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パイオニア M-90

井上卓也

ステレオサウンド 84号(1987年9月発行)
特集・「50万円未満の価格帯のパワーアンプ26機種のパーソナルテスト」より

ナチュラルな帯域バランスと解像力を豊かに音として聴かせるだけの本格派の音をもつアンプだ。プログラムソースにはナチュラルに対応を示し、充分な力感に支えられて、正確に、無駄なく音を聴かせるパフォーマンスが目立つ。聴き込むと、弦の合奏での分解能、教会コーラスでの高さを感じさせるディフィニションに少しの不満を残すが、価格帯満足度は充分に高い。アッテネーターの硬調さの影響のないアンプだ。

音質:83
魅力度:90

パイオニア C-90, M-90

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 本格的なデジタル&AV時代に、多機能にして音質を優先するという、二律背反な追求を実現させた新製品が、セパレート型アンプC90とM90である。
 コントロールアンプC90は、多様化とともに、ハイグレード化するオーディオとビデオ信号に対応するために、オーディオ入力6系統、ビデオ入力6系統などの入出力端子を備え、リモコン操作も可能だ。
 設計面での最大のポイントは、コントロールアンプという同じ筐体中で、ビデオ信号を入出力する機能を備えると、いかに努力をしたとしてもアースや電源からのリケージで、ビデオ信号がアナログ信号に影響を与え、音質を劣化し、多機能とハイクォリティの音質は両立しないのが当然のことであり『アンプにビデオ信号を入れると音が悪くなる』という定説がうまれることになるが、パイオニアでは独自の技術開発によるAVアイソレーションテクノロジー(特許出顔中)により、入力信号間の干渉を徹底して排除した点にある。
 その内容は、左右オーディオ系とビデオ系に専用電源トランスを使う電源トランスのアイソレーション、オーディオ回路とビデオ回路のアースラインを独立させ、なおかつビデオ系の最終シャーシアースをオーディオ系に対してフローティングし干渉を抑える電気的アイソレーション、映像系と音声系入出力端子の距離をとり配置するとともに、基板の独立使用、シールド板などによるメカニズム的な飛付きを遮断するアイソレーションと、アナログディスクやCD演奏中には使っていないビデオ系の電源を切るビデオ電源オート・オフ機能の四つのテクニックが使われている。
 機能面では、リモートコントロールを駆使できることが最大の魅力のポイントだ。アルミ削り出しムクのツマミは、クラッチ付モータードライブ機構を備えており、SR仕様(パイオニア統一システムリモコン)専用リモコンユニットを標準装備しており、入力切替、ボリュウム調整などの他に、パイオニア製品のCDプレーヤー、LDプレーヤー、VTR、チューナー、カセットデッキなどの他のコンポーネントの主な操作も可能である。
 また、映像関係の機能には録再出力系にシャープネス、ディテールとノイズキャンセル調整付きビデオエンハンサー装備だ。
 EXCLUSIVEを受継いだ音質重視設計は、筐体の銅メッキシャーンとビスの全面採用、基板防振パッドと70μ銅箔基板、無酸素銅線配線材、黄銅キャップ抵抗、無酸素銅線極性表示の電源コードや樹脂とアルミによる2重構造フロントパネル、ポリカーボネイト製脚部の採用などがある。
 回路面ではシンプル・イズ・ベストを基本に、高品位MC型力−トリッジ再生を目指したハイブリッドMCトランス方式、多電源方式を基盤としたモノコンストラクション化とロジック化による信号経路の最短化設計などが見受けられる。
 M90は単純なパワーアンプと思われる外観をもつが、内容的には2系統のボリュウムコントロール可能な入力と一般的な入力の3系統をもつ、ファンクション付パワーアンプというユニークな構成で、パワーアンプ単体で必要にして最低限の機能を備え、プリメインアンプ的に備える魅力は、一度発表されてしまえば簡単に判かることだが、セパレート型アンプの基盤をゆるがしかねない。多様化する現在のマルチプログラム化とシンプル化の両面を満足させる企画の勝利ともいえる成果だ。
 パワー段は、4個並列接続(片チャンネル8個)、200W+200W(8Ω)ダイナミックパワー310W(8Ω)810W(2Ω)のパワーを誇り、ノンスイッチング回路TypeII採用である。電源部は左右独立トランス採用、銅メッキのシャーシとビスなどはC90と共通である。ただし、重量級電源トランスを2個採用しているために、筐体はトランスを支えるH型構造と黄銅のムク材の柱を介したトランス専用脚を含む5個のポリカーボネイト製脚部に特徴がある。なお、フロントパネルはC90共通の2度のアルマイト処理、バフ研磨の漆調のエ芸晶的な仕上げである。
 C90とM90の組合せは、多機能型の印象の枠を超えた、予想以上に十分に磨き込まれた、細かく滑らかな音の粒状性をもつことにまず驚かされる。このクォリティは、オーディオ専用としても見事なものがあり、アナログディスクも、スクラッチノイズの質と量からみて、水準以上の音質と音場感を聴かせる。試みにM90単体にする。2系統の可変入力間の音の差も抑えられており、さすがにダイレクトな鮮度感は高くは、当然ながら自然な結果だ。

パイオニア M-90

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプはスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(パイオニア S9500DVでの試聴)
 さすがに相性のよい組合せだ。帯域はナチュラルに伸び、S9500DV独特の低域の厚みにM90の中低域のしなやかさが加わり、価格を考えれば、予想以上のクォリティと楽しさがある。音場感は、聴感のSN比がパワーアンプとして大変に優れているために、見通しがよく、音像定位は立体的だ。とくに遠近感は、スピーカーの特徴も加わり、抜群のできで、CDダイレクト入力を使えば、一段とメリットが出るだろう。プログラムソースには素直で使いやすい。

パイオニア M-90

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)

特集・「最新パワーアンプとスピーカーの魅力をどう抽きだしたか 推奨パワーアンプ39×代表スピーカー16 80通りのサウンドリポート」より

(ダイヤトーン DS10000での試聴)
 DS10000の音としては華麗に演出された傾向で、音像のエッジがかなりシャープになる。クレーメルのヴァイオリンの厳しさはよく出すが、ややうるおいに欠ける傾向がある。音場空間の透明度は高く、細かいディテールが実によく出る。弦合奏の質感がメタリックだし、木管の響きも少々金属的になる傾向が気になった。大編成オーケストラの造形は確かで、ffでの安定度も高い。ブラスはまばゆいばり。このスピーカーの明るさと明晰さを強く出すアンプ。

パイオニア M-90

菅野沖彦

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 新しい製品だけに、きわめてワイドなレンジ感と力強さを感じさせるアンプである。それでいて、弦の質感などは暖かくドライにならない。音の鮮度感も高く、透明な空間再現も立派であった。個人的な好みでは、もう少しふっくらとした丸みが欲しいが、クォリティの高い再生音だと思う。幻想のppの繊細感から、クレッシェンドしてのffはよく安定し、音の造形にくずれをみせない。輝かしく張りのある金管だが、やたらに派手にならない節度が好ましい。ジャズも満足感の大きなものだった。

音質:9.0
価格を考慮した魅力度:9.0

パイオニア M-90

井上卓也

ステレオサウンド 79号(1986年6月発行)
特集・「CDプレーヤー・ダイレクト接続で聴く最新パワーアンプ48機種の実力テスト」より

 音の粒子が細かく、滑らかに磨き込まれ、本当の見通しのよい音を聴かせるアンプだ。聴感上の帯域バランスは広帯域型で、やや中低域の質感が薄く、独特の中高域の潜在的なキャラキャラとするキャラクターがあるのは、今回の試聴での共通キャラクターであることから考えると、このアンプは、かなり素直で、基本特性が優れていることを示すようだ。プログラムソースの特徴は明確に引出し、とくにステレオフォニックな音場感の拡がりと、ナチュラルに立体感をもって立つ音像は見事だ。

音質:8.5
価格を考慮した魅力度:9.3

オンキョー M90

菅野沖彦

ステレオサウンド 55号(1980年6月発行)
特集・「’80ベストバイコンポ209選」より

 オンキョーM90は、オンキョーの常として、同クラス中で最大のウーファー口径を採用している。32cmウーファーをベースとした3ウェイ。同社最新シリーズ共通のユニークなDDトゥイーターをもち、きわめて繊細でのびのある高音域が聴かれる。全帯域の音の質感の統一の点でもう一息だが、よくまとめられたシステム。