ヤマハ NS-100M

井上卓也

ステレオサウンド 52号(1979年9月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 オーソドックスなブックシェルフ型スピーカーシステムであるNS1000に対して、そのエンクロージュア仕上げを、ブラックのモニター仕上げとしたNS1000Mは、業務用機器的な性格が強い製品としては、国内初のブックシェルフ型システムであり、その性能と音質の優れていることでは発売以来高い評価を保ち、いわば日本を代表するブックシェルフ型システムである。このNS1000Mでスタートを切ったMシリーズには、その後ブックシェルフ型システムとミニスピーカーシステムの中間的な外形寸法を採用したNS10Mが発売され、外形寸法、価格帯ともに従来にないコンセプトによるものとして性能、音質をも含めて注目され、新しい需要を換起して、ここに新しいマーケットを築き、その後各社から同様な製品が続いて開発される契機を作った。
 今回発売されたNS100Mは、Mシリーズの第3弾製品で、外形寸法的にはNS10Mよりワンサイズ大きいが、製品としての性格は、NS1000Mに近く、小型サイズの外形寸法のなかに高度な性能、音質を凝縮して作られた、いわば高密度設計の小型ブックシェルフ型システムである。
 ユニット構成は、20cmウーファーにソフトドーム型のスコーカーとトゥイーターを組み合わせた3ウェイ型である。
 ウーファーは、外国産の針葉樹系材料を旧来の和紙系統の技術を加味して独自のシート製法により作られた白いコーンに特長があり、4種類の粘弾性体を塗布したロールエッジ、大型ダンパーと直径5・2cmのクラフト紙ボビンに銅平角線を巻いたボイスコイルが組み合わされ、磁気回路は、110φ−60φ−15tの大型フェライト磁石とセンターポールに銅キャップを装着した低歪磁気回路を使っている。
 スコーカーとトゥイーターは、NS690以来の伝統をもつエッジ一体成形のソフトドーム型で、繊維には7種類のコーティング材を混合して、表と蓑の両面から50μ厚で塗布し、熟圧成型で仕上げ振動板とし、スコーカー、トウイーターともに同上塗布剤を使用している特長がある。
 スコーカーは、口径5・5cmで100φ−50φ−15tのフェライト磁石を使う大型磁気回路と、空気穴のついたガラス繊維を素材としたFRPシートボビンに銅平角線ボイスコイル使用で、f0は400Hz。
 トゥイーターは、口径3cmで、鋼クラッドアルミ線をエッジワイズ巻としたボイスコイルは振動板直付けで、70φ−32φ−15tのフェライト磁石採用である。
 エンクロージュアは、三方流れ留め組み採用の完全密閉型。ネットワークは、低歪設計の音質重視型で中音高音レベル調整付。
 NS100Mは、スムーズな周波数帯域と各ユニットの調和のとれた音色に特長がある。音場空間は十分に拡がり、定位は明確で声のナチュラルさは見事である。

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