Category Archives: パワーアンプ - Page 26

ラックス MB3045

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 CL32との組合せでの音からくらべると、かなり活気があるクリアーな音である。聴感上での周波数レンジは、現在のパワーアンプの水準からすればやはり狭いが、中域の粒立ちがかなり明快であり、適度なエネルギー感があり、よい意味でのバンドパスフィルターとしてのアウトプットトランスのメリットが、音にあらわれている。
 全帯域にわたり音色は統一感があり、明るく伸びやかなタイプにコントロールされ、いわゆる管球アンプというイメージの生暖かい豊かな響きの音とはならず、スッキリと明快に、適度の反応の早さが感じられる音を聴かせる魅力があり、表情も活気があって、リッチなクォリティの高い音である。

ラックス 5M21

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 キャラクターが少なくソフト型だが、かなりオーソドックスな音をもつパワーアンプで、コントロールアンプ5C50よりも、トータルバランス、表現力、クォリティなどは、こちらのほうが一段と高いようだ。
 聴感上での周波数レンジはよく伸びていて、中域の量感がさして不足しないために、安定感がある、柔らかく豊かな音の魅力かある。ステレオフォニックな音場感は、このパワーアンプが間接音をたっぷりとつけた音を聴かせるタイプのため、全体の音源に距離感があり、スピーカー間の奥にゆったりと広がり、ホールトーンを豊かに雰囲気のある音に聴かせる。高域は少し粗粒子な面があるが、トータルクォリティは高い。

ラックス M-12

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 小粒な印象であるが、音の反応がかなり早く、いきいきとした音のパワーアンプだ。
 聴感上での周波数レンジは、スッキリと充分に伸びきった印象があり、低域はバランス的にというよりはエネルギー的に不足をするが、音の粒立ちがクリアーで、滑らかさも充分にあるため、軽快で、かなり小気味のよい音を聴かせる。4343は、小出力のパワーアンプではかなりドライブし難いスピーカーシステムだが、定格出力から予想したよりもパワー感があり、家庭用としてならあまり不足はないであろう。新しいタイプのアンプらしい、フレッシュで素直に音を出すところが、このM12の特長であり、よりマッチしたスピーカーで使いたくなる。

Lo-D HMA-9500

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 LNP2Lとの組合せでは、HCA7500との場合とは一変した、クォリティの高い、爽やかにスッキリと抜けた、キメ細やかな音である。聴感上の周波数レンジは充分に伸びており、バランス的にはよくコントロールされている。やや中域のエネルギー感が不足気味ではあるが、全帯域にわたり、音の粒子が細かく磨き込まれており、柔らかく滑らかで、スッキリとした音をもつ点では、出色のパワーアンプである。
 低域は柔らかく豊かなタイプで安定感があり、音の鮮度もかなり高く、表情もナチュラルでしなやかさがある。音場感は柔らかくスッキリと広がり、音像の定位・輪郭でも水準以上のプレゼンスがある。

Lo-D HMA-7300

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 HMA7500とくらべると、全体に音が引き締ったシャープさがあり、音に適度の厚みがある。聴感上で感じる周波数レンジは、かなりワイドで伸びており、バランス的には、低域が抑え気味で、ややハイバランス型に聴こえる。中域はエネルギー感もあり、粒立ちがクリアーで音色が明るく、良い意味でのソリッドさがある。中高域から高域は、音の粒子も細かいタイプで、クリアーである。低域は、最近のアンプは全般的に柔らかく豊かな音をもっているが、このアンプは、音の芯がクッキリと引き締った、腰の強い音をもつのが特長である。ある程度以上に音量を上げて聴くと、かなり反応が早く、シャープな音の魅力が出てくるアンプである。

Lo-D HMA-7500

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 かなりオーソドックスにつくられたパワーアンプである。
 聴感上で感じられる周波数レンジは、現在のセパレート型アンプの平均よりも、むしろナローレンジタイプにまとめてある。そのため、とかく中域で薄くなりがちな傾向がなく、硬質さを抑えたニュートラルな感じである。そのため、音にある種の活気があり、柔らかさもあって、プログラムソースやコントロールアンプのデメリットを抑え、おだやかな音として聴かせる。
 このパワーアンプの安定したキャラクターは、セパレート型アンプに個性を求めるとなると、やや不満があるが、良い意味でのプリメインアンプの持つ信頼性の高さが特長だ。

ダイヤトーン DA-A15DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 このパワーアンプは、いわゆるDCアンプらしい聴感上のレスポンスがワイドレンジ型とならず中域のエネルギー感が充分にあることが特長である。この中域のエネルギー感があることと、このクラスのパワーアンプとしては充分にパワフルであるため、音像定位はかなりクッキリとし、左右のスピーカー間の少し前にまで出てくる。ステレオフォニックな音場感は、かなりナチュラルである。バランス的にはローエンドが量的に充分あり、音色が少し暗く、その上の低域がやや薄いようだ。中域は厚みがあり、かなり表情もある。これに対して、中高域から高域は、基本的には明るい音色をもつが、音の粒子は少し粗粒子型である。

ダイヤトーン DA-A10DC

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 シリーズ製品のパワーアンプA15DCと比較すると、このA10DCのほうが、聴感上での周波数レンジが、かなりワイドレンジ型で伸びており、音のクリアーさ、特に、中高域から高域にかけての細やかさ、滑らかさで優れ、トータルのクォリティも高いように感じる。
 バランス的には、低域が、やや豊かで柔らかく、中域は量的に抑えられているが、音色は柔らかく、明るいタイプである。
 音場感は、左右のスピーカーの少し奥に引っ込んで広がり、音像はA15DCよりも大きく、輪郭はソフトになる。スケールは小さいが、素直で、柔らかく滑らかに磨かれた音が、このパワーアンプの個性である。

デンオン POA-1001

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 聴感上の周波数レンジは、特にワイドレンジタイプではなく、ハイエンドとローエンドは少し抑えたバランスである。音色的にも、とくに欠陥を感じやすい低域が、中域・高域と統一がとれているのは、このパワーアンプの特長である。
 LNP2Lとの組合せでは、おだやかな性格ながら色付けが少なく、コントロールアンプのキャラクターを素直に聴かせるが、中域の音の緻密さがもう少し欲しい気がする。また、音場感は、左右のスピーカー間の少し奥に引っ込んで広がり、音像の定位感は少し甘めで、輪郭のシャープさがいま一歩である。これで、音の表情に一段と活気が加われば、優れたパワーアンプになるだろう。

QUAD 303

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 海外のパワーアンプでも、たとえばDBシステムズのDB6や、GASの Grandson のように、40W×2という公称出力から予想されるよりもはるかに力感のある音を鳴らすアンプにくらべると、QUAD303は、公称の45W×2の出力がまさに額面どおりという感じの、音の力という点ではいささか小造りな音がする。それは単に出力の問題ばかりでなく、周波数レインジやダイナミックレインジという点からみても、こんにちの最新のアンプと比較すれば、いささか古さを感じさせる。けれど、このアンプの鳴らす小造りでひかえめな音の世界は、最近のいかにも音をみせびらかすようなアンプの中に混じると何とエレガントに聴こえることか。

デンオン POA-1003

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 上級機種のPOA1001よりも、スケール感はひとまわり小さくなるが、音の反応が早く、機敏な音を聴かせる点では、このパワーアンプのほうが一段上である。
 聴感上の周波数レンジは、かなりワイドレンジタイプで、パワーが充分にあるともいえないため、音量を上げて聴く場合には中域の緻密さが不足気味となり、低域の質感が柔らかくなり、間接音成分が多く、スッキリとしない音となる。しかし、平均的なリスニングルームの音量程度では、スケール感は小さいとはいえ反応が早く、軽快さが感じられ、音場感がナチュラルに広がる特長が、セパレート型アンプらしい個性として、このPOA1003の魅力となる。

オーレックス SC-77

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マーク・レビンソンLNP2Lとの組合せでは、音の厚みが加わり、低域の伸びや中域の薄さがかなり改善された、バランスの整った音になるが、まだ音楽に対する働きかけがパッシブな面が残っており、実体感の薄い音である。しかし、このSC77は、特定のキャラクターが少なく、素直でよくコントロールされたアンプであることは、充分にわかる音だ。
 音像定位はかなり安定し、音像は一段と小さくなって、標準的な大きさである。音像の輪郭もかなりシャープである。また、ステレオフォニックな音場感でも、SY88との組合せよりも、前後方向のパースペクティブが感じられるようになる。

テクニクス SE-9060II (Technics 60AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプのところでも書いたように、同じ型番のマークIIといっても、以前の製品とくらべると別系統のアンプと思えるほど改善のあとが著しい。聴きはじめからすぐに、これはかなり良いアンプだと思える。リファレンスのLNP2Lの音の傾向をそっくり写し出す素直さがあって、そこに腰の支えも十分あって、表示出力の割合に力も感じさせ、総じて弱点を探し出すことが難しい。ただそれにはこのアンプの価格が前提として入るので、もっとグレイドの高いアンプと比較すれば、音のひろがりや奥行きなどの立体感や彫りの深さ、ごく微妙な質感や音の艶あるいは色あいの描写力、などの点でむろんまだ極上とまではゆかないが、しかしこの音はかなりの出来ばえだ。

アキュフェーズ M-60

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 マーク・レビンソンLNP2Lとの組合せでは、かなり硬質でタイトな音となり、300Wのパワーのゆとりを活かしたスケールの大きさがあまり感じられない。M60のペアとしては、LNP2Lはマッチせず、音の傾向から推測すれば、今回の試聴した製品のなかでは、マッキントッシュC32あたりが応わしいコントロールアンプとなるだろう。C220では、EMTの入力は結果としてM69に直接入るために、これをベースとすると、M60は、引き締ったかなりタイトな音をもつアンプだということがわかる。いわゆるハイパワーアンプにありがちな散漫さがなく、整然と音を整理しソリッドに聴かせるところが特長である。

マッキントッシュ MC2205

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のたっぷりして豪華な味わいのあるところはいかにもマッキントッシュだが、新シリーズになってからは、高域の聴感上のレインジを広げ、解像力を上げようとしていることが聴きとれて、音に新鮮な輝きが加わったが、反面、以前から持っていた性格でもある音の掴み方がやや粗い面が、解像力の増した分だけ表面に露出してきたという印象があって、旧シリーズの方が適当に脂肪太りしているところへうまく化粧していたため小皺もうまく隠れていたことがいまになって想像できる。また、今回の新シリーズの方が内在する力をストレートに表面に出すが、力を底に抑制して露に出さなかった旧シリーズの方に、むしろ好ましさを感じさせる部分もある。

アキュフェーズ P-300S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 150W+150Wクラスのパワーアンプとしては、トータルバランスがとれたスタンダードな性質をもつアンプである。
 マーク・レビンソンLNP2Lとの組合せでは、C200Sとの場合よりも、音の鮮度が一段と高くなったクリアーな音を聴かせる。低域がバランス的に少し抑え気味のようで、かなり引き締っているが、豊かさはもう少し欲しいようだ。この面からは、大型スピーカーを使い、かなり音量を大きく再生したときに、適度のバランスがとれるタイプのアンプのようである。音の粒子は、最新のアンプのような微粒子型でなく、聴感上で中域が薄く感じられないところが、このアンプの特長である。

マークレビンソン ML-2L

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティの持続の分厚いハーモニィのからみあいの中から、弱音の微妙な色あいの美しさがキラリと浮かぶ解像力の素晴らしさに思わずハッとさせられる。弦楽四重奏では四つの声部の、というより各楽器の四本の弦の表情の変化まで聴き分けさせ、アメリンクの声、その伴奏のピアノの心理表現まで感じとれる。ベーゼンドルファーの強靭な中にも丸みと艶のあるタッチも満足できるし、シェフィールドではかなりの音量まで上げても、表示出力の信じ難い凄い底力がある。キングズ・シンガーズなどまさにかくあるべき理想が鳴ったという印象。一見引締ったクールなやせ形の音。およそ極限まで磨き込まれた質感の高さ、緻密な力と滑らかさの絶妙なバランス。

マランツ Model P510M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスとしてずっと聴いているPのつかない方の510Mとの比較に興味があったが、聴きくらべると確かに少し違う。そのほんのわずかな違いを拡大していえば、510Mにくらべてこちらの方がいくつか反応がおっとりしている。510Mの音は、数多くの内外のパワーアンプの中に混ぜると確かに中庸を行って、しかしそこに生き生きとしたバイタリティを感じさせる。ただ高音域にちょっと硬質の細い響きがあって、そこがひとつの特徴でもあり、反面、組み合わせるプログラムソースやプリアンプその他の機器に似たような傾向のある場合には相乗効果でそれがマイナスになることもある。P510Mではそこのところがよくこなれて抑えられている。

スタックス DA-80M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 のびのびと屈託のない印象で、すべての音を明るく鳴らす。その明るさとは、たとえていえば写真電球のフラッドタイプで一様に照らし出された光景に似て、いくぶん陰影を欠いた、どこかあっけらかんとした感じのにぎにぎしさがある。苦労知らずに育てられた坊やがはた目かまわず鷹揚にふるまっているような感じさえあって、もう少し音の微妙な陰影や繊細な質感が出てほしいとという感じを抱かせる。ただ、国産アンプによくありがちの、どこか抑えこみすぎたような表情の乏しい音にくらべれば、この萎縮した感じのないところは多とすべきだろうか。Aクラスにしては表示パワーも大きいが聴感上もかなり力があって、それがいっそう音の伸びを助けているのだろう。

ソニー TA-N7B

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 基本的にはコントロールアンプのE88に似て硬質でコントラストの強い傾向の音を持っている。ただ、E88ほどの強引さというか一本調子に押しまくるようなところは少なく、音のニュアンスあるいは表情は一応出るので、プログラムソースに受け身に順応していくしなやかさは持っていることがわかるが、しかしどちらかといえばやはり骨太の、腰の強い音色のパワーンあプだ。高域のごく上の方に、いくぶん細い特長のある光沢というか軽い強調感を感じるが、LNP2Lにもその傾向があるため、この組合せでは相乗効果がやや裏目に出て光沢過剰になるが、反面繊細感が増しておもしろいともいえる。E88との組合せではそういう個性は感じとりにくかった。

ソニー TA-N86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 肌ざわりの柔らかい、むしろトロリとした味わいといいたい印象さえある滑らかな音を聴かせるというのが第一印象だが、しかし決して弱腰の柔らかい甘さではなく、どちらかといえば音像をきりっと引き締めてゆく傾向の、芯のしっかりした、明快であいまいなところのない解像力の良い音といえる音にトゲトゲしさやきつさがなく、やれッ主で生き生きした表情を持っているが、しかし一見当りの柔らかな音の中に、ときとして意外に腰の強い骨ばった感じさえ抱かせる硬質な音をくるみこんでいるらしく、たとえばアメリンクやバルバラの声でいくぶん頬骨の張った感じに聴こえることがあった。Aクラスに切換えるとわずかに線が細くなるが、基本的な傾向は変らない。

サンスイ BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

クラシックからポップスまで、あるいは構成の複雑で大きな曲でも逆に小編成や独奏、独唱ものでも、音色の印象が一貫していて、オーソドックスに練り上げられたパワーアンプであることが聴きとれる。総体にはいくぶん華やかなコントラストの強い傾向の音色を持っているが、音のニュアンスを豊かに鳴らし分けるだけの素直さがあるし、プログラムソースやコントロールアンプの差を相当はっきりと出すことからも、ディテールの描写の優れた解像力の高さがわかる。意外に腰の坐りの良い音で、パワー感も十分。コントロールアンプはCA2000とくらべると、こちらの方が出来ばえとしては格段に上だろう。価格とのバランスを考えると、かなり水準の高い製品だと思う。

マランツ Model 170DC

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パネル面の明るいやや白っぽい金色が、まるで音そのものを象徴しているかのようで、さらっと乾いた質感の、影のつくことを避けて一様に照らした人工光線に浮かび上ったような印象の音像を展開する。そういう意味ではよくコントロールされた、やかましさの少しもない、むしろやや静的ともいえるきれいな尾とかする。そのせいだろうか、音の起伏をいくぶん揃えて整理するような感じがあって、野卑なところのない、どことなく人口の清浄空気の中で大切に育てられた音、要するにたいへん注意ぶかく慎重に作られた音といってよい。ただ個人的な好みを加えて言えば、もう少し音の流れの自在さや伸びやかさのある方が嬉しい。

パイオニア M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 パイオニアのアンプが、セパレートタイプにかぎらず音のバランスのとり方の巧みなことはすでに多くの機会に言われているが、そこにも一貫したパイオニアトーンとでもいえる個性があって、それは大づかみにいえば、中音域から低音域にかけてやや厚みを持たせ、中高音域ではよく抑えてやかましさをなくし、最高音域にちょっと味をつけてほどよい切れこみの良さを感じさせる、という印象がある。M25も大まかにはその線で仕上げられているが、M4のようにウェットな音でなく、暖かみはあってもややぜい肉をおさえた硬質なところも聴きとれて、いくらか強引さや乾いた印象のあるものの、力としなやかさをバランスさせたなかなかの音質だと思った。

ジェニングス・リサーチ The Amp

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく元気のよい、身のこなしの軽やかでよく伸びる音がする。音像のひろがりもわるくない。反応がいかにもシャープで、その意味では聴いていて決して不快な音ではないが、いろいろなプログラムソースを通して聴くと、曲によって印象が少しずつ変ってゆくようなところがある。弦楽四重奏ではヴィオラの音域の支えが弱く四声のハモりかたがもうひと息。ピアノのタッチも丸みのある質感がもう少し欲しい。どちらかというと聴き手の注意力が高音域の輪郭の方にゆく傾向で、中低域から低域にかけては意外に反応がゆっくりしているように思える。LNP2Lとの相性があまり良くなかったようにも思えた。