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ラックス DP-07 + DA-07

井上卓也

ステレオサウンド 88号(1988年9月発行)

「BEST PRODUCTS」より

 ラックスの超弩級CDプレーヤーシステムは、すでに昨年中にほぼ試作が完了していたために、その存在は誰でも知るところであったが、最終的なツメと熟成期間を経て、今回発売されることになった。
 基本構成の出発点は、音楽再生を目的とするD/Aコンバーターは、連続サインウェーブの再現以上に、パルス成分の再現性であるインパルス応答性を重要視すべきであるという、いわばオーディオ再生の原点ともいえるところからのものである。
 巨大なパワーアンプに匹敵する雄姿を誇るD/AコンバーターDA07は、重量も、実に27kgという文句なしの超弩級で、本システムの基本構想が実現できるか否かは、本機の内容に関わってくるわけだ。
 本機のD/Aコンバーターには、インパルス応答性に優れたD/Aコンバーター理論として筑波大学で発明されたフルエンシーセオリーに基づいたフルエンシーD/Aコンバーター(F・E・DAC=特許出願中)を採用している。
 F・E・DACは、従来のタイプのように、デジタル符号を、抵抗素子などを使い階段状にしてからアナログ変換をする方法ではなく、新補間関数により、デジタル符号をダイレクトに曲選でつないでアナログにする方式であるとのことだ。
 従来型のD/Aコンバーターでは、動作理論上で、パルス成分の再生時には多くの付加振動を発生し、原波形は損なわれる。現実にテストディスクでパルス再生をして、スコープでチェックすれば、パルスに数個の付加振動が発生していることを容易に確認できるだろう。この点、F・E・DACでは、付加振動の発生はひじょうに少なく無視できるレベルにあるという。
 まF・E・DACは、その変換方式の特徴から、原理的に波形振動を発生するデジタルフィルターや、位相を変化させるアナログフィルターなどを完全に追放できる利点にも注目したい。
 筐体構造は、基本的に上下2段構成としてデジタル部とアナログ部を分離し、さらに各ブロックをトータル10個のチャンバーに分け、完全にシールドを施し、相互干渉の排除を図っている。なお、シャーシ全体に銅メッキ処理が施され、高剛性、大質量の特殊FRPボトムシャーシをベースに、18mm厚押し出し材のフロントパネルなどで、全体を無共振構造としている。
 アナログ部は、最大出力まで一定のバイアス電流を供給する純A級方式と、低インピーダンス伝送アナログ回路を中心に、デジタルとアナログ独立の2電源トランスと11
分割独立レギュレーターがバックアップしている。
 入出力系は、同軸入力3系続、標準光入力2系統に、伝送レートが従来の数10倍という超高速ラックス型光入力1系続。アナログ出力端子は、固定と可変の標準出力とバランス型出力の3系統を備えている。
 プレーヤー部のDP07は、トップローディング型で、音質面で有害なトレイがないのがうれしい。
 筐体構造は、セラミック入りFRPによる重量級シャーシ、12層厚アルミムク材のトッププレート、銅メッキ処理シャーシを組み合わせ、前面傾斜パネル内側のマイコン部、その後ろを上下2段構造とし、下段に電源部、上段前半部にピックアップ部とデジタル出力部をさらに上下に分け、上段後半部に電源トランスを収めた多重構造により、全重量は20kgとヘビー級だ。
 信号処理部と駆動系に独立22トランスを使い、各ステージ用に独立10レギュレーター採用で、電源部を介した相互干渉は、ほぼ完全にシャットアウトする徹底した設計が見受けられる。なお、基板関係はOFCの70ミクロン厚、PCOCC線材の全面採用、金メッキキャップ抵抗にピュアフォーカスコンデンサーなど、音質向上のための素材は豊富に投入されている。
 システムのウォームアップは、平均的な約2分弱で、安定があり、情報量の多い、一応水準と思われる音に変わる。
 聴感上での帯域バランスは、とくにワイドレンジを感じさせないナチュラルなタイプであるが、やや線は太いが、豪快に物凄いパワー感を伴って押し出す低音のでかたは、CDの常識を越えた異次元の世界である。密度感のある中域は、力感も十分にあり、やや輝かしいキャラクターを内蔵している印象がある。高域は穏やかで、むしろ抑え気味でもあるようだ。
 音場感は標準的だが素直で、ヴォーカルなどの音像はグッと前に出るタイプだ。この程度の性能ともなれば、ディスクの固定機構の精度がすこし不満であり、ディスクの出し入れによる音の変化は大きい。しかし凄い製品だ。