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ヤマハ MC-2000

井上卓也

ステレオサウンド 65号(1982年12月発行)
「PickUp 注目の新製品ピックアップ」より

 最近のカートリッジの特徴は、新製品のすべてがMC型だ、ということである。
 とくに国内製品では、MC型の問題点のひとつでもあった低価格化が生産技術面で飛躍的に改善され、1万円を割るモデルさえ出現している。その内容も、価格は安くても悪くしようがないというMC型独特の構造上の利点もあって、正しくコントロールし追込めば、予想以上に素晴らしい結果が得られるまでにいたっている。
 一方、高級カートリッジの分野では、振動系の軽量化というオーソドックスなアプローチが一段と促進され、結果としての実用針圧は1gの壁を破り、コンマ・オーダーに突入している。
 MC2000は、振動系軽量化への技術限界に挑戦したヤマハの意欲作だ。MC型の音質の碁盤である発電方式は、ヤマハ独自の水平・垂直方向に発電系をもち、マトリックスでステレオ信号とする十字マトリックス方式で、当然のことながらコイル巻枠は空芯型だ。カンチレバーは、高純度ベリリウムを先端φ0・22mm、根元部でφ0・34mmとテーパー状にした肉厚20μパイプを使用。全長も従来のMC3などの5・5mmから3・7mmと短縮され、カンチレバー等価質量0・034mgを達成している。なお、コイルは芯線径12・7μの銅線使用である。
 支持系も大幅に発展した部分だ。ダンパーは、温度特性を改善した異種材料を組み合わせた新開発LTD型を独自の段付き型で使用。温度特性は従来の3〜4倍に改善されたということだ。これに、30μステンレス7本よりのサスペンションワイヤー、支持部0・06mm角ソリッドダイヤ特殊ダ円針が振動系のすべてである。なお、ボディは端子一体型・高剛性ポリカーボネート製、内部は質量集中構造で、自重5・3gとヤマハ製品中で最軽量である。
 針圧を標準の1gで聴く。帯域バランスは、軽量型らしく広帯域を意識させぬ滑らかでナチュラルなタイプ。音色はほぼニュートラル、音の粒子が細かく滑らかで、素直に音の細部を引き出す、このタイプ独特の魅力が感じられる。表情は基本的に抑え気味だが、針圧の0・05gの変化で、伸びやかにも穏やかにも鋭く反応を示す。優れた製品の性能を活かすためには、アームの選択と使いこなしが不可欠の要素だ。