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Lo-D HA-5700

瀬川冬樹

別冊FM fan 25号(1979年12月発行)
「20万円コンポのためのプリメインアンプ18機種徹底レポート」より

 この機種から六万九千八百円に価格が一万円ほど上がるわけだが、これまでの五万九千八百円の中で比較的成績のよかった、例えばヤマハのA3、サンスイのAU-D7、テクニクスのSU-V6といったアンプに比べて、一万円上がっただけのメリットがあるかどうかというところが、ヒアリングの主なポイントになる。そこでこのLo-D HA5700だが、まず表示出力は50Wということで、この面では五万九千八百円のグループの中にも、50Wあるいはそれ以上のパワーがあるものもあるので、パワーの面でのメリットはまだ出てきてない。パネル上から見たファンクションだが、これも特にこのアンプならではという独特のファンクションはない。しかしパネル面は大変美しく整理されており、とてもスマートなデザインだ。ボリュームつまみの周りの表示もなかなか手が込んでいて凝っている。
音質 一言でいって、なかなかクリアーで、いい音だと思う。プログラム・ソースをいろいろ変えて聴いてみると、全体としては少し軽い感じの音がする。暗いとか重いとかの感じはない。そこはいいところだと思うが、例えば『春の祭典』でのフォルティッシモ、ポップスでは『サンチェスの子供たち』のオーバーチュアの部分、本当の意味での力を要求される、そしてまた非常に低音から高音までの周波数範囲の広いプログラム・ソースを鳴らした場合には、クラシック、ポップスどちらのプログラム・ソースでも、いくらか音のはランスが中域から高域による傾向が聴き取れる。言い換えれば、その中域、高域のクリアーな感じ、あるいは軽やかな感じというものをしっかりと支える、いい意味での重量感、あるいは重低音の支えというものが少し足りないのではないかと思う。五万九千八百円のグループから一万円上がったということを考えると、このへんからややアンプに対して、音についての本格的な期待をしたくなるわけだ。
 それから音全体の鳴り方だが、大変慎重というか、非常に注意深く、きめ細かく作られたということはわかるが、半面、音楽として内からわき上がってくるような、そういう面白さには欠けるような気がする。
MCヘッドアンプ 例によって、オルトフォンのMC20MKIIとデンオンの103Dという、二つの違ったタイプをつないでみたが、このMCヘッドアンプは多少内容が伴っていないのではないかという気がした。オルトフォンが実用にならないことはほかのンアプでも同様だったが、デンオンの103Dのようなインピーダンスの高い、比較的出力の大きいMCカートリッジでも実用範囲の音量にした場合、ボリュームの位置そのままでレコードから針を上げてみても、やや耳につくノイズがまだ残っている。いわゆるSN比があまりよくないということだ。このMCヘッドアンプは、よほど出力の大きなMC型でないと使いものにならないという気がした。
 したがって、このアンプでMCカートリッジを使う場合、専用のヘッドアンプ、またはトランスを別に用意する必要がありそうだ。
トーン&ラウドネス 次にトーン・コントロールの効きだが、トーン・スイッチをオンにして、それでトーン・コントロールが働くわけだが、低音の効き方はまあまあ。しかし、高音の効き方は少し強調し過ぎのようで、低音と高音の変化の具合が少しアンバランスな感じを受けた。ラウドネス・コントロールは比較的軽く、心地よい効き方をする。
ヘッドホン スピーカーに比べて、だいぶ音量が低く抑えられており、もう少しヘッドホン端子に音量が出てきてもいいのではないかと思う。
 ただし、ヘッドホン端子での音質はスピーカーで聴いた時と似ており、大変いい。