JBL XPL200

早瀬文雄

ステレオサウンド 93号(1989年12月発行)
「BEST PRODUCTS 話題の新製品を徹底試聴する」より

 JBL、XPL200は新しいXPLシリーズのトップモデルであり、同シリーズ中、唯一の4ウェイスピーカーシステムである。
 4ウェイシステムは広帯域化と音の密度、解像力をより高い次元で融合させるため、4分割した帯域に配した4つのユニットをもっともリニアリティの良い部分でのみ使用するという基本コンセプトをもつ。
 JBLにはこれまで、プロフェッショナルモニター4350にはじまる4ウェイシステムを発展させてきた歴史があるが、位相管理や音色のコントロールがきわめて難しく、国内外を含め、完成度の高い4ウェイシステムを製品化しているメーカーは、現在きわめて少ないといえる。
 JBL特許のSFG磁気回路を採用した30センチ口径ウーファーをベースに、300Hzから1・1kHzまでを16・5センチ口径のミッドバス、また中高域には注目の7・5センチ口径チタンドームスコーカーが採用されており、しかも1・1kHzから4・5kHzという狭い帯域で用いられている点に特徴がある。さらにハイエンドにかけては2・5センチ口径のチタンドームトゥイーターが受け持っており、高域はフラット/+2dBの二段階切替えが可能になっている。
 高S/N化を期したバスレフ型エンクロージュアは、位相差歪みを減少させるためにバッフルに段差がつけられ、アジャスタブルフットによりスピーカー全体の仰角を調整すると、より緻密な位相合わせも可能だ。バッフル上には振動をダンプする効果のある硬質なゴム状の物質である高密度フォーム材をラウンドバッフルに成形して用いている。
 さらに、バッフル面の不要反射を低減するために柔軟なネオプレーンフォームを貼付している。
 バスレフのダクトを背面にもつエンクロージュアは、前面から後面にかけて楔状に絞りこまれており、内部定在波の発生を防止している。
 また配線材にはモンスターケーブルを採用し、伝送特性の向上をはかっているという。
 家庭用として、無駄な装飾のない知的なデザインは、ネットを外しても変わらない。
 4つのユニットの存在を誇張するようなあざといデザイン処理は皆無であり、むしろストイックな雰囲気さえある。
 響きは、いかにも各ユニットにかかっている負荷が、軽いといった、軽快かつ精緻なもので、JBLならではの媚のない理知的な雰囲気が音楽に必要な緊張感を見事に再現していた。従来のややクールな涼しさに、軟らかなニュアンスが加わり、安定感を増した響きは、JBLフリークのみならず、万人に勧められるものと思えた。

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