Monthly Archives: 6月 1977 - Page 11

ナカミチ Nakamichi 700II

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 カセットデッキに情熱をかける専門メーカー、ナカミチの姿勢と実績は、実に立派だと思う。発売される製品の一つ一つが、この社ならではの独創性と、必然性をもったもので、他社の製品とは一見して異なるオリジナリティを持っている。そのナカミチのデッキの中でのトップモデルは1000II、それをよりコンベンショナルなものにした700IIだが、最高性能のカセットデッキにちがいない。カセットの性能向上に刺激にもなった。

テクニクス SL-1300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDプレーヤーで初めてフルオート化した最初の市販品として記念すべき製品。この出現が、オートプレーヤーの高級化をうながしたことは特筆されるべきだ。性能的に不安なく、オートという意識抜きに良いプレーヤーのひとつとして使える。テクニクスとしては珍しくカートリッジレスはむしろ歓迎したい。

マッキントッシュ MC2300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 超弩級のステレオアンプである。このアンプで鳴らすと、音の次元がちがうという表現が一番ぴたりとくる。レコードの溝が、ぐんと太くなって密度が増したように感じられる。とてもレコードとは思えぬ、たくましさなのだ。それでいて、細やかな再現もちゃんと果す。ちゃちなスピーカーはすぐ吹飛ぶ。

ヤマハ NS-500

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 中型のブックシェルフの中で、音の鮮明さあるいは明るい迫力のあるスピーカーといえば、JBLのL26あたりが浮かぶが、NS500をL26と比較してみると、音像のシャープネスや音のクリアーなことで、優るとも劣らない印象で、こういう音の傾向をねらった製品としては、相当によく出来たスピーカーだと思う。NS1000Mの弟にはちがいないが、これはこれなりに、鮮烈な音の魅力で十分に楽しませてくれる。

ビクター JL-F45R

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 テクニクスと並んでビクターも古くからオートプレーヤーの技術を持っていて、それをDD化したのがこれだが、デザイン的にユニークな超薄型で、キャビネットの仕上げに三種類のバリエイションのあるところも楽しい。オートの動作はきわめて安定。このクラスのオートプレーヤーとしては音質もなかなか良い。

デンオン SC-104

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヨーロッパのピアレス製のユニットでまとめられたスピーカーシステム。そのせいか、やはりユニットの性格が表われ、響きの豊かなヨーロッパサウンドである。本機の一番の魅力は、何といっても歪みが少なく、刺激的な音のしない中高域にある。マニアのセカンド用としても立派に通用するシステム。

マッキントッシュ MC2205

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 マッキントッシュの新製品であるが、基本的には伝統的なマッキントッシュのパワーアンプである。ややデザインも変更を受けているが、イメージは一貫したもので、モデルチェンジとはいえない。つまり、マッキントッシュはマッキントッシュであり、マッキントッシュの敵はマッキントッシュなのである。磨きぬかれた充実した音は王者の風格。

ウーヘル CR210

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 西独のウーヘルのポータブルカセットで、コンパクトな精密機械。いかにもドイツ製のメカニズムらしい、信頼性があって、性能もきわめて高い。音質のよさは特筆に値するもので、一種の風格すら感じさせる。値段も高いが、これは持っていて絶対満足できる製品であろう。

スキャンダイナ A-403

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 25cmウーファーをベースにした3ウェイという構成で、国産の同様な製品と価格的に太刀打ちできるというのは、輸入品としては相当に割安だ。見た目には国産のようなキメの細かい仕上げはしていないが、音質はさすがにA25MKIIでヒットしたスキャンダイナだけのことはあって、聴感上のレンジはさほど広くないが、国産の概して苦手なオーケストラのトゥッティでも、バランスをくずすようなことはなく安心して楽しめる。

テクニクス SL-1600

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 SL1300から1500までの世代で完成したDD量産技術とオートプレーヤーの技術を生かして、いっそうコストダウンしたのが1600だが、実用的にはさして差はなく、安い製品、という実感が湧く。音質はやや軽い傾向だから、音のマニアよりも手頃な扱いで一応の品質の欲しいという愛好家に奨める。

ラックス M-6000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 日本のメーカーの中でラックスは特異な存在だ。最古の歴史と伝統を持つこのメーカーは、今も専門メーカーとしての分と誇りを知り、保ち続けている。M6000は、桁はずれといえるようなステレオパワーアンプで、重さがその内容を表わすといってよいほど超弩級のアンプだ。作品といってよい充実した出来。

パイオニア CT-97

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックマウントパネルを持った前面操作型。ヴァーティカルユースの同社製品シリーズ中の最高機種である。既発のCT9を充実させリファインした、この価格では大きな力作で、プロフェッショナルなイメージに溢れている。いかにもパイオニアの製品らしい豪華さで各種操作機構のスイッチ、ツマミ類の感触もよく、緻密な感覚を満足させる。CT9同様、音質もきわめてスムーズで、ワイドレンジながら、美しいまとまりをもつ。

トリオ KP-7300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 質実剛健という表現を使いたくなる製品で、実用に徹した、いささか素気ない武骨な印象が損をしているが、ターンテーブルとアームおよびキャビネットという主要パーツを音質重視で検討したというだけあって、うわついたところのない再生音はこの価格で出色。好みのカートリッジを加えた方が良さがわかると思う。

シーメンス Eurodyn

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 西独のシーメンスの大型2ウェイシステムで、バッフル状のフレームにユニットが取りつけられてはいるが、このままでは鳴らせない。指定では一辺2メートルの平面バッフルボードに取り付けることになっている。500Hzのクロスオーバーで、上をホーンドライバー、下を38cm口径ウーファーが受け持つ。輪郭の明確な、ガッシリとした音は、ソリッドな強靱さと、明るい朗々としたソノリティのバランスで、きわめて充実している。

マッキントッシュ MC2105

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アメリカのマッキントッシュはオーディオメーカーの鑑として然るべき、技術姿勢と、製品開発ポリシーを貫いている。出される製品に、その風格が滲み出てあまりある。出力トランスのついたパワーアンプは、頑丈さでは絶対的信頼性があるし、その重厚な音質、見事なパネルのイメージは持つものの誇りだ。

テクニクス SL-2000

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 DDモーターを使ったプレーヤーとして三万円を割ったという話題作。プラスチックを多用して、見た目にややチャチな部分はあるにしても、必要な部分にはダイキャストを使うなど、機能に徹して量産向けに割り切った設計は、アマチュアよりもむしろ設計者を感心させる面がある。ともかくこの価格では性能も優秀。

ソニー TC-4300SD

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヴァーティカルユースのカセットデッキは、アンプ群との混用にはもってこいのものだ。操作性にも充分な洗練がなされているし、大変安定した走行系も安心して使えるデッキである。付属機構も、ドルビー、ライン・マイク・ミキシング、フィルター(MPX)と必要なものは揃えて要いる。イコライザー3段、バイアス3段の切替で、テープへの適応性も広い。SN比のいい、すっきりとした音がデッキの性能のよさを示している。

サンスイ SP-L250, SP-L150, SP-L100

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 サンスイのスピーカーシリーズにはLMシリーズ、JBLのモニターユニットを使ったモニターシリーズをはじめ、10万円をこした価格帯で注目されたGシリーズなど、かなりバリエーションが多いが、これに加えて、新しくるシリーズの3機種が発売されることになり、一段と製品群としての厚味が増加した。
 Lシリーズは、各社の製品がもっとも激しく競合する価格帯に投入されたシリーズであり、構成面からみればLMやGシリーズと比較して個性が少なく、オーソドックスな手法により開発されている点が、返って特長といえよう。ユニット構成は各モデルともにコーン型ユニットを使う2ウェイ方式であり、エンクロージュアはバスレフ型で角型のパイプダクトを採用している。
 ウーファーはコーンに西独クルトミューラー製のパルプを使い、エッジには方向性がなく、内部損失が多い発泡樹脂を熱成型したロールエッジを採用している。ボイスコイルは超偏平リボン線を使いエッジワイズ巻きとしたショートボイスコイル型で、巻幅が狭いため大振幅にも磁気回路内で余裕ある動作が可能で、歪が少なく能率が高い特長があり、ボビンは強度が高く音の伝播速度が速い耐熱性樹脂製であり、ボイスコイル部分以外のボビン部分には強度を高めるために同じ材質を使ったシートで補強がしてある。磁気回路はセンターポールに銅キャップを使用し、中央には通気用の穴が貫通している。マグネットはフェライト磁石で、L250の30cmユニットには外径156mm、L150の25cmユニットには外径145mm、 L100の20cmユニットには外径120mmの大型なタイプが採用されている。各ユニットともに駆動部分のボイスコイルとコーン氏との結合が強固であるため、ウーファーとしてはかなり高域特性が伸びた、いわばフルレンジタイプであり、トゥイーターとのクロスオーバー周波数の選択の幅が広い特長がある。
 トゥイーターはコーン型であるが、ウーファーと同様にワイドレンジタイプで高域限界は50kHzと発表されている。振動板はコーンとセンターキャップを一体成型して特殊な樹脂溶液の含浸処理をし強化してある。ボイスコイルはボビンに耐熱性樹脂シート採用で剛性が高く、高域特性を向上するためにメリットがあり、コーン紙との接着は新開発の特殊接着剤を使用している。
 磁気回路は、L250/150が外径90mm、L100が外径80mmのフェライト磁石を使用し、16、000ガウス以上の磁束密度を得て磁気回路を完全に飽和させ、ボイスコイルに流れる電流により発生する電流歪を防ぎ、音圧レベルと高域特性をも改善している。また、磁気回路の空隙をなくすためにプラスチック材を使い振幅が大きくなるf0付近の第3次高調波歪を改善している。フレームはダイキャスト製である。
 クロスオーバーネットワークは、コイルはダンピングと能率の劣化を防止するために、線径の太い線と大型ラミネートEI型コアが使ってある。エンクロージュアは、バッフル版が共振が少ない三層構造パーチクルボード、他の部分は比重が大きいパーチクルボードで、結合は三方止めとし、エンクロージュア全体を一体化している。
 Lシリーズのシステムは、かなり反応が早く、伸び伸びと音を出し、そのクォリティがもっともローコストなL100でも充分に高く、聴く音楽のキャラクターにより、高級機、普及機といった区別なく使いわけられることが特長である。スピーカーシステムの理論どおりに中域にもっとも密度があるのは20cmウーファー使用のL100であり、スケール感が大きいのは30cmウーファー使用のL250で、さしてシステムとしてのキャラクターが変わらず充分に基本をおさえ、巧みにコントロールされている。何れのモデルを選択してもかなり使い込める点は、このLシリーズの魅力である。

エンパイア 698

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 一九五〇年代のリッチなアメリカの雰囲気をいまだに受けついだ独特の製品だが、メーンテーブルやフレームやアームの材質や構造がきわめて堅固でぜいたくな作りのためか、音はきわめて緻密かつ豪華な安定感があって、一度は使ってみたい気を起こさせる。指かけなどもかなり大づくりで、いわゆる繊細な操作性とは正反対のフィーリングだが、金色のゴージャスな外観は、マッキントッシュやパラゴンのイメージと合いそうだ。

JBL 4350A

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 JBLが現在製造する最高、最大のシステムがこの4350Aである。巨大なエンクロージュアに4ウェイ5スピーカー構成のユニットがつめ込まれ、これを250Hzのクロスオーバーでマルチアンプ駆動するべく作られている。4350WXというウォルナット仕上げのヴァージョンもある。JBLのシリーズの旗艦であるが、それだけに、そう簡単に使いこなす事が出来ないシステムだ。調整にはプロの腕が必要。

ラックス SQ38FD/II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 アンプに限らず「これでなくては聴けない音」があるということこそ、その製品の存在する必然性だと思うが、SQ38FD/IIの、とくにクラシックのプログラムソースで、弦やヴォーカルのいかにも息づくような暖かさ、血の通った滑らかさを聴けば、この音はちょっと他のアンプでは聴けない特長であることが理解できる。最新のTRアンプの透明な冷徹さと対極にあるこの音は貴重な存在。

ビクター KD-2

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ポータブル・カセットレコーダーの国産中の傑作だと思う。この機械の母体となったKD3(4)という、一廻り大きなポータブルテレコをリファインして、コストを下げたのが弟分のKD2である。しかし、製品としての魅力ではこのほうが上といってよく、デザインも傑出した出来だと思う。使い勝手も、ポータブルとしての耐振動性も、そして肝心の音質も、水準以上の製品だ。プロポーションも快い。

ソニー PS-8750

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 いかにもソニーらしく、ターンテーブル(駆動モーター)もアームも、ベースその他も理詰めでまとめられ、レコードというオーガニックな素材から音楽という官能的な芸術を抽き出すプレーヤーとしては、いささかメカニックにすぎる印象が個人的には好きになれないが、しかしアームの音質を含めて、ひとつのプレーヤーシステムとして考えたときの音質や物理データが、きわめて高い水準でまとまっている点を評価する。

Lo-D D-500

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ローディ独特の3ヘッドファンクションを持ったカセットデッキで、録再のコンビネーションヘッドは同社の開発によるもの。このヘッドの量産化によって、この価格クラスにまで使えるようになったのであろう。縦型のコンポーネンツで、見た目には類型的で特にユニークさはないが、使い勝手はなかなかいい。なんといってもこの価格の製品で、録音再生が独立しておこなえる完全なモニター機構が得られることは大きい。

サンスイ AU-707

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 弟分のAU607は、7万円以下という価格を頭に置いた上で、という条件つきで優秀なアンプといえるわけだが、707あたりになると、これより高価格帯の製品と聴きくらべても、そう遜色のない充実感のある音に仕上がっている。606と一見そっくりな外観だが、607で必要最少限に省略されていたトーンコントロールその他のファンクションも、707になると実用上十分になっている。