで鳴る。表面的な小細工を感じさせずに、全音域に亘って正攻法で押してくるような音はまさにダイヤトーンの面目躍如たるものがある。ただそれでいて、クラシックのオーケストラを聴いても、従来の製品のどこか強情な感じか抑えられて、硬質の傾向ながらバランス的には一応納得のゆく音で聴かせるところが、いくらか変ったように思える。とくに本誌標準台のような(約50センチの)高めの台に乗せて左右にかなり開いて置くと、空間への広がりの感じもよく出るようになるが、弦合奏のデリケートなニュアンスを聴きとるには、ハイエンドの延びが(以前の製品よりもかなり延びてはきたもののまだ)もうひと息という感じだ。また、高い台ではクラシックの場合に低音の量感がやや物足りないが、といって台を低くするとごく低い周波数でどこか一ヵ所、重く鈍くひきずるような共鳴音が出てくるので、やはり台は高くしたままターンオーバーを低くとったトーンコントロール等で重低音を補いたい。総体にいくらか人工的な味わいのある音色なで、本質的にはポップス系が得意なスピーカーだと思う。

ダイヤトーン DS-90C

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶幾分しめりけのある音ながら、ピッチカートはすっきりとこえる。
❷もうすこしくまどりがついてもいいだろうが、力のあるひびきでいい。
❸誇張感のないひびきで、しなやかにそれぞれの音色の特徴を示す。
❹第1ヴァイオリンのフレーズは艶があってこのましい。
❺もりあがりには、余裕がある。たっぷりひびくクライマックスはいい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノはたっぷりひびくが、音像的には多少大きい。
❷暖色系のひびき故に、木管楽器のひびきの特徴をよく示す。
❸キメ駒かなひびきはこのましいが、いくぶんふくれすぎている。
❹しなやかだが、もう少しすっきりしてもいいだろう。
❺木管のひびきへの対応がよく、ここでも効果的だ。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声のしなやかさ、まろやかさをよく示す。
❷アイゼンシュタインの近づく感じを誇張感なく示す。
❸オーケストラと声との、ひびき方の点でのバランスは大変いい。
❹はった声が幾分硬くなって、ニュアンスに欠ける。
❺オーケストラのひびきの特徴を鮮明に示している。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がふくらみがちで、定位の点が問題がある。
❷声量をおとした分だけ、言葉のたち方が鈍くなる。
❸残響をひきずりがちで、言葉の角がみえにくい。
❹ソット・ヴォーチェの声は、さらに軽やかでもいいだろう。
❺声のまろやかさは示すが、さらに敏捷であってほしい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的、音場的対比は充分についている。
❷シンセサイザーのひびきが独特の湿りけをおびている。
❸ひびきの湿りが歩く働いてはいないが、もう少し浮遊感がほしい。
❹前後のへだたりは充分で、提示される音場はかなり広い。
❺音に力があるので、ピークでのもりあげは圧倒的だ。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶クォリティの高い音の後方でのひろがりは魅力的だ。
❷❶との対比の上でのここでのひびきの質がよく示されている。
❸実在感たしかに、くっきりとした音で提示される。
❹キメ細かいひびきで、効果的に輝いている。
❺うめこまれることなく、充分に自己主張しえている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースの音のはりだし方が特徴的だが、12弦ギターのひびきをよく示す。
❷ツイン・ギターによるひびきの厚みは、このましく示される。
❸すっきりしたひびきで、しかも薄味にならず示される。
❹ドラムスによる力感あるひびきはいい。
❺バック・コーラスでの声の重なりをよく示す。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶音像はかなり大きい。低い方の音にエネルギーがかたよりすぎていないか。
❷オンでとられた音のなまなましさを伝えきれていない。
❹細かい音に対しての反応は、さらにシャープであってほしい。
❺両ベーシストの音像的な差のないのが、このスピーカーのよさだろう。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびき全体に切れ味が不足し、重くなっている。
❷ブラスの中央からのつっこみは、力があっていい。
❸申し分なくひろがるが、さらに前にはりだすべきだろう。
❹前後のへだたりはとれているが、音の見通しということでいま一歩だ。
❺めりはりは一応つけているが、音のつきはなしが弱い。

座鬼太鼓座
❶尺八の位置までのへだたりが聴感上感じとれるのがいい。
❷キメ細かいひびきで、尺八の音色をよく示す。
❸きこえるが、ひびきの輪郭を充分に示すとはいいがたい。
❹大太鼓のスケールゆたかなひびきはすばらしい。
❺ここで求められるひびきの特徴を十全に示しえている。

ダイヤトーン DA-P15, DA-A15DC

井上卓也

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ダイヤトーンのセパレート型アンプには、DA−P100/A100をはじめ、コントロールアンプとパワーアンプを機械的に結合すれば、プリメイン型化が可能な大変ユニークなコンストラクションを採用したDA−P10/A15に代表される一連のシリーズがあるが、今回発表された製品は、コントロールアンプは完全な新モデルであり、パワーアンプは従来の機種に改良をくわえたモデルである。また、コントロールアンプが19型ラックマウントタイプとなったために、パワーアンプとのドッキングはできない。実用上では問題はないがやや、残念な感がないでもない。
 DA−P15は、DA−P7/P10の上位に位置づけされるコントロールアンプである。
 フロントパネルは、スッキリとしてシンプルな19型ラックマウントタイプであり、最近の動向を反映したものだ。外観からは一般的なコンストラクションと受け取れるが、内部は、前シリーズで採用した2台のモーラルアンプを機械的に結合した、2モノーラル構造を踏襲している。
 機能的には、コントロールアンプらしくMCヘッドアンプ内蔵、テープデュプリケート、ターンオーバー可変型の左右独立したトーンコントロール、スピーカー切替など、現在の標準装備といってよい。
 DA−A15DCは、基本的には従来のDA−A15をDCアンプ化し、高域特性を改善したモデルである。ダイヤトーンのパワーアンプは、DA−A100以来、機能を象徴したユニークなデザインを採用している点に大きな特長があり、フロントパネルを持たないために、本来のセパレート型アンプの楽しみである任意のコントロールアンプとの組合せが、デザイン的な制約なしに可能なメリットがある。コンストラクションは、左右独立した2モノーラル構成であり、スピーカー切替はリレーを使い、コントロールアンプ側でリモートコントロールする方法を採用している。なお、シリーズ製品としてDA−A10DCとチューナーのDA−F15がある。
 この組合せは、コントロールアンプの性能が従来のDA−P7より一段と向上しているために、スッキリとした聴感上のf特が広く、歪感が少ない粒立ちの細やかな現代的なサウンドで、パワーアンプの150W+150Wのゆとりが、より十分に感じられ、スケール感も大きい。

ダイヤトーン DS-30B

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきに力がなく、かさかさした感じになる。
❷低音弦のひびきの特徴が充分に示されているとはいいがたい。
❸フラジオレットのひびきが、薄く、うきあがって感じられる。
❹ピッチカートはふくらみぎみで、第1ヴァイオリンのフレーズに艶がない。
❺高い方の音が刺激的になり、大オーケストラ本来の力強さに欠ける。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、いくぶん大きくなりがちだ。
❷音色対比充分。さわやかな音色がいい。
❸響きに軽やかさと透明感があって、さわやかだ。
❹第1ヴァイオリンの響きのすっきりと示されるところがいい。
❺鮮明であり、誇張感がなく、自然なしなやかさがある。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶声はいくぶん残響がついて、従って音像はふくらみがちだ。
❷アイゼンシュタインは、くっきり中央から接近する。
❸クラリネットの音色は少しかさかさするが、すっきりしたよさはある。
❹はった声は幾分硬めだが、ききにくいというほどではない。
❺きわだって鮮明にきこえる。バランスがいい。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶低い方の声がふくらんで前にせりだしがちだ。
❷言葉の角がまるくなって、いくぶんあいまいだ。
❸残響が強調気味なために、響きの鮮度がよくない。
❹もう少しすっきりと響きが切れるといいだろう。
❺のびてはいるものの、多少不自然なところがある。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶音色的な対比は充分だ。もう少し広がりが感じられるとなおいい。
❷すっきりと、きわだって、効果的にきこえる。
❸軽さをもって個々の響きは、とびかう。
❹せまくるしさを感じさせないのが好ましい。
❺ピークでは、やはり多少響きがとげとげしくなる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶響きに透明感のあるのがいい。広がりも感じられる。
❷音色的な対比を充分につけて、せりだすが、せりだし方は自然だ。
❸くっきりときわだってきこえ、響きの特徴を充分に示す。
❹響きのきらびやかさが過不足なく示されている。
❺うめこまれることなく、好ましく示されている。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶すっきりした12弦ギターのひびきが充分に効果的だ。
❷ひびきそのものは軽いが、効果をそこねていない。
❸重くなったり、湿ったりしていないのが好ましい。
❹ドラムスのひびきの意味をあきらかにしているが、ひきずらない。
❺言葉のたち方はかなりシャープでこのましい。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶一応の力を示し、スケール感もある程度感じられる。
❷ことさらなまなましいとはいえないが、鮮明である。
❸必要最小限の消える時の響きを明らかにする。
❹くっきりと、あいまいにらならずに、対応できている。
❺コントラストは、不自然になっていない。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶もうひとつ響きに切れの鋭さがほしい。
❷力不足というべきか、響きがとげとげしくなっている。
❸一応の効果はあげるものの、有効とはいえない。
❹後へのひきは感じられるものの、効果的とはいえない。
❺ふやけてはいないが、めりはりのつけ方が不充分だ。

座鬼太鼓座
❶広がりは感じられるが、少し前にですぎている。
❷尺八らしさを感じさせる響きをきくことができる。
❸ごくかすかにきこえるにとどまり、きわだたない。
❹消え方は、一応示されるものの、薄味だ。
❺きわだってくっきりきこえて、効果的である。

ダイヤトーン DS-90C

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 ものすごく大きい、という感じのする大型フロアータイプだ。ただし音質は大型だからというこけおどし的なところがなく、正攻法で作られたまさにダイヤトーンの音だ。とはいうものの、DS30Bのところでも書いたように、今回のダイヤトーンに関して言うかぎり、従来のいわゆるダイヤトーンの音がずいぶん傾向を変えた、という印象だ。もちろん、音色そのものが変わったのではない。全音域に手抜きのない、密度をたっぷり持たせた音はまさにダイヤトーンなのだが、同時に従来の製品が持っていた中域のよく張った、ときとして張りすぎた感じの作り方がぐっと抑えられた。それと共に、あるいはそのために聴感上のバランスがそう感じさせるのかもしれないが、トゥイーターのハイエンドも従前の製品よりはレンジをひろげてあるように聴きとれる。相当のハイパワーにもびくともしない耐入力を持っているようだが、それでいて小音量に絞っても全体のバランスや質感があまり変らない点は立派だ。大型ウーファーの弱点になりがちな音の重さもないが、ローエンドの伸びはもう少し欲しい。このクラスになるとCA2000のクラスではもはや少々役不足という感じで、セパレートのハイパワーアンプが欲しくなる。台は不要。左右にかなりひらく方が爽やかさが出る。部屋はデッドぎみに調整する方がよかった。