菅野沖彦
ステレオサウンド 61号(1981年12月発行)
「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」より
タンノイが’81年暮に発表した新製品は、トッモデルのG・R・ファウンテン・メモリーと、このアランデル、バルモラルの合計3機種である。そして、このアランデル、バルモラルは、そのイニシャルがAとBであるように、かつてのアーデン、バークレイにとって代るモデルとして開発されたものなのだ。アーデン、バークレイは、オリジナルからMKIIとなって長い間ファンに親しまれてきたシステムであったが、それに代って登場した2機種も、当然のことながらデュアルコンセントリックユニットを使うことに変りはない。アランデルが38cm口径の3839ユニット、バルモラルは30cm口径の3128ユニットを内蔵する。3839は連続入力120W、ピークで500W、3128はそれぞれ100W、350Wというヘビーデューティ、そしてクロスオーバー周波数は1kHz、1・2kHzの同軸型2ウェイ、つまり、コアキシャルユニットである。エンクロージュアは、アーデン、バークレイからはプロポーションに大きな変革がある。従来よりも高さと奥行きが増し、幅が狭められた。タンノイによれば、これはエンクロージュア内部の反射音による干渉を弱め、音の濁りをなくすのに有効であるとされている。エンクロージュア自体の剛性や作りは、G・R・F・メモリーを見た眼にはそれほど印象は強くないが、ビチューメンパネルと呼ばれるタンノイ独自の共振防止材をエンクロージュア内部5面に多数取り付けることによってアコースティックコントロールが行なわれ、中域の明瞭度や、全帯域での音の鮮明さを得ているという。タンノイ独特のロールオフとエナジーの2種類の調整ができるネットワークもそのままである。このネットワークコントロールは大変有効なものだ。つまり、ロールオフによって5kHz以上を4段階に増減、エナジーによって1kHz〜20kHzにわたってトゥイーターレベル全体を±6dBに増減が可能である。多少異なる点もあるが、JBLの最新2ウェイシステムに採用されていを方法と似ている。2ウェイユニット・3ウェイコントロールとでもいえるものである。これは、音楽を鑑賞する現実の条件に対応したタンノイらしいコントロール機能であり、このあたりに、真の音楽ファンのためのタンノイの、タンノイらしさが感じられるのである。
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