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フォンテック・リサーチ minifon A-4/MK4

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 国産の中では破格に高価な製品だ。正直のところ私には、この高価格がどういう理由からなのかよくわからないのだが、ともかく大づかみにはA4の延長線上での音の作り方で、そのことからいっそう、このメーカーの音に対する姿勢が明確に聴きとれる。A4のところでも書いたことと一部重複した言い方になるが、ヘッドフォンに限らずオーディオ機器全般の、こんにちの広帯域化の傾向にあえて背を向ける、という言い方が不適当なら、抵抗している、といんうのがフォンテックのポリシーのように思える。ともかく高域がおさえぎみにコントロールされていて、高域の伸びた再生装置でときとして聴かれる高音楽器のハイキーな、あるいは金属的な鳴り方をおそらく嫌っているのだろうと思う。ダイナミックタイプでこれをやったら、解像力の悪い鈍い音にしかならないが、コンデンサータイプの反応の良さを知って作っているのだろう。

フォンテック・リサーチ minifon A-4

瀬川冬樹

Hi-Fiヘッドフォンのすべて(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「Hi-Fiヘッドフォンは何を選ぶか 47機種試聴リポート」より

 コンデンサータイプのヘッドフォンの中では、かなりユニークで、独特の主張を持った音色だと思った。とくに中高音域から上の最高音域を、なだらかにおさえてあって、この点に限って言っても、たとえばスタックスやソニーがバランスを重んじて高域をフラットな感じにコントロールし、オーディオテクニカは中〜高域にかけて一種の華やかさを持たせ、さらにナポレックスになるとハイエンドをやや強調さえしている、というように、ほかのメーカーが概して、コンデンサーならではの高域のレインジの広さを意識して作っているのに対して、フォンテックは、カタログ上でも高域のレインジをあまり広く表示していないことからもわかるように、むしろ高域をソフトにおさえる作り方を明確なポリシーとしていると聴きとれる。その結果、ステレオの音場も、広げるよりもむしろ中央に凝縮させるような求心的な聴こえかたになる。渋い音、というのだろうか。