Tag Archives: XR6

マッキントッシュ XR6

菅野沖彦

最新ステレオ・プラン ’78(スイングジャーナル増刊・1978年7月発行)
「タイプ別本誌特選スピーカー42機種紹介・スーパースピーカー特選7機種」より

 マッキントッシュのスピーカーとして、一番新しい製品で、構成は4ウェイ4スピーカーからなっている。トゥイーターとスーパー・トゥイーターがドーム型、ミッド・パスが20cmコーン型、30cmウーファーが使われている。
 マッキントッシュのスピーカーは日本ではポピュラーな存在ではないが、最初のシリーズからすでに5〜6年のキャリアを持つものである。基本的な開発の思想は旧シリーズと同じでトータル・ラジエ−ション、指向性をできるだけ均一に各周波数帯域にわたり等しいエネルギーをラジエートするという考えで作られている。さらに本機は、各ユニットからの放射される音の到達時間をコントロールすべくネットワークに工夫がある。つまりタイム・アラインメント・ネットワークの採用だ。
 今までのマッキントッシュのスピーカーは、どうも中域が薄く、素晴しい、品位のある音だが、中音域の再現が不満だったが今日の試聴ではそういうことは全くなくて、非常に高品位のガッチリと締った素晴しい音が得られた。デザイン的には、昔のデザインから見ると確かにさりげなくなってしまって、私も個人的にあんまり好きな形ではないが、しかし音を聴いてみて、音くずれのない、非常に定位のいい、普通のスピーカーでは分からないような定位がハツキリ出てくることを認識した。位相特性が素晴しいので、自分の録音したレコードを聴いてみると、録音時に使用するモニター・スピーカー以上にマイク・アレンジの細かいところが出てくるのには驚かされた。これは、モニターとしても大変優れていると思う。マッキントッシュの言うように、非常に忠実な変換器として、音響パワーが各周波数帯域にわたって均一であるということが、この素晴しいフェイズ感による定位の良さ、パースペクティブが得られる原因なのだろう。
 これは、今の日本での評価が(XR6については、これからだろうと思われるが)今までの評価をくつがえしてもしかるべきだと感じる。今まで何回か聴いてはいたが、これほどのいい音を聴いたことは今回初めてだ。その意味でこのXR6という製品が特別優れているのか、あるいは今までのものはじっくり聴いたわけでないので、デザインからくる印象があまり良くなかったという点と、値段が非常に高いということで、一般にはあまり推められないなという印象によってマイナスの評価が強かったのであろう。今日このスピーカーを聴いてみて、こういう印象が全く改まり、やはりさすがにマッキントッシュらしい最高品位のスピーカーだなという感じが強くした。とにかく音がソリッドで強固で、そして物理的に素晴しい特性を持っている。レコードの細かいマイク・アレンジの全てまで分かるということは、これはスピーカーとしていかに優秀であるかの証明だと思う。このスピーカーの値段は約30数万円というところだろうと予想できるが、十分その値段に値するものではないかと思う。
 ただアンプリファイアーのデザインなどから見ると、デザインと仕上げに関してもうひとつ、マッキントッシュに期待するものが大きいだけに少々失望させられざるを得ない。この辺が魅力的なアピアランスに仕上っていたら最高の製品といえるのだが……。
 組合せはいろいろと考えられるが、やはりせっかくのマッキントッシュのスピーカーだから、アンプリファイアーはマッキントッシュを使いたいということで、最近の新しいプリアンプのC27という製品ということにしよう。C32を最高とするシリーズの中でマッキントッシュとしては、廉価版ということだが、各種機能をシンプル化し、基本性能は明らかにマッキントッシュのプリアンプとしての面目を保った素晴しい性能の製品だ。
 このスピーカーは最大許容入力200Wということだが、私の経験からしてもスピーカーの最大許容入力以下のアンプを使ってもそのスピーカーの能力は100%出てこない。200Wの許容入力のスピーカーなら最低200Wのアンプ、300Wくらいのアンプで鳴らしたいということからマッキントッシュのMC2300が望しいが、値段が相当高いので、ここては、アキュフェーズのM60を2台使うことにしよう。
 プレイヤーは、デンオンのDP7700を使うことにして、カートリッジはこれくらいのクラスになると実際に鳴らしてみて決めるべきだと思う。エラックSTS455Eで鳴らしてみたが、ここで聴く限りでは、大変素晴しいと思う。STS455Eとか555EとかフィリップスGP412II㈵とかオルトフォンのM20FL Super、MC20といったクラスのカートリッジを付けて自身の好みに合わせて選ぶべきで、これひとつがベストだという域の組合せではないと思う。