瀬川冬樹
ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より
旧ヨークより高域のレインジも広がりクセも少なくなっているにもかかわらず、たとえばスペンドールのような音のクセをできるだけ取り除いてフラットで色づけの少ない自然な音を目指したスピーカーを聴いたあとでは、しばらくのあいだ聴けないくらい、中域の張り出した(最近のイギリス製品には少ない)、ホーン特有の色のついた個性の強い音なのだが、しかしそういう尺度を当てはめて退けるにはあまりにも見事に磨かれた、格調の高い、緻密でスケールの大きい、味の濃い音質である。総体にランカスターより重量感のある、悠揚せまらざるという感じの音を聴かせ、左右に4m近くもひろげて、目の前いっぱいに並んだ小沢の「第九」を聴くうちに、いつのまにかテストを忘れて聴き惚れてしまった次第。エンクロージュアの工作やグリルクロスの品位が以前より落ちているのは残念だが、ヨーク健在なりの意を強めた。こうした性格の良い面を生かすには、少し旧い音だがオルトフォンSPUやラックス38FDIIといった組合せが好ましいと思う。
採点:94点
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