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アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 66号(1983年3月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底解剖する」より

 高価格だが高性能とされていたMC型が、低価格化と超高級化という相反する方向に急激に展開し、カートリッジといえばMC型というほどにまで普及した最近の傾向は、オーディオ史上でも異例なことであろう。MC型の普及をここまで加速させた背景として、電子技術の急速な発達でもはやプリメインアンプでも、MC型ダイレクト使用可能は標準的機能になっていることがあげられるだろう。しかし一方では、独自のリッチな音と高SN比のメリットから、昇圧トランスの愛用者も多い。とくにキャリアの長いファンにこの傾向が強いようだ。
 ET100は、中級昇圧トランスとしてすでに定評が高く、安心して使え、推選できる数少ないロングセラーモデルである。発売後明らかに一〜二度は改良が加えられ、アップ・トゥー・デイトな性能と音質にリフレッシュされているが、今回さらに手が加えられて、一段と完成度が高まった。外観上は同一筐体ではあるが、パネルが限定仕様と同じブラックに変っている。
 音質面では、わずかに穏やかで安定感はあるが、鮮度感が今一歩、といった印象が解消された。みずみずしく、緻密で、適度に力強さと豊かな表現力をもつトランス独自の魅力が素直に出せるようになった。また、3Ωにくらべ弱かった40Ω入力時の音にシャープさが加ったことも見逃せない特徴といえる。

アントレー EC-20, ET-100

アントレーのカートリッジEC20、昇圧トランスET100の広告
(スイングジャーナル 1981年9月号掲載)

アントレー

アントレー ET-100

井上卓也

ステレオサウンド 59号(1981年6月発行)
特集・「MCカートリッジ用トランス、ヘッドアンプ総テスト(上)」より

 入力インピーダンスが3Ω、10Ω、40Ωの3段切替で使える昇圧トランスで、定評の高かった初期の製品を改良したのが現在のモデルである。
 聴感上の帯域は、安定感がある低域をベースに少し抑え気味の中域と輝きがある中高域から高域が適度のバランスを保つ。音色は明るく、音表情は穏やかで安定感がある。
 MC20II、FR2、DL305の3種のMC型に対し、それぞれの特徴を引出しながら適度にクッキリとコントラストの効いた、プレゼンスのある音として聴かせる。価格的にみて、現状では高価な製品ではないが、昇圧トランスの一種の基準尺度として使えるだけの信頼性の高い音は見逃せない。ET100は付属コードでバランスがとれる。

アントレー EC-10, EC-1, ET-100

アントレーのカートリッジEC10、EC1、昇圧トランスET100の広告
(ステレオ 1979年2月号掲載)

EC10