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ソニー TTS-8000

井上卓也

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

現代的にサーボ能力をフルに生かした性能の高さは同社独特の魅力だ。

ソニー TTS-8000

岩崎千明

スイングジャーナル 9月号(1976年8月発行)
「SJ選定新製品試聴記」より

 DDモーターが登場して、それが世界を、少なくともプレイヤーの、今までの常識をすっかり変えてしまってから、もう何年になるだろうか。
 いつの時代にも、まったくといってよいほど、変わる所のなかったフォノモーターが、おそらく始まって以来、革命的な向上を果したといってよいのが、ダイレクト・ドライブ・ターンテーブルであった。ところが、さらにいま、この方式は水晶による、驚異的一定周波数発振器を内蔵させることによって、それを回転の定速制御の中に、くり入れることによって得た、新しい技術〝クォーツロック・ダイレクト・ドライブ方式〟として、ひとつの完成を成しとげたことになった。
〝クォーツロック〟あるいは、クリスタル・ロックと略称される新しいターンテーブルがこれであり、こうした新製品が、主要メーカーからポツリ、ポツリと市場に送られてきつつある。ソニーのTTS8000も、こうした新しいターンテーブルのひとつである。
 注目すべきは、このTTS8000が、ソニーの手によるクォーツロック・ターンテーブルという点なのだ。
 DDモーターの出る以前に、すでに電子制御によって、回転数を一定にしようとする試みは、世界中の主要ターンテーブル・メーカーが、これを試みていた。現在でも、世界的に信頼されている、スイス・ブランドのT社を筆頭に、国内メーカーからも、こうした電子制御モーターが、数多くあったが、その中でもいち早くスタートを切り、大成功を収めたのが、かくいうソニーのTTS3000であった。それは、機構的にはベルト・ドライブ方式であったが。したがって、電子制御に関しては、ソニーは他社に先んずる技術を持っていた。それはテープレコーダーという、新しい回転機器を作り、育ててきたソニーならではの技術でもある。テープ走行用の技術は、ターンテーブルの定速回転のために、拡大応用された、といってよい。
 本来、オーディオという分野は、電気、科学、機械、材料、と幅広い部門の上に成り立ち、その上に音楽的感覚が加わるという、広い範疇の総合技術である。にもかかわらず、オーディオ・メーカーといわれる中で「オリジナル技術」ないしは「個性的技術として、誇るにたるノウハウ」を持っているメーカーが、果して何社あろうか。ソニーはそうした意味でもっとも強力な技術と、ノウハウを持つといい得る、世界にも誇るぺき、技術志向の強いメーカーである。技術のソニーは、トランジスターを創り、TRラジオを創り、テープ・デッキを創り、TRテレビを創ってきた。さらには、TRアンプを加え、電子制御ターンテーブルをものにしてきた。そのキャリアが、クォーツロックド・ダイレクト・ドライブ方式のプレイヤーを完成させた。先に発表された高級プレイヤーPS8750がこれである。このクォーツロック・プレイヤー、DDモーターの最終極点にあるとも言える水晶制御だけに、価格も高い。とても一般のユーザーが、気遅れなしに入手できるといえる程の価格ではない。加えて、この高価格にしては、黒と金属のツートーンのデザインは、あまりにもメカっぽく、音楽をたしなもうという雰囲気に、どうもそぐわないと感ずるファンも少なくないだろう。音楽は、いわゆる人間の精神の奥に根ざすべき感情活動をともなう芸術である。冷たい感触は、こうした人間味を薄めかねまい。
 今回、TTS8000として、ターンテーブルのみが、単独商品として発表された。割安な価格という、プラスも大きいが、それ以上にその使い手の好みに応じて、プレイヤーを創ることができ、ケースを自分の趣味で選び、あるいは装うことができるという、プラスの要素が、価値としては大きいのではないだろうか。
 クォーツロック方式による、回転精度の向上、ワウやフラッターの低減などの電気的、機械的な性能向上は、いわずもがなだが、さらに、クイック・スタート、クイック・ストップの強い良さも、付加的なメリットだ。おそらく一度使ったら手ばなさなくなる使い良さは、かつての名作、TTS3000以来のソニーのモーター技術の伝統でもあろう。