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長谷川工房 HTM-60E

井上卓也

ステレオサウンド 60号(1981年9月発行)
「MCカートリッジ用トランス/ヘッドアンプ総テスト──(下)」より

 1・5Ωと40Ω切替型の昇圧トランスである。
 聴感上のバランスは低域を抑えた細身のスッキリと滑らかなタイプだ。音の粒子は細かく、独特の艶やかさがあり、リアルに音楽を聴かせるタイプではなく、美しくキレイに聴かせる典型的な製品だ。音場感はスピーカーの奥に距離をおいて拡がり、音像は比較的に小さくまとまるが、輪郭はソフトでスッと定位する感じで、聴きやすい独特の雰囲気がある。MC20は全体に薄化粧の印象となり、線が細く、MC30的なニュアンスとなる。
 305は、分離のよい滑らかでスムーズな音だが、
昇圧比が小さいようで、少しゲイン不足気味になる。両者の音の姜は少なく全体に美しい素直な音になり、スケールを小さくまとめる。