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ラックス L-5

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 薄型のパネルに特長があるDC構成の新製品である。3段直結イコライザー、2段直結フラットアンプ、2段直結ラックス型トーン回路、ドライバーにEBT使用のDCパワーアンプの充実した構成である。機能もフル装備の本格派で、特長は、かつてのJBLの製品と同様にアンプ底部に入出力端子をもつことである。

テクニクス RS-1800

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 テープデッキ関係の今年の傾向は、カセットデッキが、昨年までの純粋な性能向上という限定された範囲内で技術的な成果を投入した新製品が順当なサイクルで製品化されてきたことに比較すると、これまでに得た技術的な成果を基盤として急激に機能面の追求に転換をしはじめ、デジタル表示のレベルメーター、曲間自動検出による自動頭出し機能、オートリバース録音・再生などの魅力的な機能を備えた新製品が極めて短いサイクルで、より安い価格帯に投入され、その結果、異常なまでの新製品開発競走が始まり、一種の動乱期を迎えたこと、また夢のテープといわれた合金テープが商品化され、これに対応するハード側のデッキも開発を完了するなど、複雑多岐を極めたことがあげられるが、一方のオープンリールデッキ関係では、需要が一段と減少した事実もあって比較的にローコストな価格帯の新製品の開発は、昨年に比べやや増加を示したが、全般的に需要を増大するほどの刺激材料は少なかったように思われる。
 オープンリールデッキで唯一のエポックメーキングな材料は、昨年にRS1500Uとして発表されたまま、暫くの間発売時期が延ばされていたモデルが、さらに改良を加えられてRS1800として発売されたことである。このRS1800は、新世代のオープンリールデッキとして登場以来、テクニクスのオープンリールデッキのイメージを一新した、シングルキャプスタン・クローズドルーブのアイソレートドライブ方式と名付けられたトランスポートを採用した、RS1500Uの発展型の最高級モデルの位置を占める、2トラック76cm・38cm・19cmの3スピード仕様の業務用に準じた規格をもつ製品で、マルチトラックレコーダーを含めたテクニクスが、業務用デッキの分野に進出するためのベーシックモデルと思われるものである。
 テープトランスポート部とエレクトロニクス部は、分割されたいわゆるポータブル型の構成をもち、トランスポート部は、RS1500Uと同じシングルキャプスタン・クローズドループ方式のアイソレート型ドライブで、4ヘッド構成が採用されている。キャプスタンは非常に直径が大きく、クォーツロック型モーターでダイレクトドライブされ、同じくダイレクトドライブ方式を採用したサプライ側とテイクアップ側のリール駆動用モーターは、サーボ方式のテンションコントロール用にも使われている。また、ヘッドブロックは容易に着脱可能で、録音と再生ヘッドには初めて、76cm使用時でもコンター効果が少ない形状をもつセンダストヘッドを使用している。
 マイクロコンピューターを導入して各種のオート化を可能としたのも、このRS1800の特長である。トランスポート部の左下側にはデジタルディスプレイが設けてあり、時間表示のテープカウンターは各速度でリアルタイムに動作し、テープ速度、速度偏差それにピッチ可変量の表示をも兼ねている。また内蔵発振器を使い、使用テープに最適のバイアスとイコライザーを決定する、オートバイアス・オートイコライザー、オートプレイ、オートストップ、それにオートロケーターなどを備えている。
 テープ走行系のコントロールは、プッシュボタン操作のエレクトロニクス方式ダイレクトチェンジ型で、任意の位置をストップを介さずに選択できるメリットがあり、レベル表示関係ではVU指示とピーク指示に切替可能で、バイアスメーターとしても使用できる。入出力関係は業務用途も含めて設計されているため、マイクアンプは内蔵せず、ライン専用で平衡型と不平衡型を切替使用可能。出力は、平衡型+4dBmと不平衡型0・775Vと、業務用にもアマチュア用にも適応する設計である。バイアスとイコライザーは独立した連続可変型で、100Hz、1kHz、10kHz、20kHzの4スポットの内蔵発振器により、マニュアルで使用するテープにより、アクティブにテープのキャラクターを活かしたサウンドをつくり出すことができる。アンプ部の設計がRS1500系とは根太的に異なっているために、RS1800の音は一般のアマチュア用とは異なり、エネルギッシュでクォリティが高く、プロ機のグレイドに匹敵する見事なものだ。

サンスイ AU-D607

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 AU−D907で初めて採用されたサンスイ独自の開発によるダイヤモンド差動回路と2ポール位相補正回路を使う、低TIM設計の第2弾製品である。
 回路構成面では、MCヘッドアンプ、10石構成のDCイコライザー段、8石構成のDCフラットアンプ段、ダイヤモンド差動回路とノンマグネチックトランジスターを出力段に使うDCパワーアンプの構成である。電源部は、2個の左右独立型パワートランスと12、000μF×4の強力な電解コンデンサーのペアだ。
 AU607が独特のステレオフォニックな音場感の拡がりを聴かせる音であったことに比較して、このAU−D607は、クォリティ面で1ランク以上向上した緻密で、しかも反応の早い見事な音を聴かせる。とくに、中域から中高域の解像力は非常にシャープであり聴き手に一種の緊張感を感じさせるリアルさだ。

パイオニア Exclusive P3

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 パイオニアからパックスに移管されたエクスクルーシヴ・ブランドに初めて本格派の重量級プレーヤーシステムP3が登場することになった。価格的制約や妥協を一切排除し技術開発力を結集して商品化するというエクスクルーシヴの思想は、このモデルにもはっきりと現われている。異方性磁石採用の10kg・cmのカッターレースに匹敵する強大なトルクをもつデュアルローター構造のリニアトルク・クォーツロックDDフォノモーターEM03は、全周積分型の回転数検出周波数を従来より3倍高くし正確かつ応答性の早いサーボ過渡特性を実現し、外乱に強く、0・003%WRMS以下の低回転ムラとし、回転系の軸受側圧と回転部分の重心を下げるため軸受構造を天地逆転させたSTABLE・HANGING・ROTER構造としている。
 トーンアームEA03は、低等価質量とトラッカビリティ、低域大振幅時の混変調歪を解決する目的で軸受上部に着脱自在レベル可変型のオイル制動をかけ、フロントのパイプは軸受に近接した位置にもコネクターのある二重構造で、P3専用のカーボンファイバーストレートパイプと汎用シェル用S字型パイプの2種類を選択可能だ。
 構造面ではモーターとアームは硫酸バリュウム積層10mm厚のアルミ板に一体懸架され総重量は12kgで、全体はインシュレーターでキャビネットから完全フロート状態にしてある。キャビネットインシュレーターは、62mm直径のスプリングとピストン構造のオイルダンプ、さらに特殊ゴムの3重構造で25kgの全重量を支え、固有振動周波数は5Hz以下である。
 機能はマニュアル専用型だがプレーヤーシステムの基本を忠実に守り重量で振動を吸収させようとする開発思想は、音質面にダイレクトに現われ、情報量が格段に大きく緻密で引締まり、充分な低域の安定度をもつため、レコードにいかに多くの音が入っているかが実感として体験できるほどのパフォーマンスを示した。

オンキョー Integra A-805

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 イコライザーアンプとハイゲインパワーアンプの2段構成の新プリメインアンプである。パワーアンプは、高GmデュアルJ−FETを初段に採用し、パワー段にA級動作に匹敵する低歪のリニアスイッチング方式を採用したスーパーサーボ型で、バイアス回路は低レベル信号に大きな影響を及ぼすパワーアンプのバイアス電流値を安定化するオートトラッキング方式を採用している。
 機能面では、トーンアンプ不要のダイレクトトーン方式採用、カラフルなインジケーターランプなどが特長的である。
 A805は、豊かで暖色系の低域をベースとして、やや細身の中域、粒子の細かい滑らかな高域がバランスしている。音場感はナチュラルに拡がり、雰囲気をよく再生するタイプである。

パイオニア A-8800X

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 数多くの機種を揃えた00シリーズとは別系統の新プリメインアンプで、ベストセラーを誇ったSA8800、8800IIの型番を踏襲したパイオニアの意欲作である。MM/MC切替使用のできる高利得イコライザー段、DC構成のフラット段、パワー段の3ブロック構成である。電源回路は、イコライザー段、フラット段とパワーアンプにそれぞれ専用の定電圧電源採用のダイレクトパワーサプライ方式が特長で、電源インピーダンスを下げ、相互干渉を防ぐメリットがある。パワーは、75W+75Wで新開発RETを使用した高出力、高クォリティ設計だ。

テクニクス SA-C02

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 コンサイスコンポ第2弾製品として開発されたレシーバーで、超小型アンプの魅力を最大限に活かした素晴らしい製品である。6個のボタンでFM/AM各6局合計12局プリセット可能なクォーツシンセサイザー採用のチューナー部、イコライザーとトーンコントロール付20W+20Wパワーアンプ構成のアンプ部がコンパクトにまとめられ、音質面のバランスも見事だ

ラックス MQ70

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 出力管にポピュラーな5極管6CA7をプッシュプル動作で使用したステレオパワーアンプである。出力トランスは、SGタップ、カソード巻線付の2次巻線を単一巻線とした新設計の低損失型で、初段は差動増幅、ラックス高電圧ドライバー管6240G使用の差動増幅ドライバーの3段構成だ。CL36とペアの音は、音の表現力が従来より一段と高まり、適度に活気のある実体感を伴った管球アンプならではの魅力的なサウンドである。

トリオ KT-9900, L-07TII

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 KT9700ではじまったパルスカウント検波方式を採用した、一連の製品のトップランクに位置づけされる新製品である。従来の技術を基盤とし、このモデルではさらに、IF段や検波段を含めてオーバーオールの歪を検出し、歪最少点で同調周波数をロックするDDL機構、高周波特性を大幅に改善するショットキーダイオード使用のバランスドミキサー、一段と改良されSN比を向上したパルスカウント横波などが採用されている。フロントエンドはバッファー付発振器内蔵FM専用9連バリコンとダブルバランスドミキサー使用、IF増幅段の帯域3段切替、サンプリングホールドMPXによりセバレーションを改善したMPX部、60Ωの超低出力インピーダンスをもつオーディオアンプ、90dBfまで直線的に動作する信号強度計、2系統のアンテナ切替スイッチ、2段切替のミューティングなど数多くの特長を備えた大型の高級FM専用チューナーだ。
 この他に07シリーズのペアチューナーとして開発された薄型のFM専用機L07TIIも発売されている。局部発振器内蔵7連バリコンとRF部DD・MOS型FET、ミキサー部MOS型FET使用のフロントエンド、IF帯域2段切替、ダブルコンバート方式IFとパルスカウント検波、オペレーショナルアンプ使用のオーディオアンプ、リレー式ミューティング、80dBまでリニアな信号強度計などが特長。

マランツ Sc-7, Sm-7

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マランツのセパレート型アンプの新製品である。デザイン的には、♯3600、♯3250で2度の全面変更があったが、今回は3度めの変更で、全体に大変華やかな色調をもちながら、コントロールアンプにまで、かつての♯9や♯500に採用された小型のツマミ付サブパネルがフロントパネルの中央下側に付けられた。現代的で、かつノスタルジックな雰囲気をもつ従来にないユニークなデザインとしているのが特長である。
 Sc7は過渡的音楽信号を忠実に再現するために低TIM設計を導入し、DC構成の各アンプは全てオープンループ利得を下げ、NF位相補正技術により入力信号と出力信号間の時間差、位相差を抑える設計方針で開発されている。機能面では、左右独立型で中音も含めたトライコントロールがTAPE・COPY時にも切替使用が可能となり、その他にカートリッジの負荷抵抗をMC型4段、MM型5段に切替えるセレクター、イコライザー段出力を直接出力端子に送り出すバイパススイッチ、DC構成のMCヘッドアンプが新しく加えられた。なお、2台のテープデッキ用の独立したレコーディングセレクターは、♯1250の機能を受け継いだデッキファンには魅力的な機能であり、500mWのヘッドフォンアンプを備える。
 Sm7は、低TIM設計の150W+150Wの出力をもつDC構成パワーアンプである。パワートランジスタ一には従来のマルチエミッター型のバラスト抵抗の電圧降下による高域特性の低下を改善した新デバイスを4個並列接続とし、2次巻線を左右分割した左右独立電源と伝統的な大容量、高性能電解コンデンサーを使った強力な電源回路、エネルギーセンサー型保護回路、大型対数圧縮型出力メーター、それに電力増幅段に直接つながるダイレクトスピーカー端子、AB2組のスピーカー切替スイッチを傭えている。
 Sc7とSm7の組合せは、現代のアンプらしい音の粒子が細かく、滑らかで伸びきった広いfレンジをもち、150W/チャンネルのハイパワーアンプならではの充分に厚みのある力強いサウンドを聴かせる。質的にも量的にも♯3250、♯170DCを確実に1ランク上回った信頼にたるべき価格に相応しいセパレート型アンプに思われる。

ソニー ST-J88

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 FMチューナーでは高い定評があるソニーのトップランク製品として開発されたクリスタルロックデジタル周波数シンセサイザー方式の高級FM専用チューナーである。
 局名表示板付の7局プリセットメモリー機能、オートとマニュアルチューニングを備え、メモリーは受信周波数、ステレオとモノのモード、ミューティング、IF帯域幅を同時に記憶する本格的なタイプである。主な特長では、電波の強さを20dBf以上を10dBfステップで60dBfまで表示する5段階のデジタルチューニングインジケーター、シングルチューン、クォドループチューンを採用した6段バリキャップによる電子同調、PLL−IC使用のパイロットキャンセル機能と高性能ローバスフィルター使用のMPX部、リードリレー使用のミューティング、ユニフェーズフィルター使用のNORMALとSAWフィルター使用のNARROW2段切替のIF増幅段、電源部のトロイダルトランス採用があげられる。

アキュフェーズ T-104

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 豪華なローズウッドキャビネットに収まった、デジタル型らしくないデザインをもち、高級機らしい雰囲気を備えたモデルだ。
 選局は、プッシュボタン操作の4局のプリセット同調、アキュフェーズ独自に開発した手動のパルスチューニングの2系統でおこない、切替なしで任意に選局できる。メモリーは、内蔵のニッカド電池でバックアップされ、電源スイッチを切っても約一年間はメモリーを保持できる。
 2個の大型メーターは、マルチパス兼変調度計と新IHF法によるdBf目盛付信号強度計である。パルスチューニングツマミを回転すると100kHzステップでデジタルディスプレイの指示は変わり、ピップトーンがピッピッとその変化を知らせ、同調点では同調表示ランプが点灯する。機能面では、IF帯域帽2段切替、ディマースイッチ、メーター切替の他5mの範囲で使えるリモート選局スイッチが特長である。
 マニュアル選局もピップトーンを備えるためフィーリングは通常の横行ダイアルに匹敵するものがあり、ミューティング動作もほぼノイズレスで快適。局間雑音チェックではノイズ分布がナチュラルで、受信チェック時の音質も今回試聴したチューナーのなかでトップランクである。

オンキョー Integra P-307, Integra M-507

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最新のオンキョーのセパレート型アンプは、DCアンプが特性面でDCまで伸びた帯域の広さが逆に音質面に及ぼすデメリットを技術面で検当している。その結果、不要な超低域をカットすることにより音楽信号のエンベロープ再生を明確にし、音楽信号の分解能の向上、NF回路を含めた結合コンデンサーの除去の2点を達成できる新回路方式スーパーサーボを開発し全面的に採用しているのが特長である。
 P307は、MCヘッドアンプ、イコライザー、トーンコントロールの3ブロック構成で各段共に新方式を採用している。機能面ではトーンコントロール用にラウドネスコントロールとフィルターを組み合わせた全てパッシブ素子構成で信号経路内にコンデンサーのないダイレクトトーン方式を採用し、トーンコントロールとしてはボリュウム位置が12時付近までは通常のトーンコントロール動作、それ以上は位置に応じてブースト量が減少する独特のタイプとしている。
 M507パワーアンプは、ABクラス動作で、しかもスイッチング歪が極小な特殊バイアス回路をもつ、リニアスイッチング方式を採用したスーパーサーボ方式で不要な超低域成分をマイナス70dBまで排除した、左右独立直結給電方式ハイスルーレート型で、150W十150Wのパワーをもつ。
 この組合せは豊かで弾力的な低域をベースとし、滑らかでキメ細やかな中域から高域がバランスした明るく伸びやかな音をもつのが特長である。

オンキョー Integra T-410DG

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

デジタルチューナーとしては、T433NIIに続く第2弾の新製品でFM専用チューナーとして開発された。6局のプリセット、オートとマニュアル切替のチューニング、IF帯域幅2段切替、エアチェック用キャリブレーター、周波数表示ディスプレイを切替使用するデジタル時計などが特長である。RF段はMOS型FET2段増幅で6連バラクターダイオードで、ダブル・シングル・ダブル同調の回路構成。

オーレックス ST-550

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 AM6局、FM4局のプリセット機構、同調点で停止するオートチューニングとマニュアルのステップチューニングを備えたFM多局化対応機である。周波数シンセサイザーではキャリアを誇るオーレックスの製品だけに操作性が優れ、受信周波数表示、信号強度表示、ステレオ表示が少しのタイムラグを置いて表示されるマニュアルチューナー的感覚は使って楽しい。

ヤマハ C-2a

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプのジャンルで例外的に数多くのファンに愛用されているヤマハのC2は、現時点での技術、素材をベースとして完全に設計変更されて、今回C2aとして発売された。
 基本的な回路構成面での特長は、MCヘッドアンプを含めて全てのアンプは平衡形全段プッシュプル構成で、原理的に歪の発生が少なく、しかもDCアンプ構成となっている。MCヘッドアンプは低雑音トランジスターを4個パラレル接続とし、さらに一石のカスコード段をもつプッシュプル構成。イコライザーアンプは超低雑音高利得デュアルFET差動増幅回路にカスコードブートストラップを組み合わせた初段、カレントミラープリドライブ、2段エミッターフォロアー出力段をもつプッシュプルDC構成である。トーンコントロール段には、イコライザー段とほぼ同様なNF型を使い機械的中点で完全ディフィートできる特殊カーブのコンダクティブプラスティックボリュウムを採用している。機能面ではサブソニックフィルター、入力系と独立した信号を選べる録音出力セレクター、ミューティングスイッチを備える。
 C2aとなり、特に感じられるのは、中域以上の解像力が一段とシャープとなりキビキビとした反応の鋭い音を聴かせる点である。

アキュフェーズ C-240

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全面的にパネル面の操作をプッシュボタンスイッチでコントロールする非常にユニークなデザインをもつ、アキュフェーズの第2世代を意味する高級コントロールアンプで、アキュフェーズの技術の集大成として完成されたのがC240である。内容的にはMCカートリッジ用ヘッドアンプ、A級ピュアコンプリメンタリー方式のヘッドフォンアンプを備えたトータルゲイン86dBのハイゲインコントロールセンターである。
 機能面では周波数特性可変機能が充実し、カートリッジ高域特性を調整するHFトリミング、高音・低音各2段に湾曲点切替可能な8ステップトーンコントロール、3段切替型ラウドネスコントロール、17Hz・12dB/octのサブソニックフィルターなどがある。パネル面は回転ツマミ4個、レバースイッチ1個、プッシュボタンスイッチが実に57個というユニークな構成が採用され、機能別に配置されている。プッシュボタンスイッチ独特の不要なポジションを飛び越して任意のポジションが選択できるフィーリングは、このタイプの最大の魅力だ。とくに、入力セレクターは電子制御のリレーを使うリモート切替型で、音質や耐久性を左右するプッシュスイッチやリレーは全て2回路並列使用で安定度を向上している。回路面はアキュフェーズオリジナルの全増幅段プッシュプル駆動をA級DC方式構成とした特長があり、MCヘッドアンプはモジュール化し安定度を向上している。

ヤマハ NS-590

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トールボーイ型の独特なプロポーションをもつNS890の系統を受け継いだヤマハの新製品である。構成は3ウェイタイブで、30cmウーファーは1000M系のマルチコルゲーション入りコニカル型のコーン紙とエッジワイズ巻ボイスコイル、銅キャップ付低歪磁気回路採用。12cmコーン型スコーカーは銅リボン線エッジワイズ巻ボイスコイル使用、トゥイーターはペリリュウム振動板採用のヤマハ独自のタイプで豊かな低域をベースに緻密な音をもつ

パイオニア S-180

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 明るく高能率、優れたパワーリニアリティ、明確な音像定位の3点を開発ポリシーとしたパイオニアの新スピーカーシリーズの製品である。
 ユニット構成は、32cmウーファーをベースとした3ウェイタイプだが、中音、高音にダイヤモンドの次に硬いボロンを、真空中で特殊熱処理により振動板形状にした特殊金属薄膜の両面に強力な熟エネルギーで深く入り込ませたボロン合金を振動板に採用しているのが最大の特長である。このシステムは、新しいパイオニアの低音──CS516以来のソリッドで厚みのある音をベースとし、軽く反応が早く、適度に輝きのある中音、高音がバランスを保ったフレッシュな音を聴かせる。この音は、あたかもホーン型ユニット使用のシステムのようなシャープさと、クリアーさを持ち、音の粒子は細かく、滑らかで、柔らかな雰囲気も充分出せるのが魅力である。

パイオニア Exclusive Model 3401W

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 昨年から今年にかけて、国内各メーカーから本格派のフロアー型スピーカーシステムが製品化され、世界的にも数が少なくなったこの分野にも、国内製品の占めるウェイトが徐々に大きくなってきたことは喜ばしいことである。それらのなかでも、EXCLUSIVEブランドのMODEL3401Wは、その性能、デザイン、価格を含めて極めてリーゾナブルであり、趣味的に眺めても非常に魅力的な雰囲気をもっているのが楽しい。
 MODEL3401の開発にあたっては、一切の妥協を許さない究極のオーディオ製品をつくりだすというEXCLUSIVEの思想に基づき『豊かな情感の中に、大きなスケールと解像力に優れた音の世界を実現し、スピーカーシステムの存在を感じさせずに音楽に陶酔しきれるスピーカーをつくりたい』との理想をかかげ、忠実に技術的な基本を守り、ひとつひとつのユニットの完成度を高めるとともに、全体のバランスを重視して作りあげた、といわれている。
 構成は、40cmウーファーをベースとし、ホーン型の中音と高音を配した3ウェイシステムで、エンクロージュアは比較的にキュービックなプロポーションをもつバスレフ型である。各使用ユニットは、反応の早い軽量振動系とリニアリティの高い支持系と駆動系を組み合わせ、あらゆるマスキング現象を徹底的に解明して防ぎ、どのような微妙な音もクリア一に聴きとれる解像力を引き出すことにポイントがおいてある。
 40cmウーファーEL403は、大型のアルニコ系マグネット使用の低歪磁気回路、コルゲーション入りの強じんな新開発のコーン紙と、巻幅23mmで振幅16mmに耐える超ロングトラベルボイスコイルを使用しながら、出力音圧レベルは97dBと高く、しかも300Wの許容入力をもっている。
 中音用には、ハイフレケンシードライバーユニットED915と独自の形状をもつホーンEH351の組合せで、500Hz〜22kHzの広帯域再生が可能である。ED915は、直径48mm、重量1170gのベリリウムダイアフラムに、アルマイト絶縁により極限まで導体体積占積率を高めたボイスコイルを組み合わせ、磁気回路はアルニコ系マグネット使用で、磁極には純銀ショートリングを付け、イコライザーは高域再生を優れたものにするために、3重スリット型を採用している。EH351Sは、平面波伝播部、球面波変換部、球面波伝播部を順次組み合わせたオリジナリティ豊かなホーンである。ホーンは2ブロックに分割され、第1ホーンはアルミ鋳造、第2ホーンは合板製で、ホーン材料による固有音の発生を抑え、かつ充分の強度を得ている。このホーンのメリットは音源中心が常に取付けるバッフル面にあるため、音響レンズのようにインダイレクトむ音にならず、シャープな音像定位とパースペクティブがとれることにある。
 ホーン型トゥイーターET703は、直径35mmで重量55mgのベリリウムダイアフラムと、希土類マグネット使用で19500ガウスの磁束密度をもつ磁気回路との組合せで、ED915と同じ107dBの高い出力音圧レベルと45kHzまでのレスポンスをもつ。ホーンはディフラクションタイプである。
 これらのユニットに使用するディバイディングネットワークEN907は、900Hz、7kHzのクロスオーバー周波数をもち、コイルは低抵抗・低歪型のコア入り、コンデンサーはメタライズドフィルムタイプ、音質に直接関係をもつアッテネーターはオートトランス型で最大300Wの入力に耐え、パネル面にはマルチチャンネルアンプ端子付である。
 エンクロージュアは、高密度、高弾性、高損失という理想的特性をもつアピトン合板製で、内部にもアピトン集合材の補強が充分におこなわれている。なお、外装にはグレー塗装仕上げの3401と、木目仕上げの3401Wの2モデルが用意されている。
 MODEL3401は、最近素晴らしく完成度が高まり、反応が早く明るく豊かな低音をベースとし、ホーン型ユニットにありがちな固有音がほとんどなく鮮明な音を聴かせる中音、爽やかに伸びきった高音がスムーズにバランスした魅力的な音を聴かせる。

デンオン SC-104/II

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デンマーク・ピアレス杜のユニットを全面的に採用した最初のデンオンのスピーカーシステムSC104が登場して既に3年あまりの期間が経過したが、今回その内容を一段と充実してMKIIに発展した。ユニット構成面では、25cmウーファー、10cmコーン型スコーカー、それに3・2cmソフトドーム型トゥイーターの3ウェイ構成で、使用ユニットも従来と基本的に同じである。
 MKIIの主な変更点は、バッフル面のユニット配置が各ユニットを一直線に並べるインライン型から左右対称型になり、エンクロージュアデザインが両サイドにテーパーをもち、ヨーロッパから輸入したサランネットとアルミサッシュの付いたシャープな感覚のものになったことである。細部では、レベルコントロールがバッフル面に移され、トゥイーターのみ調整できるようになった。SCシリーズ共通の特長としては、低域の質感向上のためエンクロージュアのバッフル板、裏板を除く部分は両面にリアルウォルナット貼のパーチクルボード使用、各ユニットとバッフル板の間に緩衝効果の大きなブチル系パテ充填、完全密閉型のエンクロージュア採用などがある。
 MKIIの音は、従来からも優れた音をもつSC104をベースにし、一段と表現力が豊かとなり、音場感的な拡がり、定位のシャープさなどの面でもこのクラスでは注目すべき完成度の高さをもつ。

Lo-D FT-8000

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デジタル・クォーツロックシンセサイザーFM専用チューナーである。プリセットメモリーは6局、自動同調、ステップ同調の3種類の選局機能、時計兼用の周波数デジタルディスプレイ、LED使用の5段階信号強度表示、録音レベルセット発振器、音によるマルチパスチェックスイッチなどの機能が特長だ。内容的には5連バリキャップ電子式フロントエンドにTVトラップを備えTVの影響を抑えている。

ソニー ST-J60

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 クリスタルロック・デジタル周波数シンセサイザー方式のAM/FMステレオチューナーである。FM/AM8局をランダムにプリセット可能で、自動的に同調点をさがすオートチューニング、ステップチューンとクイックチューンに切替わるマニュアルチューニング、電源スイッチOFF直前とFM/AM切替前に選局した局をメモリーするラストステーションメモリー、5段階の信号強度表示、マルチパス表示、キャリブレーショントーン、部屋の明かるさでディスプレイ照度が変わるオートディマーなどを備えている。

オンキョー MX-7

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 新しいMXシリーズは表現力の増大をテーマとしたオンキョーの新シリーズである。ユニット構成はマルチコルゲーション付プラスターコーン採用の31cmウーファーをベースに、断面がV字状のリング型振動板を大口径ボイスコイルで駆動する独特な構造の8cmスコーカーと4cmトゥイーターを組み合わせた3ウェイである。ネットワークは中音の上下のフィルターが位相的に利点のある6dB/oct型であるのが特長。なお、シリーズ製品にMX5がある。

オーレックス SS-L8S

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 エンクロージュアの回折効果を避けるためにバッフル面全体を550Rmmの曲面としたユニークな外観をもつフロアー型システムである。バッフルを曲面としたためにエンクロージュア内部の定在波の影響を抑えることができるのも副次的なこのシステムの特長である。曲面バッフルの効果はf特上で500Hz〜2kHzの間のレスポンスの凹凸を大幅に改善できるとのことだ。
 ウーファーは30cm口径で曲面バッフルにあわせた重量が非常に大きなダイキャストフレームとアルニコ系磁石の磁気回路をもち、コーンはカナダ産針葉樹パルプを組み合わせたエアドライ法による腰の強いタイプである。スコーカーは12cmフリーエッジコーン型でサマリュウムコバルト磁石の磁気回路とエッジワイズ巻ボイスコイルを使用。2・5cmドーム型トゥイーターは、厚さ20μのタンジェンシャルエッジ一体成形のチタンダイアフラム使用で、各ユニットは垂直面から1・5度後方に傾斜したラウンドバッフルに取り付けてある。エンクロージュアはバスレフ型で、ナチュラルに伸びたfレンジと、粒子の細かい練り込まれた美しいバランスの音をもつ。