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ラックス MS-10

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ラックスといえば、現在に至るまで管球式のアンプを作りつづけるアンプ専業メーカーというイメージが強いが、創業以来50年をこすキャリアを誇るだけにプレーヤーシステムやスピーカーシステムの分野でも独自な発想に基づいた製品をタイムリーに開発し、つねに話題を提供してきたことを知る人も多いことであろう。
 今回発売されたMS10は、昨年の全日本オーディオフェアに展示された一連のスピーカーシステムのなかから最初に製品化されたものと考えられる小型ブックシェルフ型である。トールボーイ型のプロポーションをもつエンクロージュアは、箱の後面に複数個の小孔をあけエンクロージュア内部の空気圧をコントロールするマルチベントチューニング方式と名付けられたタイプで、密閉型ほどウーファーのコーンに圧力がかからず、バスレフ型のように共振点をもたずコーンの動きの非対称性がない特長をもつとのことだ。材料はハイダンプド硬質パーチクル板で内部には吸音とパーチクル板の振動を抑える目的で粘弾質含有発泡吸音材スーパーシールが貼付けられ不要輻射を低減している。
 ユニット構成は2ウェイ型で、20cmウーファーは、コーン材料にアラミド系繊維のネットに化学処理を施し加熱成型をした新素材を採用し、エッジはポリウレタンフォーム、ダンパーはコーンと同じ素材、フレームはアルミダイキャスト製バーアーム型と数多くの特長をもつ。2・5cm口径のポリエステルフィルムドーム振動板使用のトゥイーターは、ウーファーとのつながりを重視した素材選択の結果選ばれたもので広帯域、高耐入力設計によるものである。
 ネットワークは、景近その使用部品が注目されているところだが、ここでは低域側、高域側ともに18dB/oct型が採用され、ユニット相互間の干渉を少なくするため補正回路を設け、クロスオーバー周波数付近のマスキング効果の発生を防いでいる。素子のコイルは低損失型、コンデンサーはメタライズドフィルム型を使い、レベルコントロールは付属していない、いわゆる固定型である。なお、スピーカー端子は太いコードでも確実に接続できるリード挿入式の大型ターミナルである。
 MS10のもっとも大きな特長は、アラミド系繊維をウーファーコーンに導入したことにある。各種のプラスティック系の材料を応用した例は国内製品には珍しいが、英国系のスピーカーシステムには比較的多く使用されているようだ。新材料を採用したためか、MS10は音色が軽く明るいタイプで、音の反応が速い特長がある。聴感上での帯域バランスは、小型ブックシェルフ型のつねで、やや高域に偏ったタイプで、セッティング場所を選び、バランスを補正した後にさらにアンプ側のトーンコントロールで補正するのがオーソドックスな使用法だ。MS10には粒立ちが細かく滑らかなアンプがマッチする。

ゴールドバグ Clement

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 このところ、カートリッジの分野では、各メーカーから続々とMC型の製品が登場してくることが目立った傾向となっている。ゴールドバグは小規模なメーカーらしいが、クレメントの完成にはアンプ設計者として著名なJ・ボンジョルノ氏が関与していることに特長がある。発電方式は巻枠に鉄芯を使うタイプで、コイルは15ミクロンの銅線で16Ωの抵抗値をもつ。カンチレバーはテーパー型アルミ合金パイプ製で高域共振周波数は40kHz。自重が5・6gと軽いことが特長である。

ソニー XL-44(B), XL-40, HA-50

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ソニーのカートリッジは新発足のソニーサウンドテック株式会社に移管されたが、その第一弾製品として7種類の新製品が発売された。今回は、そのうちMC型とMM型のカートリッジとMC型用ヘッドアンプを試聴することができた。
 MC型カートリッジXL44は、ブラック仕上げのXL44Bも用意されるというユニークなモデルである。発電方式は独自の8の字型空芯コイルを2個組み合わせたプッシュプル動作によるもので、巻枠となるアーマチュアは、どの方向にも動きがスムーズな円形であり電気的、機械的にバランスの優れた振動子としている。発電部は箱型構造の共振が少ないアルミダイキャスト製のヘッドシェルにダンプして組込んだシェル一体型を採用し、レコード盤面側のモールドが鮮やかなバイオレットに採色されているのがユニークである。
 XL44は、腰が強くソリッドな低域をベースとした安定感のある音が特長である。レスポンスは滑らかにコントロールされ、中域のエネルギー感も十分にある。
 MM型カートリッジXL40は、既発のXL45IIに最新の技術とノウハウを盛込み、大幅にコストダウンを計った新製品である。振動系は独自のカップ型ダンパーとテンションワイヤーの採用で振動支点を明確化し、ヘッドシェルは、XL44同様の箱型構造のアルミダイキャストシェルに組込む一体化防振構造であり、スタイラスホルダーは本体にネジ止め構造、本体のコイルには無酸素銅線採用。また、シェル内部配線はウレタン被覆リッツ線を使用するなど超高域まで伝送特性を伸した設計となっている。
 XL40の音は、音色が暖かく明るいタイプで、厚みがあり安定した豊かさが特長である。
 MC型カートリッジ用ヘッドアンプHA50は、既発売のHA55を受継いだ新製品である。入力はコンデンサーのない直結方式で、低域の位相回転がない。ゲインは26dB、周波数特性は6Hz〜1MHzと広帯域型であり、最大許容入力は100mVと高い。信号系は一切配線がなく、すべてプリント基板上で処理され、電源は定電圧型。スイッチ切替時のポップノイズ防止用のグランドショートタイプのミューティング回路を内蔵している。

アントレー EC-15

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 MC型専業メーカーとしてユニークな存在のアントレーから第3弾製品としてEC15が発売された。2重パイプ使用のステップドテーパーカンチレバー、高精度な粉末冶金法によるEU材の成型ヨーク、カーボンファイバー強化のボディなど新技術が応用され、高性能でローコスト化を実現している。昇圧トランスET100と組み合わせたEC15は、音の輪郭がシャープで活気があり、クリアーで、透明感があるハイクォリティな音を聴かせる。

オーディオテクニカ AT-30E/G

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 カッターヘッドと相似形の動作をする独特なVM型カートリッジで定評があるオーディオテクニカには、デュアルムービングコイル型と名付けられたMC型カートリッジのシリーズがあるが、今回、新しくAT30E/Gが加えられた。
 新モデルは、従来のタイプとはV字型のコイル配置が逆になり、VM型と同様にレコード盤面と反対方向に取付けてあるのが特長で、これによりスタイラスノブをVM型同様に抜き挿しして針交換を可能としている。コイルは低損失銀銅線、磁気回路はサマリウムコバルト磁石使用で出力電圧は0・4mVと高い。また、オーバーハング微調整可能なアルミブロックQダンプシェルに取付けてあるのも特長。AT30E/Gは、MC型としてはダイナミックで力強い音をもちフレッシュな音が魅力である。

サテン M-117G, M-18G

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 空芯スパイラルコイルとゴムダンパーを使用しない独創的な発電方式と超精密工作で定評が高い、ユニークなMC型カートリッジをつくるサテンから新しくGシリーズの新製品が発売された。
 Gシリーズは、サテンで開発された 『音をこわさないステレオ』創りの技術に基づいて完成された製品で、サテンのトーンアームAR1、プリアンプPA1、メインアンプMA1、スピーカーシステムSP1など一連の製品と組合せて本来の性能を100%発揮するように作られているとのことだ。新シリーズは現在、M117G、M18G、M18GBなど5モデルがあり、外見上ではM117やM18と同様に見えるが、サテンのトーンアームからスピーカーシステムまでの一連の製品の完成によって、一段と音をこわす箇所を厳密に取除くことが、可能になったようで、この原因は一般におこなわれている動的歪やスルーレイト等を含め、非常にレベルが低く測定不能の領域のものと発表されている。
 今回は、M117GとM18Gを従来どおりのステレオサウンド試聴室のシステムを使って聴いたが、ともにローレベルの再生が明瞭であり、直線的に伸びる音の立上がりがシャープな見事な音をもっている。とくに、M18Gは一段とリアリティが豊かで格調が高く、昇圧トランスなどを必要としない高出力型MCカートリッジならではのダイレクトな音である。

ビクター T-X5

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 基本的にはA−X5のペアとして開発されたFM/AMチューナーである。FM多局化に備えて高感度、高妨害排除型の設計で、狙った電波を追いかけ正確な同調点が確保できる独自のPTL検波回路、アンテナ入力が一定レベルより低くなると自動的にノイズを抑えるクワイティングスロープコントロール回路などを備える。

ビクター A-X5

井上卓也

ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ビクターからは、先きにBクラス動作に匹敵する高い電力効率とAクラス動作と同等のリニアリティをあわせもつパワー段と、半導体のもつ非直線性を改善した低歪率ドライバー段を組み合わせた、新開発のスーパーAサーキットを採用したステレオパワーアンプM7050が発売され注目を浴びているが、今回この新回路をプリメインアンプに導入した2機種の製品が新発売された。
 A−X5は、同系のデザインで100W+100WのパフォーマンスをもつA−X9のシリーズ製品として開発されたモデルであるが、70W+70Wのパワーをもちながら価格は1/2以下で、非常に高いコストパフォーマンスをもつことに特長がある。
 A−X9とA−X5は、パネル下側のヒンジ付パネルを閉めた状態では外観上ほとんど区別がつけがたいが、タテ長のバー型プッシュボタンスイッチの延長線上に溝が付き立体的なデザインをもつのがA−X9。これがないものがA−X5で両者を区別することができる。
 回路的なブロックダイヤグラムは、MC型カートリッジ用ヘッドアンプなしにダイレクトにMC型がゲイン切替で使用可能なハイゲインDCサーボイコライザーアンプとハイゲイン・スーパーA/DCパワーアンプの2段で構成するシンプルなもので最近ではプリメインアンプのひとつの動向となっているタイプである。したがって、TUNER、AUX、TAPEなどのハイレベル入力はパワーアンプに直接入力が加わるためSP・OUTまではカップリングコンデンサーがまったくない1アンプ構成の完全DCアンプになる。
 電源部は独立2電源・ダイレクトパワーサプライ方式と名付けられたタイプで、電源トランスの2次側を電圧増幅段用と電力増幅段用に分離して使い、各回路と直結させ広帯域にわたり電源インピーダンスを下げようとするものだ。
 機能は回路構成がシンプルであることにくらべて多機能型で、カンガルーポケット内側にイコライザー段サブソニックフィルター、TAPE−2用の入出力端子などを備えているのが特長である。
 A−X5は聴感上で十分にレスポンスが伸びきったワイドレンジ感と粒立ちが細やかで滑らかな音をもっている。エネルギーバランス的にはやや中域が薄いが、音色は明るく軽いタイプで、歪感が少ないためステレオフォニックな音場空間が奥深く拡がるのが特長である。

「私のタンノイ観」

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ・タンノイ」(1979年春発行)
「私のタンノイ観」より

 スピーカーシステムは、アンブなどのエレクトロニクスを応用したコンポーネントに比べると、トランスデューサーとして動作をするための、それぞれ独特のメカニズムをもち、固有のキャラクターが音に強く出やすく、定評が高いメーカーの製品は、おしなべて伝説的な神話が語りつかれているが、そのなかで、もっとも、オーディオ的な神話やミステリアスな事実が多く語られるのは、タンノイをおいて他にはないといってもよいだろう。
 その前身は、畜電池メーカーであったらしく、タンタルアロイを短縮してタンノイの名称をつけたといわれるこのメーカーは、英国のスピーカーメーカーとしては、ヴァイタボックス社と双璧をなす存在であり、しかも、デュアル・コンセントリック方式というユニークな構造をもつ同軸型2ウェイユニットのバリエーションを基本として永くスピーカーシステムを作りあげてきた点に特長がある。
 過去から現在にいたるタンノイを象徴するデュアル・コンセントリックユニットは、同じ構造をもつ3種類の製品中で、38cm口径のユニットであろう。かつての、ボイスコイルインピーダンスが15Ωであった時代の38cm口径、モニター15は、高域ユニットのレベルコントロールは固定型であったが、このユニットを使って、現在でもエンクロージュアを国産化して残っている大型のコーナー型バックローディングホーンエンクロージュアや、同様なタイプのG.R.F.がつくられ、ヨーロッバを代表するフロアー型システムとして、高級なファンに愛用された。とくに、モニター15の初期のモデルは、ウーファーコーンの中央のダストキャップが麻をメッシュ織りとしたような材料でつくられており、ダーク・グレイのフレーム、同じくダーク・ローズに塗装された磁気回路のカバーと絶妙なバランスを示し、いかにも格調が高い、いぶし銀のような音が出そうな雰囲気をもち、多くのファンに嘆息をつかせたものである。
 ソリッドステートアンブの世代となるとモニター15は、改良が加えられて、モニター・ゴールドに発展する。まず、ボイスコイルインピーダンスが8Ωとなり、ネットワークに高域のレベルコントロールと、当時としては大変にユニークなハイエンドのレスポンスをコントロールするスナッブ型のロール・
オフコントロールが加わり、ウーファーのf0も、約10Hzほど低くなって、一段とバーサタイルな使いやすいユニットに変わった。
 この当時から、海外製が価格的にも比較的に求めやすい状態となっていたために、レクタンギュラー型のヨークや、コーナー型のヨークといったバスレフ型エンクロージュア採用のモデルを中心として急激に数多くのファンに愛用されるようになった。もちろん、トップモデルのオートグラフは、依然として夢のスピーカーシステムであったが……。
 巷にタンノイの音としてイメージアップされた独特のサウンドは、やはり、デュアル・コンセントリック方式というユニット構造から由来しているのだろう。高域のドライバーユニットの磁気回路は、ウーファーの磁気回路の背面を利用して共用し、いわゆるイコライザー部分は、JBLやアルテックが同心円状の構造を採用していることに比べ、多孔型ともいえる、数多くの穴を集合させた構造とし、ウーファーコーンの形状が朝顔状のエクスポネンシャルで高域ホーンとしても動作する設計である。
 したがって、38cm型ユニットでは、クロスオーバー周波数をホーンが長いために1kHzと異例に低くとれる長所があるが、反面においては、独特なウーファーコーンの形状からくる強度の不足から強力な磁気回路をもつ割合いに、低域が柔らかく分解能が不足しがちで、いわゆるブーミーな低域になりやすいといった短所をもつことになるわけだ。
 しかし、聴感上での周波数帯域的なバランスは、豊かだが軟調の低域と、多孔型イコライザーとダイアフラムの組み合わせからくる独特な硬質の中高域が巧みにバランスして、他のシステムでは得られないアコースティックな大型蓄音器の音をイメージアップさせるディスクならではの魅力の弦楽器の音を聴かせることになる。それか、あらぬか、タンノイファンには、アコースティック蓄音器時代から長くディスクを聴き込んだ人が多く、オーディオコンポーネントとしてのラインナップは、カートリッジにオルトフォン、SPUシリーズ、アンプは、マッキントッシュの管球式コントロールアンプC−22とパワーアンプMC−275が、いわば黄金のトリオであり、ソリッドステートアンプでも、C−26とMC−2105の組み合わせが多く使用されていた。
 モニター・、ゴールドの時代がしばらく続いた後に、不幸にして、タンノイのコーンアッセンブリー製造セクションが火災にあい焼失するというアクシデントが起き、ブックシェルフ型の全盛時代でもあってその再起が危ぶまれたが、この逆境を乗切るかのようにつくられたものが、ハイ・パフォーマンス・デュアルの頭文字を付けた新モデルのシリーズで、この時点からユニット口径をあらわす単位がインチからセンチメートルに変わり、38cm口径ユニットは、385HPDと呼ばれるようになったが、これが現在のHPD385Aの前身である。
 新しいHPDシリーズは、ウーファーのコーン紙のカーブが変更され、f0が現代型のユニットの動向にマッチさせるために15〜20Hz低くなり、ボイスコイル構造が巻幅がヨーク厚より広いロングトラベル型に変わった。また、ウーファーコーン紙の裏側には、コーンの剛性を高めるために補強用のリブが取付けられたことも、このユニットの特長であろう。
 このHPDのシリーズになってからは、タンノイのスピーカーシステムは、大幅に再編成され、長期間トップモデルの座にあったオートグラフと、そのジュニアモデルG.R.F.が姿を消し、アーデンを筆頭とし、バークレイからイートンにいたるモデルナンバーの頭文字がアルファベット順になった5モデルでシリーズを形成するようになった。しかし、昔日のトップモデルであったオートグラフとG.R.F.を要求するファンの声が高まり、輸入代理店が現在のTEACに移換されてから、タンノイの了承を得て、このオートグラフとG.R.F.は、レプリカとして復沽することになる。
 タンノイの歴史として想い出される他のシステムでは、タンノイがユニットを供給して、エンクロージュアのみを自社製とする英ロックウッドのプロ用モニタースピーカーシステムのシリーズのソリッドに引締まった低域に特長がある一連の製品や、アメリカ・タンノイがエンクロージュアをつくった数多
くのアメリカ・タンノイのシステムがある。一時期輸人されたアメリカ・タンノイのモニター・ゴールド12を収めたブックシェルフ型マローカンの独特の英米混血の魅力ともいえるサウンドや米西岸で聴いたアメリカ・タンノイのベルベデールのJBLサウンドとも感じられるカラッと乾いた、シャープでエネルギッシュな音などが思い出される。
 このアメリカ・タンノイのかつてのカタログに、写真なしにのっていたコーネッタの名称からきたイメージが発端となり、製作したものが、ステレオサウンド本誌、マイ・ハンディクラフト欄に3回にわたり連載した幻のコーネッタのレプリカである。ちなみに、コーネッタのレプリカが完成した頃に、アメリカ・タンノイのコーネッタの写真を人手したわけだが、これが、あるか、あらぬか、ただのブックシェルフ型システムであったというのが、この幻のコーネッタ物語の終止符である。
 つねづね、何らかのかたちで、タンノイのユニットやシステムと私は、かかわりあいをもってはいるのだが、不思議なことにメインスピーカーの座にタンノイを置いたことはない。タンノイのアコースティック蓄音器を想わせる音は幼い頃の郷愁をくすぐり、しっとりと艶やかに鳴る弦の息づかいに魅せられはするのだが、もう少し枯れた年代になってからの楽しみに残して置きたい心情である。暫くの間、貸出し中のコーナー・ヨークや、仕事部犀でコードもつないでないIIILZのオリジナルシステムも、いずれは、その本来の音を聴かしてくれるだろうと考えるこの頃である。

ラックス MQ36

井上卓也

ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より

 現在でも管球式アンプをつくりつづけているラックスには、それぞれの時代に名を残した名作が多いが、そのなかでも傑出した製品は、このMQ36をおいて他にないだろう。
 管球式のパワーアンプでは、パワー管とスピーカーのインピーダンスマッチングのために必然的に出力トランスを使わざるをえない。出力トランスの得失はあるにせよ、アンプの物理的な特性を向上するには、この出力トランスの存在が大きなネックとなり、出力トランスを使わないアウトプット・トランス・レスの方式がかなり以前のモノーラル時代から研究され、特殊なハイインピーダンスのスピーカーを前提として製品が海外で開発された例もあった。
 現在では、アンプがソリッドステート化され、OTL方式は当然のこととなり、逆に出力トランスを採用したパワーアンプのほうが例外的な存在となっているが、かつてはOTL方式は夢のパワーアンプとして考えられはしても、現実の製品は海外製品を含めて無にひとしい時代であった。
 MQ36は、管球式からソリッドステート式に移りかわる時代に、管球式パワーアンプの性能限界に挑戦するかのように開発された、同社トップランクのパワーアンプであるとともに、管球式パワーアンプの代表作としてデザイン、性能、音質を含めて、オーディオの歴史に残るラックスの最大傑作である。
 特殊双三極管6336Aを片チャンネルあたり2本をSEPP構成としたステレオパワーアンプで、物量を投入した回路構成もさることながら、シャーシーを含むパワーアンプのコンストラクション、オーバーオールのデザインなど、どの点をとってもパワーアンプの頂点に位置するものがあり、現在に生きている素晴らしい製品である。

マランツ Model 2

井上卓也

ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より

 マランツの製品は、最初から単純なコントロールアンプとパワーアンプの組合せではなく、モノーラル時代としては前衛的な、エレクトロニック・クロスオーバーを含めたマルチ・チャンネル方式に発展可能な、いわばシステムアンプの構想をもっている点が、他には見られないユニークさである。
 パワーアンプMODEL2は、その後MODEL5,8B、9とつづく一連のマランツのパワーアンプの原点と考えられる作品である。シャーシーコンストラクションは、他のマランツのモデルとは大きく異なり、パワートランスとアウトプットとランスを組み込んだ長方形の重量感のあるブロックが構造的な基盤であり、これから、片持ち式にひさし状の真空管や電源部のコンデンサーなどを取り付ける、いわゆるシャーシーが取り付けられ、この部分を包むように、横方向からパンチングメタルのカバーがかかる特殊な構造である。
 メインブロックには、出力管のバイアス、ACとDCバランスをチェックするためのメーターとチェック用スイッチがあり、いわゆるシャーシー部分には、出力管を3極管接続と5極管接続に切替使用するスイッチ、ダンピングファクターコントロール、グリッド直結ジャックを含む3系統の入力端子、それに、ダンピングファクターコントロール用端子をもつ出力端子などがある。
 回路構成は、出力管に6CA7/EL34をプッシュプル構成で使い、6CG7のカソード結合位相反転段でドライブするタイプで、電源部の整流管の使用と、出力が40WであることがMODEL5や8Bと異なっている。
 内部の部品配置、配線は見事なもので、丹念に手がけられており、音質も、マランツのアンプのなかで、もっとも素直でクリアーな印象である。

ヤマハ YP-D71

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 YP−D7を大幅にグレイドアップした新製品である。クォーツロックPLLサーボ方式、高トルク・コアレスモーター、4点ピボット完全ジンバル支持高感度アーム、重量ラミネート構造ソリッドボード黒檀仕上げのプレーヤーベース、非接触光電流検出方式オートアップ機構、NEGLEX2重円筒シールドケーブルなどの特徴をもつ。性能を重点的に追求したセミオート機である。

ボザーク B410 Moorish

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 最近では、ソリッドステートアンプが急速な発展を遂げ、高いクォリティを維持しながら強力なパワーを得ることができるようになったことを背景として、スピーカーのジャンルでは、米AR社で開発した小型完全密閉型エンクロージュアにハイコンプライアンスのエアーサスペンション方式のウーファーを使用する、きわめて能率の低いスピーカーシステムに代表されるような、小型でありながら充分に優れた低域再生が可能な方式のスピーカーシステムが過去十年以上にもわたる長期間主流の座を占め、かつての大型フロアーシステム全盛時代に君臨した銘器の名称にふさわしいモデルは、そのほとんどが現在では姿を消し去っている。
 ボザークB410MOORISHは、現存する数少ない大型フロアーシステムのひとつである。ボザーク社は、第二次大戦前にR・T・ボザークが創立したスピーカーメーカーで、一時はアンプ関係の製品をも手がけたが、基本的にはスピーカー専業メーカーとしての姿勢を保ち続けている。
 ボザークのスピーカーメーカーとしての大きな特長は、ユニットにホーン型特有の、あのメガホン効果が付帯音として再生音に影響を与える点を嫌って、コーン型ユニットのみを創業以来作りつづけていることにある。また、ユニットの種類も、優れたユニットは1種類に限定されるというポリシーから、30cm型、20cm型、16cm型と5cm型それぞれ1種類の合計4種類を、創業期以来現在に至るまで継続して生産してきた。これらの4種類のユニットを組み合わせて各種のシステムを構成していることになるが、最大のシステムがコンサート・グランドシリーズと名付けられ、かつてはB410系がCLASSICとMOORISH、B310系にCONTEMPORARYの3機種があったが、現在輸入されているのは、このなかでB410MOORISHのみである。
 B410MOORISHは、そのデザインがムーア風の独特な雰囲気をもつものにまとめてあることから命名されたようで、ユニット構成は、30cm型羊毛混入のコーン紙とボイスコイル直径より外側にダンパーをセットしたユニークな構造をもつB199Aウーファーを4個、アルミ箔一体成形のコーンの両面にラテックス系の制動材を塗布した16cm型スコーカーB209Bを2個、同じ構造のコーンを採用した5cm型コーントゥイーターを8個、合計14個で構成した3ウェイ14スピーカーシステムである。
 バッフル板上のユニット配置は下側にほぼ正方形に4個のウーファー、中央上部に縦一列に8個のトゥイーター、これを狭んだ両側に横一列に2個のスコーカーをおく独特なレイアウトで、中域以上については、上下方向の指向性がよいスコーカーと水平方向に指向性がよいアレイ配置のトゥイーターの十字状の交点にエネルギーが集中する効果があり、並列使用でも特性の乱れないウーファーと相まって、大型にしては珍しい音像定位がピンポイントになる特長をつくりだしている。
 エンクロージュアは、音色面で選択されたと思われる硬質チップボード製で、表面がウォルナット仕上げをされた完全密閉型で、ユニットを含んだ総重量は102kgと、奥行きの浅いエンクロージュアにしては予想以上の重量がある。ネットワークは、ボザークでは従来からも振幅特性より位相特性を重視する伝統があるため、400Hz、2500Hzで6dB型を採用しているのが特長で、これも音像定位の明確さや、ステレオフォニックな音場感の、とくに前後方向のパースペクティブな再生に大きな影響を与えているものと思われる。また、高音、中音ユニット用のレベル調整が付属していないのも現在のスピーカーシステムとしては珍しいケースである。
 聴感上では充分に伸びた低域をベースに、緻密で量的に豊かむ中域、ハイエンドを抑えた高域がバランスし、滑らかなレスポンスを示すが、最新のディスクではややハイエンドが不足気味とも感じられる。音色は米東岸のシステムらしく、やや暗いが重厚そのものであり、力感が充分にあるために、ドイツ系のオーケストラには非常にマッチし、独特の陰影の濃い典雅な音を響かせる。

トリオ KA-9900

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ハイスピード化をポリシーとするトリオ最高級のプリメインアンプである。ライズタイム0・8μS、スルーレート±230V/μSの驚異的性能とストレートDCスイッチ、多段切替のラウドネス、MCヘッドアンプなどフル機能を備える。中域がソリッドで充実しパワフルでスケールの大きなダイナミックな音である。

トリオ KA-8300

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ハイスピード、ストレートDCなどのトリオ最新の技術を活かし、MCヘッドアンプを装備したハイスピードシリーズアンプの新製品である。初段超低雑音FET使用のDC構成イコライザ㈵、利得0dBの位相反転をしないトーンコントロール、それに高利得型DCパワーアンプの3ブロック構成を採用し、AUX、TAPE入力からスピーカー出力端子までを完全にDC化できるストレートDCスイッチを傭えるのが特長である。この目的のために0dB利得のトーンコントロールが意味をもつことになる。なお電源はダイナミッククロストーク追放の左右独立型。

デンオン PMA-850/II

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全段に独自の対称型プッシュプル回路を採用した特長のあるPMA850が、MCヘッドアンプとEBTパラレル接続のDCパワーアンプ部に22W+22WのA級動作と100W+100WのB級動作の切替機能を加えてMKIIに発展した。
 機能面では、PMA700以来のイコライザー出力を直接パワーアンプに送り込むダイレクトカップルスイッチの他に、機械的中点で完全にディフィートとなるトーンコントロール、主回路に任意に挿入可能なフィルター回路、REC・OUT切替などを備える。
 PMA850IIは、音色が明るく響きの美しい柔かさと、充分なスケール感が両立した安定した音である。音場感的な拡がり定位もナチュラルで、かなり遠近感をスッキリと見せるタイプだ。

デンオン PMA-630

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 イコライザー段と高利得パワーアンプの2段構成とし、質的、量的な両立を単純化により達成した高出力型の新製品だ。各段は全段対称型プッシュプル構成でPMA850II系の安定したスケール感豊かな、このクラスのアンプとしてはクォリティの高さが目立つ立派な音をもつ。

ヤマハ CA-S1, CA-R11

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 CA−S1は、価格的には、かつてのCA1000の位置を受け継いだヤマハの新しいプリメインアンプである。4石構成のMCヘッドアンプを除く、イコライザー、トーン、パワーの各アンプはFET差動入力のDC構成で全て0・005%以下の低歪率を誇り、実装時に各コントロールを操作しても特性の変わらない動的にも静的にも追求された回路構成をもつ。
 機能面では、セパレート型アンプのC4で開発されたターンオーバー連続可変型トーンコントロール、同じく、B4のR0コントロールを初めてプリメインアンプに導入したのが目立った特長である。
 シリーズ製品として連続可変ターンオーバーを省き、出力を70W+70WとしたCA−R11が同時に発売された。
 CA−S1は、基本的にはやや硬質な音をもつが、音の粒子が充分に磨き込まれ、エネルギー感があるために、プログラムソースに幅広く対応し、余裕のある落ち着いた穏やかな音を聴かせる。

オーディオテクニカ AT-1501III

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 当初は民生用の発売を考えず、放送業務用として企画、開発きれたAT1500シリーズは、NHKをはじめ民放各社で採用されて以来民生用にも発売され、既に十数年の超ロングセラーを誇っている。今回3度めの改良を受け、より一段と一般的な使用にマッチしたMKIIIに改良された。主な改良点は㈰コレットチャック型ヘッドコネクター ㈪加圧リングに固定ネジの新設 ㈫着脱式SME型インサイドフォースキャンセラー ㈬アーム高さ固定にレバーと連動する黄銅製偏芯ローラーが真円でなくローラーとあわせて3面でシャフトを支えるローラーチャツキング型タイトロック方式のBTS型3点取付けのアームベース ㈭カウンターウェイトの大径化 ㈮リアアームと軸受部間に大型ゴムダンパーを介した質量分離型の採用 ㈯センターシャフトの直径を増し水平方向のベアリングを大型化し耐久性の向上を計った点 ㉀出力コードの抜け止めリング新設 ㈷アームパイプ内側にテフロン被覆の純銀線を平行配線しクロストーク、ストレイキャパシティを減少 ㉂アルミブロック削り出し防振材付の純銀リッツ線をリード線とするLT12ヘッドシェルを標準装備としたことである。

ソニー TA-F80

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 信号系をL字型の流れとするために、入力端子をフロントパネル右側に、スピーカー端子をフロントパネル側から見て左側のリアパネルに配置したユニークなレイアウトを採用したソニーのプリメインアンプのトップモデルである。
 構成は、LECを並列接続した超LECトランジスター使用の差動増幅とICを組み合わせ40?と3?切替スイッチ付のMCヘッドアンプ、サブソニックフィルター付イコライザーアンプ、バイパス可能なCR型トーンコントロール、パワーアンプの放熱用に新開発ヒートパイプを使いパワートランジスターのレイアウトを信号の流れと一直線上に置くことを可能としたDC構成の120W+120Wの出力をもつパワーアンプである。電源部は、ソニーのパルスロック方式だ。
 構造面の特長は、コントロールアンプとパワーアンプを完全に分離したセパレート設計で、パワーアンプの大電流によるコントロールアンプ部への干渉は極めて少ない。機能面では、カートリッジの負荷をCはスイッチ切替とし、Rは連続可変とした点や、左右独立型で0・01W〜130Wを20ステップで表示するLED使用のパワーインジケーター、独立2系統のTAPE・COPYスイッチなどがある。

SAEC WE-506/30

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 トーンアームの軸受方式に独特なダブルナイフエッジを採用したサエタWE308は登場以来プレーヤーシステムの重要性を認識する高度なオーディオファンに注目され、その性能の高さが認められていた。以来、WE308NEW、308Lと細部の改良を受け、新素材の導入やメカニカルイコライザーの採用、精度の向上を基盤にWE308SXと完成度を高めているが、今回モデルナンバーを変えて商品化されたWE506/30は、同社初の有効長295mmのロングタイプアームだ。
 開発にあたっては業務用としても充分の性能、信頼度、安定度を満足させるために軸受まわりをいかに完壁とするかに重点が置かれたとのことで、従来の製品では細かい部品の組合せであった部分を鋼の削り出しにより一体成形とした点に特長がある。アームパイプは、フランス航空技術が生んだ特殊軽合金を採用し、軸受部との結合は内外4重支持式とし、剛性は非常に高く、トーンアームをリジッドに構成させるポリシーを一段と強く実現している。軸受部分は硬鋼材ブロック削り出し凹型ホルダー、ルビー軸受採用のコンシールド・ダブルナイフエッジ方式で、垂直、水平初動感度は5mgである。低域共振制動のメカニカルイコライザー、インサイドフォースキャンセラーと関連動作をしレコード内周ほど針圧を増加させる自動針圧微増機構、カートリッジ自重直読式ラテラルバランサー、新素材アルミナ使用のヘッドシェルの他に、出力コードが使用カートリッジにより3種類用意され、別売となっているのも特長である。重量のある剛性の高いプレーヤーベースに取付けて使用すべきトーンアームだ。

マランツ Pm-8

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最高級プリメインアンプは、セパレート型のコントロールアンプとパワーアンプを一体化して開発するというマランツの伝統的な手法を現時点で実施した新しいプリメインアンプである。基本構成は、同時発売のコントロールアンプSc7をパネル側に、パワーアンプSm7をその後に配置したといえるレイアウトを採用しているため、奥行きが437mmと長いという外形寸法にもそれがあらわれている。パネル面のレイアウト、機能は、コントロールアンプSc7と同等で、特長的なサブパネルをもつ。パワーは150W+150Wの高出力をもち、電源部は2次巻線で左右チャンネルを分離する左右独立型で15、000μF×4の電解コンデンサー使用だ。
 Pm8の音は、聴感上でのfレンジでは、Sc7とSm7の組合せよりワイドレンジ感は減るが、反面において、中域のエネルギー感が充実した、よりハイデンシティ型のプリメインアンプならではの充分にコントロールされたものだ。高出力タイプの魅力で小音量時にも余裕たっぶりの音が聴けるのが特長。

スペックス SDX-1000

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 従来のSD909と比べ自重を半分以下の4・7gという超軽量とした意欲的な新製品で、音質面でも一段と完成度が高まり、情報量が多く余裕が充分にある豊かで力強い音となった点に注目したい

グレース SF-100

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ステレオ初期にユニークなノイマン型の発電方式を抹用したF45発売以来、久し振りに登場したf10シリーズのなかのf10Lをシェル一体型とした製品がこのSF100である。ボロン複合カンチレバー、オルトフォン型としては20Ωのインピーダンスで0・75mVの出力電圧をもつ点など規格はf10Lと同様である。

ダイナベクター DV-30C

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 DV30シリーズは赤い透明な合成樹脂とシルバーに輝く軽金属のコントラストが特長となっているシェル一体型のMCカートリッジである。標準状態ではヘッドコネクターから針先位置の寸法は50mmに設定して出荷されているが六角レンチで調整は可能だ。30シリーズは、30A、30Bが高出力型で直接フォノ入力に接続できるのに対し、30Cは低出力型で、カンチレバー材は炭素繊維を芯材としたボロン、巻枠部分はアルミで補強され、針先は西独製特殊ラインコンタクト型、磁気回路のマグネットは英国製の強力なHERAを採用している。コイルは特殊巻線機によりポリアセタールの角型巻枠に井桁状に巻いてある。昇庄トランスはDV6A指定だ。