岩崎千明
電波科学 11月号(1971年10月発行)
「メーカー・ディーラーとユーザーの接点」より
湯島の白梅って、知ってる?
え! 知らない、それじゃあ、湯島のラックス 知っている?
知ってるなら、キミ、オーディオマニアの本格派、間違いなしだ。
そう、ラックスの試聴室は、上野駅そばの3年間いた背の高いビルのテッペンから、今度、東京の古きよき姿を残している、この静かで落ちついた本郷湯島の高台の一角に移ったばかり。
5階ぐらいのスッキリしたたずまいのビルは、4階の試聴室以外にもほとんど東京ラックスによってしめられている。
戸部さん、これがラックス試聴窒のチーフであり、ここを訪れるキミ達のこよなきお相手、と同時に、キミにも負けない大のオーディオマニアだ。
戸部さんのいるおかげで、ラックス試聴室は、はかのメーカー試聴室とはちょっと違う。
どこが違うかって? いってみれば判るんだけど、ラックスのは試聴室というよりも、キミのリスニレグルームの延長で、ここにあるといっても良いフンイキ。つまり豪華な居間であり、応接間であり、書斎であり、加えてステレオが置いてある感じ。
実をいうと、編集部の新進N君とここを訪れたとき、それは東京のはじっこを台風がかすめていた9月の初め。50畳ぐらいあろうと思われるこの広い部屋は、分厚いチェックのじゅうたん以外は、壁面も天井もまだ完成してはいなかった。ただゴージャースな応接セットと壁ぎわのラックの、アンプの間にある花びんや、洋酒ビンが、このリスニングルームの性格を物語っていたし、12月までに出来上るという戸部さんの言葉の裏づけになっていた。でも、戸棚の奥には、これまた大のマニアだった初代社長の集めた、大正時代からのラジオ雑誌や、海外誌が、書斎としての風格をのぞかせていたっけ。
キミが行ったらトクする日。
この本が出たらすぐだ。10月16日、土曜のオーディオ実験室は、15万から20万円ぐらいまでの高級スピーカの鳴きくらべだ。雑誌で活字をひろい読みしたって、音の本当の所は判るもんじゃない。そこでだ、ラックス試聴室にいけばこの日、米エレボイ社のエアリーズ、AR3A、JBLの新システム、英国タンノイ社、ヨーク、B&W コンチネンタルなどが、オーディオ評論家の先生とお話をしながら、鳴きくらべて音楽を楽しめるというわけ。
こういった集いが、ラックス試聴室では毎週土曜日の午後あるのだ。
このひとときこそ、ラックス試聴室の考えてるオーディオファンとの対話という姿勢というか、精神がはっきりと出ているのではなかろうか。
「ラックスは、商売のためのお客様とは考えておりません。試聴室はあくまで、場所とチャンスを提供してマニアの皆様に、利用頂くためのものと考えてます」。戸部さんのことばは、ラックスというメーカーサイドの発言でなく、マニアとして仲間同志に呼びかけの言葉なのだ。ついでながら今までのショールームの仲間は、2000名に近いということ。
「このオーディオサルーンで知り合って、お互いお客様同志が仲良くなるのは、ラックスの一番望んでいる所ですし、楽しいものですね」。
今までは技術的サービスの面は、東京神田の方で、試聴室とは離れていたのでいろいろ不便だったが、今度、湯島のビルでは、試聴室の下の2階が技術サービス部だ。
よそのスピーカとの組合わせや、プレーヤの組合わせの場合でも、持参して鳴き比べをするお客様もいるとか。
さて、このショールームの目下の最大のハイライトは新製品。
おなじみ505Xに続いてパワーアップした507X。その横になに気なく後向きにあったのをのぞいてみると、なんと「503X」。
505Xのジュニア盤の未発表アンプだ。おねだんは51、000円と503と同じ。しかももちろん、全段直結の最新回路。さらにその横にかくすようにおいてあったチューナは果して何か。WL500という最新500シリーズのチューナで、ラックスの自信作。正面においてあった英国のスノードン卿ご愛用という、モダンリビング調のB&W70も近々ラックスによって、米国ボーズスピーカと共に国内発売とのこと、楽しみがまた増える。
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