Category Archives: コントロールアンプ - Page 19

オンキョー Integra P-303

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、音が全体に爽やかで、適度のコントラストが付いたフレッシュな音になる。やや間接音成分が多く、中域の密度の薄さは残るが、中域のエネルギー感もあり、クォリティ的にもセパレートアンプらしさが充分に感じられる。バランス的には、中域から中低域にかけて、エネルギー感的に不足ぎみの部分があり、厚み、力強さがわずかに抑えられる印象がある。
 付属のMC型用ヘッドアンプは、MC20で、柔らかく間接音がタップリとした、まるく甘い音となり、103Sでは、トランスよりも鮮度が高く、細部のディテールをかなりスッキリと引き出して聴かせる。

ラックス 5C50

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の粒子は、全帯域にわたって滑らかで、細かくよく磨かれている。聴感上の周波数レンジは充分に伸びているが、表情がおだやかで、やや間接的な表現をするために、クリアーに伸びた印象とはならない。
 音はやや薄いタイプで、音場感は左右によく広がるが、前後方向のパースペクティブは抑えられ、音場は、左右のスピーカー間の奥に引っ込んで広がる。リニアイコライザーをアップティルトにすると、スケールは小さいが反応の早い、キレイな音になる。4000D/IIIや881Sなどのハイインピーダンス型カートリッジでは、負荷抵抗を100kΩとすると、クリアーさ、シャープさが増して、音の鮮度感が高まる。

ハフラー DH101

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプとしては、いわゆるセパレート型アンプらしい性能とクォリティを狙った製品ではなく、限定された範囲内での性能、クォリティをベースとして、音楽を楽しむためのアンプとして開発されたアンプという印象の音である。
 聴感上での周波数レンジはナローレンジ型であるが、聴きやすく、柔らかく適度に活気が感じられる、大変に巧妙なバランスが保たれている。「サイド・バイ・サイド3」は、正確さはないがムード的に楽しく聴かせ、テルマ・ヒューストンでは、ヴォーカルを中心として、ダイレクトカッティングとしてではなく、中域ベースの安定した再生をする。この適度に楽しめる音が最大のメリットと思う。

ラックス CL32

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おとなしく、滑らかな音のコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型ではあるが、ソフトで磨かれた音をもつために、狭さは感じられず、かなりナチュラルに伸びた印象となる。
 全体に、間接音成分を豊かにつけて、響きのよい音を聴かせる傾向があり、低域は甘さがあるが、トータルとしては安定型のバランスとなり、落着いた印象を聴くものに与える。中域は、予想よりもエネルギー感があり、このあたりはワイドレンジ型でない、このアンプのメリットであろう。ステレオフォニックな音場感は、音源が遠く感じられ、スピーカー間のかなり奥に広がるタイプで、音像は少し大きくまとまる傾向がある。

GAS Thaedra II

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mとの組合せでは、オリジナルなペアよりも音の表情が素気なくなり、押出しはよいのだが、力にまかせて音を出すような印象となる。とくに中域から中高域にかけての帯域が硬調となり、厚さが感じられない、やや細い、薄い印象となる。
 聴感上での周波数レンジは、オリジナルなペアよりもフラット型となり、音色もソリッドとなるために、オーディオ的にはかなりクォリティが高く、エネルギー感もタップリとあるが、音の表現が単調となり、独得の陰影の色濃い、ダイナミックな魅力はもはや感じられない。結果としてはマッチングの悪さが感じられるペアである。

ラックス C-12

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 全体に音をスケール小さく、箱庭のようにキレイに縮小して聴かせるアンプである。
 聴感上の周波数レンジは、かなりスッキリと伸びた印象があり、バランス的には、低域が抑え気味、中域は薄さがある。音色は、全体に軽く、フワッとした明るさを感じるタイプで、小さいながら、音楽のステレオフォニックな音場感を含めたプレゼンスを、かなり正確にきかせる。
 マランツ♯510Mと組み合わせても、M12の場合と決定的な変化は見せず、やや緻密な、シャープさが出てはくるものの、スケールは小さく、250W+250Wのエネルギー感は、ボリュウムを上げなければ得られない。

GAS Thoebe

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 トータルの音のキャラクターは、かなりテァドラIIとよく似ているが、バランス的には、低域の量感が少し抑えられてソリッドな印象となり、全体にスッキリとし、音の反応が少し早くなったように感じられる。
 聴感上での周波数レンジは、割合にフラットレスポンスのナチュラルに伸びたタイプで、音色は明るく、適度のクリアーさがあり、クォリティは高く、やはりこの音はセパレート型アンプならではのものだ。
 音の表情は特に豊かなタイプではないが、国内製品の優等生的なキャラクターから比較すれば、伸びやかで活気があり、ダイナミックである。また、色彩感の豊かな表現力はGASの製品らしい特長であろう。

Lo-D HCA-7500

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 おだやかな音をもつコントロールアンプである。聴感上での周波数レンジは、ややナローレンジ型で、バランス的には、低域が安定し、中域の厚みも感じられる。高域は、ハイエンドを少し抑えているが、低域とのバランスはよく保たれている。
 ステレオフォニックな音場感は、少し狭く感じられ、音像の定位と音像の大きさ、輪郭は、セパレート型の平均的と思われる。
 音の表情は、基本的にはマジメなタイプだが、ときにはアクティブさも感じられる。音や音楽をマクロ的に外側から掴んで聴かせるタイプのアンプとして、オーバーオールのバランスは、よくコントロールされており、安定感がある。

ダイヤトーン DA-P15S

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 リファレンスパワーアンプ♯510Mと組み合わせると、A15DCの場合よりも、全体にソリッドで、引締った音になる。しかし、音が薄く、予想よりもコントラストが付かない。音色は、軽く明るいタイプで、低域は少し柔らかく、中高域に一種の色付けがあり、アクセントをつけている。
 MCカートリッジ用ヘッドアンプは、柔らかく細やかで、音色が明るい。聴感上の周波数レンジは広く、伸びているが、MC20では、スケール感が一段と小さくなり可愛らしい音になる。DL103Sのほうが、ワイドレンジ型で、クッキリと粒立ちがよい鮮度の高い音だ。音像定位もスッキリとし、輪郭がクリアーで表情が若々しくなる。

デンオン PRA-1001

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 PRA1001は、比較的にスタンダードな性格をもっている。聴感上での周波数レンジも適度で、帯域の音色バランスもよくコントロールされ、音色的な違和感は少ない。スケール感も、このクラスのコントロールアンプとして応わしいが、音の鋭角的な切れ込みでは、リファレンスのLNP2Lに一歩譲る。また、中域のエネルギー感も、いま一歩といった印象である。
 音の表情は、かなりマジメ型で、ややパッシブな面がないでもない。♯510Mとの組合せでは、音に伸びやかさがあり、音場感がかなりスッキリと広がるようになる。これは、♯510Mの力強さと緻密さが素直に出ている結果であろう。

GAS Thalia

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 クリアーで反応の早い音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりフラットレスポンス型で、バランス的にはローエンドが抑えられており、中域は米国系のアンプとしてはやや薄いタイプである。音色は明るく軽く、音の粒子は細かく充分に磨かれている。
 音の表情はフレッシュでみずみずしく、キメの細かい鮮鋭さでは、上級機種のテァドラIIやセータよりも明らかに一枚上手である。基本的なクォリティは充分に高く、音の緻密さがあり、この価格帯の国内製品と比較すれば、いきいきとした伸びやかな音をもつ点で出色のコントロールアンプと思う。

DBシステムズ DB-1

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スッキリとしたシャープな音をもつコントロールアンプである。
 このタイプの音は、とかく小柄でエネルギー感がなくなりがちであるが、DB1では、柔らかさと適度の粘りのある弾力性があるために、抑えの効いたグイッと伸びる力感があり、独得の音に抑揚をつけて聴かせる。
 DB6との組合せのときのキャラクターは、コントロールアンプ側にその要素が多くあるようで、中低域あたりの甘さと、粘りのある弾力的なキャラクターは独得のものである。音の伸びは、リファレンスパワーアンプ♯510Mのほうが格段に優れ、鋭角的に、適度のしなやかさをもち、ストレートでエネルギッシュである。

デンオン PRA-1003

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 聴感上の周波数レンジが、ワイドレンジタイプで、反応が早く、鮮度が高い音を聴かせるコントロールアンプである。
 音の厚みと低域の重量感は求められないが、中域が少し薄く、爽やかに伸びた音は、オーディオ的に魅力があり、ステレオフォニックな音場感が広がり、音楽の雰囲気をかなり正確に伝えるのは、このコントロールアンプのメリットである。
 音楽への働きかけは、適度に聴いて楽しい音にするという意味ではなく、色付けが少なく素直にディスクに刻まれた情報量を増幅するという意味で、かなりアクティブといえる。価格的にも10万円を割るクラスにあり、出色のコントロールアンプという感じだ。

ヤマハ C-2 + B-3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前B2と組み合わせて聴いたC2だが、パワーアンプが変ると総合的にはずいぶんイメージが変って聴こえるものだと思う。少なくともB3の出現によって、C2の本当に良い伴侶が誕生したという感じで、型番の上ではB2の方が本来の組合せかもしれないが、音として聴くかぎりこちらの組合せの方がいい。B2にはどこか硬さがあり、また音の曇りもとりきれない部分があったがB3になって音はすっかりこなれてきて、C2と組み合わせた音は国産の水準を知る最新の標準尺として使いたいと思わせるほど、バランスの面で全く破綻がないしそれが単に無難とかつまらなさでなく、テストソースのひとつひとつに、恰もそうあって欲しい表情と色あいを、しかしほどよく踏み止まったところでそれぞれ与えて楽しませてくれる。当り前でありながら現状ではこの水準の音は決して多いとはいえない。ともかく、どんなレコードをかけても、このアンプの鳴らす音楽の世界に安心して身をまかせておくことができる。

サンスイ CA-2000 + BA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 少し以前のサンスイのアンプは、強いて類型を探すとビクターに一脈通じるような、いくぶん光沢過剰というか、かなり輝かしい派手な音の傾向があった。プリメインのAU707、607以降、次第に大きく変身を試みて成功しはじめているが、時期的にみるとこのCA2000/BA2000はちょうどその転換期にかかっていたためでもあるのだろう、CA2000には従前のサンスイの音がやや残っているし、BA2000の方は新しいナチュラルな音になってからのサンスイの音が入っている、という感じなので、両者の組合せは、互いに相補うところと、長所を相殺しあうところが微妙に入りまじっているように思える。たとえば音に一種独特の明るい艶が乗って音の表情や輪郭をはっきりさせるところは長所といえるし、反面、曲によって少々カン高い感じになったり、華やぎすぎる傾向が聴きとれたりもする。パワーアンプの方が完成度が高いので、右の傾向はCA2000の方に影響されている。

ビクター EQ-7070 + M-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 3030どうしの組合せのところで書いたようなビクターのアンプの二つの傾向の中の、もうひとつの面といえる、明るく輝いた積極的な響きのよさを持ったアンプといえる。音のひと粒ひと粒が、輪郭をきらめかせて輝く感じで、こういう音はもしも基本的なクォリティの低い、音の質感の十分に磨かれていないアンプで鳴らされたとしたらやりきれないのだが、さすがに7070のクラスになれば、緻密で品位の高い質感のよさに支えられて、この明るく張り出す音は、魅力的な個性といえるレベルにまで仕上っていると思う。たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティや、弦楽四重奏、そしてアメリンクの声などクラシック系ではいくぶん派手やかさが目立つけれど、決して不快ではなく、またポップス系ではヴォーカルなど概して若づくりになる傾向もあるが、ともかくかなり楽しませる音がする。いわば自己主張のつよい聴きようによっては押しつけがましさもある音には違いないが、質の良さで聴かせてしまうアンプだ。

パイオニア Exclusive C3 + Exclusive M4

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば入力に対する応答速度とか解像力という面からみれば、ごく最近の優秀な製品には及ばない。が、ここから鳴ってくる音のニュアンスの豊かな繊細なやさしさは、テストソースの一曲ごとに、ついボリュウムを絞りがたい気持にさせてしまう。そのこと自体がすでにきわめて貴重であることを断わった上で細かなことを言えば、それぞれの単体のところでも書いたように、繊細さの反面の線の弱さ、柔らかさの反面の音の密度の濃さや充実感、などの面でわずかとはいえ不満を感じないとはいえない。本質的にウェットな傾向は、曲によっては気分を沈みがちにさせるようなところがなくもない。ただ、そうした面を持っているにもかかわらず、菅野録音のベーゼンドルファーの音を、脂こさはいくぶん不足ながらかなりの魅力で抽き出したし、シェフィールドのダイレクトカットでさえ、意外に力の支えもあって楽しめた。アラ探しをしようという気持にさせない音の品位とバランスの良さが聴き手を納得させてしまう。

ビクター P-3030 + M-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ふりかえってみてビクターの作るアンプの音には、二つの違った傾向があったと思う。ひとつはプリメインアンプのJA−S41に代表される、かなり抑制の利いた、どちらかといえば音楽の表情をおさえてゆく方向の、おとなしい感じの音。そしてもうひとつは、音像の輪郭をきらめかせて総体に良く響くという感じの傾向。この傾向は以前のセパレートアンプJP−S7/JM−S7にもあった。また国産のアンプでは従前までのサンスイなどにもその傾向があった。3030シリーズの組合せは、どちらかといえば前者の傾向で、総体に穏やかでいくらか暗色系の曇りを感じさせる。ただ音像の芯には意外に硬質なところがあるようで、音の密度は一応しっかりしている。反面もう少し立体感が欲しい。あるいは音像と音像とのあいだに空気を送り込みたい、という感じがする。離れて配置された互いに異なる楽器から出た音が、空間で溶けあってハモリ響く感じをもっと出したいという気分にさせる。

パイオニア C-21 + M-25

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 C3とM4を頂点としてプリメインアンプの9900、9800以下のひとつ前のシリーズのパイオニアのアンプの音には、基本的に、ウェットな滑らかさが基本になっていたが、C3/M4をエクスクルーシヴという別ブランドにして、新たにマグニワイド・シリーズになる直前あたりのパイオニアの音は、少しずつ方向転換しはじめて、音の力強さをかなり表面に押し出してきたように思える。あるいは音の力強さを、以前のように柔らかさやウェットな肌ざわりの中に包み込むのではなく、もっと単刀直入にあらわにしはじめた、といった方が当っているのかもしれない。このC21/M25の組合せでは、M25の方が格がずっと上という印象で、M25の方が色濃く持っているしなやかな力とニュアンスの豊かさを、C21では少々抽き出しきれないというよりもむしろ、C21の音の表情の硬い傾向が、M25の大らかな表現力をかなり抑えこんでしまっているように思えた。

パイオニア C-77 + M-75

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 セパレートタイプのアンプの中にも、大きく分類すると、コントロールアンプ、パワーアンプがそれぞれ別のメーカーの製品と組み合わせて使われることをかなり意識した作り方と、互いが相補う型で同じシリーズどうしで組み合わせることを前提とした作り方とがあるが、このC77/M75は後者のタイプで、単体に切り離しての試聴よりも、組み合わせた状態の方がいい。そのことは単体の試聴記の方をあわせて参照して頂きたいが、C77の大づかみでいくぶん反応の鈍い印象の音と、M75のコントラストの強い音がうまく補いあって、トータルにはまとまりのいい音に仕上っている。低音の量感は意識的に多めにしているらしく、またそれとバランスをとるためだろうか。高音域にも多少の強調があって、音をあまり聴き馴れない入門者にもわかりやすく作った、といった感じを受けるが、それだけに、セパレートタイプのアンプの中ではやや異色の、かなり表情過多な味の濃い作り方だと感じた。

トリオ L-07C + L-07M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 同じトリオの製品でいえば、プリメインアンプのKA9300のグレイドアップ版とでもいえるだろうか。ちょうどその時期にトリオの目指していた音は、どちらかといえばいくぶんコントラストを強調した、輪郭の鮮明な、そして低音をかなり引き締めた、ややハードな傾向だった。ただ、その中にたとえば弦楽器のような音にも、しなやかに反応してゆくナイーヴな面をあわせ持っているところが、単に硬い一方のアンプとは明らかに違う良さだ。07C/07Mの組合せにもほぼそのような性格が聴きとれる。それは、プログラムソースでいえば、どちらかといえばポップス系に、また組み合わせるスピーカーでいえば、JBL系よりはヨーロッパ系との相性、が感じとれる。言いかえれば、JBL系でクラシックを鳴らしたりすると、説明過剰というか、音の輪郭の鮮明すぎるところが多少鼻につく結果になりがちともいえる。05Mとの組合せの方で書いたように、最近のトリオは少し方向をかえている。

オンキョー Integra P-303 + Integra M-505

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 大づかみにウェット型そしてどこか女性的なやさしさ。しかしLo−Dの7500や7300のところで書いたような、線の細い感じとは少し違う。決して音がひょろひょろしたり頼りなくなったりしない充実感も密度も、そして低音のしっかりした支えもほどよく持っていて、音域の中での欠落感のようなものがなく、バランスもよく整っている。その上で、音楽している演奏者の表情というか、表現上のニュアンスがとてもよく感じとれ、さらに空間にひろがってゆく音の余韻の響きと溶けあいの繊細な美しさも十分に再現できる。たいそう滑らかで上質の音といえる。弦や女声はもちろん、ベーゼンドルファーの艶や弾みもよく出るアンプはこれ以外には少ない。欲をいえば、こういう柔らかな音を鳴らしながらも、もうひとつピシッと引き締った冷徹な切れ込みも聴かせてくれれば満点なのだが、それはぜいたくというものだろう。しかしこのアンプくらい、鳴ってくる音と見た目の印象のちぐはぐなのも少ない。

トリオ L-07C + L-05M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 07C+07Mのところで書いたと同じたとえを持ち出すが、同じ07Cでも05Mとの組合せになると、KA9300よりもむしろKA7300Dの方に近くなる。9300のは愛、というよりその時期にトリオが作っていた音は、輪郭の鮮明さの強調が、プログラムソースや組合わせるスピーカーによってはいくぶん鼻につくようなところがあった。しかし、KA7300Dのあたりからは、そのいわばアクの強い面がすっかりこなれてきて、自己主張が抑えられ、プログラムソースに柔軟に反応してゆくナイーヴな面がいっそうよく聴きとれるようになってきた。それでいて、従前から持っていた音の構築のたしかさを失っていないから、たとえば「オテロ」の冒頭でも、このクラスのアンプとしてはかなりドラマティックな表情も再現することができる。ただ、細かいことをいえば低音でも07Cの個性(その項参照)が出てきてしまうし、いくぶん骨細に張り出す傾向もある。が、総合的にはかなりの音だ。

ラックス 5C50 + 5M21

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ラックスのトランジスター技術が高く評価されたのは、少し古い話だがプリメイン型のSQ505の時代にさかのぼる。ただそれからあとのしばらくの間、少々低迷ぎみの時期が長く続いたが、今回のこの「ラボラトリー・リファレンス」と名づけられた新シリーズで、ラックスは再びその持てる技術力を出し切って全力投球したという印象だ。このシリーズは、どの製品をとっても、現在の世界の水準からみても相当に高いレベルにあるといえるが、その中心的な存在がこの5C50と5M21の組合せだ。音の品位の高さ、透明な解像力の高さ、そして緻密でしっとりと肌ざわりの滑らかな質感のよさ、とても素晴らしいできばえだ。しいていえば、ラックスというメーカーが体質的にもっている真面目さもまたストレートに出ていて、単体それぞれよりも組み合わせた音の方に、かなり真面目な音を感じてもう少しハメを外してもという気にさせるが、それは私のような不真面目人間の言うことだろう。

ラックス CL32 + MB3045

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ラボラトリー・リファレンス・シリーズでトランジスター技術の粋をみせたラックスが、それでもあえて管球アンプを残しているのは、やはりトランジスターでは得られない何らかのメリットを認めているからに違いない。そのことは、音を聴いてみるとすぐにわかる。音楽が鳴り始めた瞬間から、ふっと肩の力が抜けてゆく感じで、テストしようなどという気負いを取り去ってくつろがせてしまうようなこの暖かい鳴り方はいったいどこからくる魅力なのだろう。解像力も甘いし、決して音を引き締めないから曲によっては少々手綱をゆるめすぎる傾向もなくはない。ただ、管球というイメージから想像されるような古めかしさはない。新しい傾向の音楽や新録音の魅力を十分に抽き出すだけの能力は持っていて、弦や声など、思わず、あ、いいなあ! と言いたくなるような親密感というのか、無機質でない暖かさに、ついひきこまれてしまう。こういう音を良いと感じるのは、こちらの年齢のせいなのだろうか。