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パイオニア CS-T5(組合せ)

岩崎千明

コンポーネントステレオの世界(ステレオサウンド別冊・1976年1月発行)
「スピーカーシステム中心の特選コンポーネント集〈131選〉」より

 パイオニアのブックシェルフ型の新たな流れがこのCS−T5、T3だ。今までにない積極的な前に出る音をはっきりと狙い見事な形で聴く者に迫るサウンドがこの新シリーズの大きな特長で、今までのパイオニアのスピーカーになかったサウンドでもあるのだ。
 このスピーカーが加わることの音楽へのアプローチの拡大ははかり知れぬ。
 もし、このスピーカーをジャズ向きだなどと評するものがいるとしたら、それは音楽の真の聴き方を知らないといわれそうだ。つまりあらゆる音楽が、それを知れば知るほど身近に欲しくなるものだ。そうした欲望はなにもジャズに限ったことでは決してない。
 つまり、オーディオマニアが音楽ファンになったときに欲しくなる音をCS−T5は提供してくれる。
 その鳴らし方はそれこそ聴き手の求め方次第だが、最もオーソドックスな形としてSA8900またはSA9800というこの一年間ベストセラーを続けた製品を指定しておこう。パワーのゆとりがあればトーンコントロールで望む音へのアプローチは大きく拡大されるし、しかもこの入手しやすいスピーカーの価格を考えると、好ましい価格のアンプだから。

スピーカーシステム:パイオニア CS-T5 ¥29,800×2
プリメインアンプ:パイオニア SA-8900 ¥78,000
チューナー:パイオニア TX-8900 ¥65,000
プレーヤーシステム:パイオニア PL-1250 ¥45,000
カートリッジ:ADC Q32 ¥9,000
計¥256,000

パイオニア CS-T5

瀬川冬樹

ステレオサウンド 37号(1975年12月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(下)最新40機種のテスト」より

 CS-T3よりはよい面を持っているがそれにしても、この音色は、私にはどうも〝尋常ならざる〟という感じで、自分自身にとって最も縁の遠いジャンルの音楽を考えてみても、こういうスピーカーの音が、どういうジャンルの音楽の再生に最も適しているのか、どうも理解の範疇を越えてしまっている。イギリスKEF社長レイモンド・クックの表現を借りれば日本のスピーカーの音は攻撃的(アグレッシヴ)だそうだが、クックほどは国産のスピーカーの音を異質には思わない私の耳にも、CS-T5やT3の音は、相当にアグレッシヴにきこえる。T3同様に、低めの台に乗せ、壁から背面を20~30センチ離したときの音が最もバランス的には納得がいった。レベルセットは中音、高音とも5の位置より動かさない方がよさそうだ。ステレオの音像のならび方もCS-T3同様に、平面的でしかもかなり音を太く表現する。したがって定位はややあいまいになる。腰の強い、線の太い、強情な音、というべきか。

採点:67点