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トリオ LS-707

菅野沖彦

ステレオサウンド 47号(1978年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ’78ベストバイ・コンポーネント」より

サイズにふさわしい余裕と力感をもった大きな表現力。

トリオ LS-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より

 弟分のLS505も、正攻法でまでめに作られた佳作だったが、さすがにフロアータイプになると音のスケール感がずっと豊かになり、質感も上等になってくる。すべてのプログラムソースを通じて、505よりも帯域内での出しゃばりがよくおさえられ、完成度が上っていることを納得させられる。興味深かったのは、いろいろと設置条件を変えてテストしているあいだに、約20分ほど鳴らし込んでから本調子が出てくることに気がついた。鳴らしはじめはどうにも表情が硬くバランスも悪い。どのスピーカーにもそうした傾向はあるのだが、LS707はことにそれが顕著だった。単純な切り換え比較では見落とすところだろう。もうひとつ補足の必要のあるのは部屋の音響条件のととのえかただ。本誌の試聴室は、前回のテストから改装されて以前より残響時間が短めになったものの、いわゆるデッドではないが、LS707は、この部屋にウレタンフォームの大きなロールを数巻入れてデッドに仕上げた上で、ブロックの台の上に乗せ、背面は壁に近づけるが左右になるべく開いて設置するという方法で、前記の試聴結果を得た。ライブな部屋では音がこもる傾向があった。アンプはあまり選り好みしないが、カートリッジは455Eの傾向よりも4000DIIIの系統で、プログラムソースはポップス系の方が納得できた。

トリオ LS-707

黒田恭一

ステレオサウンド 45号(1977年12月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(下)」より
スピーカー泣かせのレコード10枚のチェックポイント50の試聴メモ

カラヤン/ヴェルディ 序曲・前奏曲集
カラヤン/ベルリン・フィル
❶ピッチカートのひびきは薄く、遠くにきこえる。音に力がほしい。
❷もう少しくっきりひびきのりんかくがついてもいいだろう。
❸ひろがりをたっぷりと感じさせて、それぞれの音色を明示する。
❹低音弦のピッチカートがふくらみすぎる
❺一応迫力ははやかに示すが、もう少しひびきに力がほしい。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ブレンデル/マリナー/アカデミー室内管弦楽団
❶ピアノの音像は、きわめて大きくふくらむ。
❷音色的な対比はなされているが、不自然なところがある。
❸ひびきそのものにキメ細かさがほしい。
❹特徴をきわだたせはするが、誇張感がある。
❺右とほぼ同じことがいえる。ひびきにしなやかさがほしい。

J・シュトラウス:こうもり
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団
❶残響の非常に多い部屋ではなしているようにきこえる。
❷接近感がもう少しあきらかになってもいいだろう。
❸クラリネットの音像がかなり大きい。声も前にはりだす。
❹はった声はニュアンスにとぼしいものとなる。
❺くっきり提示するがいくぶんこれみよがしだ。

「珠玉のマドリガル集」
キングス・シンガーズ
❶右端のバスがせりだしがちで、定位があいまいになる。
❷ひびきが全体にひきずりだかちで、言葉のたち方が弱い。
❸残響を拡大するため、鮮明さの点で不足だ。
❹吸う息を誇張ぎみに示す傾向がなくもない。
❺一応はのびているが、自然なのびとはいいがたい。

浪漫(ロマン)
タンジェリン・ドリーム
❶ピンという高い音はいいが、ポンという低い音に力がほしい。
❷ひっそりとしのびこむべきところが、そうはなっていない。
❸音がバラバラにきこえる傾向がなくもない。
❹シンセサイザーの特徴的なひびきが示されにくい。
❺ひびきは横にひろがり、ピークはメタリックになる。

アフター・ザ・レイン
テリエ・リビダル
❶このひびきは、もう少し透明に、ひっそりとひびいてほしい。
❷ギターの音像は大きく、横にひろがりつつ、前にせりだす。
❸ひびきそのものに力が不足ぎみなので、実在感がとぼしい。
❹くっきりとひびき、ききのがしようがないほどだ。
❺これもまた、かなりきわだってきこえる。

ホテル・カリフォルニア
イーグルス
❶ベースのひびきが強調されて、12減ギターの特徴をききとりにくい。
❷音の厚みということでいえば、いくぶんものたりない。
❸ひびきが湿っていないのは、このましい。
❹ドラムスの音像はかなり大きく、ひびきはひきずりがちだ。
❺バック・コーラスがもう少しとけあってきこえてもいいだろう。

ダブル・ベース
ニールス・ペデルセン&サム・ジョーンズ
❶ダブルベースの大きさを感じさせる。
❷指を弦の上をはしらせている音には誇張感がある。
❸弦をはじいた後の音の尻尾は示すものの、ひびきの力がもうひとつだ。
❹細かい音に対しての反応がもう少しシャープでもいい。
❺音像差の点でいくぶん不自然なところがある。

タワーリング・トッカータ
ラロ・シフリン
❶ひびきが横にひろがり、リズムの切れが甘い。
❷ブラスの中央からのつっこみは、刺激的なひびきになりがちだ。
❸ひびきとして拡大されがちだが、前にせりださない。
❹後方へのひきは充分だが、見通しはつきにくい。
❺もう少し軽いひびきで、鋭く反応してもいいだろう。

座鬼太鼓座
❶尺八は奥の方でひびくものの、入れものの中でひびいているかのようだ。
❷ひびきに乾きがあり、尺八らしさが感じられる。
❸ききとることができるが、音の輪郭ははっきりしにくい。
❹大太鼓の音の消え方を伝えるが、スケールゆたかとはいいがたい。
❺ききとれる。ここで求められる一応の効果はあげる。