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ナカミチ OMS-50

井上卓也

ステレオサウンド 74号(1985年3月発行)
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」より

 ナカミチのオーディオは、1973年に世界初の完全独立3ヘッド構成を採用した超弩級カセットデッキ・モデル1000と700の開発という成果に見られるように、カセットデッキの高性能、高音質化で傑出した独自の世界を展開し、オリジナリティという意味で、海外でも独自の評価を得ている。その他のジャンルでも、高級レシーバーやセパレート型アンプでの独自の開発や、アナログプレーヤーシステムで未知の分野に挑戦した、ディスクのオフセンターと音質の相関性を追求した結果として開発したアブソリュート・センター・サーチ機構採用のシステムなど、ナカミチならではのオリジナリティのあるアプローチは類例のないものだと思われる。
 一方、デジタル関係でも、光磁気ディスクで録音・再生を可能としたシステムの開発に見られるように、時代の最先端を行くテクノロジーを誇っているが、今回、昨年のCDプレーヤー第1弾製品OMS70に続き、機能を簡略化したいわばスタンダードモデルとも考えられるOMS50が登場することになった。
 開発の基本コンセプトは、OMS70と同様に、デジタルサウンドという名のもとに加えられやすい音の色付けを拒否し、原音を完璧にトランスデュースするというナカミチの理念を追求したものとのことで、具体的には、回路構成の単純化、4倍オーバーサンプリング方式のデジタルフィルターとダブルDAコンバーター方式、アナログ回路全体を独立パッケージ化し、入出力端子のあるリアパネルに直付けしたダイレクトカップルド・リニアフェイズ・アナログシグナルプロセッサー方式などが特徴となっている。その他、ディスクドライブ機構を亜鉛合金ダイキャストシャーシーにマウントし、メインシャーシーやディスクローディング機構からスプリングによりフローティングし、内部のドライブメカニズムや電源トランスなどからの共鳴や共振、外部的な振動やスピーカーからの音圧などの影響を受け難い構造の採用などだ。その、いずれをとっても今回の採用が業界初というものではないが、これらをベースとして総合的に優れた音質のCDプレーヤーとするかに、ナカミチの総合力がかかっていると考えられるわけだ。
 CD独自の使用上のチェックポイントを確認してから音を聴く。ウォームアップは比較的に早く、ディスクが回転をはじめて約1分10秒で音が立上がる。さして広帯域型を意識させないナチュラルな帯域感と穏やかな表情で、落着いて音を聴かせる雰囲気は、ナカミチの高級カセットに一脈通じる印象である。デジタルらしい音をサラッと聴かせるタイプと比較すれば、味わいの深い音、というのが、このシステムの音であり、市場での反応が興味深いと思う。