Daily Archives: 1978年4月30日 - Page 2

マランツ Model P3600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 組み合わせて聴いた510Mは、他のすべての試聴にリファレンスにしているわけだが、たとえばシェフィールドのダイレクトカッティング・レコードなどで、ほぼパワーの限界近くまで上げて聴いたとき、コントロールアンプにマーク・レビンソンLNP2Lを組み合わせたときには510Mのピークインジケーターがしばしば点灯するのに、P3600にすると同じような音量まで上げてもインジケーターが点灯しない。ということは、LNPが何か不安定なシグナルを発生しているのか、逆にP3600がDレインジがせまくピーク成分が伸びきらないのか、確認はできないが、そういう違いがあった。しかし、やや光沢を抑えるがおだやかで、質の高い緻密な音は相当の水準だ。

マランツ Model 3250

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 設計はアメリカだが製造は日本マランツが担当しているということだから、一般の輸入品と比較するよりも価格的には国産機との対抗になるが、それにしてもこれは相当によくできたコントロールアンプで、クォリティ的に国産の十数万円台のそれと比較しても全くヒケをとらない。どちらかというとさらっと乾いて小ざっぱりした感じの明るい音だが、バランスも質感もかなりのもので、レインジも広く音が新鮮で、組み合わせた510Mとの相性などP3600よりも良いと感じたほどだった。しいていえば清潔で品の良いすがすがしい反面、もう少しトロリと練り上った味わいが出れば申し分ない。内蔵ヘッドアンプのできばえはまあまあというところ。

ハーマンカードン Citation 17

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 以前のセパレートアンプ特集号で旧型の♯11と♯16の組合せを聴いたときの印象では、低音域に独特の厚みと力が感じられて、下半身肥大のようなプロポーションで、しかもかなり厚着したような音だと思ったが、改良型にあたる♯17と♯16Aでは、そうした動きの鈍さあるいは重さがすっかり取除かれて、シャープで反応の早い現代ふうの音に変ってきている──と、一聴したときは思ったのだが、どうも基本的には解像力がもうひと息ともなわないところにそれを補うかのようにかなり鋭い音をちりばめたというように、いささかちぐはぐな鳴り方をする。かなり細い感じなので、イコライザーの150Hzのポジションをわずかに増強してみると、バランス的にはこの方が安定した。

ハフラー DH101

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 輸入品としてはかなりローコストの普及品的作り方であることを一応頭に置いて聴く必要があるが、その前提で聴くかぎり、これはとても素晴らしいコントロールアンプのひとつといってさしつかえない。さすがにこの分野ではベテランのハフラーの設計らしく、カンどころをしっかりおさえた上で、いかにも鮮度の高い音を鳴らす。おそらく回路に凝りすぎてないためだろう。音楽の表情がよく生かされて音の微妙な色あいの変化もほどよく再現される。高級プリのような磨かれた質感の良さや密度の高さにはわずかに及ばないが、価格の違いほどの音の差はない。ただマランツ510Mの系統よりはアムクロン300Aなどの穏やかな音の方がよく合うのではないかと思った。

ルボックス A740

ルボックスのパワーアンプA740のサービスマニュアル
Revox_A740_Serv

ルボックス B740

ルボックスのパワーアンプB740のサービスマニュアル
Revox_B740_Serv

GAS Thaedra II

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 いわゆる腰の坐りのよい堂々と安定感のある音が鳴ってきて、プログラムソースが変ってもその印象は一貫している。たしかにこの音は現代のアメリカのソリッドステートアンプのひとつの尺度となりうる見事な出来ばえだ。ただ「アメリカの」と断ったように、しばらく聴き込むうちに、元気のよいエネルギーをそのままぽんとこちらにぶつけてくるような、あまりにも率直な、その意味では強引ささえ感じさせる音は、私などは少々へきえきさせられる。むしろII型でない初期の製品の方が、もう少しおさえた説得力があって好ましかった。内蔵ヘッドアンプの出来ばえはなかなかの水準で、MC20とDL103Sのそれぞれ、フレッシュな魅力で鳴らし分けた。

GAS Thoebe

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラの鷹揚な力づよさとタレイア(サリア)のひかえめなやさしい音のあいだに挟まって、それらとはまたかなり傾向の違うやや硬調のハイコントラスト型というか、いわゆる目鼻立ちのくっきりした音の輪郭の鮮明さを狙って作った音、と聴きとれる。試聴で組み合わせた510Mとの相性はGASの中ではこれが最も良いようで、マランツの力と高域の質感に支えられて、よく張った硬質の音だがポピュラー系の音に対してはなかなか特徴のある音を聴かせる。ただ、クラシック系の弦合奏やヴォーカルでは、それぞれの音の特質をよくとらえてはいるが本来の硬い傾向の音が、永く聴くにつれて少々気になってくる。だがこういうふうに三機種の性格をはっきりと分ける作り方は賛成だ。

GAS Thalia

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 テァドラがその本質的に持っている力をややあからさまに(と私には聴きとれるが)押し出すのに対して、孫のタレイア(サリアと呼ばれているようだが、本来ギリシャ神話からその名を取っていると思うので、)の方は、中〜高音域でえてして張りすぎやすい音域をしまくコントロールしてあるようで、それに加えてハイエンドにかけて軽い強調感が聴きとれることもあいまって、総体にやや細身に仕上っているが、音に繊細なやさしさと、よくひろがってゆく奥行き感とがあって、ややひかえめな感じだが、クラシックの弦合奏や、ヴォーカルでもキングズ・シンガーズのような響きの美しさやハーモニィを重視した曲の場合には、GAS三機種の中ではこれが私には最も好ましかった。

DBシステムズ DB-1

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アメリカのソリッドステートアンプのごく新しい傾向の良さの素直に出た、とてもフレッシュで生き生きとした音。総じて音のぜい肉をおさえて繊細にどこまでも細かく分析してゆく傾向があるが、しかし細身一方のたよりない弱々しさではなく、十分に緻密に練り上げられて底力を感じさせ、それが一種凄みを感じさせることさえある。力を誇示するタイプでなく、プログラムソースの多様さにどこまでもしなやかに反応してゆくので、音楽の表情をとてもみごとに聴き手に伝える。弦の響きもとてもよく、アメリカのアンプにしてはどこかウェットな音に思えるほどだ。ハイエンドに一種キラッとした音色があって、そこが好みの分れるところかもしれない。

スチューダー A68

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 本格的なスタジオ仕様で、ローインピーダンスの平衡型インプットなので、入力回路に不平衡→平衡の変換アダプターを使って試聴したときと、不平衡のままで入力を入れたときとで、音の傾向が少し違う。まず平衡入力では、いかにもヨーロッパのプロ用らしく節度のあるバランスの良い音がする。かなり芯の硬いところがあるが、それは表面的な硬さではなく音像をしっかり支える力として、ひよわなところのない緻密な音を形造る。細部を目立たせるのではなく、やや大づかみに輪郭をかちっとくまどってゆく。不平衡入力にかえると、いくらかコントラストが増してクリアーな音になり、レインジの広がった感じになるが、本質的には抑制の利いた渋い良い音質だ。

デイトンライト SPS MK3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 耳あたりの柔らかさを狙ったというか、あるいはいわゆるソリッドステートの最新型にありがちな鮮鋭な鳴り方を嫌ったというべきか、ことさらに解像力を誇示するようなところがなく、そのせいか、なんとなく周波数レインジのあまり広くない感じの音に聴こえる。オーケストラのトゥッティでもギラついたり硬くなったりしないが、どこか伸びきらない印象があるが、いわゆる入力に対する反応があまり早くないためか、それともダイナミックレインジがそれほど広くないのか。耳当りの柔らかい割には底力を感じさせる音だが、ことに低音に一種独特の粘りのある音があって、それが全体の音色の傾向をかなり支配しているように聴きとれた。

スペクトロ・アコースティック Model 202

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 輸入品の100Wクラスのアンプとしては、価格もそれほど高くない。外観の造りをみれば贅を尽くした高級品ではなく、実質本位に徹した製品らしいことは容易に想像できるが、出てくる音を聴くかぎりは、ローコスト化のために手を抜いたというような感じはなくて、ローレベルでも滑らかによく磨かれて質感も悪くないし、切れこみのよい新鮮な印象で、音の密度にも不満はなく、ハイレベルでやかましくなったりもせず、要するにかなり良くできたパワーアンプであることがわかる。たとえば「オテロ」冒頭のオルガンの低い持続音も振動的な感じがよく出ている。価格の割に内容のしっかりした製品といってよさそうだ。

BGW Model 203

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 アンプ自体がことさら固有の音の傾向を持つことを意図的に避けた、という印象で、どのプログラムソースに対しても、いくぶん素気ない感じで音を聴かせる。ただそれが、技術一辺倒のアンプにありがちの、表面は整っているが音楽の生き生きした表情まで抑えこんでしまうようなアンプとは違って、伸び伸びとこだわりのない上質の音に仕上っているため、ことさらの魅力という部分が乏しいけれど音楽の表情を殺してしまわないだけの良さは十分に持っている。本質的には乾いた質感を感じさせるが音のバランスはどんな場合にもくずれることがない。強いていえば、ごく薄い幕を引いたような感じがあって、もうひと息刻み込みが深くなればすばらしい音になると思った。

ヤマハ B-3

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 すでにBI、B2を発表して、ヤマハとしては三台目のパワーアンプだが、外観の全く変ったことにもあらわれているように、中味の改善も著しい。どういうプログラムソースを使ってテストしても、なにしろ時間をかけてよく磨き込まれ練り上げられたという印象の音で、一聴して際立つような切れ味の鋭さとか豊かさというものは感じられないが、実に透明感の高い、滑らかで、しなやかで、耳当りはやわらかいが決して音の輪郭をぼかすようなことのない上質の洗練された味わいを持っていて、長時間にわたって聴き込むにつれてそのよさがじわりと聴き手に伝わってくるという感じの、これはまさに本ものの良さだ。単体としても良いがC2との組合せもいい。

ビクター M-7070

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 モノーラルコンストラクションで、二台揃えると価格も相当だが、さすがに音の質感のよさ、緻密さはローコストアンプとは違う。が、おもしろいもので、コントロールアンプにマーク・レビンソンのLNP2Lを組み合わせても、出てくる音にむしろビクターのアンプの性格で聴かせてしまうという面からみると、かなり個性の強い音、といえそうだ。コントロールアンプの(EQ)7070のところにも書いたことと共通しているが、総体に音に明るい華やいだ光沢をつける。それも音全体にというよりも音の輪郭を細い光の線でいろどるという印象で、そのためにいかにも切れ味の鋭さが目立ってくるが、基本的な音の質の高さと透明さゆえにそれを必ずしも嫌味に感じさせない。

SAE Mark 2600

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 音の透明感と表現力のずば抜けて優れたアンプだと思う。透明感という点でこれに勝るのは、マーク・レビンソンのML2Lぐらいのものだから、SAE♯2600はその点でわずかに負けても、どこか凄みのある底力を感じさせるダイナミックなスケール感と音の肉づきのよさで勝る。旧モデルの♯2500も含めて、低音の量感がこれほどよく出るパワーアンプは少ないし、ハイパワーでいながら高域のキメの細かいこと、ことに音量をどこまで絞っても音像がボケず、濁りもないこと、まさに現代の最上級のパワーアンプだろう。♯2500にくらべると、低域がややひきしまり、中〜高域の音色がわずかに冷たく硬質な肌ざわりになったところが、多少の相違点といえる。

ビクター M-3030

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 M7070と比較すると、これは価格も1/4になるのだからとうぜんかもしれないにしても、コントロールアンプの7070と3030の比較とよく似て、こちらはかなり音の切れこみの点で聴き劣りするのはやわをえないところか。ただ、コントロールアンプの場合は7070にくらべて3030が、やや時間を置いて聴いてもおそらくはっきりと聴き分けられるであろう程度の差のあったのに対して、パワーアンプの場合には、同時に聴きくらべれば、という程度の差には追い込まれていて、価格を頭に置いて聴くかぎりは国産として一応の水準には達している。欲をいえば7070のあのスカッと気持のいい切れ味や、彫りの深い立体感や透明感がもっと欲しいという感じ。

ルボックス A740

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 たとえば「オテロ」の冒頭のトゥッティを相当な音量で鳴らしても、それぞれのパートのあるべき姿で展開しながら決してわめいたり騒々しくなったりせず、一瞬のピアニシモではどこかひっそりした感じさえ与える。少しもギラつかないでしっとりと、どちらかといえば渋い感じのするところはヨーロッパ製品でなくては決して聴くことのできない音色で、そうした性格はことに弦やヴォーカルに長所を発揮してとても滑らかで品位の高い自然な音が楽しめる。といって、シェフィールドのパーカッシヴなエネルギー感や、テルマ・ヒューストンの黒人特有の声の艶とバックのコーラスを含めて聴きごたえのある音を出す。これはとても素晴らしいパワーアンプだ。

トリオ L-07M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプのL07Cとペアに設計された全く同時期の開発だけに、音の傾向は07Cととてもよく似ている。ひとことでいえば目鼻立ちくっきり型。音のコントラストをかなり際立たせるタイプ、といえる。どちらかといえばぜい肉をおさえる鳴り方で、中〜高域では骨細だが芯の強さがある。低音の鳴り方も07Cで書いたと同様に、ポップス系の場合には引き締めたよさが、音のダブついた感じのないしっかりした低音を快く聴かせる。クラシックの場合には、どちらかといえばバランスのとりかたのように思え、音量をおさえぎみで聴くときには、低音の量感というか豊かさがもう少し欲しく思われる。

トリオ L-05M

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 引き締った切れこみのよさ。いかにもプログラムソースに対する反応の鋭敏さを思わせる音は、どこか国産らしからぬ面さえ持っていて、かなり新しい感じのすぐれたパワーアンプだ。たとえば「オテロ」冒頭でも、十分に安定感を保ちながらひとつひとつの音の彫りが深く、ドラマティックな表情をとてもよく再現する。弦楽四重奏の四つの弦楽器も、バランスよく、芯がかちっとしていながらしなやさかもニュアンスもよく出る。総体にぜい肉をおさえた印象なので一聴してやや冷たい肌ざわりだが、無機的でなく、ブーミィなところがないがローエンドもよく伸びている。07Mのようなコントラスト過剰という感じがせずに、総じて07M以上の優秀機だと思う。

テクニクス SE-A1 (Technics A1)

瀬川冬樹

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 一聴しただけではひかえめすぎる感じさえするおとなしさ、ひずみ感のないおそろしく透明でこまやかな美しい音。脂こさや過剰な肉づきを感じさせず、いくらか冷たい肌ざわりはどこか取り澄ました感じさえ与える。いかにも日本人ならではの繊細な神経が注意ぶかく作り上げた印象の音だ。だが外面のやさしさからは想像のつかないほど芯の強い面もあって、テストソースのすべてを通じて、どこまでパワーを上げても少しも腰のくだけることのないアンプは、A1を含めて内外を通じてほんの数機種しかなかった。基本的に持っている中〜高域にかけての線の細いところは、LNP2Lとは悪い方向の相乗効果になって聴こえる。また音の色あいの点でも互いに異民族という感じがする。

パイオニア Exclusive M4

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ナチュラルで、明るく安定感のある、伸びやかな音のパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは充分に伸びており、バランス的にはローエンドとハイエンドが少し抑えてあるような印象である。定格パワーは50W+50Wと、現在の水準からはローパワーであるが、4343をかなり鳴らせるだけの実パワーがあり、音の粒子が細かく、表情がみずみずしく、かなり反応が早い音を聴かせる。とかくこのタイプの音は、スケール感が小さくなるが、M4は充分なスケール感がある。ステレオフォニックな音場感は、大変にスッキリと広がり、パースペクティブを充分に、音像をクリアーにナチュラルに立たせる。

パイオニア M-25

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 コントロールアンプC21とくらべると、格段に音のクォリティが高いパワーアンプである。聴感上での周波数レンジはかなりワイドレンジ型で、バランス的には、低域が豊かで柔らかく、,中高域から高域にかけて、滑らかで粒立ちがよく、スッキリと明るい音をもち、いかにも現代のアンプらしい伸びやかさがある。中域は、この種のパワーアンプ共通の、やや薄く密度不足の面があるが、音の反応が早いために、とくに問題とするほどのことはない。ステレオフォニックな音場感は、左右方向・前後方向ともによく広がり、音像定位もかなりクリアーに立つタイプである。リファレンスのLNP2Lとは少しミスマッチの印象である。

パイオニア M-75

井上卓也

世界のコントロールアンプとパワーアンプ(ステレオサウンド別冊・1978年春発行)
「最新型94機種のテストリポート」より

 ガッチリと力強さを感じさせる、男性的なキャラクターをもつパワーアンプである。
 聴感上での周波数レンジは、ローエンドとハイエンドをシャープにカットしたかのような印象であり、バランス的には中域は量的に充分なものがあるが、低域は柔らかく軟調傾向が強く、中域以上ではやや粗粒子型で、ソリッドな音をもっている。
 トータルなバランスからみれば、リファレンスコントロールアンプLNP2Lとは、キャラクター的にかなりミスマッチのようで、より細やかでおとなしく、ソフトなコントロールアンプが応わしいようだ。パワーは充分に余裕があり、パイオニアのスピーカーではCS955がマッチしよう。