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フィリップス RH427

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 彫りが深いともメリハリの利いた音とも言え、聴き手を引き込むような艶のある魅力的な響きが独特である。肌ざわりはつめたいけれど、ことに女性ヴォーカルや弦の音など、語りかけるように血の通ったしっとりと色っぽいムードをかもし出す。高域がよく伸びて、演奏されている場と再生音場での空気が直結したような、あるいは眼前の幕が取り除かれて音を散りばめるようなプレゼンスを作る。一音一音を彫り上げたクリアーな音で、余計な音がつきまとわないからざわついた感じがなく、ことにピアニシモの静寂が美しい。音像の定位はシャープで、ソロ・ヴォーカルも左右にひろげたスピーカーの中央にくっきりと浮かぶ。しかし輸入品で五万円を切るいわばローコストスピーカーだ。欠点もんいろいろある。やや骨細の性格があるので男声の太さやピアノの左手の厚みが出にくい。シンバルやスネア・ドラムの系統の音が、わずかながらプラスチック的な音色になる。弦合奏のフォルテのあたりでシリシリというノイズ性の音がつきまとうことがある。パワーにもそう強くない。しかしこのあたりの価格で、楽器の響きをこれほど美しく鳴らすものは少ない。アンプでハイをわずかに抑える方がバランスがよかった。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆☆
余韻:☆☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆☆
魅力:☆☆☆☆

総合評価:☆☆☆☆★