菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
ラックスMS10は縦長の特異なプロポーションを持ったもので、大きさからは中型に近いブックシェルフシステム。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイで、新素材のウーファーはなかなか、コクのある中低域を聴かせる。決して明るい現代的な音とはいえないが、クラシック音楽のファンには、このシステムの陰影の再現力が好まれるであろう。
菅野沖彦
ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より
ラックスMS10は縦長の特異なプロポーションを持ったもので、大きさからは中型に近いブックシェルフシステム。20cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイで、新素材のウーファーはなかなか、コクのある中低域を聴かせる。決して明るい現代的な音とはいえないが、クラシック音楽のファンには、このシステムの陰影の再現力が好まれるであろう。
黒田恭一
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
フィリップスAH484とはまったく逆の性格をもったスピーカーということができるだろう。きめこまかい音の表現ということでは一応のものをきかせはするが、力強い音に対する反応ということではものたりない。しかし、オペラ歌手の張った声ではなく、ポピュラー・シンガーのインティメイトな表情をもった声とうたいぶりに対しては、なかなかいいあじを示す。今はやりの、さまざまなサウンドの入りまじった音楽をきかせるのは、このスピーカーのもっとも不得手とするところだ。遠く離して大音量できくのではなく、微妙なあじわいを重んじた音楽を、静かにきくのにかなったスピーカーというべきか。このスピーカーのきかせる音には独自のあかるさがあるものの、ピアノ、あるいはトランペットの音の響きは、いくぶんおさえめになる。したがって、きいての印象は、総じて、まろやかであり、おだやかだ。
総合採点:7
試聴レコードとの対応
❶HERB ALPERT/RISE
(物足りない)
❷「グルダ・ワークス」より「ゴロヴィンの森の物語」
(好ましい)
❸ヴェルディ/オペラ「ドン・カルロ」
カラヤン指揮ベルリン・フィル、バルツァ、フレーニ他
(ほどほど)
瀬川冬樹
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
低音域の量感はあまり期待できないためやや線が細いが、中域から高域にかけてちょっと国産らしからぬ繊細な美しい艶が乗って、少し前のイギリスの小型スピーカーの鳴らした魅力と一脈通じる音が楽しめる。そういう音だから、とくにクラシックの弦楽器など、倍音のよく乗った一種妖しいと言いたいような弦特有の音色が聴きとれて、この傾向の音の好きな人なら、ちょっとシビれる、とまでは言いすぎであるかもしれないが、かなり聴き惚れさせる要素がある。たとえばブルックナーのようなわりあいスケールの大きな交響曲等でも、音量をあまり上げすぎないかぎり、眼前にオーケストラの展開する感じがよく出て楽しい。
反面、パワーには弱くまた音自体もいくぶん弱腰なので、ハードなポップスには向かない。そして組合せも、スピーカーの価格にくらべてアンプやカートリッジをややおごってやらなくては、このスピーカーの良さを生かしにくい。
総合採点:8
●9項目採点表
音域の広さ:6
バランス:8
質感:7
スケール感:6
ステレオエフェクト:7
耐入力・ダイナミックレンジ:5
音の魅力度:8
組合せ:やや選ぶ
設置・調整:普通
菅野沖彦
ステレオサウンド 54号(1980年3月発行)
特集・「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」より
全体のバランスはよくとれていて、周波数レンジもよく伸びている印象だ。音そのものも、各楽器の音色を素直に出してくれる方だ。ただ、試聴したシステムはトゥイーターに少々引っかかりのある嫌な響きがつきまとい気になった。別の機会に聴いた経験ではこんなことはなかったので、このモデルだけのことかもしれないが……。不満としては、音楽の力感的性格に対して十分な反応を示さないことだ。どちらかといえば品のよい内省的な響きということなのだろうが、もう少し屈託のない明朗な響きに対応する能力がほしい。少し具体的に書くと、シルヴィア・シャシュのソプラノの声でトゥイーターの響きが刺戟的であったこと、バスドラムの強打やベースのピチカートの反応がやや鈍く、朗々としたファンファーレが透みきらなかったことなどだ。したがって、チャック・マンジョーネの演奏など、打楽器のリズム感のはじけるような鮮烈さが不十分で、このレコードの演奏が十全には生きなかった。
総合採点:7
井上卓也
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より
ラックスといえば、現在に至るまで管球式のアンプを作りつづけるアンプ専業メーカーというイメージが強いが、創業以来50年をこすキャリアを誇るだけにプレーヤーシステムやスピーカーシステムの分野でも独自な発想に基づいた製品をタイムリーに開発し、つねに話題を提供してきたことを知る人も多いことであろう。
今回発売されたMS10は、昨年の全日本オーディオフェアに展示された一連のスピーカーシステムのなかから最初に製品化されたものと考えられる小型ブックシェルフ型である。トールボーイ型のプロポーションをもつエンクロージュアは、箱の後面に複数個の小孔をあけエンクロージュア内部の空気圧をコントロールするマルチベントチューニング方式と名付けられたタイプで、密閉型ほどウーファーのコーンに圧力がかからず、バスレフ型のように共振点をもたずコーンの動きの非対称性がない特長をもつとのことだ。材料はハイダンプド硬質パーチクル板で内部には吸音とパーチクル板の振動を抑える目的で粘弾質含有発泡吸音材スーパーシールが貼付けられ不要輻射を低減している。
ユニット構成は2ウェイ型で、20cmウーファーは、コーン材料にアラミド系繊維のネットに化学処理を施し加熱成型をした新素材を採用し、エッジはポリウレタンフォーム、ダンパーはコーンと同じ素材、フレームはアルミダイキャスト製バーアーム型と数多くの特長をもつ。2・5cm口径のポリエステルフィルムドーム振動板使用のトゥイーターは、ウーファーとのつながりを重視した素材選択の結果選ばれたもので広帯域、高耐入力設計によるものである。
ネットワークは、景近その使用部品が注目されているところだが、ここでは低域側、高域側ともに18dB/oct型が採用され、ユニット相互間の干渉を少なくするため補正回路を設け、クロスオーバー周波数付近のマスキング効果の発生を防いでいる。素子のコイルは低損失型、コンデンサーはメタライズドフィルム型を使い、レベルコントロールは付属していない、いわゆる固定型である。なお、スピーカー端子は太いコードでも確実に接続できるリード挿入式の大型ターミナルである。
MS10のもっとも大きな特長は、アラミド系繊維をウーファーコーンに導入したことにある。各種のプラスティック系の材料を応用した例は国内製品には珍しいが、英国系のスピーカーシステムには比較的多く使用されているようだ。新材料を採用したためか、MS10は音色が軽く明るいタイプで、音の反応が速い特長がある。聴感上での帯域バランスは、小型ブックシェルフ型のつねで、やや高域に偏ったタイプで、セッティング場所を選び、バランスを補正した後にさらにアンプ側のトーンコントロールで補正するのがオーソドックスな使用法だ。MS10には粒立ちが細かく滑らかなアンプがマッチする。
菅野沖彦
ステレオサウンド 51号(1979年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’79ベストバイ・コンポーネント」より
新たにスピーカー開発に乗り出した同社の第一作で、アラミド系コーンの20cmウーファーと2・5cmドーム型トゥイーターを組み合わせた2ウェイシステムである。この価格とこのサイズ(W25×H54×D26cm)の中では比較的オーソドックスなリプロダクションが可能であり、すっきりとした歪みの少ない音とスケールの大きな再生音が得られる本格派だ。
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