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ダイヤトーン 2S-3003

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ディジタルプログラムソースに対応する新放送局用モニターとして、小型高密度設計で最大音圧レベルを大幅に向上したモデルが2S3003。低域はネットワークレスの全域型で、高域を低いクロスオーバーから使うコーン型2ウェイ方式は、2S305を受け継ぐ設計だ。定機器のアラミドハニカムコーンと、究極の振動板といわれるピュアボロン(B4C)コーン型の組合せにより、見事な音の純度の高さとダイナミックな表現力の豊かさが聴かれる。

ダイヤトーン 2S-3003

菅野沖彦

オーディオ世界の一流品(ステレオサウンド別冊・1994年春発行)
「世界の一流品 スピーカーシステム篇」より

 最も日本的な特徴を凝縮した一流品と呼べるスピーカーシステムといってよいのが、今ならこのダイヤトーン2S3003であろう。この製品の原器といってよい2S305というシステムは、1958年にNHKとの共同開発によりBTS(放送技術標準規格)に基づいて生まれたものであるが、実に、その後35年もロングランを続け、放送局、録音スタジオ、そしてオーディオファンの間で広く愛用されてきた。これを現代の技術で再検討し、現代のモニター・スピーカーシステムとして通用するようにという考え方によって生まれたのが、この2S3003。2ウェイという構成や、コーナー・ラウンドのバスレフ型エンクロージュアという基本構造は変らない。外形は幅が狭くなり、高さが縮んだ代りに奥行きが深くなったが重量は10kg近く増している。
 音質的には、現在のデジタルソースへの対応性が高まり、鋭敏なレスポンスと広いDレンジに余裕をもって応答できるものとなり、パワーハンドリングの強化が最も大きな相違点だ。モニターレベルが昔と今では全く異なって、大音量モニターが要求されるようになったことへの対応だろう。音楽の性格もハードロックなどの激しい音源が多くなり、しかも、モニタースピーカーは演奏者へのプレイバックスピーカーをも兼用する場合がほとんどなため、よりヘヴィデューティな性能が要求されてくるのである。
 冒頭に書いた、最も日本的特質の凝縮した一流品という意味は、このシステムに使われている諸々の技術の新しさ、製品作りの細部に至る完璧主義といってよい丁寧さなどにあり、それが結果としてのサウンドにも現われている。
 もともと、プロ用モニターとして作られた製品であるが、一般のオーディオファンが使う上でも特に難しさや不都合はないと思う。ただ、強い個性や説得力を求める人には物足りなさとして感じられるかもしれない。