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ユニゾンリサーチ 845 Absolute

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 845ABSOLUTEは、同社を代表するW800×H290×D600mmの巨大サイズの真空管プリメインアンプである。興味深いことは、発表当初は前段にGTタイプの双3極管6SN7が使われ、終段の845は、純A級プッシュプル動作の製品も本国ではあるようだが、現在輸入されているモデルは、電圧増幅段が12AX7、12AU7に変更され、終段も845パラレルプッシュプル動作になっていることだ。
 ムクのイタリアンナッツ材や銅版を組み合わせた筐体構造は、非常にユニークではあるが見事なまとまりを見せており、真空管パワーアンプでの重要なキーポイントである出力トランスは、リッツ線を巻線に使った自社開発によるということで、また驚かされる。純A級パラシングル動作で39W+39Wの性能は、特に低感度スピーカーでなければ、家庭用として十分に満足できる定格値だ。別売オプションとしてPHONO−ONEフォノEQアンプも用意されている。

ボルダー 2010, 2020

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 今秋、従来のシリーズには隔絶したような超高級機がボルダーから登場。これは驚異的だ。
 2000シリーズと名づけられたこの新シリーズは、プリアンプ2010とD/Aコンバーター2020の2モデルで、基本構想は、リモートコントロールの全面的採用、左右チャンネルの完全独立化とコントロール/表示系の独立、3系統の電源部を内蔵した別筐体電源部による相互干渉の低減である。表示部とコントローラーのあるフロントパネルには、LED表示が採用されている。筐体上部には、左右チャンネルが独立した強固なハウジングがあり、背面からアンプ、DACをプラグイン固定する構造だ。
 注目は、DACも左右独立に専用ハウジングに収納されていることだ。シャーシ電位的には同一筐体であるため各部は共通だが、究極の左右チャンネル間干渉を避ける設計、とボルダーでは自信をこめて言っている。詳細は省くが、とにかく物凄い構想の超高価格機である。

ボルダー 500M

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 500Mは、基本となる500から左右独立レベル調整、出力表示インジケーターを外した、純オーディオ仕様の500AEの、外装デザインを大幅に変更した同社のトップモデルだ。
 150W+150W/8Ω、BTL接続時500W/8Ωの定格をもち、業務用での高信頼度を活かした保護回路が完備された点は、とかく故障発生率の高い海外パワーアンプとしては異例のスタビリティを誇っている。また簡潔な内部配置で素早い修復ができるようになっていることにも注目したい。
 スピーカー駆動能力は、定格パワー値から予想するよりも十分に強力なものがある。無理にfレンジを欲張らず、ダイナミックな再生能力が感じられる音は、このモデルならではのおおらかさがあり、独特の味わいである。
 Mシリーズになり、業務用機器的な性質が薄らぎ、ディテールの再生能力や、聴感上でのSN比が向上し、本質的な回路構成のメリットが音として聴かれるのが本機の魅力だ。

BOSE 901SS

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 外観や仕上げに家具調を求めなければ、業務用901とでも表現できる901SSをおすすめしたい。これは、両サイドに独自の角度可変型ウィングを備えており、しかも8個のユニット側を前面として使うサルーン・スペクトラム方式と、逆向きにしたダイレクト/リフレクティング方式との使い分けも可能だ。ライヴネスは、ウィングの角度調整により、かなりの幅でコントロール可能という、901WBにはないユティリティの広さが特徴だ。また、強固なエンクロージュアによるソリッドに引き締まった、分解能の高いシャープな音は、これならではの魅力である。

ボルダー Ultimate 3, L3AE, L3AES

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリアンプでは、業務用的構想で入力セレクター部、アンプ部、電源部など各ブロックを独立した筐体に収めた ULTIMATE3、コンシューマー用に新設計されたL3AE、フォノEQを除いたL3AESがある。2番と3番ピンの極性切替付のバランス入力とバランス出力を備え、多彩な暗譜と組合せ使用が可能なことは使いやすく、またナチュラルで色づけのない音は、信頼感があり好ましい。

ボルダー 102AE

井上卓也
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より
 102AEパワーアンプは、同社発の薄型筐体採用のステレオ専用機で、102Mの原型モデルである。100W+100W/8Ωの定格ではあるが、スピーカー駆動能力は十分に高く、業務用としての利用は多いようだ。

ボルダー 500AE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 500AEは、500Mのベースとなったモデルで、外装が異なるように、定格値は同じだが傾向はよりネイティヴで業務用機器的な、こだわりがなく伸び伸びと音楽を鳴らす歌い方では、このモデルの方が魅力的だ。

マランツ CD-23D LTD

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD23D LTDは、CDM9PROの生産中止に伴う200台限定モデルで、CD23のチューンナップ機として発売される。
 もともとCD23はミュージックリンク・システムのために開発されたCDプレーヤーではあるが、キュービックでオリジナリティ豊かなユニークなデザインをもつ高級機である。最近のように管球式アンプが増えてくると、平均的なコンポーネント型CDプレーヤーではデザイン的に違和感があり、音質的にもナチュラルな帯域バランスとアナログライクな音の魅力が活きてくる。
 このLTDモデルは、筐体正面のメーター部の照明色が、濃いブルー系からかなり淡いブルー系に変更され、トップカバーの色調も濃くなった。機能的には、ディジタル入力部が新しく設けられ、汎用性が高められている。従来のCD23と比べて、サラッとした感覚のリファインされた音に変った印象を受けるが、現時点ではまだ最終仕様の状態ではなく、さらに一段と追い込まれることになるだろう。

ダイヤトーン DS-205

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS205は、当初Aシリーズの高級機と聞いていたが、型名は伝統的な放送用モニターに準じたものに変った。側面は大きく弧を描く積層合板製で、これをバッフルと裏板で結合し、これに天板と底板を嵌めこむ構造は、簡潔だがかなり高度な木工技術の成果であろう。20cmアラミドコーン型ウーファーは、DS−A3系の振動板とアルニコ・ツボ型磁気回路を採用したもので、明快なサウンドを志向した低域として同社初の設計だ。高域は2S3003系のDS8000出使われた5cmB4Cコーン型。2S3003系を、より豊かに柔らかくパワフルにした印象の音は、清澄な印象もあり、非常に興味深い意欲作だ。

BOSE 901WB

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 現在の901WBは、ウェストボロウ・シリーズの表面仕上げと細部のデザインのマイナーチェンジが施されたモデルで、専用スタンドPS9が別売で用意される。エンクロージュアは、比重が大きく硬度の高いMDF材が新しく採用され、響きが明るく、音の分解能が向上して、全域型独自の生き生きとした表現力豊かな音が楽しめるようになった。外形上は小型なシステムであるが、11・5cmユニット9個の振動板面積の合計は、34・5cm全域型ユニット1個分相当になり、想像以上の空気駆動能力を備えていることがわかるであろう。
 901に好適なリスニングルームは、程よくライヴで響きの美しい部屋が好ましい。そして聴取位置に対しての角度調整や、床からの高さ、両方のスピーカーの間隔などを調整し、最も響きが自然になる設置位置を決めてから、アクティヴEQをプリアンプのテープ系か、外部アクセサリー端子に入れて、サウンドバランスを調整すればよい。セパレート型アンプを使用する場合は、プリアンプとパワーアンプ間に入れる使用方法と聴き比べてみるとよいだろう。
 901WBの発展した使用方法として、小型高密度な特徴を活かして2段重ねにスタック設置にして使うと、一段と豊かなプレゼンスを余裕タップリに楽しむことができるだろう。

マランツ CD-16SE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CD16SEは、CD16のスペシャルエディションで、CD15ほどの重厚さ、密度感はないが、広帯域型のfレンジと、粒立ちがよくシャープに反応するスピード感は、このモデル独自の魅力。また、本機に採用のCDM4MDをはじめ、CDM9PROなどメカニズムが製造中止になり、独自のスイングアーム方式1ビーム・メカニズムの在庫分も残り少なく、次第にCDM12/14などリニアトラッキング方式3ビーム型に移行されようとしている。その意味でも貴重なモデルだ。

ダイヤトーン DS-2000ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS2000ZXも、従来のZモデルから全面的にフレッシュアップされた新製品だ。ユニット構成は、伝統的なアラミドハニカムコーン採用の30cm低域、6cmB4C・DUDハードドーム型の中域、2・3cmB4C・DUDドーム型高域と変更はないが、各ユニットは基本的な部分から見直され、かなり大幅にクォリティアップされたようだ。低域は、ややタイトなアラミドハニカム振動板特有の音から、最低域までスローダウンして伸びる密閉型独自の性質がより聴きとれるようになった。特に低域ユニットのネットワークではカット不可能な中域〜中高域成分が巧みに処理され、クリアーさが一段と増しているため、鮮やかで歪みの少ない低域に力が増して、いかにも高級機らしい貫禄のある低音再生となった。
 中域は、低域とのつながりが厚くなり、B4C・DUD型の威力が一段と明瞭に発揮されている。特に分解能に優れ、シャープに付帯音なく伸びるダイナミックレンジ的な余裕度は、前作にないものだろう。中域ユニットとチューニングのリフレッシュで、高域ユニットも細部が改良されているらしく、やや硬質な面があった前作と比べ、しなやかさ、伸びやかさが加わり、固有の鳴きが低減されている点に注意したい。全体的に格段に内容が濃く、音的にもリファインされて完成度が向上。仕上げも美しくなりながら、予想に反して価格は大幅に低減されているのも異例のことで、このモデルに対する想い入れの深さの証であろう。

マランツ SC-23, MA-23

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SC23プリアンプとMA23モノーラルパワーアンプは、DAC1でスタートした他に類例の少ない小型・高密度のモデルで、シリーズ化された同社独自のミュージックリンク・シリーズのモデルである。SC23は、パッシヴアッテネーターSL1の筐体に本格派プリアンプを組み込んだライン入力専用機で、出力段にはフィリップスLHH2000で初採用されたNF専用巻線付のバランス型出力トランスを備えたモデルだ。MA23は、AB級50W定格の超小型パワーアンプ。シリーズ製品には、SPレコード用の3種類のEQを備えた、MC昇圧トランス内蔵、NF−CR型フォノEQのPH1、トップローディングの小型高級CDプレーヤーCD23D LTDがあり、さり気なく高いクォリティの音を楽しむには好適なラインナップだ。
 シリーズ共通の音の特徴は、あまりにオーディオ、オーディオせずに安心して音楽が楽しめるだけのコントロールされたfレンジと、伝統的に電源を重視するマランツらしく、十分に広いダイナミックレンジをもち、質感に優れたサウンドが、大人のテイストを感じさせる。

BOSE 901 Series

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのフラッグシップモデルとして良い伝統を誇り、同社を代表するモデルが901シリーズである。コンサートホールでの直接音と間接音の比率は、数多くのホールで測定したデータからすると、直接音1に対して間接音が8の比率になることから、リスニングルームでコンサートホールの雰囲気を再現するために、前面に1個、背面に角度を付けて4個1組が2組の計8個をセットした独自のユニット配置法を採用。しかも、そ全ユニットには、ボーズで全域型に最適な口径と決定された11・5cmタイプを採用していることが特徴だ。また、自然な周波数特性を実現するために専用アクティヴEQが付属しており、低域から高域にかけての位相特性、周波数特性をスムーズなものとし、システム全体で見事な音場再生を可能としている。

ダイヤトーン DS-200ZX

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ’96年の最新注目モデルは3機種。まずDS200ZXは、DS1000ZX以来、従来モデルに改良を加え、DVDに代表される将来のハイサンプリング・ハイビットのプログラムソースに対応できるようリファインされてきたZXヴァージョン化が、同社のベーシックシステムDS200ZAに及んだ新製品だ。
 全体のデザインは、従来の安定感はあるが地味な存在といった印象が薄らぎ、新鮮な印象が加わったが、基本構成は変らず、ややエンクロージュアの奥行きが伸びただけだ。使用ユニットは、16cm低域、2・5cmDUD型ともに大幅に手が入れられている。特に高域のDUD型は、振動板材料がボロン化チタン材に変更され、その音色は見事な変化を遂げている。エンクロージュアは、前作を受け継ぐバスレフ型だが、木組み構造が変更され、全体に剛性感が高く、響きが明るくなっていることに注目したい。
 また、バスレフ型のチューニングにも手が加えられた。とかくこの種の小型システムは狭い場所に押し込められやすく、予想以上にブーミーでカブリ気味な低音となる点に注意が払われている。これがエンクロージュアの響きと相乗効果的に働き、明るくダイナミックになる低域が、この新モデル固有の美点だ。比較的明るくのびのびとは鳴るが、国内版ポップスなどでは、ややもすると騒々しくなりがちなシステムが多い中にあって、価格を超えた正統派の小型高級システムといった性格は実に小気味がよい。

BOSE

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ボーズのスピーカーシステムはすべてDr.ボーズのユニークな音響理論に基づいて開発されている。その主なものはまず、ダイレクト/リフレクティング理論で、よい音には3要素があり、一つは全周波数のエネルギーバランス、二つめはどの方向からどれだけのエネルギーが来るかの空間的アスペクト、三つめは音源から出た音のエネルギーが聴取者に届くまでの時間である。この3要素をスペクトラル、スペイシャル、テンポラルと呼び、これらが家庭内でどこまで再現できるが、実際の演奏会場での音に近い再生ができるかどうかの鍵になり、そのために、直接音と間接音を調整し複雑に混合することで、自然なエネルギーバランスと方向性を作りだそうというわけだ。つまり、スピーカーの放射パターンを拡散させて間接音成分を増し、自然な音色と立体感を感じさせているわけである。
 次はステレオ・エブリウェア理論。これは、正しいステレオイメージを広範囲な聴取位置で得られるようにするための理論で、最初に到達する音よりも、後から到達する音を大きくしてマスキングさせようという考え方。ボーズではこのため、スピーカーユニットに特定の角度を付けて音響エネルギーと方向性をコントロールし、広いサービスエリアを実現している。
 アクースティマス方式は、小型エンクロージュアで強力な低域再生能力を獲得するボーズ独自の技術だ。共振と共鳴を利用し、低歪みで高いダイナミックレンジが得られる方式で、構造上、方向性を感じさせる高域輻射がなく、設置位置を選ばせない特徴は大きい。
 アコースティック・ウェイヴ・ガイド方式は、長大なチューブの内部に低域ユニットを取り付け、その前後両面に放射されるエネルギーを利用して、共振点の異なる2本のチューブ中の空気を共振させ、3オクターブもの広い帯域の重低音再生を可能とするものだ。
 それぞれの方式論は、米国特許が認められており、ボーズ製品に幅広く活用されている。

AR Model 310HO

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新作HOシリーズは、ハイアウトプットを意味する高能率型で、旧インフィニティのケアリー・クリスティ氏が独立した会社でARのために開発した、クリスティ・デザインの叡知を結集した力作で、細部に独自の音響処理が施された最先端技術の成果ともいえる傑作。キメ細かな音とダイナミックな音を巧みにミックスしたサウンドは、さすがに名手の手腕が光る印象だ。

ダイヤトーン DS-A5

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 DS−A5は、Aシリーズ本来のエンクロージュア構造と材料に凝った魅力の小型高級システムだ。低域13cm、高域4cmの2ウェイ方式バスレフ型で、小粋な音とでも表現できる独特のサウンドが新鮮な味わいだ。

AR AR303a, AR218V, AR338, Limited Model 6

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 AR303aは、AR3aの現代版。平均的な密閉箱となり低域は明るく、独特なソフトドーム型ならではの中・高域は素直。AR218Vは小型2ウェイ型で、フレッシュな鳴り方が魅力。AR338は、20cm3ウェイ型で非常に魅力的な好製品だ。スペクトラルEQのモデル6は、マーク・レビンソン氏が参加した開発だけに調整能力は非常に高く、任意にサウンドコントロールできるEQとして特筆に値するモデルだ。

マランツ CD-17D

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 CDプレーヤーのCD17Dは、一体型モデルとしては初のディジタル入力をフロントパネルに備えた製品で、最近急速に需要が増したMDポータブル型やDATにも対応したことに特徴がある。ディジタル入力系は光2系統(フロント/リア)、出力は光と同軸の2系統あり、ディジタルボリュウムコントロール機能も備える。
 CD駆動ユニットは、新リニア型CDM12・1と新サーボ/デコーダーIC・CD7採用のディジタルサーボが特徴。DAC部はデュアルビットストリームDAC7、ディジタルフィルター部はSM5841Dの20ビット8fs型だ。
 アナログ部は新HDAM採用で、数MHzまで高周波ノイズは差動増幅でキャンセルされ、22・05kHz以上はアクティヴフィルターで十分に抑圧される。すっきりとよく伸びたfレンジとシャープで反応の速いフレッシュな音は、この価格帯としてユニークな存在といえよう。

AR Limited Model 2, Limited Model 200

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 プリアンプのモデル2、パワーアンプのモデル200も、リミテッド・シリーズの製品。素直な音のアンプで個性的な面が少ないが、内容は十分に濃く、安心して使えるスタビリティの高さと高級機ならではの陥落が音として聴かれるのは、さすがである。

マランツ PM-16

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 PM16プリメインアンプは、回路的にはSC5+SM5の成果を導入した新HDAM+FETバッファーによる4連アクティヴボリュウム、新設計の超高速OPアンプを使った1段電圧増幅+3段ダーリントン電流増幅と高周波用Trのシングルプッシュプル出力段という構成で、マルチフィードバックに対応可能な高域時定数が少ないメリットをもつ。
 また、音質上問題となる出力部の補償コイルを削除し、広いパターンエリアと最小のエミッター抵抗で優れたパワーリニアリティを実現している。大型Rコア・トロイダルとランスと定箔倍率電解コンデンサーによる低インピーダンス電源部には、ダイオードノイズを抑える独自のノイズキラー素子を採用。他に、MM/MC対応フォノEQ、アクティヴフィルター式NFBトーンコントロールなどを備える。注目点は、リモコン対応でのマイコンのディジタルのイズによる音質劣化の問題がクリアーされ、本格派のプリメインアンプとして同社初のリモコン対応化が図られたことだ。
 PM16の音は、十分に伸び切った広帯域型のfレンジと、聴感上でのSN比の高さが特徴だ。特に奥行き方向に見通しのよいパースペクティヴとナチュラルに立つ音像定位感は、基本的特性に優れ、さらにオーディオ的にリファインされたアンプのみが聴かせる、わかりやすい音質上のメリットである。

ユニゾンリサーチ

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 ユニゾンリサーチは1988年に、手頃な価格で入手できる最高の性能の真空管アンプを設計することを目的として設立されたアンプメーカーだ。
 同社製品の設計を担当するジョヴァンニ・M・サチェッティ氏は、20年以上イタリアの学校で電子工学を教えてきた経歴をもつ人物で、16歳の頃から真空管アンプを手がけ、友人のアンプも設計・製作してきた。ソナス・ファーベル社のためにプリウス真空管プリアンプを設計したことでも知られている。A・アムブロシノ氏は、トリノ大学化学部、ボストン大学歯学部、さらにパドバ大学医学部を卒業という多彩な経歴をもった人だ。
 同社の製品は、オーディオアンプの概念を打破するような、各種の材料を組み合せたデザイン面でのユニークさに加え、シンプルな回路構成が採用されることが多い。特に3極管を直流的にシリーズに使うSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)回路を要所要所に使う設計も大変にユニークだ。

テクニクス SB-M1000, SB-M500

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 最新のSB−M1000/500は、トップモデルSB−M10000の構想を中堅機に導入した製品で、既発売のSB−M300を含め、フルラインナップがDDD方式低域採用の超広帯域、省設置面積のシステムになった。
 上級のM1000は4ウェイ7スピーカー4パッシヴラジエーター構成、M500は3ウェイ4スピーカー2パッシヴラジエーター型のトールボーイフロアー型である。

テクニクス SB-M300

井上卓也

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」(1996年11月発行)より

 SB−M300は、SB−M10000の新重低音再生方式を驚異的低価格で実現した、同社ならではの思い切りの良い力作だ。