テストの結果から私の推すスピーカー

瀬川冬樹

ステレオサウンド 44号(1977年9月発行)
特集・「フロアー型中心の最新スピーカーシステム(上)」より

■セレッション DITTON66
 今回のテストを通じて最も印象に残った音といえばこれを第一にあげる。とくにクラシックの管弦楽や協奏曲やオペラ等での、おだやかでありながら適度に厚みと艶のある響きの美しさは──もちろんあくまでもこの価格でという前提つきで、だが──ちょっと類のない素晴らしさだ。新製品とはいえないが、そして前にも何度かとりあげられているが、初期の製品は、ペアで購入してみるとネジが左右で違っているのがついていたり、どこか町工場で作られたような部分があったが、最近の製品はすっかりこなれてきて、非常に完成度の高い、思わず聴き惚れるような、そして永く聴いていても少しも人を疲れさせない、本ものの音楽のエッセンスをたっぷりと響かせる。名作のひとつ、と言っても過言ではないだろう。
     *
 いまも書いたように、私たちが「推選機種」などのタイトルで評価する製品は、すべて、「この価格の中では」という条件がつく。もう少し正確にいえば仮に10万円とすればそれと同じ価格帯の、その時点でのその価格の製品の平均的な水準が、いつでも頭の中に整理してあって、それと照らしあわせた上で、テストした時点でこの価格帯の中では水準以上か、以下か、という観点から推選機種が浮かんでくる。
 したがってたとえば、一方に30万円という価格の割にはやや水準を下まわる、と判断して「推選」にならなかった機種があるとする。そして他方に、10万円という価格帯の中では水準をやや上まわると判断して、「推選」にした機種があるとする。その場合、30万円で推選にならなかった製品が、10万円の推選機種より音が悪いとは限らない。むしろ逆に、価格を考えずに音だけ比較すれば、推選にならなかった30万円の方が、10万円のより音が良いのがふつうだろう。このことがよく誤解されるらしいので、あえて蛇足を加えた次第である。
 そのことを前提として、以下に各価格帯別に推選機種を列挙すると──
■50万円以上では
 JBL L300(もしも4333Aが加わればもちろんこれも推選に入る)
 このほかにテクニクス SB10000が試聴記でも書いたようにかなりの音を聴かせたが、試聴した製品がまだ量産以前のものなので、今の時点では推選はさしひかえたい。量産に移ってからもこの水準が間違いなく保たれれば(あるいは量産に移ってから逆にいっそう性能が向上することもあるが)、問題なく推選機種にあげられる。
■20万円台の中から
 スペンドール BCIII
 JBL L65A
■18万円台の中から
 B&W DM6
 パイオニア CS955
 タンノイ BERKELRY
■10~15万円台まで
 フェログラフ S1
 ゲイル GS401A(専用スタンドと共に)
 ヤマハ NS1000M
■8~10万円まで
 KEF CANTATA
■7万円台では
 デンオン SC107
■6万円台では
 トリオ LS505
■5万円台では
 ビクター SX55N
■4万円台では
 デンオン SC104
(次点ヤマハ NS-L325)
 などがあげられる。

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