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B&W Model 801F

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より
4枚のレコードでの20のチェック・ポイント・試聴テスト

19世紀のウィーンのダンス名曲集II
ディトリッヒ/ウィン・ベラ・ムジカ合奏団
❶では総奏によるひびきのひろがりを示すより、総奏した音の力を示す。❷でのヴァイオリンにしても、その音色の美しさをきめこまかく示すというより、その輪郭をくっきり提示する。このヴァイオリンの音は人によってはきついという人もいなくはないであろう。❸ないしは❺のコントラバスはもう少したっぷりひびいてもいいように思う。コントラバス本来の大きさがわかりにくいここでのひびき方である。

ギルティ
バーブラ・ストライザンド/バリー・ギブ
❶ではエレクトリック・ピアノがくっきりと示される。しかも音像的にいくぶん大きめである。❷での声はこっちにかなりはりだしてくる。この辺にこのスピーカーの積極的な性格がうかがえるといえなくもないようである。❸ではギターが太く感じられる。それだけあいまいになっていないということであるが、もう少し微妙な音色への対応にすぐれているとこのギターの音も本来の美しさを示せたのであろう。

ショート・ストーリーズ
ヴァンゲリス/ジョン・アンダーソン
ひびきの鋭さより力強さをきわだてる傾向にある。したがってここできける音楽のうちの力は感じられるが、デリケートな音色の変化はいくぶんききとりにくい。したがって、❷でのティンパニのひびきの力はあきらかにされているものの、❸での左右の動きがあきらかにするはずのスピード感はかならずしも充分とはいいがたい。❺でのポコポコがいくぶん全体の中にうめこまれたような感じでしかきこえない。

第三の扉
エバーハルト・ウェーバー/ライル・メイズ
❶でのピアノの音に力感がある。その反面、ベースはいくぶんひかえめである。❷ではとりわけ高い方のピアノの音が美しい。左右のひろがりはほどほどにおさえられていてこのましい。❺では木管のひびきの特徴をよく示し、それまでの部分との音色的な対比を充分につけている。もう少し音色的にあかるいと、このスピーカーのもちあじのひとつである力強さへの対応力がいかされるのであろうかと思う。

B&W Model 801F

黒田恭一

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
特集・「2つの試聴テストで探る’83 “NEW” スピーカーの魅力」より

 口ごもるようなところのない、いうべきことはストレートにいうよさがこのスピーカーにはある。その意味では安心してきいていられる。力感にみちた音の提示のしかたなどはなかなかのものである。ただ、硬に対する軟の方で、さらに表現力をませばと思わなくもない。
 どのレコードも平均してきこえた。このレコードがよくて、あのレコードがよくないというようなことはなかった。その意味で平均点の高いスピーカーということになるであろう。ただ、ヴァイオリンのしなやかな音とか、声のなまなましさとかを求める人は、一工夫必要であろう。
 しかしながら強調感のないところはこのスピーカーのいいところで、使い手の側に積極性さえあれば、眠っている可能性をひきだすこともできそうである。なにより、ひびきがひっそりしてしまわないところがこのましいと思う。