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ロクサン XER-X + AMZ1

菅野沖彦

レコードリスナーズ アナログバイブル(ステレオサウンド別冊・1996年6月発行)
「注目モデルの徹底試聴 レコードプレーヤー」より

 これもイギリス製。ロクサンは、こだわりメーカーの最右翼であるが、本機はその創業10周年記念モデル。ベースボードの構造を改良し、さらに制振性を向上させた新製品である。一見しただけではわからないが、大変凝った作りだ。フィニッシュは従来の黒のピアノ・フィニッシュの方がロクサンらしく精悍でいいと思う。この木目仕上げは平凡なイメージだ。
 しっかりした造形感と自然な質感、そして妥当なエネルギー・バランス・コントロールを備えたプレーヤーである。音触は温かく、しかも間接音はよく響き、透明で美しい。以前のモデルより低音域が適度に緩み、大人っぽい音になった。シェリングのヴァイオリンの質感は妥当。ピアノは硬からず柔らかからずで、自然なタッチだ。「トスカ」では豊かなオーケストラの低弦が印象的で、これ以上になると緩み過ぎの感じであった。
 したがって、楽器の胴鳴りを聴かせ温かく自然で快い一方、明晰さと精緻さではウィルソン・ベネッシュに一歩を譲る。同じイギリスだけによきライバル同志だ。ウィルソン・ベネッシュはプレーヤー本体が10万円安く、逆にトーンアームは5万円高いが、トータルサウンドでは2台のプレーヤーに優劣はつけ難い。ユーザーのテイストの選択に待つ他はない。すんなり付くか付かぬか試していないので不明だが、ロクサンのプレーヤーとウィルソン・ベネッシュのトーンアームとの組合せは、面白そうである。
 どちらも素晴らしい再生音が楽しめたヴィヴィッドな「ベラフォンテ」のライヴ盤を例にとると、その空間の温度感が、ロクサンが摂氏22〜24度、ウィルソン・ベネッシュは18〜20度といった感じである。スタイラスのトラクションに関してはウィルソン・ベネッシュのATC2トーンアームが断然上である。ただし、あくまで今回試聴に使ったオルトフォン・カートリッジでの話であることをお断りしておく。電源部のアップグレードは価格ほどの御利益はないようだった。