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ヤマハ NS-670

瀬川冬樹

ステレオサウンド 29号(1973年12月発行)
特集・「最新ブックシェルフスピーカーのすべて(下)」より

 素性のいいスピーカーは試聴に入るまでのレベルセットに時間がかからない。とくに国産スピーカーの場合、2ウェイではうまいこと作るメーカーでも3ウェイになるとなかなか手こずるものだが、ヤマハNS650もうまくこなしたし、今度の670のまとめ方も大きな難点もなく水準以上の線にまとめている。スコーカーのレベルはメーカー指定のノーマル、トゥイーター・レベルはノーマルと-3dBの中間あたりで、ぴたりと決まった。ヤマハの製品に共通の抑制を利かせた行儀のよい鳴り方で余計なおしゃべりをしないから、音と音とのけじめのすっきりした端正な音を聴かせる。おえわのやや暗い鳴り方に対して中~高音域に適度の張りと爽やかさが感じられる。ただ、スキャンダイナのA25などと比較すると、A25がパッと眼前のひらけたような広がりを表現するのに670は少し姿勢の固いきゅうくつな鳴り方で、もっと弾みや艶が表現できてもよいのでないかと思える。たとえばクラリネットの丸みや艶のあるふくらみが、少々艶消しの感じで聴こえる。発売当初の製品に比べると低音の量感がわずかに増えたように思うが、低・中・高のバランスがもう少し滑らかになるとなお良く鳴るスピーカーだ。

周波数レンジ:☆☆☆☆
質感:☆☆☆
ダイナミックレンジ:☆☆☆
解像力:☆☆☆
余韻:☆☆☆
プレゼンス:☆☆☆
魅力:☆☆☆

総合評価:☆☆☆