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最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その15)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 アムクロンは、かなり早い時期に大出力のDCアンプ、DC150で日本にも知られている。しかし初期の製品は、アメリカのPA用ハイパワーアンプの例によく見受けられるように、1ワット以下での日本の愛好家の多くの常用パワーでは、むしろ歪が多く、音のキメが粗くて過程での音楽鑑賞用という感じではなかった。IOCという名で改良されてからのモデルにはその弱点が薄れて、これは立派に現代の尖端をゆく優れたパワーアンプだという感想を持った。そして今回はさらに新型のプリとメインになって試聴に登場した。ただひとつ、しかし最も特徴的であるのは、この最新の電子式コントロールアンプにはフォノイクォライザーが組み込まれていない点で、そのことからみても、このアムクロンが、ここ数年来アメリカではPA用としてつとに名を高めていることと考えあわせて、一般的なレコード鑑賞用のアンプとして企画されたのではないことがはっきりといえる。それでいて、音の質は、鑑賞用として聴くに耐えるだけの磨かれた美しさを持っている。そしてこの音にはわたくしは相当に好感を抱いた。
 それは、プロ用として堅実に徹した音だけが持つ爽快感とでもいったらいいだろうか。本質的に音が乾いている。つまり鳴ってくる音にうじうじした湿り気がない。言いかえればどこかあっけらかんとした明るさがあるのだが、しかし、コンシュマー用のアンプのある種の製品によく聴かれる、聴き手への媚がない。あるいはことさらの音の誇示または顕示がない。聴かせてやろう、とか、こう聴かせたらお前らしびれるだろう、的な悪い作為がまったく感じられない。ただ正確に、安定に、電気的性能をきちっとおさえて作った、という印象で、そこが聴いていてまことに爽やかである。パワーを上げても音の腰の坐りがよく、安定感があって危なげが少しもない。コントロールファンクションをいろいろいじってもよくこなれているのは、プロ用としては当然だろうが、ボタンに触れるだけで音量が増減し、デジベル数値がディジタルで表示されるボリュウムコントロールの感触も楽しい。まあ、どことなく「クロウトさんのお使いになるアンプ」といったイメージがあるが、しかしこういう中庸を得た媚のない音の快さというものは、近ごろあまり聴くことができなかったように思う。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その12)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 ところで、ML6の音は良いと思い、ML2Lの音にまた感心し、両者を組合わせたときの音の素晴らしさに惚れ込みながら、しかしその音だけでは十全の満足が得られないように思われる。それは一体何だろうか。
 おそらく、音の豊かさ、それも、豊潤(あるいは芳醇)とか潤沢とか表現したいような、うるおいも艶もそして香りさえあるかのような豊かさ。光り輝くような、それも決してギラギラとまぶしい光でなく、入念に磨き込まれた上品な光沢、といった感じ。
 そんなリッチな感じが、レビンソンの音には欠けている。というよりもレビンソン自身、そういう音をアンプが持つことを望んでいない。彼と話してみてそれはわかるが、菜食主義者(ヴェジタリアン)で、完璧主義者(パーフェクショニスト)で、しかもこまかすぎるほど繊細な神経を持ったあの男に、すくなくとも何か人生上での一大転換の機会が訪れないかぎり、リッチネス、というような音は出てこないだろうと、これは確信をもっていえる。
 いわゆる豊かな音というものを、少し前までのわたくしなら、むしろ敬遠したはずだ。細身で潔癖でどこまでも切れ込んでゆく解像力の良さ、そして奥行きのある立体感、音の品位の高さと美しさ、加えて音の艶……そうした要素が揃っていれば、もうあとは豊かさや量感などむしろないほうが好ましい、などと口走っていたのが少し前までのわたくしだったのだから。たとえば菅野沖彦氏の鳴らすあのリッチな音の世界を、いいな、とは思いながらまるで他人事のように傍観していたのだから。
 それがどうしたのだろう。新しいリスニングルームの音はできるだけライヴに、そしてその中で鳴る音はできるだけ豊かにリッチに……などと思いはじめたのだから、これは年齢のせいなのだろうか。それとも、永いあいだそういう音を遠ざけてきた反動、なのだろうか。その詮索をしてみてもはじまらない。ともかく、そういう音を、いつのまにか欲しくなってしまったことは確かなのだし、そうなってみると、もちろんレビンソン抜きのオーディオなど、わたくしには考えられないのだが、それにしても、マーク・レビンソンだけでは、決して十全の満足が得られなくなってしまったこともまた確かなのだ。
 それならそういう音を鳴らすアンプが現実にあるのか──。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その11)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 さて、ここにこれも新型のML3(パワーアンプ)を持ってくるとおもしろい。いままでの話は、パワーアンプにML2Lまたはその他のメーカー製品を組合わせていたときのことだが、ML6とML3の組合せでは、どこか頼りないというあの感じがいっそう際立ってくる。全体に柔らかく甘い雰囲気が漂っていて、LNP2L+ML2Lのようないくぶん硬質のピシッと締った音とはかなり傾向を異にしている。したがって、ヴァイオリンのソロなど、それもやや硬めに録音されたレコードなどでも、高域がことさらきつくなるようなことがない。ただ、ジャズ等の場合でのドラムスやスネアの、打音の力感、あるいはスネアドラムの引締った乾いた音を求めて聴くときには、ML3ならむしろLNPでドライヴしたほうがピントが合ってくるし、逆にML6のどこまでもこまかく切れこんでゆく解像力を生かすのなら、パワーアンプはML2Lのほうが正解ではないかと思う。
 言うまでもなくML2Lは純Aクラス・モノーラル構成で公称25ワット、ML3はABクラスのステレオ構成で公称200ワット。この両者を比較すれば、ML3のほうがよほど力のあるアンプのように思えるが、現実に鳴ってくる音はどちらかといえばむしろ逆で、ML2Lの力感は音を聴いているかぎり25ワットの出力などとは(輸入元の話では最近のモデルは50ワット以上出ているそうだが、それにしても)とうてい信じ難い。引締った打音の迫力や、ぜい肉を少しもないしかし徹底的に鍛えた筋力をみるようなしなやかな力感は、さすがと思わせる。一方のML3は、200ワットという出力への期待の割には、低音域での力を露に感じさせない。その点ではML2Lのほうが、コリコリと硬質の低音を聴かせるのにML3の低音は、芯をほぐして量感をややおさえる感じだ。つまりレビンソンに関する限り、小出力のML2Lのほうが総体に硬めの音がして、大出力のML3のほうが柔らかく、弦やヴォーカルの滑らかな感じが一見よく出るかに思わせる。
 LNP以来レビンソンの音を気に入って愛用しているひとりとして、現時点でどれをとるかといわれれば、ML6+ML2L(×2)ということになりそうだ。この組合せが最も音の透明度が高く、そしてML6がML2Lの内包している音の硬さを適度にやわらげてくれる。ML6のコントロール・ファンクションの全くないこと、そしてボリュウムなどが連動しないモノーラル構成のためやや扱いにくいこと、はこの際言ってもはじまらない。わたくし個人はトーンコントロールのないプリアンプはレコードを聴く側として大いに不満なのだが、しかしML6の音の透明感は、そうしたコントロール・ファンクションを省略したからこそ得られたものにちがいないことが、音を聴いて納得させられてしまう。その点、従来からあったいくつかの内外のプリアンプが、トーンコントロール類を省略してもなおかつ、LNPの透明感にさえ容易に及ばなかったのにまさに雲泥の相違といえるだろう。それにしてもML6は、手もとに置いて永く使っていると、その音質にますます惚れ込んでゆきながら、それと反比例してコントロール類のいじりにくさ、少なさに、次第に欲求不満がこうじてきそうな気がするのはわたくしひとりだろうか。しかし音が良い。困ったものだ。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その10)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

     *
 レビンソンは、最初LNP2とJC2という二種類のプリアンプと、MCヘッドアンプしか発売しなかったから、せっかくのLNP2の透明な音質を生かすために、パワーアンプにはずいぶん迷った。エクスクルーシヴのM4をやや長いあいだ聴いているうちにSAEのMARK2500を聴く機会があった。このパワーアンプは、300W+300Wという大出力ながら、それ以前のアメリカの大出力アンプに共通の、弱音での音のにごりや汚れの感じられない点に好感を持ったが、それよりも、LNP2と組合わせたときに、MARK2500の、どちらかといえば手綱をゆるめた感じの低音、それゆえのふっくらした豊かな鳴り方、が、LNPの、というよりレビンソンの本質的に持っている線のやや細い、いくぶん冷たい音質をうまく補ってくれて、総合的にとても良い組合せだと感じた。MARK2500のごく初期のサンプルを知人がいち早く購入してその音の良さは知ってはいたが、決して安くはないので少々ためらっていたところ、本誌特別増刊のアンプ特集号(昭和51年/1976年)の試聴で、その当時気になっていたいくつかのアンプと比較しても、LNP+SAEの組合せに感じていた好ましい印象は全く変らなくて、少なくともわたくしにとっては最良の組合せに思えたので、MARK2500を購入。この組合せが、永らくわたくしの愛機でもあり比較のときの標準尺度ともなっていた。レビンソンからは、やがてML2Lが発表された。聴けば聴くほど、その音の透明でどこまでも見通しのよい感じの解像力の高さや、ひずみ感の全くない音の品位の高い美しさに惹きつけられた。反面、LNPと組合わせたときに、とうぜんのことながらレビンソンの体質そのものとでもいいたいような、いくぶんやせすぎの、そしてどこか少々強引なところも感じられる音を、果して自家用としたときに永く聴き込んでどうなのか、見きわめがつかないまま、購入を見送っていた。わたくし個人には、やはりSAEと組合わせたときの音の豊かな印象のほうが好ましかったからだ。
 昨年の暮に新しいリスニングルームが完成し、音を出しはじめてみると、こんどは残響を長く、部屋の音を豊かにと作ったせいか、SAEの鳴らす低音を、心もちひきしめたくなった。そこで試みにML2Lを借りてきてみると、以前よりは気にならないし、なにしろその解像力の良さはどうしても他のアンプでは及ばない。それでML2L×2も自家用のラインに加えて、ここしばらくは、組合せをときどき変えながら様子をみてきた。
 そこに今回の試聴である。
 新型のプリアンプML6Lは、ことしの3月、レビンソンが発表のため来日した際、わたくしの家に持ってきて三日ほど借りて聴くことができたが、LNP2Lの最新型と比較してもなお、歴然と差の聴きとれるいっそう透明な音質に魅了された。ついさっき、LNP(初期の製品)を聴いてはじめてJBLの音が曇っていると感じたことを書いたが、このあいだまで比較の対象のなかったLNPの音の透明感さえ、ML6のあとで聴くと曇って聴こえるのだから、アンプの音というものはおそろしい。もうこれ以上透明な音などありえないのではないかと思っているのに、それ以上の音を聴いてみると、いままで信じていた音にまだ上のあることがわかる。それ以上の音を聴いてみてはじめて、いままで聴いていた音の性格がもうひとつよく理解できた気持になる。これがアンプの音のおもしろいところだと思う。
 ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。

最新セパレートアンプの魅力をたずねて(その9)

瀬川冬樹

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
特集・「いま話題のアンプから何を選ぶか」より

 先ほどもふれたアメリカのオーディオ機器の一時的な衰退あるいは不毛から脱出するきっかけを作ったのは、アンプの分野ではマーク・レビンソンの出現であったことに異論はあるまい。レビンソンは、1973年に、彼の最初の市販品LNP2型コントロールアンプを発売している。この製品が日本に広く知られるのは1976年以降のことになるが、永いあいだ、真の意味での優秀なオーディオアンプが誕生しなかったアメリカで、LNP2以後、続々と若い世代がアンプメーカーを興しはじめて、それらのほとんどが、スペック(規格)を発表する際に『レビンソンと比較して……』といった表現をとっていたことから、逆に、レビンソンの性能がいかに大きな影響を及ぼしたかが伺い知れる。
 LNPを最初に自宅で聴くことができたのは、1975年だった。この試聴はそして、マランツ、JBL、マッキントッシュ以来、絶えて久しくおぼえたことのなかった驚異をもたらしてくれた。JBL以後の新しいトランジスターアンプへの永いあいだの疑念を、LNP2は一挙に拭い去ってくれた。かつてあれほど、JBLの透明な解像力の良さに驚かされたはずなのに、LNP2を一度聴いたあとでは、JBLでさえすでに曇って聴こえた。電子工学の進歩を、ほんとうに思い知らされた。だが、SG520の発売が1963年。すると、マーク・レビンソンまでの10年ものあいだ、SG520は、トランジスター・プリアンプの王座を保ち続けたことになる。これもまた、たいした偉業と言ってよいだろう。
 さて久々に良いプリアンプにめぐり会って、わたくしの衝動買いの癖はたちまちLNP2を手に入れたが、実はこのコントロールアンプくらい、発売以後いろいろと手が加えられ、音質の改善されている製品も珍しい。LNP2がLNP2Lとなり、その後電源が新型のPLS153Lに改善された、という程度にしか、外観からの変化は見つけにくい。だが、実際には、増幅素子のオペアンプ・モジュールの変更、プリント基板やボリュウム・スイッチ類の改善、その他のこまかな改良等、LNP2の音質はずいぶん変化している。そして、改良のプロセスごとに、音質はいっそう透明度を増し、聴感上の音のひずみや濁りが減少して美しい音質にはいっそうの磨きがかけられてきた。我が家のLNP2も、やがてLNP2Lとなり、最近になって新電源つきの新製品にと、つごう三回、交換されている。もともとやすくないアンプだが、だからといって、一旦改良型の音を耳にしてしまうと、多少の無理をしてでも交換したくなるというのが口惜しいところだ。

JBL SG520

菅野沖彦

ステレオサウンド 50号(1979年3月発行)
特集・「栄光のコンポーネントに贈るステート・オブ・ジ・アート賞」より

 JBLの三文字は、最高級スピーカーの象徴のようによく知られている。アメリカのスピーカーメーカーの名門として、たしかにJBLは数々のスピーカーシステムの傑作を作り出してきた。しかし、アンプの世界でもJBLの傑作が存在することを知る若い人は意外に少ない。現在もJBLのカタログには、いくつかのエレクトロニクスの製品が載ってはいるが、それらはきわめて特殊なもので、どちらかというと業務用のものだ。もっとも業務用の製品が、むしろ民生用以上に一般家庭用としても尊ばれる日本において、現在のJBLのアンプに対する関心の薄さは、製品があまりに特殊なこともさることながら、その内部への不満も否定できない事実である。JBLは、元来一般家庭用の最高級機器のメーカーであって、その卓抜のデザイン感覚によるハイグレイドなテクノロジーの製品化に鮮やかな手腕を見せてくれてきた。このSG520というコントロールアンプは、そうしたJBLの特質を代表する製品の一つで、アンプの歴史の上でも重要な意味を持つ製品だろう。このアンプが作られたのは一九六四年、もう15年も前である。ソリッドステート・コントロールアンプならではの明解・繊細なサウンドは、管球式アンプの多くがまだ現役で活躍していたときに、大きな衝撃を与えたものだ。それまでのソリッドステートアンプは、管球式に対して常に欠点を指摘され続けていた時代であったように思う。おそらく当時、その新鮮なサウンドを、違和感なく魅力として受けとめられた石のコントロールアンプは、このSG520とマランツの7Tぐらいのものだったであろう。そして、その音は現在も決して色あせない。事実、私個人の常用アンプとして、音質面でもSN比の面でさえも、最新のアンプに席をあけ渡さないで頑張っているのである。当時のアンプとしては画期的といえる斬新なデザインは、パネル面に丸形のツマミをツマミを一切持たず、すべて直線的なデザインだ。コンピューターエイジの感覚を先取りした現代センス溢れるものだけに、今でも古さは全く感じさせない。

Lo-D HS-50, HCC-50, HMA-50

Lo-DのスピーカーシステムHS50、コントロールアンプHCC50、パワーアンプHMA50の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

Lo-D

プレシジョン・フィデリティ C4

プレシジョン・フィデリティのコントロールアンプC4の広告(輸入元:バブコ)
(ステレオ 1979年2月号掲載)

C4

ソニー TA-E88, TA-N88, TA-N9, TA-D88

ソニーのコントロールアンプTA-E88、パワーアンプTA-N88、TA-N9、エレクトリッククロスオーバーTA-D88の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

TA-N9

GAS Thaedra II, Ampzilla IIa, Thalia, Grandson, ピラミッド T1H

GASのコントロールアンプThaedra II、Thalia、パワーアンプAmpzilla IIa, Grandson、ピラミッドのトゥイーターTiHの広告(輸入元:バブコ)
(スイングジャーナル 1979年1月号掲載)

GAS

マッキントッシュ C32

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 マッキントッシュ社は、一九四六年に創立以来、アンプリファイアーの王者としてこの世界に君臨してきたメーカーである。それも、当時としては大変にユニークな低歪率のトランスの特許を獲得し、それを前面に打ち出した製品を開発してきただけではなく、アンプリファイアーというものを、オーディオの好きな人たちに、その物としての芸術的な香りさえも感じさせるほどの素晴らしいデザインと高い仕上げで見せてくれたメーカーとして、マランツと並んでオーディオ史上に燦然たる不滅の輝きをもつ名門なのである。
 その名門マッキントッシュの最新の最高級コントロールアンプが、このC32である。マッキントッシュといえば歴史の長いメーカーだが、いまだにパワーアンプには頑強に出力トランスを搭載しているということから、ついつい古いメーカーのイメージ、あるいは古い技術というように最近では思われている。しかし、これは大変な誤解である。マッキントッシュの技術開発は、常に前向きの姿勢で行なわれ、常にその時点での最新のテクノロジーを追求しているのである。ただ、いまアメリカにおいては新しいメーカーが雨後のタケノコのように生まれつつあり、そして新しい製品を発表しているわけであるが、そうしたメーカー間の兢争ということでみれば、確かにマッキントッシュは古いといって押しのけるには都合がいい。しかし、だからといってそれを鵜呑みにすることは、私は非常に浅はかなマッキントッシュに対する理解だと思うのである。
 私の理解する限り、マッキントッシュのテクノロジーは、最新メーカーの若いエンジニアのテクノロジーに比べて、いささかも古いとは思わない。むしろ、マッキントッシュは、商品として世に送り出すときに、技術の新しさだけを売物にして、あるいは製品に神話を結びつけて売る、などということをしないメーカーなのである。お客様に対して、音楽を聴く上において豊かな満足感の得られる、そして完成度の高い美しい製品を提供するという姿勢をもっているのだと思うのである。そういう意味で、私はどうも最近のマッキントッシュに対する理解は、少し付和雷同型の人たちによって過小評価されつつあるような気がするのである。
 このC32にしても、使用されているパーツ、素子、ディバイスなどは、選り抜かれた新しいものが使われているのである。回路にしても従来からの伝統は踏襲しているが、歪率ひとつとっても確実に従来のモデルから一ケタ減らしているのだ。したがって、決してテクノロジーのニューウェーブに立ちおくれているものではないと思うのである。
 そして、このC32のもっている魅力は、マッキントッシュ伝統の美しい、しかもユニークなグラスイルミネーションのりパネルデザイン、音の重厚な風格 そしてさらに洗練された透明感が加わった音にあるのである。
 最近のマッキントッシュは、このコントロールアンプC32のあとに、従来のC26の後継機種ともいえるコントロールアンプC27を発表したが、最新のテクノロジーを駆使したアンプシリーズをまとめようとしているようである。このC32は、そのニューシリーズのコントロールアンプにふさわしく、従来のマッキントッシュのアンプにあった重厚な音に、非常に透明度の高い、スムーズな美しい輝きが加わった製品である。そういう意味で、音の点からいっても、独特なイルミネーションパネルの重厚なデザインや仕上げからみても、私は現在のコントロールアンプの最高峰として、このC32は、当然〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるものであろうと思うのである。
 実際に音を聴いてみても、自分の家に持ち込んでもうずいぶん長い間使っているが、実際に使ってみても、製品を手にしてみても、現在の数多くのコントロールアンプリファイアーの中で、このC32はやはり最高のコントロールアンプというに値する製品ではないかと私は思うのである。

ラックス 5C50

瀬川冬樹

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 ラボラトリー・リファレンス・シリーズと名づけて、ラックスが全面的にイメージチェンジをはかった一連のシリーズの中心をなすものが、この6C50と、パワーアンプの5M21だろう。
 こんにち管球式のアンプになお相当の比重を置いている唯一の国内メーカーだけに、トランジスターアンプに関しては、とちらかといえばや保守的な姿勢をとり続けてきたようにみえた。もちろんトランジスター化は意外に早く、すでに一九六二(昭和37)年に、トランジスタータイプのコントロールアンプPZ11を発表している。これはいまふりかえってみると、こんにちの超小型アンプのはしりとも考えられないことはない。そして翌年にはプリメイン型のSQ11を作っていて、トランジスター化では最も早い時期とされているトリオのTW30にくらべても、そんなに遅れをとっていない。
 その後SQ301で、いわゆる高級プリメインの線を一応完成させたが、しかしラックスのトランジスターアンプが本当の意味で高く評価され広く認められるに至ったのは、SQ505,507の2機種以後のことだ。これはのちに505X、507Xのシリーズでさらに改良されて、当時の他の類機を大きくひき離して注目を浴びた。
 けれど、それからあとのしばらくのあいだは、外野からみるかぎり、ラックスのアンプはあちこちと迷いはじめたようにみえた。いくつもの新製品が発表され、部分的にはラックスらしいユニークさがみられたにせよ、総合的なまとまりという意味では507Xの完成度の高さに及んでいない。
 三年まえ(一九七五年)に、創業五十周年を迎えて発表したハイパワーアンプM6000及びM4000で、ラックスのトランジスター技術は再び注目されはじめた。だが、これとおそらくはペアとして企画されたらしいコントロールアンプC1000は、そのかなり異色のデザインがユーザーを戸惑わせたようだ。ラックスは以前からトーンコントロールをはじめとする音質調整方法には熱心で、コントロールアンプも管球式に関するかぎりCL35シリーズのような佳作を生み出しているが、トランジスターでのコントロールアンプに関しては、多くの人たちを普遍的に説得できるほどの完成の域には、いまひとつ達していなかったと思う。
 その意味では5C50は、ラックスが久々に──というよりトランジスタータイプのコントロールアンプとしては初めて、そしてようやく、だがみごとに──放ったヒットだと思う。おそらく、ラックスの内部で何かがひとつふっ切れたような、迷いのない透明で十二分に美しい質感。とても品の高い、素晴らしく滑らかな音質。現代のアンプに要求される入力に対する応答も早く、音の解像力も、すみずみまで見通せるように優秀だ。そういう音質は、とうぜんの結果としていくらか冷食系のクールな印象を与える。また、ぜい肉の抑えられた感じになるから音がいくらか細い印象を与える。しかしそれは必要な肉までそぎ落すギスギス型ではない。
 ただ私個人は、この5C50は単体としてではなく、トーンコントロールアンプ5F70と一体にした形を基本に考えている。5F70は、音質を劣化させずにトーンバランスをコントロールできる優秀な製品だ。75Hzから150Hzのあいだに任意のディップを作るアコースティックコントロールも、部屋の音響特性によってはきわめて有効でユニークなコントロールだ。未確認の情報だが、QUADがそらく近々発売するコントロールアンプには、ラックス独創のリニアイコライザーに似たコントロールがついているといわれる。本当だとしたら、誇りに思っていいだろう。

マランツ Sc-7, Sm-7

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 マランツのセパレート型アンプの新製品である。デザイン的には、♯3600、♯3250で2度の全面変更があったが、今回は3度めの変更で、全体に大変華やかな色調をもちながら、コントロールアンプにまで、かつての♯9や♯500に採用された小型のツマミ付サブパネルがフロントパネルの中央下側に付けられた。現代的で、かつノスタルジックな雰囲気をもつ従来にないユニークなデザインとしているのが特長である。
 Sc7は過渡的音楽信号を忠実に再現するために低TIM設計を導入し、DC構成の各アンプは全てオープンループ利得を下げ、NF位相補正技術により入力信号と出力信号間の時間差、位相差を抑える設計方針で開発されている。機能面では、左右独立型で中音も含めたトライコントロールがTAPE・COPY時にも切替使用が可能となり、その他にカートリッジの負荷抵抗をMC型4段、MM型5段に切替えるセレクター、イコライザー段出力を直接出力端子に送り出すバイパススイッチ、DC構成のMCヘッドアンプが新しく加えられた。なお、2台のテープデッキ用の独立したレコーディングセレクターは、♯1250の機能を受け継いだデッキファンには魅力的な機能であり、500mWのヘッドフォンアンプを備える。
 Sm7は、低TIM設計の150W+150Wの出力をもつDC構成パワーアンプである。パワートランジスタ一には従来のマルチエミッター型のバラスト抵抗の電圧降下による高域特性の低下を改善した新デバイスを4個並列接続とし、2次巻線を左右分割した左右独立電源と伝統的な大容量、高性能電解コンデンサーを使った強力な電源回路、エネルギーセンサー型保護回路、大型対数圧縮型出力メーター、それに電力増幅段に直接つながるダイレクトスピーカー端子、AB2組のスピーカー切替スイッチを傭えている。
 Sc7とSm7の組合せは、現代のアンプらしい音の粒子が細かく、滑らかで伸びきった広いfレンジをもち、150W/チャンネルのハイパワーアンプならではの充分に厚みのある力強いサウンドを聴かせる。質的にも量的にも♯3250、♯170DCを確実に1ランク上回った信頼にたるべき価格に相応しいセパレート型アンプに思われる。

オンキョー Integra P-307, Integra M-507

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最新のオンキョーのセパレート型アンプは、DCアンプが特性面でDCまで伸びた帯域の広さが逆に音質面に及ぼすデメリットを技術面で検当している。その結果、不要な超低域をカットすることにより音楽信号のエンベロープ再生を明確にし、音楽信号の分解能の向上、NF回路を含めた結合コンデンサーの除去の2点を達成できる新回路方式スーパーサーボを開発し全面的に採用しているのが特長である。
 P307は、MCヘッドアンプ、イコライザー、トーンコントロールの3ブロック構成で各段共に新方式を採用している。機能面ではトーンコントロール用にラウドネスコントロールとフィルターを組み合わせた全てパッシブ素子構成で信号経路内にコンデンサーのないダイレクトトーン方式を採用し、トーンコントロールとしてはボリュウム位置が12時付近までは通常のトーンコントロール動作、それ以上は位置に応じてブースト量が減少する独特のタイプとしている。
 M507パワーアンプは、ABクラス動作で、しかもスイッチング歪が極小な特殊バイアス回路をもつ、リニアスイッチング方式を採用したスーパーサーボ方式で不要な超低域成分をマイナス70dBまで排除した、左右独立直結給電方式ハイスルーレート型で、150W十150Wのパワーをもつ。
 この組合せは豊かで弾力的な低域をベースとし、滑らかでキメ細やかな中域から高域がバランスした明るく伸びやかな音をもつのが特長である。

トリオ L-07C II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
特集・「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 こんにちの精度の高い各種の測定器及びそれを駆使しての測定技術の範囲内で、特性を良くするというだけではもはや現代のアンプを作るには不充分だということは、第一線のエンジニアの等しく認めるところだ。測定技術ではもはや追うことのできなくなったところから先で、回路構成や部品の配置やパーツ自体を変更して、聴いてみると明らかに音が違ってきこえる。耳ではその違いが聴き分けられるのに、測定器ではその差が掴めない。アンプの入力端子から出力端子までの何十、何百という箇所で、どこひとつ変えても、その差はきわめて微妙であるにしろ音が変る。どちらがよいのか測定データには出てこないのだから、もはや客観的にきめる方法はない。
 日本の凝り性のマニアだけがこんなことを言っているわけでは決してない。たとえばマーク・レビンソンも、彼のプリアンプは測定で差の掴めなくなってからあと、約二年以上は聴感を頼りに音質に磨きをかけて市場に送り出した、と言っている。しかもなおその後も、彼は着々と小改良を怠らない。
 そういうプロセスを終るのだから、アンプの音の仕上げには、その音を判定するヒアリングテスターのセンスが反映される。しかしまた、聴いた結果さらにこういう方向に音質を向上させたいという要求、回路技術で正しく応えられなくては、良いアンプは生み出せない。感覚と技術の絶妙にバランスしたポイントでこそ、優れたアンプが生み出される。
 トリオというメーカーが、そうした意味でほんとうに聴感と技術のバランスポイントを探りあてたのは、プリメインアンプのKA7300D以後だと私は思う。それ以前のKA9300にすでにその芽生えはあったが、まだ完成の域に達していない。やはり7300D以後、真の意味で音楽を愛好する人々の心をとらえる音で鳴りはじめたといってよいだろう。
 セパレートタイプでは、L05Mからようやく、KA7300Dの延長線上にあるナイーヴでバランスがよく、音楽の表情をとても生き生きと聴き手に伝える音が鳴りはじめた。05M以前に作られた07シリーズの改良が強く望まれた。
 しかし07シリーズは、音質ばかりでなくデザイン、ことにコントロールアンプのそれが、どうにも野暮で薄汚かった。音質ばかりでなく、と書いたがその音質の方は、デザインにくらべてはるかに良かったし、そのために私個人も多くの愛好家に奨めたくらいだが、ユーザーの答えは、いくら音が良くてもあの顔じゃねえ……ときまっていた。そのことを本誌にも書いたのがトリオのある重役の目にとまって、音質について褒めてくれたのは嬉しいが、デザインのことをああもくそみそに露骨に書かれては、あなたを殴りたいほど口惜しいよ。それほどあのデザインはひどいか、と問いつめられた。私は、ひどいと思う、と答えた。
 その07シリーズがマークIIに改良された。パワーアンプの外観の印象は変らないが、コントロールアンプは、ツマミなど基本の配置は大幅に変っていないのに、イメージは大幅に一新されたと思う。まだ満点とはゆかないが、これなら、レコード愛好家も手もとに置く気に十分になれることだろう。
 音質については、この価格帯では一頭地を抜いて、音の量感や力強さと、繊細でナイーヴな印象とが巧みにバランスしていて、何よりも音楽を生き生きと蘇らせる点が素晴らしい。なお、今回の選定では惜しくも入賞を逸したが、パワーアンプ07M/IIも、むしろ07C/IIを上廻る出来栄えだと私個人は信じている。
 07C、07Mとも、鳴らしはじめて時間のたつにつれて、いっそう滑らかな音に仕上ってくる点は、SAEなどによく似ている。

ヤマハ C-2a

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプのジャンルで例外的に数多くのファンに愛用されているヤマハのC2は、現時点での技術、素材をベースとして完全に設計変更されて、今回C2aとして発売された。
 基本的な回路構成面での特長は、MCヘッドアンプを含めて全てのアンプは平衡形全段プッシュプル構成で、原理的に歪の発生が少なく、しかもDCアンプ構成となっている。MCヘッドアンプは低雑音トランジスターを4個パラレル接続とし、さらに一石のカスコード段をもつプッシュプル構成。イコライザーアンプは超低雑音高利得デュアルFET差動増幅回路にカスコードブートストラップを組み合わせた初段、カレントミラープリドライブ、2段エミッターフォロアー出力段をもつプッシュプルDC構成である。トーンコントロール段には、イコライザー段とほぼ同様なNF型を使い機械的中点で完全ディフィートできる特殊カーブのコンダクティブプラスティックボリュウムを採用している。機能面ではサブソニックフィルター、入力系と独立した信号を選べる録音出力セレクター、ミューティングスイッチを備える。
 C2aとなり、特に感じられるのは、中域以上の解像力が一段とシャープとなりキビキビとした反応の鋭い音を聴かせる点である。

アキュフェーズ C-240

井上卓也

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 全面的にパネル面の操作をプッシュボタンスイッチでコントロールする非常にユニークなデザインをもつ、アキュフェーズの第2世代を意味する高級コントロールアンプで、アキュフェーズの技術の集大成として完成されたのがC240である。内容的にはMCカートリッジ用ヘッドアンプ、A級ピュアコンプリメンタリー方式のヘッドフォンアンプを備えたトータルゲイン86dBのハイゲインコントロールセンターである。
 機能面では周波数特性可変機能が充実し、カートリッジ高域特性を調整するHFトリミング、高音・低音各2段に湾曲点切替可能な8ステップトーンコントロール、3段切替型ラウドネスコントロール、17Hz・12dB/octのサブソニックフィルターなどがある。パネル面は回転ツマミ4個、レバースイッチ1個、プッシュボタンスイッチが実に57個というユニークな構成が採用され、機能別に配置されている。プッシュボタンスイッチ独特の不要なポジションを飛び越して任意のポジションが選択できるフィーリングは、このタイプの最大の魅力だ。とくに、入力セレクターは電子制御のリレーを使うリモート切替型で、音質や耐久性を左右するプッシュスイッチやリレーは全て2回路並列使用で安定度を向上している。回路面はアキュフェーズオリジナルの全増幅段プッシュプル駆動をA級DC方式構成とした特長があり、MCヘッドアンプはモジュール化し安定度を向上している。

アキュフェーズ C-240

菅野沖彦

ステレオサウンド 49号(1978年12月発行)
「第1回ステート・オブ・ジ・アート賞に輝くコンポーネント49機種紹介」より

 ケンソニック社は決して歴史の長い会社とはいえないが、しかし、そのバックグラウンドを知る人にとっては、その歴史は古くトリオ、春日無線にまでさかのぼることになる。こうした歴史の重みに支えられてケンソニック社が誕生したわけだが、この会社は創業以来、あるレベル以上の高級品しかつくらないという体質に徹しているところに、一つの明確なポリシーが伺える。そして、やたらに新製品は発表せず、むしろ基本モデルの改良という形で、一つの製品を煮詰めていこうという姿勢で貫かれているのである。その姿勢が最も顕著に現れている例は、先頃発表されたC200S、P300Sのセパレートアンプである。このセパレートアンプシリーズは、同社の第一号機C200、P300のマイナーチェンジモデルだが、その第一号製品を買った人にも、サーキットボードを交換することによって この最新製品とほとんど同じ性能にまでしてあげるというサービスも怠らなかったのである。これはメーカーにとって大変な企業努力だと思うのだが、やはり製品のロングライフを旗頭にしている会社の体質を如実に示している例だろう。マスプロ、マスセールということは考えず、自分たちのできる量の中で追求し、それを理解していただけるお客様だけに買ってもらおうという、「質」を重視したオーディオメーカーなのである。
 そのケンソニック社がつくり上げた最新のコントロールアンプがC240で、従来の製品に見られない、いくつかの新しさが盛り込まれた意欲的な製品である。たとえば、操作スイッチ類を、ボリュウム、バランス、カートリッジの高域特性コントロール以外はすべてプッシュボタンスイッチにしたことである。決して小規模とはいえないメーカーが、ここまで徹底的にプッシュボタンスイッチ化に踏みきった英断をまず買いたいと思う。そして内部を見ても、最新のディバイスと最新のテクノロジーが駆使されているわけだが、同社の初期からのポリシーである全段パラプッシュプルという方式はここでも踏襲されているのである。つまり、同社で自信のあるエレクトロニクス回路技術を豹変させることなく、常に基本的なものは踏襲しながらリファインさせているところに、信頼性のもてる一因があると思う。個人的なことをいえば、プッシュボタンにもう少し質感のいい、色のいいものを使ってくれれば、このユニークなパネルレイアウトがもっと生きてきたのではないかと思う部分もあるのだが、しかし、現在手の届く範囲でメーカーが最もハイエストなパフォーマンスを追求した製品として、十分納得できるものをもっていることは確かである。
 ところで、このC240の音質についてだが、一言でいえば同社の従来のコントロールアンプの音に、最新製品にふさわしい洗練度を加えた音ということができる。従来の同社のアンプはたくましい音で、透明という表現よりも、むしろ輝かしい、磨きぬかれたスムーズさをもっていたのであるが、このアンプにもそれは一貫して感じられる。非常にたくましい音であり、磨きぬかれていて力もある豊かな響きの中に、都会的な洗練された音が加わったという感じなのである。おそらくこのアンプの音は、現在のコンポーネントの中でも最高の音質に属するのではないかと思う。プラスアルファをもつこのクラスの海外製品はたくさんあり、確かにそれらは一種独特の雰囲気がある、説得力のある音色を感じさせるが、このC240はそういう領域に達しているように思えるのである。ただ単にドライに無機的にフィデリティを追求していくということだけではなく、あらゆるソースに対して音楽的なエフェクトを聴かせてくれる。
 ただ、もっと繊細で、もっと乾いた音が好きだという人ももちろんいるかもしれないと思う。このC240は決して乾いた音ではなく、グラマラスであり、脂の乗った音だからだ。しかし私は、やはり音楽は生命感が躍動しているような、グラマラスで、豊かで、薄っぺらでない底光りのする輝きをもっていてほしい。その意味で、このC240は音質のよさからいっでも、現在のコントロールアンプの中で〝ステート・オブ・ジ・アート〟に選ばれるに値する製品だと思う。

オーディオライフ C-2500S

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 ムラード社製のECC83を六本使用した性能、音質重視設計の管球プリアンプである。機能はシンプル・イズ・ベストの方針で単純化されているが、使用部品は厳選された特註品が多く、例えば配線材はすべて純銀線といった徹底ぶりが見られる。

ローテル RC-5000, RB-5000

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 19型ラックマウントサイズの分厚い黒色仕上げのパネルをもった大型のコントロールアンプとパワーアンプである。
 RC5000は、機能面で3系統のテープ入出力端子、同じく3系統で1系統はMC専用入力となるフォノ入力、各2段切替の高音、低音フィルター各3段切替のミューティングとラウドネスコントロールをはじめ、10素子のオクターブイコライザー、左右独立したマイクミキシング回路など、まったくのフル装備であり、AUX1の入力と出力は600Ωバランス型でキャノン端子を使用している。各アンプユニットはすべてDC構成で、電源部は3電源方式を採用している。
 RB5000は、定格出力500W+500Wの超弩級パワーを誇る大型のパワーアンプである。内部のコンストラクションは、左右対称に2個のDC構成パワーアンプを置くタイプで左右チャンネル間の干渉が動的にも静的にも無視できるほど少なくした設計である。パワー段はハイパワートランジスターを各チャンネル4個パラレルで使用し、特性の対称性が優れたダイアモンド回路応用のパーフェクトコンプリメンタリー方式と呼ばれるタイプで、AB級動作である。電源部は、超大型トロイダルトランスと22、000μFの電解コンデンサーが2組左右チャンネル用に使用されており、重量は53kg。機能面では、感度3段切替の対数圧縮型パワーメーターと各チャンネル8個のLEDを使用したピーク表示ランプ、アンプの電源投入後ウォームアップ完了を指示するスタンバイインジケーター、3系統のスピーカー端子、キャノン端子とRCA型ピン端子が切替使用できる入力端子がある。

オーレックス SY-C15, SC-M15

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 最近のオーディオの話題となる新しいジャンルの製品に、超小型のコントロールアンプ、パワーアンプ、それに、チューナーをベースとした、いわゆるマイクロコンポーネントシステムがある。すでに、このクォータリー欄でも、テクニクス、ダイヤトーンの超小型コンポーネントを取上げたが、今回紹介するオーレックスの製品は、この種のものではもっとも早く発表された製品である。
 オーレックスのマイクロコンポーネントは、ステレオシステムにその名称をもつように、超小型で横幅が257mmに統一されたコントロールアンプSY−C15、パワーアンプSC−M15、AM・FMステレオチューナーST−F15を中心として、カセットデッキPC−D15、小型スピーカーシステムSS−S12W、さらに、スーパーウーファーで45Wパワーアンプを内蔵のSS−W51Sでシリーズを構成する、独立したコンポーネントシステムである。このなかで今回試聴できたのは、ベースとなるアンプとチューナーである。
 SY−C15は、超小型ながらコントロールアンプと呼ぶにふさわしい機能をもった製品である。機能面では、2系統のフォノ入力とコントロールアンプ出力を備え、高音と低音のトーンコントロール、サブソニックフィルター、ミューティング時にはイコライザー出力が直接コントロールアンプ出力となる特殊なミューティングスイッチをもつ。各ユニットアンプは、すべてA級動作の全段直結DC構成で、イコライザー許容入力は300mVである。
 SC−M15は、定格出力が45W+45Wで、BTL接続により90Wのモノーラルパワーアンプとしても使用できるDC構成のパワーアンプである。超小型パワーアンプのポイントである放熱効果を解決する目的で、いわゆるケース部分にアルミ合金を一体成型した接合部分のないアルミダイキャスト・モノコックボディを採用し、両側には羽根型の放熱フィンを一体化している。このボディのスペースファクターの良さを活かし、大型の電源用電解コンデンサーや増幅段用のタテ型フィルムコンデンサー、さらに厚さ70ミクロンのプリント基板などの大型部品の高密度実装を実現している。
 SY−C15、SC−M15のペアは、平均的な聴取レベルではまったく不満のないパワー感をもち、一連のオーレックスコンポーネントシリーズに共通する細やかさと滑らかさがあり、ニュートラルな色付けの少ない音をもっている。

トリオ L-07CII, L-07MII

井上卓也

ステレオサウンド 48号(1978年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 セパレート型アンプに限らず、プリメインアンプを含めてアンプの分野では技術革新の店舗が非常に急速であることに特長がある。トリオのセパレート型アンプは、トップエンドにサプリームシリーズを置いているが、最新の技術が投入され話題を提供しているのはLシリーズの製品である。
 今回のL07CII/MIIは、アンプの高速応答性を改善することにより高域における動的歪を減少させたハイスピードパワーアンプL05Mの設計思想を受継ぎ、数多くのアンプ作りのノウハウを投入して開発された第2弾のハイスピードアンプだ。パワーアンプL07MIIはもちろんのことコントロールアンプL07CIIにもハイスピードアンプの思想が盛込まれている。
 ちなみに、トリオでいうハイスピードアンプの条件とは、スルーレートが100V/μs以上、ライズタイムが1μs未満、信号の正負のレスポンスが出力の大小にかかわらず同値であり、かつリンギングなどの波形の乱れがないことである。
 L07CIIコントロールアンプは、パネルデザインが大幅に変更され、より現代的な印象となっている。回路構成上の特長は、フォノ入力のイコライザー段がMC専用とMM専用が独立した2系統になっていること、内部構造が左右独立した配置であること、出力インピーダンスが10Ω以下と超低インピーダンスであることがあげられる。
 L07MIIモノーラルパワーアンプは、パワー段に高域特性が優れたEBTを採用し、特殊単一金属の高精度被膜抵抗、積層スチロールコンデンサー、低歪率特殊高性能電解コンデンサーなどを厳選し、高域特性が優れた前段設計とともにスルーレート170V/μs、ライズタイム0・55μsを得ている。定格出力は、10Hz〜100kHz/0・008%の歪率で、150ダブ区(8Ω)。
 L07CII/MII×2の組合せは、2台のパワーアンプをスピーカーシステムに近接した位置に置き、コードの影響を減らし、コントロールアンプからパワーアンプ間を専用シールド線で結合するという、業務用機器的使用法が標準である。この組合せは、ナチュラルに伸びたfレンジをもち伸びやかでスッキリとしたクォリティの高い音を聴かせる。音色は、ほぼニュートラルで、さしてスピーカーを選ばず、それぞれの個性を引出すのが魅力だ。

ラックス 5C50, 5M21, 5T50, CL36, M-4000, T-110

ラックスのコントロールアンプ5C50、CL36、パワーアンプ5M21、M4000、チューナー5T50、T110の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

5C50

オーレックス SY-C15, SC-M15, ST-F15

オーレックスのコントロールアンプSY-C15、パワーアンプSC-M15、チューナーST-F15の広告
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

Aurex-M15

アルテック A7-X, スレッショルド NS10 Custom, 400A Custom, CAS1 Custom, m1 Custom

アルテックのスピーカーシステムA7XスレッショルドのコントロールアンプNS10 Custom、パワーアンプ400A CustomCAS1 Custom、ヘッドアンプm1 Customの広告(輸入元:エレクトリ)
(スイングジャーナル 1978年8月号掲載)

ALTEC-A7