井上卓也
ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より
同軸型2ウェイ・モニターシステム用ユニットとして、アルテックを代表する604系ユニット604−8KSを620エンクロージュアと組み合わせたモニターシステムだ。
604−8KSは、604−8G以前の伝統的な6セル・マルチセルラ型ハイフレケンシー用ホーンをマンタレーホーンに替え、サービスエリアを拡げるとともに、フェイジングブラグを、伝統的な同軸スリットタイプからタンジェリンタイプにして、高域のレスポンスを伸ばしたタイプである。ネットワークも、ハイフレケンシーのレベル調整をおこなうスタンダードな方式と、3ウェイ的に、中域のレスポンスをも調整可能な方式とを、スイッチ切替で選択できる。
最初は、ややナローレンジ型だが、同軸2ウェイモニターの原点ともいうべき604−8G的なサウンドで現代のパワーアンプを聴いてみようという方向で試みてみたが、基本設計は、もはや完全に3ウェイ的で、より広帯域志向になっており、総合的にも、こちらの使用方法のほうが、はるかに完成度の高い音を聴かせてくれた。
基本的な低域と高域ユニットのエネルギ一には変化はなく、広帯域型化されたため、滑らかで、しなやかさ、フラットレスポンス化など、トランスデューサーとしての改善は著しいが、力感、密度感、アルテックらしい独特の個性的な魅力は薄らぎ、現代的なサウンドに発展している。
最近のコメント