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ソニー ST-A7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 長らくの間高級チューナーの発表がなかったソニーから、同社のトップモデルのプリメインアンプTA−F7Bの発売と同時に、ペアチューナーST−A7Bが発売されることになった。
 パネルフェイスでの特長は、何といっても受信周波数をデジタルで表示するディスプレイの採用であろう。本機では、受信周波数は、一般の横行ダイアルでチェックする他に、独立したデジタルディスプレーで正確な受信周波数を読み取ることができる。つまり、ダブルに表示をするわけだ。
 FMフロントエンドは、デュアルMOS型FETのRF増幅、デュアルFETによるバランスドミキサーと5連バリコンの組合せである。局部発振は、水晶を基準発振器として100kHzおきにロックするタイプで、精度が高く、刑事変化、温度変化による同調ズレが皆無に近く、正確な同調点を保つことが可能である。なお、ロック状態はロックインジケーターで確認可能である。IF段は、帯域2段切替型で、ノーマルではユニフェイズフィルター、ナローでは、さらに選択度を重視したユニフェイズフィルターが加わる。MPX部は、PLL・ICにデュアルFET使用の差動2段のプリアンプを設け、PLL・ICの出力をプリアンプに負帰還する構成で、ビート音を除く、ビートカットフィルターを備えている。オーディオアンプは、電源部に定電圧の±2電源を採用した音質重視設計である。なお、完全に独立したAMチューナー部をもち、FMダイアル右端に、専用ドラム型ダイアルが組み込まれている。
 本機は、ダイアル系がスムーズなため、選局のフィーリングは、さすがに高級機らしい印象である。放送局の同調点は、ロックインジケーターでも確認できるが、ダイアル指針が同調時には上下2段のLEDが発光し確認は容易である。音質は、大変にプリメインアンプTA−F7Bに似ており、粒立ちが細かく、豊かで軽い感じの中低域と伸びやかな高域が特長である。

ソニー ST-A7B

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
特集・「コンポーネントステレオ──世界の一流品」より

 現在の高級チューナーとして、とくに驚異的な内容を誇る製品ではないが、デザイン、性能、機能などの総合的なバランスが大変に優れたモデルである。
 デザインは、ソニー製品の特徴である機能美をもったもので、仕上げも入念であり、各コントロールのフィーリングも一流品らしくコントロールされている。最近の高級チューナーといえば、シンセサイザー方式の導入や、水晶発振器の信号を基準として局部発振回路を100kHzおきにロックする、クリスタルロック方式が採用されることが多いが、シンセサイザー方式の重心周波数がディジタル表示される未来志向型といった感じはかなり面白いが、スイッチを使っておこなう選局は実感が薄く、どうも選局をしたという感覚的な確認が乏しい。
 ST−A7Bでは、クリスタルロック方式を採用し一般的な走り幅が広いダイアルをもちながら、シンセサイザーチューナー的な、ディジタル周波数ディスプレーをもっているのが大変に楽しいところである。たしかに、選局ということだけでは不要かもしれないが、チューニングツマミを回して選局するという、かなり人間的な感覚と、新しい世代のチューナーを象徴するようなディジタルディスプレイと共存は、まさしく趣味としてのオーディオならではのものといった印象である。また、とかく高級チューナーは、FM専用とする傾向があるなかに、完全に独立したAMチューナー部があり、FMダイアルの片隅みに小型のダイアルが目立たず付いているのも好ましい。