Category Archives: コントロールアンプ - Page 17

アキュフェーズ C-220A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 周到に練り上げられた上質の音であることをまず感じさせる。どんなプログラムソースに対しても、いわゆるメカッぽさや金属質の音を鳴らさずに、しっとりと潤いのある肌ざわりの、上品でエレガントな音を聴かせる。うっすらと薄化粧した感じさえある。音の解像力や切れ込みも十分に良いが、それをあからさまにひけらかさないトロリとした滑らかな味わいが好ましい。内蔵ヘッドアンプは、MC20もDL103Sに対しても良好で、ハイエンドのよく伸びた色あいの美しい音を聴かせた。欲をいえばダイナミックな凄み、そして低音の量感が、それぞれもうひと息増してくるともっと良いが、それにしてもこれはとても良くできたコントロールアンプのひとつといえる。

アキュフェーズ C-200S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一印象は輪郭の鮮明な鮮度の高い音。たとえばテストソースの中の「オテロ」冒頭のようにスケールの大きく編成の複雑な曲でも、混濁を生じることなく、ディテールをくっきりと浮き上らせ、声部をはっきりと際立たせて聴かせる。たた、音のコントラストをつよめて表現に抑揚をつけすぎる傾向があるために、楽音の内面よりも輪郭のくまどりの方に耳の注意をひきつけやすい。したがって打楽器系では立上りの鋭い切れ込みのよさが快いが、弦やヴォーカルではいくぶん硬さや冷たさを感じさせる。ただこれはテストの際のマランツ510Mの音との相乗効果もある。M60のようなソフトな肌ざわりのアンプと組み合わせると、適度に音をひきしめて楽しめると思う。

マランツ Model P3600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 組み合わせて聴いた510Mは、他のすべての試聴にリファレンスにしているわけだが、たとえばシェフィールドのダイレクトカッティング・レコードなどで、ほぼパワーの限界近くまで上げて聴いたとき、コントロールアンプにマーク・レビンソンLNP2Lを組み合わせたときには510Mのピークインジケーターがしばしば点灯するのに、P3600にすると同じような音量まで上げてもインジケーターが点灯しない。ということは、LNPが何か不安定なシグナルを発生しているのか、逆にP3600がDレインジがせまくピーク成分が伸びきらないのか、確認はできないが、そういう違いがあった。しかし、やや光沢を抑えるがおだやかで、質の高い緻密な音は相当の水準だ。

マランツ Model 3250

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 設計はアメリカだが製造は日本マランツが担当しているということだから、一般の輸入品と比較するよりも価格的には国産機との対抗になるが、それにしてもこれは相当によくできたコントロールアンプで、クォリティ的に国産の十数万円台のそれと比較しても全くヒケをとらない。どちらかというとさらっと乾いて小ざっぱりした感じの明るい音だが、バランスも質感もかなりのもので、レインジも広く音が新鮮で、組み合わせた510Mとの相性などP3600よりも良いと感じたほどだった。しいていえば清潔で品の良いすがすがしい反面、もう少しトロリと練り上った味わいが出れば申し分ない。内蔵ヘッドアンプのできばえはまあまあというところ。

ハーマンカードン Citation 17

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプ特集号で旧型の♯11と♯16の組合せを聴いたときの印象では、低音域に独特の厚みと力が感じられて、下半身肥大のようなプロポーションで、しかもかなり厚着したような音だと思ったが、改良型にあたる♯17と♯16Aでは、そうした動きの鈍さあるいは重さがすっかり取除かれて、シャープで反応の早い現代ふうの音に変ってきている──と、一聴したときは思ったのだが、どうも基本的には解像力がもうひと息ともなわないところにそれを補うかのようにかなり鋭い音をちりばめたというように、いささかちぐはぐな鳴り方をする。かなり細い感じなので、イコライザーの150Hzのポジションをわずかに増強してみると、バランス的にはこの方が安定した。

ハフラー DH101

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 輸入品としてはかなりローコストの普及品的作り方であることを一応頭に置いて聴く必要があるが、その前提で聴くかぎり、これはとても素晴らしいコントロールアンプのひとつといってさしつかえない。さすがにこの分野ではベテランのハフラーの設計らしく、カンどころをしっかりおさえた上で、いかにも鮮度の高い音を鳴らす。おそらく回路に凝りすぎてないためだろう。音楽の表情がよく生かされて音の微妙な色あいの変化もほどよく再現される。高級プリのような磨かれた質感の良さや密度の高さにはわずかに及ばないが、価格の違いほどの音の差はない。ただマランツ510Mの系統よりはアムクロン300Aなどの穏やかな音の方がよく合うのではないかと思った。

GAS Thaedra II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 いわゆる腰の坐りのよい堂々と安定感のある音が鳴ってきて、プログラムソースが変ってもその印象は一貫している。たしかにこの音は現代のアメリカのソリッドステートアンプのひとつの尺度となりうる見事な出来ばえだ。ただ「アメリカの」と断ったように、しばらく聴き込むうちに、元気のよいエネルギーをそのままぽんとこちらにぶつけてくるような、あまりにも率直な、その意味では強引ささえ感じさせる音は、私などは少々へきえきさせられる。むしろII型でない初期の製品の方が、もう少しおさえた説得力があって好ましかった。内蔵ヘッドアンプの出来ばえはなかなかの水準で、MC20とDL103Sのそれぞれ、フレッシュな魅力で鳴らし分けた。

GAS Thoebe

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラの鷹揚な力づよさとタレイア(サリア)のひかえめなやさしい音のあいだに挟まって、それらとはまたかなり傾向の違うやや硬調のハイコントラスト型というか、いわゆる目鼻立ちのくっきりした音の輪郭の鮮明さを狙って作った音、と聴きとれる。試聴で組み合わせた510Mとの相性はGASの中ではこれが最も良いようで、マランツの力と高域の質感に支えられて、よく張った硬質の音だがポピュラー系の音に対してはなかなか特徴のある音を聴かせる。ただ、クラシック系の弦合奏やヴォーカルでは、それぞれの音の特質をよくとらえてはいるが本来の硬い傾向の音が、永く聴くにつれて少々気になってくる。だがこういうふうに三機種の性格をはっきりと分ける作り方は賛成だ。

GAS Thalia

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラがその本質的に持っている力をややあからさまに(と私には聴きとれるが)押し出すのに対して、孫のタレイア(サリアと呼ばれているようだが、本来ギリシャ神話からその名を取っていると思うので、)の方は、中〜高音域でえてして張りすぎやすい音域をしまくコントロールしてあるようで、それに加えてハイエンドにかけて軽い強調感が聴きとれることもあいまって、総体にやや細身に仕上っているが、音に繊細なやさしさと、よくひろがってゆく奥行き感とがあって、ややひかえめな感じだが、クラシックの弦合奏や、ヴォーカルでもキングズ・シンガーズのような響きの美しさやハーモニィを重視した曲の場合には、GAS三機種の中ではこれが私には最も好ましかった。

DBシステムズ DB-1

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アメリカのソリッドステートアンプのごく新しい傾向の良さの素直に出た、とてもフレッシュで生き生きとした音。総じて音のぜい肉をおさえて繊細にどこまでも細かく分析してゆく傾向があるが、しかし細身一方のたよりない弱々しさではなく、十分に緻密に練り上げられて底力を感じさせ、それが一種凄みを感じさせることさえある。力を誇示するタイプでなく、プログラムソースの多様さにどこまでもしなやかに反応してゆくので、音楽の表情をとてもみごとに聴き手に伝える。弦の響きもとてもよく、アメリカのアンプにしてはどこかウェットな音に思えるほどだ。ハイエンドに一種キラッとした音色があって、そこが好みの分れるところかもしれない。

デイトンライト SPS MK3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 耳あたりの柔らかさを狙ったというか、あるいはいわゆるソリッドステートの最新型にありがちな鮮鋭な鳴り方を嫌ったというべきか、ことさらに解像力を誇示するようなところがなく、そのせいか、なんとなく周波数レインジのあまり広くない感じの音に聴こえる。オーケストラのトゥッティでもギラついたり硬くなったりしないが、どこか伸びきらない印象があるが、いわゆる入力に対する反応があまり早くないためか、それともダイナミックレインジがそれほど広くないのか。耳当りの柔らかい割には底力を感じさせる音だが、ことに低音に一種独特の粘りのある音があって、それが全体の音色の傾向をかなり支配しているように聴きとれた。

BGW Model 203

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプ自体がことさら固有の音の傾向を持つことを意図的に避けた、という印象で、どのプログラムソースに対しても、いくぶん素気ない感じで音を聴かせる。ただそれが、技術一辺倒のアンプにありがちの、表面は整っているが音楽の生き生きした表情まで抑えこんでしまうようなアンプとは違って、伸び伸びとこだわりのない上質の音に仕上っているため、ことさらの魅力という部分が乏しいけれど音楽の表情を殺してしまわないだけの良さは十分に持っている。本質的には乾いた質感を感じさせるが音のバランスはどんな場合にもくずれることがない。強いていえば、ごく薄い幕を引いたような感じがあって、もうひと息刻み込みが深くなればすばらしい音になると思った。

オーディオ・オブ・オレゴン BT2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 スピーカーでいえばアルテックのような、アメリカの製品だけが鳴らすことのできる音の支えの力強さと明るさがある。たいそう密度の高いしっかりした音で、ことに中〜高域がよく張っているので、相対的には輝かしい音色と聴きとれる。いわゆる目鼻立ちのかっちり整った引締った硬質な音。したがって弦楽四重奏やアメリンクの声などでは、ときとして少し音が張り出しすぎるように、私には受けとれた。反面、「サイド・バイ・サイド3」でのピアノの音では豊かな丸みが楽しめるし、アメリンクのレコードでも伴奏のピアノの音の方は、クリアーな中に適度の丸みも感じさせてなかなか好ましい。ハードかつブライトという性質をプラスに聴かせる良さを持っている。

アムクロン IC-150A

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 第一印象はとてもおだやかな音だ。ことに、コントロールアンプ単体のテストで組み合わせるマランツ510M自体の内包している、ときとしてケバ立ちぎみのいくぶん冷たい傾向の高音域をみごとにおさえて、少しの粗さもない十分にこなれた音に仕上げる。そのためにうっかりしていると解像力の甘いアンプであるかに聴きあやまりやすいが、こういうふうに抑制を利かせながら、音楽のディテールを失うようなことはないし、音の表情をほどよく生き生きと伝えながら、ハメを外したり神経質になったりすることが少しもなく、非常によく練り上げられたアンプであることを思わせる。ただ、基本的な質感がやや乾いた傾向であることが、私には少しものたりない部分だ。

AGI Model 511

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 入力信号に対する反応の速さあるいは音の明瞭度(ディテール)の高さを当初から謳い文句にしていただけあって、いかにも現代のソリッドステートの最尖端の技術はかくあるべしというよな、引締ったクールな音を聴かせる。ことにEMTのプレーヤーから入力をAUX(イコライザーアンプを通さずに)直接加えたときの、素晴らしく品位の高い、緻密でしかも音のひと粒ひと粒が生き生きと躍動するのがみえるような音質は、ちょっと類のないほど素晴らしかった。しかしフォノ・イコライザーからのトータルの音になると、ひと幕引いたようでどこか反応の遅い感じの、よく言えばおっとり型の音質で私にはおもしろくない。以前のサンプルよりもこの点がちょっぴり不満に感じた。

ヤマハ C-2

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テストソースやスピーカーその他に、かなりきわどい音を選んであるにもかかわらず、あらゆる音に対して上品なバランスを失わずにこれほど危なげのない音で安心して聴かせたアンプは、新型の出揃った今回のテストでもそんなに多くはない。そこがいかにもヤマハのアンプらしいし、反面、私のような八方破れの人間には多少の物足りなさの残るところでもある。C2自体が音のケバ立ちや粗い感じを細心におさえた作り方なのは、マランツ510Mと組み合わせてもその音をおとなしくまとめてしまうことからわかるが、ヤマハの良さはB3との組合せの方がよく出る。内蔵ヘッドアンプはDL103Sには一応のクォリティを示すが、MC20では少し味が薄くなりすぎた。

ビクター EQ-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 一聴して基本的なクォリティの高い、よく磨き込まれた緻密さが聴きとれる。音の傾向自体はやや明るく軽く、たとえばオーケストラの斉奏でもディテールのひとつひとつがきらきらと細く光るようなところがあったり、弦楽器では倍音の方に耳の注意力をひきつけたり、アメリンクやキングス・シンガーズやテルマ・ヒューストンなどの声が総体に若づくりになる傾向を聴かせるが、音の支えがしっかりしているのでこうした聴こえ方は不快ではない。ただ音の透明感のすくれている割には、立体感や奥行きがもうひと息増すとなおよいという感じがあった。MCヘッドアンプは低域がやや薄くなる傾向があるがクォリティはかなり高く、中高域以上はかなり美しい音を聴かせた。

ビクター P-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 EQ7070と見た目はよく似ているが、出てくる音はだいぶ違う。7070が明るく軽く透明な音のするのに対して、3030の音は逆に総体におっとりして、7070のような入力ソースに対する反応の早さをあまり感じさせない。音像の前にやや暖色系の薄幕をひいた感じで、総体に音の冴えが物足りなく、もっと透明感が欲しい。細部を見渡したい、という気持にさせる。そのせいもあるのか音像の並び方も平面的で、奥行きや立体感がもっと欲しい。内蔵のMCヘッドアンプも7070とはだいぶ違うらしくDL103Sの場合にはまあまあだが、MC20に対しては音を素気なくする傾向。7070とは価格の差がずいぶんあるのだから仕方ないかもしれないが。

トリオ L-07C

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

「オテロ」冒頭のトゥッティでも埋もれがちのディテールをむしろくっきりときわ立たせ、弦楽四重奏では倍音の方にやや注意力を向ける傾向があるというように、一聴する途中〜高音域にエネルギーが片寄るかに思えるが、低音域にはかなりの重量感があるので、一見骨細だが骨格はしっかりしている。ただ低音はクラシックの持続音ではおさえぎみだが、ポップスの打音ではかなり量感を出すという二面性が聴きとれる。目鼻立ちのクッキリしたタイプの音だが、音楽を楽しませるカンどころのとらえ方は本質を衝いていると思う。本調子が出るまでに時間のかかるタイプだ。ただ内蔵MCヘッドアンプは情報量がやや減ってクォリティがともなわない。

テクニクス SU-A2 (Technics A2)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ひんやりした肌ざわりはかなりウェットな印象で、ぜい肉を極力おさえたかのように、かなり細身の音。しかし質感はかなり緻密に練り上げられたらしく、細くウェットな見かけの割には、骨格のしっかりして芯の強い音を持っている。バランス的には中高域にややエネルギーの集まるタイプで、相対的に低音域はかなり抑えぎみに聴こえる。音の透明感はなかなかのものだが、肌ざわりの冷たいせいか、とちらかといえばやや素気ない印象。しかし曲によってはオャ? と思うほど強引なところもある。途中でトラブルを生じてMCヘッドアンプのテストが十分できなかったのは残念。A1と違ってプリプロ機らしいが、A1の音から想像してこの方向でのいっそうの完成を期待したい。

テクニクス SU-9070II (Technics 70AII)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前の70Aとは中味が全く別ものといっていい。かつてのいかにもセパレートアンプの流行に便乗した感じのある安手の音が記憶に残っているせいもあるが、II型になって印象は一変して、たいそう密度の高い、充実感のある聴きごたえのする素晴らしい音質だと感じた。従来のテクニクスのアンプが、一体に音の表情の乏しい傾向があったのに、70AIIは音の起伏が豊かで彫りが深く、パースペクティヴな音場の奥行き感もとても良い。ディテールの解像力と音の鮮度も十分だ。内蔵のMCヘッドアンプは、MC20に対してはオルトフォンらしさはやや減るもののやや線の細いきれいな響きは美しく、DL103Sではトランスにくらべて幾分若やぐが音が生き生きしてとてもいい。

スタックス SRA-12S

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 明るく滑らかで、いかにも明瞭度の高い感じの音を聴かせる。たた、その明るさがやや一様で、音の陰影の不足した感じはするが、弱音での汚れも少なくくっきりときれいに音を並べる。しかしその並べ方は、音像を一面に力で押し出したようでやや奥行きに欠けるところがあって、パースペクティヴな立体感が出にくい。たとえばアメリンクの独唱で、歌とピアノが同一平面に聴こえ、パッセージによっては声の方がピアノにめり込んだように聴こえることもあるというように、音のデリケートな分離あるいはニュアンスがもう少し欲しく思われる。マランツ510Mのハイエンドでの危ない部分をよく抑える点はとても良いが、反面脂気も取り去ってしまう傾向もあった。

ソニー TA-E88

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の骨格はたいへんしっかりしている。少なくともそういう表現をまっ先に思いつかせるほど、かなり硬質の音といえそうだ。バランス的にみて中低音域から重低音域にかけての支え、あるいは豊かさが不足ぎみに思われ、そのことがいっそう音を硬く感じさせるのかもしれないが、それにしてもたとえばベートーヴェンの弦楽四重奏でも、弦の音がどこかPAでも通したように人工的に聴こえ、かなりきつく、一本調子で色気がない。アメリンクの声にもやさしさが足りない。それらにかぎらずどうも音の姿をことさら裸にしてむき出して聴かせる傾向があって嬉しくさせない。MCヘッドアンプの音は、高域がよく伸びて解像力は上るが音の支えが弱く、ニュアンスが減る。

ソニー TA-E86

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音のバランスという面では音域内での過不足もことさら指摘しにくいし、質感も滑らかで耳ざわりの悪い音を鳴らさない。ウォームな音の中にも現代的な反応の鋭さもある。ただ、アメリンクの独唱で、声自体がやや張り出す反面、伴奏のピアノはむしろ音像がことさら後に引いて、タッチも暗い感じがするというように、コントラストが強く聴こえた。また、「SIDE BY SIDE3」のベーゼンドルファーの音の丸みと艶が不十分で、打音がどこか輪郭だけのように聴こえる。MCヘッドアンプの音は、MC20に対しては切れ込みは良くなるが素気なくなる傾向。DL103Sでは解像力はトランスより良くなるが骨ばる傾向で、どちらかといえば乾いた音と聴きとれた。

サンスイ CA-2000

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭からしばらくのトゥッティでも、またそれとは対照的なベートーヴェンの弦楽四重奏でも、またエリー・アメリンクの声でも、総体に中〜高域にやふ強調感のある華やいだ音のするところがこのコントロールアンプの特徴といえる。ハイコントラスト型、ともいえるし、逆に少々明るすぎるとも音質ともいえる。したがって音の輪郭は鮮明だがくまどりがきつすぎるように感じることがある。音像のひろがりはよく出る反面、並び方がいくらか平面状になって奥行きの表現がいまひと息だ。また、フィルターやトーンコントロールのスイッチをONにすると、コントラストはやや弱まる反面、音の反応がいくらか鈍くなる傾向が、他の類機にくらべるとやや大きく感じられる。