瀬川冬樹
ステレオサウンド 36号(1975年9月発行)
特集・「スピーカーシステムのすべて(上)最新40機種のテスト」より
AR・MSTのところでも、アメリカ東海岸の製品がハイを落して作ることを書いたが、同じボストン生まれのKLHのこの新型が、偶然そのことを説明してくれる。というのは、端子板のところにトゥイーターのレベル切換スイッチがついているがこの製品ではそれが二点切換えで、一方にNORMALの表示がある。問題はもう一方のポジションで、そこには何と、FLATと書いてあるではないか! つまり彼らの耳には、フラット即ノーマルではなく、ボストンの彼らの耳、ないしは東海岸のかなり多くの人たちの耳には、フラットよりもやや高音を落しかげんにセットした音が「ノーマル」に聴こえるという事情を、この製品が物語ってくれる。私はFLATのポジションで聴いた。モデル5や6のやや乾いたしかし暖かい音色をこの新型も受け継いでいるが、どういうわけか、音のバランスでは6型が、総体的な響きの良さでは5型の方が、それぞれ完成度が高いように、私には思えた。カートリッジでは、シュアーやエンパイアが良さを引き出す。
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