グレースのカートリッジF8C、F8D、F8E、F8F、F8H、F8L、F8H、トーンアームG840F、G707、G640P、G545F、交換針S8CMLの広告
(スイングジャーナル 1972年2月号掲載)
Daily Archives: 1972年1月20日
グレース F-8C, F-8D, F-8E, F-8F, F-8H, F-8L, F-8H, G-840F, G-707, G-640P, G-545F, S8-CML
パイオニア CS-27, CS-E700
パイオニア SX-515, SX-616
ヤマハ S-3Q
サンスイ SP-1005, SP-2005
オンキョー E-53A, U-4500
パイオニア T-3100, T-3500
ビクター CHR-260, CCR-661, TD-450
ゼンハイザー HD-414
ビクター SX-3
アコースティックリサーチ AR-6
パイオニア SE-L20, SE-L25, SE-L40
デンオン VS-450, VS-550
Lo-D HS-350, SR-600, PS-33
テクニクス SL-1100
菅野沖彦
スイングジャーナル 2月号(1972年1月発行)
「SJ選定新製品」より
テクニクスがSP10というダイレクト・ドライヴ・ターンテーブルを発売したことはオーディオ界に強い刺戟を与えた。低速回転の直流サーボ・モーターを使い高精度の仕上加工によるメカニズムとのコンビネインョンは本物を見分ける人たちの間で、またたくうちに評価が高まったのであった。しかも、世界中どこをさがしても、この種のターンテーブルはなく、まさに世界水準を上回る製品といっても過言ではなかろう。時を経ずして、各社からも続々とこのタイプの新製品が発売され、高級ターンテーブルはダイレクト・ドライヴ(DD)という観さえ呈するに至った。そして今回、試用した新製品SL1100は、このSP10の開発を基礎として、これをプレーヤー・システムとして完成したものだ。そのユニークな発想と随所に見られるアイデアやマニア好みの心情を把えたメカニズムは、このところ調子を上げているテクニクスの開発力と意欲を充分に見せつけているようで小気味よい。
このプレーヤー・システムの特長は全体を完全に一つのユニットとして総合的に設計したことであって、ターンテーブル、アーム、プレーヤー・ベースという三つの部分をパラバラに設計しておいて、互いにつなぎ合せて一つの製品にしたといったイメージは完全に消えた製品なのだ。
プレーヤー・ベースにダイカストを使ったというのもユニークであるが、従釆の木製ベースになじんだファンに、どういう受け取られ方をするかは極めて興味深いところだろう。私としては、一方において同社のねらった重厚感やユニット感覚に共感をおぼえながら、他方、なんとなく冷く、硬い、あまりにもよそよそしい感触にも抵抗を感じているというのが偽りのないところなのであるが、このダイカスト製のプレーヤー・ベースは構造的にも機能的にも、きわめてよく練られた設計で、ショック吸収のインシュレーターを内蔵し、アーム交換パネルと、将来イクォライザー・アンプを内蔵したい人の遊びパネルがビスどめをされているというこりようも泣かせるところ。SL1100はトーン・アームつきでSL110はトーン・アームなしという仕様になっているが、SL1100のトーン・アームは、やはり、ダイカストをベースに、パイプ・アームとの組合せで完成したものだ。ユニークな直読式針圧印加装置は大変セットしやすく、インサイドフォース・キャンセラーもついてはいるが扱いはきわめてシンプルだ。無骨なスタイリングとは全く無線のスムースな動作で、まだじっくり使ったわけではないが音質もなかなかよさそうだ。トーン・アームによる音質への影響は想像より大きいもので、その低域特性が全体のバランスに与える印象やトレーシング・スタビリティは軽視できないものだと思う。35cmアルミ・ダイカスト製のターンテーブルのテーパード・エッジはディスク・レコードの取扱い上の配慮もよくできているし、ダイナミック・バランスもよくとれている。かなりの高級ターンテーブルでも、動力機構をオフにして手で早回しをしてみると、全体にブルブルと振動がくるものが少くない。ふだん我が愛車のホイール・バランスに神経質なだけに、こんなところを妙に気にしてしまう癖がある。しかし、やたらにカタログ表示のワウ・フラッターの数値を気に.するぐらいなら、まだ、こんなことでもしてみたほうがましではなかろうか。横道にそれたが、とにかく、このターンテーブル、SP10をはるかに下回るローコストでまとめられていながら性能的には大差のない水準を確保していることがわかる。ダイカスト・ベースに直接針を下してボリュームを上げてみても、その振動の少さがよくわかる。すでに記した内蔵インシュレータ」もよく働き、外部振動にも強く安定したトレーシングが得られた。
こう書いてくると、この製品、いうところがないように感じられるかもしれない。たしかに、その物理的な動作面では、高い水準を確保していて、ディスク・レコード再生に充分満足のいく機能を示してくれる優秀製品だし、はじめに述べたように設計者のマニア気質がよく出た心憎い配慮にもニタッと笑いたくなるのだが、ここまでくると、もう一つ欲が出るのが人情であろう。モダーンなメカニズムを象徴するデザインも個性的でよいが、音楽を演奏するものとして、直接手に触れるものとして、もう一つ人間的な暖み、ふくよかさがあったならどんなにかすばらしいことだろう。プッシュ式のスイッチを指でタッチした時の感触や、スイッチの動作振動が金属ベースに共鳴して聞える薄っぺらな音は意外に輿をそがれるものだったのである。従来のプレーヤー・システムの概念を1歩も2歩も前進させた優秀なこの新製品の登場はその性能の高さとともに強く印象に残った。
ダイヤトーン DS-301
ソニー SLH
トリオ KA-3002, KA-5002, KA-7002, KT-3000, KT-5000, KT-7000, KT-8001
オンキョー E-53A
岩崎千明
スイングジャーナル 2月号(1972年1月発行)
「SJ選定新製品」より
ステレオ商戦たけなわのこの暮近くになって、各社から数多くの製品が出たが、その中には魅力あふれるものも少なくない。
現在市場にあるブックシェルフ型をいくつか聞いて、これはと思ったうちの二つがオンキョー製品であったのには正直言っておどろきでありきすがと感じ入った。
オンキョーのスピーカーはユニットが抜群の優秀品ぞろいなのにも拘らず、それらを組み合わせたシステムとなると、だれにも推められるというのが皆無に近かったといってよい。逸品ぞろいといっても具体的にいうとHM500、HM300をはじめ、スーパー・トゥイーターなどのホーン・ユニットが多かった。71年になってダイアフラム型が加わったが、コーン型になると逸品といい得るのは僅かでFR12Aのような小口径のフルレンジであって、大口径の、つまりウーファーにはこれというものがないというところが本音だ。だからウーファーに重要度の高いブックシェルフ型は、私としてはオンキョー製品に指摘できなかったわけである。
ところが最近接したU4500、2ウェイといい、E53A、3ウェイといい、それはバランスのよさ、音の品の良さという点で今までのオンキョーのシステムの音に対する私のイメージをすっかり改めなければならなかったことを知った。
オンキョーは本来スピーカー・メーカーとしてスタートした大企業だから、こうしたスピーカー・システムが作られることは不思議ではない
しかし、テレビなどの準家電製品に追われて本格的ハイファイ・スピーカー作りから離れていた期間が少々長すぎた。ステレオの最盛期になってふんどしを締めなおして再スタートを切って以来、ユニットにさすがというのがあっても、システムはなにか押しつけがましいサウンドで品の良さという点で取残された未熟な部分を感じさせていた。力強く、迫力に満ちているが、それを手元におくにはためらってしまうというようなサウンドがオンキョーのシステムに対する私のイメージであったのだ。
ところがU4500を聞いて、この音の透明度が従来にくらべ格段と向上して感じられた。HM500をセクトラル・ホーンにマイナー・チェンジした中高音ホーンの良さはもちろんだが、中音から下にかけての品のすなおさはウーファーの改良が進んだために違いない。
少し時をおいて接したE53Aのサウンドはこの傾向をさらに引上げたうえ音に品の良さを加えたといえよう。これには中音、高音のドーム型という新方式のユニットが大きく力を加えたに違いない。オンキョー製品のドーム型の良さはすでに63Aでも知らされたがやはり低域から中域にかけての圧迫感が除ききれないで中音以上のサウンドのバランスの障害となっていたとみるべきだろう。
このブックシェルフ型の低音用として密閉箱を採用しているのは、オンキョーをはじめパイオニア、クライスラーなどがあり、そのはじまりはARだ。サウンドの質としてはチューンドダクトよりも力強く、アタックに対しては明確にバスレフ方式にまさる。
ところが、私が今までに聞いた、オンキョーのブックシェルフでは、この低音の力強さの方のみが強く印象づけられる。中高音とのバランス上、中高音をあえてどぎつい感じを聴き手に与えてしまうほどのエネルギー・バランスを保たせざるを得なかったのではあるまいか。だからウーファーの改良、質の改善が一躍システムのサウンド全体に大きく寄与して、すぐれたバランスの上に品の良い音造りを成功させるきっかけになったのであろう。
めんどうな文句をごちゃごちゃと並べたてたが、私はオンキョーのこのシステムの音創りの成功をスピーカー・メーカーとしての大きな前進として受取っている。いまやユニットだけでなく、システムにおいてオンキョーにさらに大きな一歩を踏み出させるに違いない。E53Aはこの具体的な成果として市場に永く残る傑作であるのだ。
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