Daily Archives: 1977年6月15日

ラックス 5T50

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
「SOUND QUARTERLY 話題の国内・海外新製品を聴く」より

 一連のラボラトリー・リファレンス・シリーズのコンポーネントは、プリメインアンプ、セパレート型アンプなどのアンプが中心だが、周辺機器としてトーンコントロールアンプ、グラフィックイコライザー、ピークインジケーターなどがあり、ここでは、デジタルシンセサイザーFM専用チューナー5T50を取り上げることにする。
 このモデルは、FM多局化に備えて開発され、多くの新しい機能がある。
 受信周波数は、デジタル表示されるほかに従来のダイアル的感覚を残すために、FM放送帯を1MHzごとに示すLEDがついたダイアルがあり、別に1MHzの間を100kHzだとに示す10個のLED表示部分を組み合わせアナログ的な表示が可能である。同調はオートとマニュアルを選択可能で、操作はUPとDOWNの2個のボタンでおこなう。オート動作では、目的方向のボタンを押せば、次の局の電波を受けるまで探し同調し止まる。マニュアルではボタンのワンタッチで100kHzでと上下に移動し止まり、押しつづければ連続して動き、放せば止まる。このチューニングスピードは、任意に調整可能である。
 また、このモデルにはスイッチによるプリセットチューニングが7局できる。プリセットは機械式ではなく、C−MOS ICを使い、デジタルコードで記憶させる電子式で、希望局の記憶、消去が簡単であり、電源を切っても記憶させた局が消去することはない。シグナルメーターはないが、放送局の受信状態の目安を0〜5までの数字で表示するシグナル・クォリティ・インジケーターが採用してあるのも面白い。
 実際の選局はオート、マニュアルとも違和感がなく快適にチューニングでき、プリセットチューニングの記憶、消去も容易で、とくに慣れを要求しないのが好ましい。
 このチューナーの音は、T110などを含めた従来同社のチューナーよりも、クリアでスッキリとし、粒立ちがよく、滑らかさも十分にある。

オンキョー Integra P-303

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フラットなプリアンプの流行に流されず、必要な大きさを最小限確保してつくられたプリアンプで、コントロール機能が大きく省略されたイクォライザーアンプに近い製品にしては、大きいアンプである。しかし、このプリアンプの純度の高い音は第一級の品位といってもよく、プログラムソースの細やかな陰影のデリカシーやニュアンスも、クリアーに再生する。それでいて音のタッチは生硬ではない。

KEF Model 103

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 KEFとしては音の肉付が豊かで、しかも、骨格のしっかりしたよさは、このメーカーらしい魅力を感じさせる。端正なバランスは、クラシックの品位をよく再現するし、高弦の表現に生命感が生きる。また、ジャズを聴いてもよく力感を再生してくれるので、かなりハードな音楽性に不満が出ない。104からみれば、かなり小型にまとめられているから、インテリアとの溶け合いにはこのほうがよかろう。

テクニクス SB-6000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニットの取付位置のコントロールによって、全帯域の位相特性の改善を狙ったシリーズの中級製品で、30cmウーファーとドーム・トゥイーターの2ウェイである。ユニットが裸で見えるメカニックなアピアランスもユニークで魅力がある。耳障りのよいなめらかな音で、かなり豊かなグラマラスなサウンドが楽しめる。ドームがソフト系とは思えぬ明晰な高域であるが、低音がやや重く、もう一つ軽い弾みがほしいと思う。

ヤマハ NS-500

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ブラックフィニッシュのエンクロージュアはNS1000シリーズと共通のイメージだし、トゥイーターにもベリリウム・ドームを使っているところも同じ、これは2ウェイで、かなりめりはりのきいた明瞭なサウンドである。陰影やニュアンスが少々乏しい嫌いはあるが、このクラスでは優秀なシステムである。強いていうと、クロスオーバー辺りに、やや耳を刺す傾向があるのが惜しい。外観と共通のイメージの音である。

デンオン DP-7000

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 デンオンの最高級ターンテーブルとして恥じない性能の高さと、作りの美しさをもち、レコード演奏の醍醐味を満たしてくれる高級機である。動力は、現在の回転機器の最高のテクノロジーでSN比、トルク、ワウ・フラッターなどに不満はない。ユニークなスタイルも高く評価できる必然性の濃いデザインだ。

オンキョー M-3

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 M6の成功に引続き、その下のラインを狙って開発されたのが、このM3であろう。やはり、2ウェイ構成で、28cm口径ウーファーと4cm口径トゥイーターを使っている。明るい大らかなサウンドはM6と一脈相通じてはいるが、さすがに、こっちのほうは、少々、小粒である。しかし、このクラスのシステムとしては、プログラムソースを効果的に鳴らすスピーカーで、音のまとめ方は堂に入っているもの。

アキュフェーズ P-300

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 国産セパレートアンプとしては、もはや最も古い製品に属する。こまかな部分に改良が加えられているようだが、そにしても、今日の時点で最新の強豪と肩を並べて、ひけをとらないクォリティの高さはさすがだ。ただし音の傾向は、最新機のような鮮度の高さよりも、聴きやすいソフトな耳当りを重視した作り方。

ロックウッド Major Gemini

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 〝メイジャー〟を土台に、タンノイのユニットを2本並列駆動させるハイパワーが多のロックウッド製モニタースピーカー。1本入りの引締って密度の高い高品位の音質に加えて、音の腰が強く充実感が増して、ことにハイパワードライブではこれがタンノイのユニットか、と驚嘆するほどの音圧で聴き手を圧倒する。

KEF Model 5/1AC

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 かつてBBC放送局のメインモニターとして活躍し、いまでも一部で現用されているLS5/1Aを土台にして、高低2chのパワーアンプとフィルターを内蔵させて現代流の高出力音圧レベルを得ると同時に、マルチアンプならではの解像力の良い鮮度の高い音質に仕上げたのが、このKEFオリジナルの♯5/1ACだ。

ヴァイタヴォックス Bitone Major

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ヴァイタヴォックスの音をひと口でいえば、アルテックの英国版。要するにアルテックの朗々と響きの豊かで暖かい、しかしアメリカ流にやや身振りの大きな音を、イギリス風に渋く地味に包み込んだという感じ。A7−500−8のレンジをもう少し広げて、繊細感と渋味の加わった音がバイトーン・メイジャー。

ラックス 5L15

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ラックスのプリメインアンプには、高級機としてSQ38FD/II、L−309V、そしてこの5L15のいわば新旧三世代のモデルが共存していることが大変に興味深く、オーディオの趣味性を強く捕える、いかにもラックスらしさがある。それにしても5L15は、ラックス育ちの現代っ子の音がするようだ。

アコースティックリサーチ AR-10π

 瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ARばかりでなくアメリカ東海岸の音を必ずしも好きでないことはいろいろな機会に書いているつもりだが、その中でAR10πは、ライヴな広い部屋でハイパワーぎみに鳴らすとき、という条件つきだが、オーケストラの厚みの表現とバランスのよさで、印象に残っている音質だ。低音のレベルコントロールは便利。

デンオン PMA-700Z

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 最新技術内容を誇るプリメインアンプが数多く登場しているなかにあって、このモデルはすでに旧製品となったように思われるが、ゆったりと余裕があり、陰影の色濃い音を聴くと、何故かホッとした感じになるのが面白い。やはり、ある程度以上の完成度があるアンプは、時代を超越した独特な魅力があるようだ。

パイオニア CS-955

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 おそらく、国産スピーカー中、もっとも音の美しいシステムではないだろうか。使用ユニットの一つ一つは、全く構造のちがう、3ウェイでありながら、それが、よく音色的にコントロールされていて、バランスがよい。最高級ユニットを使った、高級システムの名に恥じない力作といえるだろう。価値の高い製品だ。

ヤマハ CA-1000III

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−1000以来、すでに三代目になっているだけに、音もやや神経質な面があったCA−1000から、よりダイナミックなCA−1000IIを経て、現在の洗練された風格がある音に変わっている。整然と緻密な音を聴かせるこのモデルの音は、スケールも十分にあり高級スピーカーを余裕をもって駆動する。

タンノイ Berkeley

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 タンノイの新シリーズの5機種の中で、チェビオットを除いてはすべて価格に見合った出来栄えのよさで、いずれも人に奨めて間違いはない。バークレイは、設置スペースや価格の制約でアーデンをためらうような場合に、その良さを受けついでいる中型の優秀な製品として、一聴の価値のある佳作といってよい。

オンキョー Scepter 10

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 本格的なフロアー型システムで、スケールの大きい再生音が得られる。力強いジャズをラウドネス高く再生しても、乱れを感じさせず、少々、高域が不足気味だが、安定した再生音が信頼感に溢れている。繊細な緻密観はもう一つ物足りないので、どちらかというと大音量再生派に向く。

ビクター SX-5II

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 よく張り出す、輪郭の生命度、立上りの鋭い……というような音作りが全体的な傾向になってきて、SX5/IIのように点灯比較では目立ちにくい音は損をしているが、クラシックの管弦楽を鳴らしても破綻の少ない、ソフトなバランスの音質は、この価格帯では他に求めがたい特長で、もっと評価されてよい製品だ。

サンスイ SP-G300

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 ユニークなユニット構成のフロアー型システムで、JBLのユニットをサンスイらしいテクノロジーで消化した観がある。エンクロージュアの作りもしっかりしているし、日本のスピーカーにしては、まれに見るタフネスも持っている。ジャズの再生には、かなり高度な要求に応える優秀なシステムだ。

ビクター JA-S75

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 同じビクターのプリメインアンプであるJA−S41と比較するとより新しく、上級モデルであるだけに、音の新鮮さより、むしろ洗練された完成度の高さと、しなやかさが感じられるようになっている。しかし、音楽に対する働きかけは、ビクターの製品らしくアクティブであり活気にとんでいるのはもちろんだ。

ソニー SS-G7

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 フロアー型エンクロージュアにおさめられた3ウェイの本格派である。ソニーのスピーカーとしては、いろいろな点で新しい技術的アプローチが見られ、スピーカー作りのソフト・ウェアの研鑽が実ったシステムである。ゆったりとした余裕ある再生音で、音楽の表現をよく生かして鳴る。堂々とした製品だ。

オットー SX-551

瀬川冬樹

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 同じような構造と価格で、DS28BやNS−L325、それにスキャンダイナのA403など強敵が並んで、発売当初ほど目立つ存在ではなくなってしまったのは気の毒だが、クルトミューラー製のコーンによる艶のあるバランスの良い音質は、いまでも十分に評価されるべきスピーカーといってよいと思う。

ヤマハ CA-R1

井上卓也

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 CA−2000/1000IIIを特別クラスとすれば、このモデルは事実上のヤマハのプリメインアンプの中心機種である。アンプとしての性格は、当然、一連のヤマハ製品らしさを備えているが、厳しく音を整理して端正に聴かせる上級モデルよりは、より開放感があり、おだやかさがあり、幅広い支持が得られよう。

タンノイ Devon

菅野沖彦

ステレオサウンド 43号(1977年6月発行)
特集・「評論家の選ぶ ’77ベストバイ・コンポーネント」より

 イートンより一クラス上のシステムで使用ユニットが、25cmから30cm口径にスケール・アップされる。それだけに、再生音も、一段と豊かさが加わって、外観以上の大きなスケール感の再生音が得られる。クラシック、ジャズ、もちろんポピュラーにも、立派な再生を果す。ただし、決して気楽な音ではない。立派だ。