Tag Archives: PMA501

デンオン PMA-501

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 オーソドックスであり、やや保守的な路線を進んでいたデンオンのプリメインアンプは、要求に答えてか、このモデルの登場により、かなり今日的な姿に衣がえしたようである。このモデルは、質と量のバランス点を保ちながら、カートリッジのクロストークをキャンセルする機能をも備えているのがユニークだ。

デンオン PMA-501

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 この価格のアンプの音に、本格的な充実感や重量感を望むのは無理であるだけに、メーカーがどういう音に仕上げるかが成否の分れみちだが、501の音にはフレッシュな印象があって、スピーカーの音をキリッと引締めながら音楽の表情を生き生きと楽しませる。ただ、デザインはやや装飾過剰のように思える。

デンオン PMA-501

菅野沖彦

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 フォノ・クロストーク・キャンセラーという武器を備えたアンプ。これを調整して使うと相当な効果がある。音場が一段と拡がってステレオフォニックな空間再現のイメージがはっきりと変るのである。この回路の入切による音質の変化はないので、大変有効なものだと思う。このアンプの音は、なにを聴いてもプログラムソースの持つ音、音楽のニュアンスをよく再現し、音楽を聴く意欲が損なわれない。どちらかというと、大型の高能率型のSPがよく、音の品位の高い、安定した再生が可能である。瑞々しい魅力が、やや硬いニュアンスとして再生される傾向にあるが、それだけに、音の充実感を強く訴えかけるのである。このクラスとしては音質面で高く評価したいアンプだ。ただし、トーン・ディフィートやモードスイッチなどの切替によるイズが出るのは、現在のアンプの水準からしてあまりにも無神経に過ぎる。それも、不安定な出方で、精神衛生上きわめて有害だ。

デンオン PMA-501

瀬川冬樹

ステレオサウンド 42号(1977年3月発行)
特集・「プリメインアンプは何を選ぶか最新35機種の総テスト」より

 クリアーでよく引締った音。それがスペンドールのようなソフトな音スピーカーをほどよく引立たせるが、JBL系のスピーカーでも、トリオの7100Dほど骨っぽくはならない。中〜低音域でもう少し音に量感が出るとなおよいと思うが、音の表情を生き生きと、一種新鮮なみずみずしさで鳴らす魅力は、6万円以下のランクとしてはなかなか得がたい良さだ。7100Dの場合、聴き込むにつれて味の素を効かせすぎるような感じが目立ってきて、デンオンの方が正攻法で作られながら、音の鮮度も魅力もそなえていることがわかる。ただし、鳴っている最中にトーンのON−OFFなどファンクションスイッチ類をいじると、スピーカーからやや大きめの雑音が出る傾向があって(そういうアンプはほかにもあったが、デンオンは雑音がなかば周期的に増減するという妙な性質があって)なにか不安定要素があるのではないかとちょっと気になった。

デンオン PMA-701, PMA-501

井上卓也

ステレオサウンド 41号(1976年12月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 デザインを変えてイメージチェンジをした2機種の新製品は、デザイン以上に大変にユニークな機能を備えていることが特長である。この機能は、カートリッジのクロストーク特性をアンプ側で電気的にコントロールするためのPCC(フォノ・クロストーク・キャンセラー)と名付けられたものである。
 一般にカートリッジのクロストークは、中域の条件が良い状態でも、−20dB〜−30dB程度で、アンプ側のフォノ入力からスピーカー端子までのクロストークにくらべて大幅に劣っていることは、よく知られていることである。カートリッジのクロストークの位相特性を調べると位相差が0°付近と180°付近にあることから、左チャンネルから右チャンネルへのクロストークを例にとると、第一に左チャンネルの信号を適当な値で取り出し、極性を反転して右チャンネルに加えれば打消しにより数dB以上の改善が期待できる。第二に、第一の方法により打消すことができないクロストーク分は、信号分との位相差が±90°の成分であり、このためには移相器が有効であろう。
 以上の予想を基本として実験の結果は、周波数によっては10dB以上の改善が見られたとのことで、実際のPCCは、L→R、R→Lの両方でキャンセラーを動作させる必要があり、各チャンネルを2個のツマミで調整することになる。なお、カートリッジのクロストークは、アームへの取付条件までを含めれば、1個毎に異なるために個別の調整が必要で、その目的のために、調整用レコードがアンプに付属している。
 回路構成上の特長は、フォノ入力回路は切替スイッチやシールド線を使用せずイコライザー段に直結とし、入力インピータンス特性を向上させ、併せてそれらによるSN比の低下を防いでいる。また、電源部はデンオンのプリメインアンプとしては、はじめてのパワーアンプのB級増幅部分での左右独立トランスの採用の電圧増幅段、プリアンプ部専用の電源トランスをもつ、3電源トランス方式が使われている。
 PMA701と501の違いは、出力が70W+70Wと50W+50W、機能的には後者には、ハイフィルターがない。
 PCCによ、カートリッジのクロストーク調整は、付属している17cm盤のテストトーンのバンドを使っておこなう。片チャンネルについて、2個のコントロールを交互に調整して、信号が最小になる位置を探せば、調整は完了する。この調整は、割合いに容易であり、PCCスイッチのON・OFFで、クロストークの改善度が確認できる。効果は、かなり大きくPCCのONで、ワーブルトーンの調整信号音は、大幅に減少することが判るはずだ。音質的な変化は、音が全体にスッキリとして、間接音成分的な、あいまいな感じがなくなり、音像の輪郭が、一段とクッキリとして浮かび上がるようになる。このような効果は、ベースとなるアンプのクォリティが充分に高くないと望めないことだけに、新しい2機種のプリメインアンプは、アンプとして、デンオンらしいクォリティの高さがあることを裏付けているわけだ。この結果から予想すれば、もし単体ユニットでPCCが発売されるとしたら、より高級機との組合せで効果がありそうだ。