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パイオニア CS-T88

瀬川冬樹

ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より

 T66と並べて鳴らしてみた。低音から高音までの全域にわたってバランスのいい、やかましさのない音質は明らかに同じ兄弟だが、そこに練り上げられた音のまろやかさ、スケール感、音像の再現の確かさが加わって、すばらくしよくこなれた、完成度の高いスピーカーに仕上っていることが感じられる。総体にいわゆるカマボコ特有の、つまり中域の密度の高いそして高域のオーバートーン領域にかけてやや抑えこんだ感じの、丸味のある緻密な音で、それはことにピアノの音など、打鍵の音に余分な夾雑音をつきまとわせたりしないで、コロンと鳴る丸味のあるタッチが気持よく鳴ってくれる。ヴォーカルも、上ずったりハスキーになったりせずに、キメこまかくニュアンスもよく出てくれる。ただ、木管の音や肉声の持っている一種あたたかく湿った、ふくらみのある艶、のような要素が、どうも十分に鳴ってくれるとはいえず、そこがもうひとつ何か足りないと感じる要素のひとつかもしれない。レベルセットは指定どおりが最良。高めの台が良好。